「東京モーターショーに行きたいのだけど、つきあってくれませんか？」
と、ひかるくんからメールでお誘いを受けた。
昨今、若者のクルマ離れはますます加速しているかのように見えるし、
クルマについての話を若者から聞くことは本当に稀なことだなぁという実感はある。
だけど、そういう時代の流れとは関係なく「クルマ好き」は一定数、存在し続けている。
差詰め、ひかるくんはその「クルマ好き」の内の１人であることに間違いがない。
まだ免許は持っていないけど。
「もぉ〜、すぐにでも免許とりたいっ！」
「はやく運転したいっ！」
「いきなりでいいから運転したいっ！」
って言うくらいに
前のめりで、本人としてはジリジリと、じれったいらしいのだが、
ニコニコ話を聞いているこちらとしては「もう免許を取得できる年令になったのか？！」と、
新鮮な驚きを覚える。
成長著しい高校３年生で、ほどなくして卒業、進学も控えている。
頭では分かっているのだけど、目の前のひかるくんのある種の無邪気さは
昔からちっとも変わっていないものだから、少年がクルマを乗り回している姿って言うのが、
失礼ながら、僕の中ではいまひとつピンとこない。
ピンとこないのだが、少年がずっと抱えていたなにかがもうすぐパンッと弾けそうな、
そのほんの少し前の姿を今、僕は見ているっていうリアルさはあって、
少年と青年の境目の季節に。。。というか、ギリギリ、少年期の最後の季節に、
一緒にでかけているんだなと。そういうかけがえのない時間にいるってことをひしひしと感じる。
受験なしでの進学がすでに決定しているため、免許取得は時間の問題。
「友だちを誘っても、クルマの話はなんか全然伝わんないんですよ〜。」
と、さも嘆かわしいといった様子を見せるひかるくん。
おやおや？僕の記憶では君の友だちの数人は、間違いなくクルマ好きだと思っていたのだが？
「あいつらは、そうです。間違いなく。
中学のときの悪友４人で面白いことばっかりやってたんですけど。
だいたいクルマの話だって、この４人で盛り上がってました。」
ああ、そうか！ひかるくんだけ、別の高校に進んだから。
「なんか、今の高校には、クルマの話が通じる友だちがなかなかいないんですよね〜。」
なるほど。
その悪友たち３人はこれから先のことがまだ決定していないので、
モーターショーなどを気楽に眺めにいく余裕はない。
それで、僕をご指名と相成ったわけだ。
だが、僕の指向はだいぶ偏っている（ま、ひかるくんもそうだろうけど）。
っていうか、クルマ関係のプロでもない限り、だいたいみんながそうだと思うのだけど、
好きなもの（だけ）が好き！というスタンスでいるわけなので、
総覧的にクルマの未来を見通すようなことって、
僕個人としては特別に興味があるわけじゃないんだよね。
そりゃぁ、未来のクルマっていうのにはささやかながらでも関心がある。
技術革新目覚ましく、世界には新時代がすでに到来しているかの様に見せてしまう
新しい技術も、ここにきて、現実化しつつある。
それはそれですごいことだと思う。思う一方、僕なんかが子どもの頃に
漠然と想像していた未来とは似ても似つかない。。。
僕にとっての未来とは「現在が選択しなかった別の未来だ」とか言えば、
子どもの頃の自分を慰めるのに足りるのだろうか？
でも、この日はひかるくんが調べて、考えていることがあるらしいので、
そういうことは言わない。
おくびにも出さない。
ひかるくんの興味にひたすらつき合うことを第一に、一緒に出かけたつもり。
ところで、ひかるくん。
ひかるくんの指定通りの時間ぴったりに集合して、
予定通りの電車で、予定通りの時間に目的地に到着したはずなんだけど、
開場まであと１時間もあるよ？！
「う〜ん。僕、せっかちだからなぁ〜。」とかなんとか。
「だいぶ早すぎました。どうしましょ？」だって。
とってもよいお天気で。風も気持ちよい。
せっかく早目に到着したのだし、他にもいろいろありそうだし、
お散歩がてら、ちょっと歩きますか！
「だったら！BMWのでっかいところがありますよ！
そこも僕、行きたいって思ってたんですよ！
一応、モーターショーを見終わってからの予定だったんですけど。。。
そっちを先にしちゃいましょうか？」
ほっほー！
それ、すごくよいアイデアですな！
って、実はちょっと驚いた。
それは僕が言いたくて、でも今日はひかるくんの興味関心だけにフォーカスして
一緒に歩くと！と決めていたから、ずっとガマンして言わないでいたこと、なんだよね。
The 8 Gran Coupe @BMW Tokyo Bay
