ナイトハイクのコースは、二つ。
そのどちらも、みずならの木に到達します。
わかりやすいのは「左の道」
すこしわかりにくく、起伏があるのが「右の道」
リーダーといえども、暗闇の中を歩くわけですから、道を「覚えている」というわけではありません。
それでも、4人のリーダーに確認します。
「右の道に行ったことがあるか?」
KZN、MRA、YKKが手をあげます。
結局MRAと、YKKのチームが右の道を行くことになりました。
この右の道は何度か曲がる道があるために、二人に注意深く伝えます。
「いいか、くねくねした道を歩いていくと、小さな川を渡る。その川を渡ると突き当りになるから、そこは『右』。50メートルも行くと、いくつかの看板があるから、その角を左。
『みずならの木』って書いてあるはずだから。そうしたら、川の音が聞こえてくる。
もうわかるだろ?橋を渡って坂を上れば・・・・・」
3回繰り返して伝えました。
その時の二人の真剣な面持ちは、半端ではなかった。
特にMRAは少し震えているようにも見える。。
まだ中学生の二人。
おまけに初めてのリーダーで、先頭を歩くわけですから、それは緊張するに決まっている。
左の道はほとんど一本道。川にぶつかって橋を渡れば後は簡単です。
まず、左の道をKZN、右の道をMRAのチームが出発です。
スタート前に、サポーターが、「クマ追い」をします。
大きな音を立て、歌を歌い、ワイワイやりながら歩くわけです。
クマは元来臆病者、と言われています。
出会いがしらじゃない限り、襲われることもない。
それでも、サポーターも必死です。
とにかく暗いですから。
10分後、MIU、YKKのチームが出発です。
ボクは、右の道のYKKについて歩きます。
と言っても、子どもたちから10メールほど後ろから。
それも、懐中電灯はなし。
子どもたちが持つ一本の懐中電灯の明かりを頼りに歩きます。
あくまでも、子どもたちが、自分たちの力でやり遂げるために、気配を消して歩きます。
だから、なおさら怖い。
コースの途中で、懐中電灯を消したまま森の音に耳を傾ける、という実習をします。
周辺からは、不気味な音が聞こえてきます。
以前、佇んでいるボクのすぐそばで、
「ミシッ、ミシッ、メリメリ、ガサガサ」と、あきらかに動物が歩く音が聞こえたことがあります。
それも左右から。
何度も、声を上げようかと思いながら、思い直して必死に耐えたのを覚えています。
ときには、生臭い動物のにおいがすることもあります。
この森のことを、まだよくわからなかった頃、
「あれっ?ホームレスがいるのかな?」と、何度も思ったことがあるくらい。
あれは間違いなくケモノの匂いです。
大きなクマの糞に出くわすこともあります。
一つ目の川を渡り、予定通り右に曲がります。
すぐに、案内板。
すると、なかなかそこから懐中電灯の明かりが動きません。
どうやら、どの道を行っていいのかYKKが迷っているようです。
約20分。
動いては戻り、戻っては動き。
ついに、懐中電灯の明かりがボクたちのほうへ移動してきます。
何かあれば、後ろにいるスタッフのところに助けを求めてもいいことにしています。
YKKはぎりぎりまで、何とかようとしていたようです。
近くに来た時にYKKは泣いています。
「わからなくなりました」
「そうか、YKKが選んだ道で合っているよ。自信もって進みなさい」
安心したように歩き始めたグループの後ろから、案内板のところへ移動してみると。
なんと、案内板の向きがでたらめになり、おまけに肝心の看板は地面に落下している。
迷うのは当たり前。
でも、YKKなりに必死に何とかしようとしていたのです。
その後は、順調に進みます。
と、言いたいところですが、橋を渡った後の道で、MIUとMRAのチームが、間違った道を歩いてしまったようです。
以前にも、いくつものチームがこの曲り道を間違える。
それでも、付き添いのイントラは、助けを求められない限り何も教えません。
何とか、彼らは自分の力で正しい道を見つけたようです。
全員無事、みずならの木に到着。
子どもたちはこの木を昼間見たことはありません。
ここでは、毎年、ミズナラの木に聴診器を当てて、水を吸い上げる音を聞きます。
ところが、先日までの大雨で、水分が十分だったようで、今回は全く聞こえません。
聞こえる時には、まるでせせらぎの音の湯に、水の流れの音を聞くことができます。
いつまでも聞いていたいほどに、心安らぐ音です。
もう時間は10時を回っています。
グループごとに、ナイトハイクの体験を分かち合い、ここからは歩いて戻るグループと、バスに乗って帰るグループに分かれます。
「明日の起床時間は7:00。きょうは帰ったらすぐに寝ること」
二手に分かれて帰ります。
長い長い3日目でした。
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