ロシアの周辺国への侵攻の動機が「果てしない恐怖への自然反応」ではないかという説は2023/05/20の記事でも紹介しましたが、NHKの「ロシア 衝突の源流」でも同様な説が取り上げられています。「自衛戦争だ」という主張は、欲望を隠す建前ではなく、実は本音に近いのかも知れません。
同じくNHKの衝突の根源に何が~記者が見たイスラエルとパレスチナ~では、イスラエル軍の過剰なまでの攻撃が、やはり恐怖に由来することが示されています。イスラエルの場合はナチスによるホロコーストの記憶も真新しく、それ以前からも国を持たないが故の不安定な生活を余儀なくされた歴史がありますから、やっと得られた国を失くしたくないという気持ちは非常に強いでしょう。とはいえ、ハマスの攻撃をホロコーストに例えるということは間接的にハマスをナチ呼ばわりしているとも言えるので、それはちと行き過ぎにも見えます。
まあウクライナ政府をナチ呼ばわりしているプーチンのずうずうしさに比べればかわいいものです。20世紀の世界史の常識的すぎる事実だからなのか、あまり指摘している言論がないようなのですが、第二次世界大戦(1939/09/01~1945/08/15)の始まりはスターリンとヒトラーによるポーランド侵攻(1939/09/01)です。つまり旧ソビエト連邦(ロシア)は枢軸国の一員として参戦していたのです。ところがヒトラーが突如としてソ連との同盟を破棄して侵攻し、ソ連は祖国防衛戦争を余儀なくされたのです。で、結果的に勝馬に乗ったおかげで戦後は安全保障理事会の常任理事国という地位まで手に入れた。
そしてソ連もロシアも今に至るまで、迷惑をかけた国々(参照第二次世界大戦の経過)への謝罪など一切していません。恐らく多くのロシア人は、自分達の国が第二次世界大戦で最初は悪の枢軸側だったなんて思ってもいないでしょう。国の教育自体が歴史を歪曲してるでしょうから。日本でも「日本とアメリカが戦った」ことも知らない人もいるみたいですが、国自体がそれを隠してるわけではありません。もともと同じ犯罪仲間だったナチスを悪のレッテルに使う資格なんて、ロシアにあるんでょうか? まあ仲間だと思ってたら裏切られたわけですから、他の国々よりもナチスへの恨みが深くても不思議ではありませんが。
さて、パレスチナ側が、特にハマス[Ref-2b]が「イスラエルを打倒して全パレスチナを開放する」つまりは「イスラエルという国家を消滅させる」という組織目標を掲げていることは、イスラエル側から見れば「ホロコーストを企んでいる」としか見えないかも知れません。まあ実際に現イスラエル国家を消滅させたら、かの地にどんな政府機構を作ろうとしているのかはわからないのですが、外国から来た入植者の方々は御帰りいただく、くらいは考えているかも知れません。それはそれで人権を無視したことになりそうです。
外野から見れば「いくらなんでも今更それは無理筋では?」としか思えません。長くパレスチナの地の解放闘争を指導してきたPLO[Ref-2c]もそのような方針だったのですが、いつしか軟化して「イスラエルとの共存」を打ち出し、オスロ合意(1993/08/20)で解決の糸口ができたかに見えました。が、ハマスをはじめ合意反対派による武力攻撃や、それに過剰反応したイスラエルのパレスチナ自治政府[Ref-2a]や市民達への攻撃もあって、結局のところオスロ合意はなし崩しにされたと言えるでしょう。
要するにハマスはようやく見えた解決の機運を壊した張本人、そしてパレスチナ側をまとめて敵視攻撃したイスラエルの強硬策にも壊した責任はあるでしょう。そしてなんとイスラエルは、PLOに対抗する勢力として創成期のハマスに援助をしていたのだとか! 笑えないけど、苦笑いするしかありません。
そしてハマスもイスラエル政府も選挙の洗礼を浴びたほぼほぼ正当な政権です。ということは「相手を殲滅するまで戦う」という双方の方針は両国民の多数の意思とも見なせるわけで・・・やっかいですね。争いを望まない民衆を押さえつける戦争好きの独裁者を取り除けば解決、とかいう簡単な構図ではありません。wikipediaの記事を読む限り、パレスチナ側では2006年1月のパレスチナ評議会選挙以来、諸々の事情で選挙は行われていないように見えますし、ガザ地区はハマスが"実効支配"してるとか、ヨルダン川西岸地区では評議会はハマスが多数派なのにファタハが非常事態宣言を使って実権を握っているとか、ややこしそうですけど。
パレスチナ側から見れば「今更それは無理筋」というその「今更」の現状というのが「イスラエル側が力に任せて既成事実化してきたことの積み重ねではないか」、との言い分はあるでしょうね。どんどん入植者を増やして元の住民を追い出して多数派になる、なんて米国がハワイを併合したのと同じ手口ですよね。では当時のユダヤ人達の願いが不当なものだったのかと言えば、個人的にはそうは言いにくい。パレスチナ分割決議(1947)[2e]の時点で互いに妥協できれば良かったのでしょうけど、それこそ「今更」の話ですね。
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Ref-1) ホロコースト百科事典
Ref-2)
2a) パレスチナ自治区
2b) ハマス
2c) PLO(パレスチナ解放機構)
