「リヴァイアサンの下の平和:『暴力の人類史』より(1)」(2020/02/12)およびその続編(2)(2020/02/15)で紹介した殺人に満ちた残酷な中世ヨーロッパは異世界物の舞台のモデルとして人気があります。日本の武士の時代同様に騎士の時代というのはバトルを起こさせやすいですし、ベルサイユの薔薇に代表されるような華やかさもあるからでしょう。まあフランス革命前夜は中世時代ではありませんし、武器も既に火器が中心の時代ですし、『暴力の人類史』に言う「人道主義革命」が既に進行していた時代なのですが、へたすると何となく5~13世紀の中世800年間がみーんなベルサイユ宮殿みたいな雰囲気だったなどと思い込みかねませんね。
2019/05/12の記事でも紹介した『ウォルテニア戦記』の舞台も中世ヨーロッパがモデルですが、こちらは、かなり集権化が進んだ国家が大陸に割拠している状態です。国によっては封建領主の力がまだまだ強くて国王も苦労しているといったところ。当然下克上も当たり前という、まさに日本や中国の戦国時代、ヨーロッパの中世何百年間と同様といったところです。そして著者は、「ここは弱肉強食の地獄だ」という点をたびたび文中で強調しています。
ひるがえって『本好きの下克上』の世界では残酷さはオブラートに包まれていますが、主人公の一人とも言えるフェルデナンド自らが、罪を犯した平民を魔術で消してしまったり、態度の悪い側使えをあっさりと高みに登らせたりしています。この世界では中央の王族というリヴァイアサンがいるので領主同士の戦争は抑制されているのですが、基本は領地内は自治なので相続争いがほとんど抑制されておらず、負けた方は一族郎党とも粛清されて絶滅が常識という世界です。そもそも食事を振舞う側は自分が毒見する習慣があるとか、学園の中でも護衛は必須とか、冷静に読んでみるととんでもなく物騒な世界です。著者がWeb版で書いていたように、やっぱり15禁かなあ(^_^)。
『暴力の人類史』第1章・異国などを読むと中世ヨーロッパがある意味地獄だというのは誇張でもなんでもなくて『ウォルテニア戦記』の描写も決して残酷さを強調して受けを狙うためのフィクションでもないということがわかります。『暴力の人類史』の該当箇所には、私も読み返す気になれないような描写が続きますからねえ。『ウォルテニア戦記』の描写は読み返しに抵抗がないんだけれども。
さて『ウォルテニア戦記』のノベル版はweb版に比べて内容が大きく追加されています。具体的にはweb版では全く描かれていない裏で進行している物語が追加されているのです。これは予想外でした。買わないわけにはいかないじゃありませんか。ただ、それゆえにノベル版から読み始めるとネタバレがあるということにもなりますねえ。何も知らずにweb版を読んで、ああだこうだと想像していてからノベル版というのが、なかなかに美味しいのではないでしょうか。あの組織の内実もノベル版では初めからネタバレ全開で想像の余地が少なくなってますねえ。
それとノベル版には地図が載っていて西方大陸の国々の配置がはっきりとわかります。これはありがたい。
しかし、世界はますます広くなっているという感じです。空間的にも時間的にもです。『ウォルテニア戦記』の舞台は今のところは西方大陸だけですが、他にも大陸があることはわかっています。全部でどれだけの大陸があるのかと言うと、ノベル版9巻1章「古き友との邂逅」に一番まとまった描写があります。
===========引用開始=====================
中央大陸では新月刀(シャムシール)
南方大陸ではエチオピアで使われていたショーテルのような形状の刀も存在した。
東方大陸では柳葉刀や日本刀に似た武器を使ってもいる。
だが、基本的に西方大陸で刀の類を見る機会はまずない。
===========引用終り=====================
ということで北方大陸以外の4つの大陸が知られているのです。もしかしたら、この世界の人々も知らない氷に閉ざされた北方大陸もあるのかも知れませんが。実際の地球とのアナロジーで考えると、中央大陸はユーラシア、東方大陸は東アジア、南方大陸はアフリカ、西方大陸はヨーロッパということになり、各大陸の文化はこれらの対応に合っている模様です。ただ違うのが、西方大陸は完全に海に囲まれていて、他の大陸とは船でしか行き来できないことです。
さて他の大陸でも法力は同様に存在するのですし、異世界人を召喚して戦奴隷にするという習慣も西方大陸だけとは考えにくいでしょう。しかるに、あの組織でさえも他の大陸には力が届かない模様です。つまり現時点で他の大陸の状況は未知であり、物語にどう影響するのかはほとんど予測不可能です。亮真の目的は西方大陸の覇者となるか、ほとんどを友好国にする、という状態で達せられると思いますが、そうなってもなお他の大陸の問題が残ります。特に組織にとってはそうでしょう。他の大陸の未だ縛られている同胞を見捨てられるかと言えば、そうはならないでしょう。とか、まるで組織と亮真が共存することは規定路線みたいに書きましたが、どうなることやら。
さてさて物語はどこまで続くのでしょうか。楽しみです。
