Danchoのお気楽Diary

高校3年間応援団だった「応援団バカ」の日記。スポーツ観戦や将棋等の趣味の他、日常感じる事を、「ゆるゆる」綴ります。

『勝者の思考法』/二宮清純氏の講演(後編)

2007-02-09 20:53:36 | その他スポーツ
昨日紹介させていただいた、二宮清純氏の講演会の内容の後編です。

ものすごく簡単にまとめると、以下の4つのテーマにに大別されていることを、昨日もお話させていただきました。

①スポーツと政治・経済と関わり
②スポーツとマネージメント
③スポーツと地域活性化
④スポーツを通じて思う『リーダー』の資質

今日は、③と④について紹介しようと思います。


先ず、③の、「スポーツと地域活性化」についてですが、これは、後程紹介させていただく④の「『リーダー』の資質」とも一部リンクしますが、日本サッカー協会の現会長である川淵三郎氏が推進している、『Jリーグ百年構想』の実現に至る曲折を例示して、説き明かしていただきました。

『Jリーグ百年構想』の概略は、地域に芝に覆われた広場を築き、サッカーを核として他のスポーツクラブの多角運営しによって、様々な人達がスポーツを通じて触れ合える環境を整えること…です。

これが実現できれば、地域に、芝の施設を管理するグラウンドキーパー等の雇用が当然のごとく発生する…。
多角経営が成功すれば、触れ合いの場としての認知度が高まることにより集客が望め、その結果として、その地域にお金が落ちることになり、現在の“夕張市”のようなことはなくなる…。
そればかりか、スポーツが栄えると、なぜか犯罪が減る傾向にあることは前々から言われており、地域の犯罪抑制にかかる経費がカットできる…。

氏によると、こういったメリットから、川淵氏は強行にこの構想を推し進めたようです。
しかし、「前例」がない夢物語的なこの構想に対して、当然ながら抵抗勢力が現れ、「日本にはプロ野球があるから、時期尚早」とまで言われるほど、風当たりは相当強かったようです。

ですが、川淵氏は屈しません。氏によると、抵抗勢力に対し、こう答えたそうです。

「“時期尚早”と言う奴は、100年経っても“時期尚早”と言うものだ。」
「“前例なし”と言う奴は、100年経っても“前例なし”と言うものだ。」

そして、『Jリーグ百年構想』が形となって現れ始めます。

例えば、アルビレックス新潟のJ1昇格。

なんと05年のシーズンでは、集客数がJ1のチームで首位だったそうです。熱狂的ファンが多い、浦和レッズを制しての集客数首位…驚きです。
北陸きっての観光地・金沢と、今は対等に勝負ができるほどの集客力だそうです。

そして、昨シーズンにJ1に昇格したヴァンフォーレ甲府。

柏レイソルを破ってのJ1昇格…この時の甲府は大変な賑わいだったようです。
なぜか?

実は、甲府には大企業の工場がなく、財政を支えているのは中小企業ばかりだそうで、柏レイソルのスポンサーは、“天下の”日立。
その「日立を破った」という誇りが、中小企業の活性化に即繋がったそうです。
しかもこの両チーム…戦国時代に遡れば、武田信玄上杉謙信の図式。
ご当地では“現代の川中島の合戦”として、名高いとか…。

さらに、Jリーグ発足当時からの存続チームである鹿島アントラーズについて。

鹿島は暴走族が多く、犯罪絶えない街だったそうですが、アントラーズの招致により、暴走族達が皆アントラーズのサポーターに変身…。
犯罪抑制にかけるコストが削減できたことは言うまでもないそうです。

ところで川淵氏は、“独裁者”とのレッテルを貼られているようです。
ですが、自ら提唱し、強行に推し進めた構想が、具現化してきているのも事実。

ドラスティックに事を進めるには、ある意味“独裁的”の方が良く…

「“時期尚早”と言う奴は、100年経っても“時期尚早”と言うものだ。」
これ即ち「私達は、やる気はありません」という本音の部分であり、
「“前例なし”と言う奴は、100年経っても“前例なし”と言うものだ。」
これ即ち「私達には、アイデアがありません」という本音の部分だ…

