「『English Vinglish』を公開してほしいんぐりっしゅ!」第2弾は、『エージェント・ヴィノッド』との意外なご縁のお話です。
『English Vinglish』は主演のシュリーデーヴィが目立つ作品ですが、脇役にも何人か名前を知られた人を起用しています。たとえば、シュリーデーヴィが演じる主婦シャシのお姑さん、寡婦のゴードボーレー夫人を演じているスルバー・デーシュパーンデー。ちょっと知的で、シャシのことをよく理解しているお姑さん、という役柄を暖かく演じている彼女は、今年76歳になるベテランの女優で、映画だけでなく、テレビや舞台でも活躍しています。1971年にマラーティー語映画でデビューして以降、主として芸術映画系の作品に多く出演し、当時のトレンドだったニュー・シネマに欠かせない脇役女優として存在感を示していました。日本でも上映された『ミュージカル女優』 (1977)や『サラーム・ボンベイ!』 (1988)にも出演しています。1980年代後半からは娯楽映画への出演も増え、いろんな作品で見かけるようになりました。本作では、マハーラーシュトラの家庭人らしいお姑さん、ということから、スルバー・デーシュパーンデーが起用されたのかも知れません。
そして、シャシの姪ラーダを演じるプリヤ・アーナンド(上の写真では右から3番目)。彼女は南インドのタミルナードゥ州チェンナイの生まれで、今年27歳。お父さんはタミルの人なのですが、お母さんがテルグとマラーティー両方の血を引いていて、チェンナイと共に、テルグ語の本場ハイダラーバードにも住んでいたことがあるそうです。成長してからはアメリカの大学で学び、テレビのCF出演を経て2009年にタミル語映画『Vaamanan』でデビュー。でも、最初に撮影したのは翌年に公開されたタミル語映画『Pugaippadam』だそうで、その後、テルグ語映画にも出演したりして、タミル語、テルグ語両映画界で活躍しています。
『English Vinglish』に出演して以降はヒンディー語映画界からもオファーが寄せられ、今年公開されたコメディ『怠け者(Fukrey)』にも出演しています。先日は、コメントをお寄せ下さった方が教えて下さったように、タミル語映画『Vai Raja Vai』の日本ロケで来日していたそうで、奈良、神戸、姫路をバックにしたプリヤ・アーナンドの姿を見られる日も近いかも知れません。ちなみにこの映画は、ラジニカーントのお嬢さんにしてダヌシュの妻でもあるアイシュワリヤ・ダヌシュの監督第2作です。
もう1人、忘れてはならない名脇役が『English Vinglish』には出演しています。そう、シャシの夫サティーシュ役を演じた、アディル(正しくはアーディル)・フセインです。この写真ではわかりにくいと思いますが、顔を見たら、あれ、どこかで見たことが、と思われる方が多いはず。そうなんです、アン・リー監督作品でアカデミー賞の監督賞等を受賞した『ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日』 (2012)で、パイのお父さん役を演じていた人なんですね。この時の奥さん役はタッブーだったので、美人妻に恵まれた男優と言えそうです(笑)。残念ながら割と早い段階で、船が沈没して妻と共に亡くなってしまうのですが、パイの父で個人動物園の園長として印象的な演技を残しました。
アディル・フセインは名前からイスラーム教徒とわかりますが、実は彼、インド東端にあるアッサム州ゴアルパラの出身なのです。学生時代から演劇に興味を持ち、州都ゴウハティの大学に進んだあとは演劇と共にスタンダップ・コメディも演じていたというのですから、根っからの舞台人です。デリーの国立演劇学校(NSD)で3年間学んだあとロンドンにも留学、1994年に帰国後はアッサムの劇団での活躍を経てデリーに進出、1999年に「オセロ:白と黒の劇」で注目されるに到ります。
映画は、アッサム時代に何本かのアッサム語映画に出演したほか、2004年にはベンガル語映画『あなたのシュリカント(Iti Srikanta)』でソーハー・アリ・カーン(サイフ・アリ・カーンの妹)と共演、その後ヒンディー語映画『ならず者(Kaminey)』 (2009)、『欲情(Ishqiya)』 (2010)にも出演します。『欲情』ではヴィディヤー・バーランの夫役なので、よくよく美人妻に縁があるようです(笑。すぐ死んでしまうところは、『ライフ・オブ・パイ』路線ですね)。そして2012年には、『English Vinglish』『ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日』、ミーラー・ナーイル監督作『嫌々なった原理主義者(The Reluctant Fundamentalist)』など5本の作品に出演、一挙に注目される俳優となります。実はその中に、2月8日から日本で公開される『エージェント・ヴィノッド』も入っていたのです。
