知識は永遠の輝き

学問全般について語ります

科学史の歴史

2016-11-13 07:04:13 | 歴史
 科学を志したものとして科学史には一定の興味を持ってきましたが、その科学史という学問自体がどう成立してきたのかという概要をわかりやすくレビューした人がいましたので御紹介します。0番染色体科学史の歴史(2015/03/18)です。以下の内容で書かれていて、歴史学の素人目には一般向けレビューとして適切なものに思えて、永く参考資料に使えそうです[*1]。

18世紀以前の「科学の歴史」
科学史のおこり
  学説史
  総合科学史
一般科学史の勃興
内的科学史の確立
現代の科学史研究とその立場

 確かに歴史学自体もひとつの学問であり人の営みである以上は、その歴史というものがあるわけです。他の学問同様に歴史学にも、事実を正しく知るという営みと、それを理論的に解釈するという営みとがあります。これは安藤達朗『大学への日本史』研文書院(1990/03/10)で、「歴史の歴とは事実の記述、史とはそれをどう物語るかという、いわば解釈」という風に述べられています[*2]が、どちらの面でも時代が下がるにつれて進歩が、もしくは変化があったはずなのです。

 歴史学は次のような段階で進歩するという話は聞いた覚えがあったのですが、出典とともに示されていてはっきり認識できました。

   物語風歴史 -> 教訓的歴史 -> 発展的歴史

 物語風歴史が事実を並べた"歴"に当たり、残り2つが"史"に当たる、と言いたいところですが、物語風となるとすでにストーリーを組み立てるための理論が入り込んでいる・・・。でもそれを言ったら"歴"の記述も不可能ですね。"歴"の記述にも理論負荷性というものはあるというべきでしょう。

 さて最古の科学史は古代ギリシャの「プロクロスの摘要」、およびその出典とされる「アリストテレスの友人エウデモスが書いた書物(現代には伝わっていない)」による数学史とされています。で、「プラトン主義に反する者の功績については記述されていない」とのこと。なるほどこいつらが、論証数学の起源はピュタゴラスだというデマを飛ばしてキオスのヒポクラテスの業績を抹殺したのだな。と思って自分の記事(2010/01/29)を見直してみたら、ちゃんと2人の名も書いてあった(^_^)。論証数学の起源については世間ではまだまだ知られていそうにないので、折々に宣伝しておきましょう。詳しくは斎藤憲の著作を参照のこと[*3]。

 なおプロクロス(Proclus Lycaeus)の「ユークリッド原論論第一巻注釈」については古代ギリシア数学史を学ぶの中の"プロクロスの業績概要""ピュタゴラスおよびピュタゴラス派の数学的な業績(3) 幾何学"が詳しいです。前者を見るとプロクロス自身はキオスのヒポクラテスについて「弦月形の求積法を発見した」と述べているので、真犯人はエウデモスの方らしいですね(^_^)。



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*1) このブログは他の記事もしっかり書かれていて参考になる。例えば武村政春『巨大ウイルスと第4のドメイン』の書評(2015/05/27)は優れた紹介だと思う。
*2) 古い本だが、アメジローさんのブログ大学受験参考書を読む(12)安藤達朗「大学への日本史」(2015/11/08)に熱い紹介がある。
*3) 私の記事ではウェブ上の斎藤憲の著述(2013年?)が抜けていたのでここに載せておこう。

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