2013年もあとわずか、間もなく2014年がやって来ますが、2014年公開のインド映画でイチオシ作品は『神さまがくれた娘』です。何せ、ボリウッド映画=ヒンディー語映画の公開が続く中で、唯一の南インド映画、つまりタミル語映画ですから、これは宣伝にも力が入ろうというもの。タミル語映画はラジニカーント主演作だけじゃない! というところを皆さんに知っていただきたいたいし、それよりも何よりも、感動的な心洗われる作品なので、たくさんの方に見ていただきたいと思っています。
以前にも書いたように『神さまがくれた娘』は、2月15日(土)からユーロスペースとシネマート六本木にて公開、そしてシネマート心斎橋が3月の公開となります。ということは、2月8日(土)から2週間限定でシネマート六本木で公開される『エージェント・ヴィノッド』との、2本立て鑑賞が可能ということ? シネマート六本木様、上映時間をうまく設定して、2本続けて見られるようにして下さいね~。
余談ながら、シネマート六本木では現在も『きっと、うまくいく』が上映中。すごいですねー。シネマート六本木での『きっと、うまくいく』上映は、封切り日より少し遅れて始まったと思いますが、それでももう半年間ぐらいのロングランになるのでは? 『神さまがくれた娘』も、ぜひあとに続いてほしいです。
今回は、『神さまがくれた娘』の基本データをご紹介しておきます。
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『神さまがくれた娘』 公式サイト 予告編
2011年/インド/タミル語/149分/原題:Deiva Thirumagal/英題題名:GOD’S OWN CHILD
監督・脚本:A.L.ヴィジャイ
出演:ヴィクラム、ベイビー・サーラー、アヌシュカー、アマラー・ポール、ナーセル、サンダーナム
提供:マクザム、太秦/配給:太秦
最初に登場するのは、南インドの大都市チェンナイ。1人の男が、「ニラー、ニラー」と警察署にやって来ます。この男クリシュナ(ヴィクラム)はどうやら知的障害があるようで、「アヴァランチの」「チョコレート工場」といった単語を繰り返すばかり。面倒に思った警官は、「弁護士でも連れてこい。弁護士は裁判所に行けばいるから」と体よく追い払います。裁判所でクリシュナが出会ったのは、若手女性弁護士のアヌ(アヌシュカー)と、その助手のヴィノード(サンダーナム)たちでした。
やがて、病に倒れたクリシュナのもとにチョコレート工場の社長ビクターがやってきて、アヌたちにも事情を説明します。クリシュナはバーヌという女性と結婚し、障害者を雇うビクターのチョコレート工場で働いて幸せに暮らしていたのですが、娘ニラーを出産した時にバーヌは死亡、以後みんなに助けられながらクリシュナはニラーを育ててきたのでした。ところが、ニラー(ベイビー・サーラー)が6歳になって小学校に通うようになった時、バーヌの妹シュヴェータ(アマラー・ポール)がニラーの存在を知り、父(サチン・ケーデーカル)と共に強引にニラーを引き取ってしまいます。その時乗っていた車から追い出されたクリシュナは、必死でニラーを探している、というわけなのでした。
こうして、ニラーを取り戻すための裁判が始まります。相手側は、大物の辣腕弁護士バーシャム(ナーセル)を雇いました。アヌたちは、クリシュナのためにニラーを取り戻すことができるのでしょうか....。
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本作の見どころはたくさんありますが、まず第一に挙げたいのが、主人公クリシュナを演じたヴィクラムの演技力のすごさ。ヴィクラムの主演作で日本で上映されたのは、2010年の東京国際映画祭で上映されたマニラトナム監督作『ラーヴァン』ぐらいしかありませんが、あのカッコいい警部とは正反対のクリシュナに見事になり切っています。表情、しゃべり方、動作等々、どれを取っても、純な魂を持つ障害者クリシュナそのものです。たとえば、こちらの歌のシーンをどうぞ。子供の誕生を待つクリシュナの様子をつぶさに見せてくれます。
