長い間、父親のことが大嫌いだった。
理由は自分でもよく分からない。
小さい頃から遊んでもらった覚えはほとんどなく、会話もほとんどなく、
仕事が忙しくて家にいる時間の短い人だった。
だからと言って、遊んで欲しかったわけでもないし、家にいて欲しかったわけでもない。
だから、そのことが父を嫌いだった理由ではないのだろう。
多分私は、両親の不仲の原因を一方的に父になすりつけていたのだと思う。
彼らは本当によくけんかをし、険悪なムードを作り出すことにかけては達人だった。
2人が結婚したこと、子供を産んだこと、仲が悪いこと、それでも離婚せずにやってきたこと。
それらのことに対して、2人に同じだけ原因や責任があるのだということが、思春期の私には分からなかった。
その父も、今年の6月でめでたく(?)退職し、第2の人生を歩き始めた。
毎日庭の土をいじり、野菜を育てているらしい。
一昨日、用事があって実家に行った時、自慢の野菜を庭からかごいっぱいに採って来てくれた。
不器用な彼は、それを私が持って帰るように採ってきたとは言わない。
照れくさくて言えないのだ。
そんな父を、今は少しだけ愛しく思える。