なおマルフィスト姉妹は、「元は中央大陸西沿岸にあるクィーフト王国に使える上級騎士の家系[第1巻]」とのことですから、中央大陸の事情については姉妹が詳しいものと思われます。というか、社会や文化は西方大陸とたいして変わりがない様子です。西沿岸ということですから、西方大陸との交流やら共通点やらも多いのでしょう。
2019/05/12の記事でも紹介した『ウォルテニア戦記』の舞台も中世ヨーロッパがモデルですが、こちらは、かなり集権化が進んだ国家が大陸に割拠している状態です。国によっては封建領主の力がまだまだ強くて国王も苦労しているといったところ。当然下克上も当たり前という、まさに日本や中国の戦国時代、ヨーロッパの中世何百年間と同様といったところです。そして著者は、「ここは弱肉強食の地獄だ」という点をたびたび文中で強調しています。
ひるがえって『本好きの下克上』の世界では残酷さはオブラートに包まれていますが、主人公の一人とも言えるフェルデナンド自らが、罪を犯した平民を魔術で消してしまったり、態度の悪い側使えをあっさりと高みに登らせたりしています。この世界では中央の王族というリヴァイアサンがいるので領主同士の戦争は抑制されているのですが、基本は領地内は自治なので相続争いがほとんど抑制されておらず、負けた方は一族郎党とも粛清されて絶滅が常識という世界です。そもそも食事を振舞う側は自分が毒見する習慣があるとか、学園の中でも護衛は必須とか、冷静に読んでみるととんでもなく物騒な世界です。著者がWeb版で書いていたように、やっぱり15禁かなあ(^_^)。
『暴力の人類史』第1章・異国などを読むと中世ヨーロッパがある意味地獄だというのは誇張でもなんでもなくて『ウォルテニア戦記』の描写も決して残酷さを強調して受けを狙うためのフィクションでもないということがわかります。『暴力の人類史』の該当箇所には、私も読み返す気になれないような描写が続きますからねえ。『ウォルテニア戦記』の描写は読み返しに抵抗がないんだけれども。
さて『ウォルテニア戦記』のノベル版はweb版に比べて内容が大きく追加されています。具体的にはweb版では全く描かれていない裏で進行している物語が追加されているのです。これは予想外でした。買わないわけにはいかないじゃありませんか。ただ、それゆえにノベル版から読み始めるとネタバレがあるということにもなりますねえ。何も知らずにweb版を読んで、ああだこうだと想像していてからノベル版というのが、なかなかに美味しいのではないでしょうか。あの組織の内実もノベル版では初めからネタバレ全開で想像の余地が少なくなってますねえ。
それとノベル版には地図が載っていて西方大陸の国々の配置がはっきりとわかります。これはありがたい。
しかし、世界はますます広くなっているという感じです。空間的にも時間的にもです。『ウォルテニア戦記』の舞台は今のところは西方大陸だけですが、他にも大陸があることはわかっています。全部でどれだけの大陸があるのかと言うと、ノベル版9巻1章「古き友との邂逅」に一番まとまった描写があります。
===========引用開始=====================
中央大陸では新月刀(シャムシール)
南方大陸ではエチオピアで使われていたショーテルのような形状の刀も存在した。
東方大陸では柳葉刀や日本刀に似た武器を使ってもいる。
だが、基本的に西方大陸で刀の類を見る機会はまずない。
===========引用終り=====================
ということで北方大陸以外の4つの大陸が知られているのです。もしかしたら、この世界の人々も知らない氷に閉ざされた北方大陸もあるのかも知れませんが。実際の地球とのアナロジーで考えると、中央大陸はユーラシア、東方大陸は東アジア、南方大陸はアフリカ、西方大陸はヨーロッパということになり、各大陸の文化はこれらの対応に合っている模様です。ただ違うのが、西方大陸は完全に海に囲まれていて、他の大陸とは船でしか行き来できないことです。
さて他の大陸でも法力は同様に存在するのですし、異世界人を召喚して戦奴隷にするという習慣も西方大陸だけとは考えにくいでしょう。しかるに、あの組織でさえも他の大陸には力が届かない模様です。つまり現時点で他の大陸の状況は未知であり、物語にどう影響するのかはほとんど予測不可能です。亮真の目的は西方大陸の覇者となるか、ほとんどを友好国にする、という状態で達せられると思いますが、そうなってもなお他の大陸の問題が残ります。特に組織にとってはそうでしょう。他の大陸の未だ縛られている同胞を見捨てられるかと言えば、そうはならないでしょう。とか、まるで組織と亮真が共存することは規定路線みたいに書きましたが、どうなることやら。
さてさて物語はどこまで続くのでしょうか。楽しみです。
なおマルフィスト姉妹は、「元は中央大陸西沿岸にあるクィーフト王国に使える上級騎士の家系[第1巻]」とのことですから、中央大陸の事情については姉妹が詳しいものと思われます。というか、社会や文化は西方大陸とたいして変わりがない様子です。西沿岸ということですから、西方大陸との交流やら共通点やらも多いのでしょう。
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