2d) ファタハ
2e) パレスチナ分割決議(1947/11/29)
同じくNHKの衝突の根源に何が~記者が見たイスラエルとパレスチナ~では、イスラエル軍の過剰なまでの攻撃が、やはり恐怖に由来することが示されています。イスラエルの場合はナチスによるホロコーストの記憶も真新しく、それ以前からも国を持たないが故の不安定な生活を余儀なくされた歴史がありますから、やっと得られた国を失くしたくないという気持ちは非常に強いでしょう。とはいえ、ハマスの攻撃をホロコーストに例えるということは間接的にハマスをナチ呼ばわりしているとも言えるので、それはちと行き過ぎにも見えます。
まあウクライナ政府をナチ呼ばわりしているプーチンのずうずうしさに比べればかわいいものです。20世紀の世界史の常識的すぎる事実だからなのか、あまり指摘している言論がないようなのですが、第二次世界大戦(1939/09/01~1945/08/15)の始まりはスターリンとヒトラーによるポーランド侵攻(1939/09/01)です。つまり旧ソビエト連邦(ロシア)は枢軸国の一員として参戦していたのです。ところがヒトラーが突如としてソ連との同盟を破棄して侵攻し、ソ連は祖国防衛戦争を余儀なくされたのです。で、結果的に勝馬に乗ったおかげで戦後は安全保障理事会の常任理事国という地位まで手に入れた。
そしてソ連もロシアも今に至るまで、迷惑をかけた国々(参照第二次世界大戦の経過)への謝罪など一切していません。恐らく多くのロシア人は、自分達の国が第二次世界大戦で最初は悪の枢軸側だったなんて思ってもいないでしょう。国の教育自体が歴史を歪曲してるでしょうから。日本でも「日本とアメリカが戦った」ことも知らない人もいるみたいですが、国自体がそれを隠してるわけではありません。もともと同じ犯罪仲間だったナチスを悪のレッテルに使う資格なんて、ロシアにあるんでょうか? まあ仲間だと思ってたら裏切られたわけですから、他の国々よりもナチスへの恨みが深くても不思議ではありませんが。
さて、パレスチナ側が、特にハマス[Ref-2b]が「イスラエルを打倒して全パレスチナを開放する」つまりは「イスラエルという国家を消滅させる」という組織目標を掲げていることは、イスラエル側から見れば「ホロコーストを企んでいる」としか見えないかも知れません。まあ実際に現イスラエル国家を消滅させたら、かの地にどんな政府機構を作ろうとしているのかはわからないのですが、外国から来た入植者の方々は御帰りいただく、くらいは考えているかも知れません。それはそれで人権を無視したことになりそうです。
外野から見れば「いくらなんでも今更それは無理筋では?」としか思えません。長くパレスチナの地の解放闘争を指導してきたPLO[Ref-2c]もそのような方針だったのですが、いつしか軟化して「イスラエルとの共存」を打ち出し、オスロ合意(1993/08/20)で解決の糸口ができたかに見えました。が、ハマスをはじめ合意反対派による武力攻撃や、それに過剰反応したイスラエルのパレスチナ自治政府[Ref-2a]や市民達への攻撃もあって、結局のところオスロ合意はなし崩しにされたと言えるでしょう。
要するにハマスはようやく見えた解決の機運を壊した張本人、そしてパレスチナ側をまとめて敵視攻撃したイスラエルの強硬策にも壊した責任はあるでしょう。そしてなんとイスラエルは、PLOに対抗する勢力として創成期のハマスに援助をしていたのだとか! 笑えないけど、苦笑いするしかありません。
そしてハマスもイスラエル政府も選挙の洗礼を浴びたほぼほぼ正当な政権です。ということは「相手を殲滅するまで戦う」という双方の方針は両国民の多数の意思とも見なせるわけで・・・やっかいですね。争いを望まない民衆を押さえつける戦争好きの独裁者を取り除けば解決、とかいう簡単な構図ではありません。wikipediaの記事を読む限り、パレスチナ側では2006年1月のパレスチナ評議会選挙以来、諸々の事情で選挙は行われていないように見えますし、ガザ地区はハマスが"実効支配"してるとか、ヨルダン川西岸地区では評議会はハマスが多数派なのにファタハが非常事態宣言を使って実権を握っているとか、ややこしそうですけど。
パレスチナ側から見れば「今更それは無理筋」というその「今更」の現状というのが「イスラエル側が力に任せて既成事実化してきたことの積み重ねではないか」、との言い分はあるでしょうね。どんどん入植者を増やして元の住民を追い出して多数派になる、なんて米国がハワイを併合したのと同じ手口ですよね。では当時のユダヤ人達の願いが不当なものだったのかと言えば、個人的にはそうは言いにくい。パレスチナ分割決議(1947)[2e]の時点で互いに妥協できれば良かったのでしょうけど、それこそ「今更」の話ですね。
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Ref-1) ホロコースト百科事典
Ref-2)
2a) パレスチナ自治区
2b) ハマス
2c) PLO(パレスチナ解放機構)
2d) ファタハ
2e) パレスチナ分割決議(1947/11/29)
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