◆「財務アナリストの雑感」 2024◆

会計士兼アナリストによる屈指の歴史だけがウリの会計・財務・株式・金融ブログ。異常な経済金融環境を一刀両断!できるかな?

事業交換に見せかけた損失先送りスキーム

2005-11-01 | この決算書・会計処理はおかしい
いやぁー、今日は「東証のシステムダウン」、
「ジャンボ尾崎が民事再生法申請」と
色んなニュースが飛び込んできました。


かくいう私は、時節柄と職務柄、上場企業の中間決算説明会に行く機会が
増えておりまして、図らずもブログのネタにぶち当たることがあります。
今日はまさにそうでした。


ある大手企業が
2つの異なる事業を交換することになったのですが、
これも興味深い”仕掛け”がしてあるのではないか、というものです。


まず、前提条件
-----------------------------------------------------------------
・A事業:海外化学プラント事業
   (巨額投資ながら採算性低く、これまで多額の損失処理を実施)
・B事業:海外パルプ事業(少しはまともな事業)

・大手企業保有のA事業と外部のB事業とを交換。
 これに伴ってA事業から追加損失は生じないと以前、会社側は説明
・取得するB事業で年間20億円の最終利益計上予定
--------------------------------------------------------------

次に、会計処理。(資産は双方とも帳簿価格とします)

(借方)              (貸方) 
B事業に係る資産 1,100億円 / A事業に係る資産 1,000億円
のれん          600億円 /  現金         700億円


この仕訳を見て、私が直感的に立てた仮説は、
「譲渡するA事業には1,000億円も価値が無いのではないか。」
ということです。

もっといえば、実質的な会計処理は、実は次のようなものかも知れません。

(借方)        (貸方) 
B事業に係る資産 1,100億円 / A事業資産の実質的価値 400億円
                    /  現金          700億円

しかし、
A事業資産の実質的な価値が400億円だとしても、
一度、帳簿価格1,000億円から400億円に引き下げないといけない。
しかし、それをやると▲600億円の損失が実現してしまう。
これではマズイ!

そこで、B事業が少しは利益が出ることをいいことに、
「のれん」を計上して辻褄を合わせた、っていう可能性はありますね。

でも、会計にお詳しい方でしたら、
のれんは20年以内に償却だからそのうち償却費用の形で実現するじゃないか、
と思われるでしょう。

しかし、本来ならA事業を譲渡した時に全額損失処理すべき巨額損失を、
20年かけて先送り処理できるんですから、企業側にとってはメンツも立つので
それでいいんでしょう。

しかも、この大手企業は「米国会計基準」を採用しております。
ということは、のれんは減損会計の枠組みで処理、言い換えると
しばらくは償却する可能性は非常に低い、ということになります。
その代わり、B事業が思い通りに収益を上げられなくなった時には、
一気にこの600億円ののれんを償却する、っていうことも十分
考えられるのです。


このように、「のれん」勘定は経営者によって恣意的に使われるおそれ
が大きい反面、その計上金額の妥当性など外部からチェックしずらいのです。


本件は、事業交換に見せかけて、不振事業の損失を「のれん」に加工して
先送りしたのではないか、というのが私の推論です。
(あくまで推理ですので、ご注意下さい)

図星であれば、業績のいいうちに早めに償却しちゃって下さいね。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 3日連続でのgooランキング入... | トップ | 古田スワローズとカカクコム... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

この決算書・会計処理はおかしい」カテゴリの最新記事