いつもご覧下さり誠に有難うございます。
最近は「こんなもの見つけましたよー」という、
独創性のない紹介ネタばかりで恐縮ですが、
そろそろ3月決算企業の中間決算が発表されますので、
また決算短信へのツッコミも再開したいと思います。お楽しみに。
で、本日のネタは日経にも紹介されておりましたが、
昨日、内閣府M&A研究会から発表された
「本格的な展開期を迎えたわが国のM&A活動」という報告書を取り上げます。
詳細は下記HPからご確認頂ければと思います。
http://www.esri.go.jp/jp/mer/houkoku/0610houkoku.html
本報告書では、日本企業のM&A活動の現状分析や評価、
課題とその対応についてコンパクトに纏めておりまして、
全体像をサクッと理解したい方には好適かと思います。
で、私はこの中で指摘された、
法律・税制・会計上の課題について簡単にまとめてみました。
「課題≒M&Aを行う上での障害」と読み替えますと、
今後の制度改正の際に注目される可能性が高い論点であると
思ったからです。
以下、本委員会の公式見解ではないですが、
当報告書p39以下にある「議事概要資料」にあった、
私が有益だと思った論点を中心に整理してみました。
ですので、独断と偏見で整理したものなので、
皆様におかれましては参考程度でご覧下さい。
(→要は、自分のために整理してます。あしからず。)
――――――――――――――――――――――――――――――――
■新会社法
①交換買い付けにおける「有利発行」規制
交換対象会社の株式の市場価格にプレミアムを乗せた価格で
評価することは、買収者側の株主にとって不利益ではないか?
現金買収でも同様の問題があると。
②ゴーイングプライベートを実施する場合の少数株主の締め出しの規制
会社法改正前では、例えば、株式移転を行い、さらに営業譲渡と
清算を組み合わせることでフリーズアウト(締め出し)が実現できる
考えられていた。
しかし、これが果たして適法なのかどうかに関しては疑義あり。
正面から「締め出し」ができる立法が必要との議論あり。
③外国会社との国際的な合併
国際合併・国際会社分割(外国会社が当事者となる合併・会社分割)は、
新会社法の下では、立法担当者の解説によれば「一切認めない」との
ことであるが、なお理論的な議論は残っていると。
④実質的な債務超過会社との合併の可否
新会社法の下でも解釈論として残っている問題。
■税制
① 課税繰延べのあり方
現金合併等の場合、外国株式を利用した三角合併の場合、
交換買付けの場合等で課税は繰延べられるのかという問題。
(→極めて重要な問題ですね)
②タックスフリー・スピンオフ
日本の会社分割法では100%株主割当の分割方分割を可能にした。
しかし、組織再編税制が無税要件として、グループ内再編と共同事業権
の2つしか定めておらず、100%株主に割り当てることはこのどちらにも
当らないため「有税取引」になってしまい、スピンオフはできるが、
タックスフリーにはできない。
日本では子会社に価値を付ける場合に子会社を新規株式公開(IPO)
することが一般的。
しかし、子会社を上場して価値を付け、親会社が子会社の価値を
全部実現しようと思い株を売るとキャピタルゲイン・タックスがかかり、
子会社IPOは、エクイティ・バリューを税金分毀損し、株主価値の破壊となる。
タックスフリー・スピンオフは株主価値創造に資するので行われることが
一般的であり、円滑行えるよう、組織再編税制に「第3の無税要件」を
加える必要がある。
③ 法令適用事前確認制度
当局は04年3月、「特定の納税う者の個別事情に係る取引等」
についても文書解答手続きの対象とすることなった。
今後このサービスが十分機能することが期待されると。
④その他
・ポイズン・ピルの税法上の課題
→国税庁から出されたガイドラインを踏まえて検討されるべき。
・ 従業員持株制度への税制上の措置
→会社からの資金援助する際、何らかの優遇措置があれば
もっと利用されるとの実務界からの意見あり。
■ 会計
国際会計基準と米国基準の統合化の動きがある中、
日本の場合、特に企業買収の場合の
「持分プーリング法適用」と「のれんの償却」の2つが課題(※)。
もし米・欧のような考え方になった場合、
無形資産、無形財産をのれん以外に、かなり細かいパーツに振り分け
ていくことになり、非常に手間がかかることが想定される。
(※)下記pdfファイルの7・8ページ目を参照下さい。
http://www.esri.go.jp/jp/mer/houkoku/0610_3_3.pdf
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(簡単な補足)
①「タックスフリー・スピンオフ」の部分は、その内容の濃さ・切れ味から、
当研究会メンバーでもあり、私も注目している
服部暢達一橋大大学院助教授によるものだと思います。
(だからどうした?とのツッコミが予想されますが)。
なお、服部助教授に関連して、あずさ監査法人主催のM&Aセミナーの
講義録がHPにありましたので、併せてご紹介します。
テーマは「敵対的買収と日本型防衛策」と、直球ド真ん中です。
http://www.kpmg.or.jp/resources/newsletter/financial/cf/200606_2/01.html
②会計に関する論点、特にプーリング法に関しては、
例の日本の会計基準コンバージェンス(収斂)において検討課題
となっております。
M&A実務の世界においても、会計基準のコンバージェンスの動向は、
目が離せない、ということがお分かりいただけたかと思います。
ではまた。
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