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上の写真『エージェント・ヴィノッド』でのアディル・フセインの役は、がらりと変わって”大佐”と呼ばれる謎の男。冷酷無比な”大佐”は、ヴィノッド(サイフ・アリ・カーン)と彼に協力するルビー(カリーナ・カプール)を追いつめて行きます。平凡な夫役もいいですが、この悪役もたまりません~、アディル・フセイン。
現在は、アッサム語の映画や英語映画に引っ張りだこのようで、今年50歳になるのですが、大きく花開くのはこれから、という感じです。『English Vinglish』にはもう1人、カメオ出演している超大物俳優アミターブ・バッチャンがいるのですが、こちらは71歳にしてますますいろんな作品に出まくっています。アミターブ・バッチャンの紹介は必要ないかと思いますが、また機会があったらご紹介することにしましょう。
というわけで、『エージェント・ヴィノッド』とも縁のあるアディル・フセインの姿を拝むためにも、『English Vinglish』を公開してほしいんぐりっしゅ!なのでした。
いつも楽しくサイトを見せていただいています。
大家である松岡様にこのようなことを書くのは大変心苦しいのですが、釈迦に説法を承知で書かせていただきます。
Srideviの表記はスリデヴィが正しいですね。
シュリーデーヴィは彼女の出身である南での発音ですが、ヒンディー語圏(ムンバイを含む)ではスリデヴィという音で統一されています。
日本語での外人名表記はいつも問題になりますが、あくまで記号としての表記ですので目くじらを立てる必要はないとも考えています。
ご指摘には、「シュリーデーヴィは彼女の出身である南での発音ですが、ヒンディー語圏(ムンバイを含む)ではスリデヴィという音で統一されています。」とありますが、残念ながら、ヒンディー語表記をそのまま読むと「シュリーデーヴィー」になります。以下に、「ナヴ・バーラト・タイムズ」のサイトの記事「シュリーデーヴィー宅で火事」をご参考までに付けておきます。
http://navbharattimes.indiatimes.com/movie-masti/news-from-bollywood/fire-caught-in-sridevis-bungalow/moviearticleshow/27784676.cms
私が最後の音引きを取って「シュリーデーヴィ」と書くのは、1988年の映画祭で彼女の主演作『三日月』を上映した時に、南インドでは最後は長母音表記にしない方がよいと聞いたためで、当時のパンフにも「シュリーデーヴィ」と記載しています。
彼女は昔からローマナイズでは「Sridevi」を使っており、それに影響されて、ボリウッドでは「スリーデーヴィー」と発音する人が多いのでしょうか? それがご指摘の中にあった「統一されています」ということかな、と思うのですが、耳で聞くとどちらの発音なのか判断は難しいですよね。
なお、本作の配給会社さんは「スリデヴィ」という表記にしていらして、あいち国際女性映画祭でもこちらが使われています。というわけで、公開が決まった暁には、拙ブログもこちらで統一致します。
それまでは、過去のクセで書いている、と思って、ご容赦いただければ幸いです~。
上映館の問題は年越しになってしまいましたね。
あいち国際映画祭を逃したのが返す返すも残念です。
今年は「恋する輪廻」とボリウッド4のおかげで、10数年ぶりにインド映画にはまり、
(しかも今度は6歳の末娘まで巻き込まれてしまいました)
盛り上がったまま2014年をむかえることとなりそうです。
(「ムトゥ」劇場公開時のパンフも引っ張り出してきました)
来年早々にもよい知らせがあることを期待しています。
では、良いお年をお迎えください。
来年もブログ楽しみにしています。
公開時期と上映館が年内に決まらなくて残念でしたが、配給会社さんとフリーのパブリシストさんが一生懸命やって下さっているので、まなさんが書いて下さったように、年明けにはいいニュースが聞こえてくるのでは、と期待しています。
そのほか、「○○の公開決定!」等グッドニュースをお伝えできることを目指して、来年もがんばりますのでよろしくお願い致します~。