と、氏は語っておられました。

この事例から、やってみることの大切さを学んだ気が、小生にはしました。
そして、川淵氏に、リーダーゆえの孤独さを見たような気がします。


そして、④の「スポーツを通じて思う『リーダー』の資質」ですが、上述のように、川淵氏も、その資質が充分と言えます。

結論から言うと、リーダーに必要とされるのは…

・Passion(情熱)
・Mission(使命感)
・Action(行動力)

と、氏は説いていらっしゃいました。

川淵氏の『Jリーグ百年構想』に賭ける思いは、この3つを全て満たしていると思いますが…読者の皆さん、如何でしょうか?

また、“人づくり”に長けるリーダーとして、仰木 彬氏を例示されました。

皆さんもご存知の通り、仰木監督の元から、野茂投手やイチロー選手が巣立っていきました。
この2人に共通するのは“信念”の強さと、“柔軟性”を持ち合わせていることです。人間で例えるなら、“信念”は“背骨”で、“柔軟性”は“筋肉”に相当するほど重要で、仰木監督はこの2人の中にそれを見抜きました。
また仰木監督は生前、「人の成功は、“登山”と一緒で、長い目でそれを見守り、認める事が大切」と語ったそうです。
この考え方がなければ、野茂投手のトルネード投法もコーチに直されたでしょうし、イチロー選手の振り子打法も然りです。
だからこそ、この2人が大成したんですね~。

さらに、人の心をつかむことに長けるリーダーとして、小出義雄氏を例示されました。

小出監督は、どんなに取り得がない選手でも褒めるそうです。
氏がある日、小出監督を取材した時の会話を紹介しましょう。

二宮氏「監督、取り得がないのに、どうやって褒めるんですか?」
小出監督「そのときは、手を褒めるんだ。そうすると、褒められた選手は集中して手を洗う。その集中力が大切なんだ。」
二宮氏「じゃあ、手が美しくない選手だったら、どうするんですか?」
小出監督「そのときは、耳を褒めるんだ。“私の細かいところまで見てくれているんだ”と思わせれば、その選手だって、頑張るだろ?」
二宮氏「じゃあ、長髪で耳が見えない選手だったら、どうするんですか?」
小出監督「そのときは、その選手の親を褒めるんだ。自分の親を褒められて悪い気がする奴なんていないだろ?」

こうして選手の親を褒めることによって、小出監督は、選手の親達からの信頼を得ることができ、親の方から勝手に話してくれる選手の長所を逃さず聞き入れ、自分の指導法に活かしてしまうそうです。
長所を伸ばす指導法だからこそ、小出監督の指導を受けるまで無名だった、有森裕子選手や高橋尚子選手のような、オリンピックでメダルを獲得できる選手が育つんですね…。

そして、リーダーとして必ず必要とされるのがコミュニケーション力。
仰木監督も、小出監督も、選手への声かけは怠らなかった様です。

声かけは、相手の心に聴診器を当てるような効果があり、反応が今ひとつ良くなければ、それを指標に“治療”する事が大切の様です。
辺りを見回すと…いますねぇ~会社にも。挨拶しても返さない偉ぶるリーダーが。

そして、リーダーからのメッセージは、部下に正しく伝わっているかを、リーダー自ら確認することは必須と、最後に氏は語って講演が終わりました。
昨日紹介した、昨年のワールドカップでのジーコ監督の采配が、良い例ですね。


90分でこれだけ中身の濃い講演を拝聴でき、大変有意義でした。

全体を振り返ると、サラリーマンであれば、部署を預かるリーダー達に聴講していただきたいと感じたのは、きっと小生だけではなかったはずです。
(どういうわけか、会場は、既に会社勤めを引退されたような年輩の方々が多かったように思いますが…。)

『勝者の思考法』…これからリーダーになるかも知れぬ小生にとって、この講演は大変勉強にもなり、自戒にもなりました。

ユーザーの視点を決して忘れず、リーダーとしての資質が身に着くよう、自分を磨いていきたいと思う次第です。
Comments (7)
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