知識は永遠の輝き

学問全般について語ります

スマリヤンの本達

2015-11-04 06:56:26 | 数学基礎論/論理学
 スマリヤンはずいぶん多くのパズル本を出している人ですが、数学基礎論の本格的啓蒙書も多く出しています。その中からゲーデルの定理などに絡むものを一部挙げてみました。後述の"References"をご覧ください。真なることしか言わない騎士と嘘しか言わない奇人とが住む騎士と奇人の島での話など、親しみやすく工夫したものが多いのと、不完全性定理のさらにその先のこともしっかり書いてある本もあるので、ぼちぼち理解を進めようと思っています。

 今日はざっとした紹介です。

 s1,s2は述語論理とその完全性についての本ですが、いわば連続物と言えそうです。s1で紹介されているタブロー法がs2でも更なる解説に使われますが、タブロー法とは何ぞやと言う基礎的紹介はs1でしかなされていないので、s1を読まないとs2は理解できにくい構成になっています。

 s3,s4,s5,s6は不完全性定理について自己言及パラドックスという観点を中心に書かれています。s6は千夜一夜の語り部シェヘラザードが語るパズル問題集で、特に前半には論理パラドックス以外の数学パズルもたくさんあります。s5はほぼ不完全性定理についてのものです。s4はむしろ不完全性定理の先というか、さらに一般化した段階から様相論理というものへつなげた話になっています。s3も不完全性定理だけではなく、さらに一般化された広い話になっています。むしろs3の内容をもう少し一般受けするように書いたものがs4と言えそうです。こういう不完全性定理の先の段階の啓蒙書はなかなかないので読んでいこうとおもうのですが、なかなか読みにくいところもあります。

 内容自体が難しい(かも知れない)こともありますが、もう少しわかりやすくできないのかと思うところもあります。

 ・論証過程はすべて1ステップ1行で書いてくれると見やすいのだが。普通の文章内でだらだら展開されると、わかりにくい。特に数学基礎論の論証過程は、メタ数学的証明と形式的体系内の証明ステップとの区別、モデルでの命題とそれを記述する論理式との区別、などがわかりにくくなりやすいので、そこはみやすくなっているとありがたいのですが。

 ・用語が色々あって、定義の一覧表でもあると理解がしやすいのだが。数学基礎論には微妙な意味の違いの用語が多過ぎるので。

 ・騎士と奇人の話のような普通の文章での命題はすべて、どこかで論理式で記述してくれた方がはっきり理解がしやすい。むしろこれらのパラドックス的命題は、普通の文章で書くことでパラドックス性が増しているものが多いのだから。

 まあ、おもしろそうなところは、ぼちぼち取り上げていこうと思います。

----------------
References(原著はいずれもRaymond M. Smullyan)
s1) 高橋昌一郎(監訳)『記号論理学: 一般化と記号化』丸善(2013/01/30)
s2) 高橋昌一郎(監訳);村上祐子(訳)『スマリヤン 数理論理学 述語論理と完全性定理』丸善(2014/11/30)
s3) 高橋昌一郎(訳)『ゲーデルの不完全性定理』丸善(1996/07/25)
s4) 田中朋之(Tanaka, Tomoyuki 訳);長尾確(Nagao, Katashi 訳)『スマリヤンの決定不能の論理パズル―ゲーデルの定理と様相理論』白揚社(2008/05/30)
s5) 川辺治之(Kawabe, Haruyuki 訳)『スマリヤンのゲーデル・パズル』日本評論社(2014/11/20)
s6) 長尾確;(訳);長尾加寿恵(訳)『スマリヤンの究極の論理パズル―数の不思議からゲーデルの定理へ』白揚社(2008/06)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ゲーデルの定理-2.3- 自然数... | トップ | 0(ゼロ)は自然数か否か -1- »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

数学基礎論/論理学」カテゴリの最新記事