ただ、それではヴィクラムのイメージとあまりにも違いすぎる、という配慮からか、普段の素敵なヴィクラムをちらと見せてくれる歌のシーンもあります。ニラーにせがまれ、クリシュナがお話を聞かせてやる、という設定で、お話の中に出てくる王様をヴィクラムが演じているのです。虎(?)と戦ったり、スーパーマンになったりと、クリシュナと同じ人がやっているとはとても思えなくて、目をこすることになりそうです。本作の演技によりヴィクラムは、南インドの映画賞であるヴィジャイ・アワード、ジャヤ・アワード、ヴィカタン・アワード等で、主演男優賞を受賞しています。
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そして、もう一つの見どころは、ニラーを演じるベイビー・サーラーの犯罪的なかわいらしさ。まさに、「神さまがくれた娘」にピッタリの外見とキャラクターを持つ、実にチャーミングな子役です。なお、名前に「ベイビー」がついているのは、女の子の子役だから。男の子には、よく「マスター」が付きます。アーミル・カーンも叔父のナーシル・フセイン監督作『思い出の花婿行列(Yaadon Ki Baaraat)』 (1973)に子役で出演した時は、「Master Aamir」とクレジットされていました。
ともすればインドの子役は、変にこまっしゃくれた演技やしゃべり方をして、見ている方を興ざめさせることが多いのですが、このベイビー・サーラーちゃんはごく自然な演技で観客の目を釘付けにします。中でも終盤のクライマックス・シーンでは、ほとんどの観客が彼女の演技に泣かされてしまうことでしょう。その魅力の一端がわかる、ベイビー・サーラーとヴィクラムのインタビューはこちらです。主として英語でのインタビューなので、ぜひご覧になってみて下さい(あまりのかわいさにカメラマンがメロメロになったのか、ピンが甘くなってます...)。公式サイトのCast&Staffにも二人の詳しい紹介がありますので、そちらもどうぞ。
本作は、ショーン・ペン主演作『アイ・アム・サム』 (2001)に比されることが多いのですが、いくつか共通点はあるものの、テイストがかなり違う、インドらしい独自のお話となっています。心洗われる本作と出会える2014年を、楽しみにしてお待ち下さいね。
ヴィクラム様もサラちゃんも物語にぴったり合った役割で、まさにハマるべくしてハマった感じがあります。
現在も高い人気を誇る「きっと、うまくいく」並みに愛されてくれるといいですねー。
大阪アジアン映画祭でご覧になったのですね。あの時ヴィクラムとお会いになれた方は、超ラッキーだったのでは、と思います。
実は、1月25日から公開される韓国映画『7番房の奇跡』の父娘人物設定がこの作品とちょっと似ているのですが、私は韓国の2013年動員数トップだった『7番房~』よりも、『神さまがくれた娘』の方がよくできていると思います。
ぐりぽんさんが書いて下さったように、たくさんの方に愛していただきたいです~。
cinetamaさんが書かれている通りヴィクラムの演技は映画に真実味を与えてると感じました。子役のベイビー・サーラーはかしこくてとてもかわいいですね。アメリカ映画の「世界で一番パパが好き!」(Jersey Girl)のラクエル・カストロを思い出しました。
チェンナイが舞台でしたが、マドラス高等裁判所やベンガル湾も昨年旅行で訪れた時のことを思い出しました。
雪の影響が残る初日でしたのに、行って下さってありがとうございます。
裁判シーンは、変な老弁護士2人のツッコミも入れたりしながら、上手に作ってありますね。最初に見た時は、「こんなコンビを出す必要がどこに??」と思ったものですが、あの「パパパパパ....」という声が耳から離れません。
チェンナイご旅行時は、高等裁判所にもいらしたのですか。私も今度、行ってみようかしら....。