知識は永遠の輝き

学問全般について語ります

someとanyの論理(1) 肯定文

2016-10-12 06:16:34 | 数学基礎論/論理学
 someとanyの使い分けや読みとりが日本人には難しいという話があります。例えば大西泰斗とポール・マクベイの『ネイティブスピーカーの英文法』[Ref-1]のp45「anyの意味」では次のように書かれています。
---引用---
私も中学や高校で、「any はいくつかのという意味であり、疑問文や否定文でsameの代わりをする」「not~anyは1つも~でないという意味である」「anyは疑問文では訳さなくてよいことがある」と、いくつかの不思議な「規則」を教わり、さっぱりanyの意味がわからなくなった経験があります。
---終わり---

 確かに、「any は疑問文や否定文、someは肯定文」などと教わった記憶があります。ただ私の場合は当時から単純に日本語直訳で不便を感じなかったので、引用のような不思議な規則は印象に残っていません。つまり、次のような直訳です。
  some いくつかの(何人かの)
  any  どれでも(誰でも、何でも)、どれか(誰か、何か)

 もちろん対象によって何枚とか変化しますが本質は同じです。また、「どれか」と「どれでも(どれも)」は意味が違うので英文との対応は知らないといけませんが。でもこの訳で、疑問文でも否定文でも肯定文でも通用します。では肯定文での典型的な例を挙げてみます。

 なお"evry"についてはほぼ"each"と同様と思われますので当面は省略します。たぶん"each"よりは"all"に近い語感ではないかと思います。

A1) Some boxes are opened. いくつかの箱は開いている。箱はいくつか開いている。
A2) Any box is opened. どの箱でも開いている。箱はどれも開いている。
A3) Each box is opened. 各箱は開いている。箱はそれぞれ開いている。
A4) All boxes are opened. 全ての箱は開いている。箱は全て開いている。

B1) Some boxes will be opened. いくつかの箱は開くだろう。
B2) Any box will be opened. どの箱でも開くだろう。
B3) Each box will be opened. 各箱は開くだろう。
B4) All boxes will be opened. 全ての箱は開くだろう。

C1) Some boxes can be opened. いくつかの箱は開くことができる。
C2) Any box can be opened. どの箱でも開くことができる。
C3) Each box can be opened. 各箱は開くことができる。
C4) All boxes can be opened. 全ての箱は開くことができる。

 現在形のA1~4では"some"以外はすべて実質的に同じ状態を示していることはわかるでしょう。なので、"any"の場合は「どの箱」と訳すこともできます。また"some"は、未来形のB1~4と可能形のC1~4でも他の"any","each","all",とは明確に違います。つまり、"some"以外の場合は絶対に開かない箱は存在しません

 これが未来形のB1~4では"any""each""all"との間に違いが出てきます。"each""all"なら未来のある時点で確実に全ての箱が開いた状態になりますが、"any"では閉じたままの箱があるかも知れません。極端な話、開くとすれば1個だけという条件のもとでは"all"を使うとウソになりますが、"any"ならウソにはなりません。どれでもいいから1個選んでみるとそれは開くのだが、そのひとつが開いたときには他の箱はもう開かないかも知れないということです[*1]。その点を強調したければ次のようになります。

B5) Any one box will be opened. どれでもひとつの箱開くだろう。
B5') どれでもひとつの箱開くだろう。
B5") どれでもひとつの箱だけは開くだろう。

 以上のことを図にまとめてみました。現在は全て閉じている箱が未来にはどうなるかということを表しています。


 図で現在は閉じている箱のどれかひとつを取り上げたとしますと、"some"の場合(B1)はその箱は将来開かない可能性があります。けれど"any"の場合(B2)は、どの箱を選んだとしても選んだ箱は必ず開くと言っています。ただし選ばなかった箱が開くかどうかは保証していません。このような"any"の性質を『ネイティブスピーカーの英文法』では、選択の任意性(どれをとっても)と表現していますが、なるほど的確な表現です。堅く言えば「選択した任意のものについての記述」とでもなるでしょうか。この際、選択するのは少数だけ、通常は1回そして1つと想定される、という点が重要です。「どれでも選んでいいよ」とは言っていますが、全部選んでもいいと言ってはいません。これが"each"の場合(B3)となると「各箱についての記述」となり、すべての箱をひとつひとつ取り上げて「これは開く」と確認しているのです。すると結局は"all"の場合(B4)と同じ意味になります。まあ箱が無限個の場合は、ひとつずつ選択していたらいつまでも確認が終わらないという問題はあるのですが(^_^)。選択公理の問題ですね(^_^)。

