徒然日誌(旧:1日1コラ)

1日1枚画像を作成して投稿するつもりのブログ、改め、一日一つの雑学を報告するつもりのブログ。

寿の月、時計塔と架け橋の街にて 6

2020-03-06 19:36:47 | 小説





 本文詳細↓



 「退いてくれーっ! 牛が暴れだしたー‼」
 悲鳴の中に、そんな声が混ざっているのが聞こえた。芝居小屋を牽かせてる牛たちに、酔っぱらいがぶつかったとかだろうか。場が一気に騒然とし、僕たちも急いで逃げようと来た道を戻ろうとしたとき、パニックになった人にもまれて転びそうになっているコスモス色の女の子を見つけた。
 「危ないっ」
 思わず彼女の手を掴んだ。そのまま有無を言わさず手をひいて走り出した。女の子も僕のことを覚えていたのか、「お前は!」とか「何をする!」とか文句を言われたような気がするけど、全て無視した。周りの人の悲鳴で聞こえなかったということにして。
 右へ左へと角を折れ、適当にしばらく走った。騒ぎが遠くなり、行き交う人たちの様子が落ち着いたものになってようやく、僕は足を止めた。
 「ああ、驚いた。君は大丈……「ぶはっ!」……え?」
 振り返った瞬間、何故か大笑いされた。
 「お、おま……フッ、なんだ、その格好……ハハハッ!」
 そんな笑われるような格好はしてないはず……と自分の体を見下ろして、アダムと揃って絶句した。
 「なんだこれはあぁぁあ!? 粉砂糖と灰と動物の毛まみれではないか! なぜこんなことに!?」 
 アダムの嘆きが全てを表していた。どうやら僕たちは逃げているとき知らぬ内に、大道芸人の間や屋台の中を駆け抜けていたらしい。



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 寿の月、時計塔と架け橋の街... | トップ | 寿の月、時計塔と架け橋の街... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

小説」カテゴリの最新記事