 この"any""each"の違いを論理記号の∧や∨で示してみます。まず各箱をBox1,Box2・・・とします。"any"の場合は、
  (Box1は開く)∨(Box2は開く)∨・・・∨・・・

"each""all"の場合は、
  (Box1は開く)∧(Box2は開く)∧・・・∧・・・

また"some"の場合は少し難しいですが、強いて示せば、
  (Box1は開かない)∨(Box2は開かない)∨・・・∨・・・

 こうなると未来形のB2は可能形のC2とほとんど同じことを言っていることになります。未来形では未来のある時点での状態と考えた図のひとつひとつの状態を、ひとつひとつの可能性と考えればよいのです。"any"は図示したすべての状態が、現在の可能状態であると言っているわけです。


 上記では主語の状態が変化していましたが、述語の状態が変化する文でも事態は同じです。少し対象を変えた例文を示してみます。

A11) You eat Some candies. 君はいくつかのアメを食べる。
A12) You eat any candy. 君はどのアメでも食べる。
A13) You eat each candy. 君はそれぞれのアメを食べる。
A14) You eat all candies. 君は全てのアメを食べる。

B11) You will eat Some candies. 君はいくつかのアメを食べるだろう。
B12) You will eat any candy. 君はどのアメでも食べるだろう。
B13) You will eat each candy. 君はそれぞれのアメを食べるだろう。
B14) You will eat all candies. 君は全てのアメを食べるだろう。君はアメを全部食べるつもりだ。

C11) You can eat Some candies. 君はいくつかのアメを食べることができる。
C12) You can eat any candy. 君はどのアメでも食べることができる。
C13) You can eat each candy. 君はそれぞれのアメを食べることができる。
C14) You can eat all candies. 君は全てのアメを食べることができる。

 特に解釈に迷うところはないでしょう。ただし"will"には主語の意志を示す意味もあり「~するつもり」と訳した方が適切なことも多いのは多くの教科書の教えるところです。また"eat"という動詞の性質上、現在形もいくらかは未来の時間に入り込んだ状態を表しています。それゆえ現在形が実質的に未来のことを表している場合もあります。これが"be opend"だと現在形は完全に現在の状態だけを表し、未来の変化は折り込んではいません。文法用語では動作動詞状態動詞の違いです。

D1) You eat Some candies now.
D2) You will eat Some candies now.
D3) You can eat Some candies now.

 この例文だと"now"(今)とは言っても実質は"soon after"(直後)ですからねえ。

D4) You eat Some candies everyday.
D5) You will eat Some candies everyday.
D6) You can eat Some candies everyday.

 この例文だと"do everyday"(毎日している)という状態を表しているので、状態動詞の例文と同様の解釈でいいことになります。動作動詞の状態動詞化とでも言いましょうか。

 実は具体的な主語・動詞・述語の性質により、かように解釈が制限を受けるのが実際のところです。A1~C4の例文は、解釈がややこしくならないように慎重に選んだものでもあるのです。これが疑問文や否定文では、また別のややこしさも出てきます。

 あと、2つほどの参考サイトを挙げておきます。[Ref-2][Ref-3]。

【訂正(2016/10/16)】例文の識別番号に一部重複があったので訂正
--------
*1) 状況1
  「どれでも取っていいよ」「わーい、ありがとう」
  「こらこら、そんなにたくさん取るんじゃない!」
状況2
  「いつでも来ていいよ」「ありがとうございます」そして1週間が経ち。
  「きみ、毎日はちょっと!」

Ref-1) 大西泰斗;ポール・マクベイ(Paul Chris McVay)『ネイティブスピーカーの英文法―英語の感覚が身につく』研究社出版(1995/02) ISBN-13= 978-4327451035
Ref-2) 飽きっぽい人のための長続き英会話「限定詞「Any」のイメージと使い方!!」(2016/06/10) 「選択の任意性」のところを「名詞の内容の選択の自由」と述べている。
Ref-3) "Learn English Teens"(十代のための英語学習)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 空間図形問題・暗殺教室「空... | トップ | someとanyの論理(2) 疑問文 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

数学基礎論/論理学」カテゴリの最新記事