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「退いてくれーっ! 牛が暴れだしたー‼」
悲鳴の中に、そんな声が混ざっているのが聞こえた。芝居小屋を牽かせてる牛たちに、酔っぱらいがぶつかったとかだろうか。場が一気に騒然とし、僕たちも急いで逃げようと来た道を戻ろうとしたとき、パニックになった人にもまれて転びそうになっているコスモス色の女の子を見つけた。
「危ないっ」
思わず彼女の手を掴んだ。そのまま有無を言わさず手をひいて走り出した。女の子も僕のことを覚えていたのか、「お前は!」とか「何をする!」とか文句を言われたような気がするけど、全て無視した。周りの人の悲鳴で聞こえなかったということにして。
右へ左へと角を折れ、適当にしばらく走った。騒ぎが遠くなり、行き交う人たちの様子が落ち着いたものになってようやく、僕は足を止めた。
「ああ、驚いた。君は大丈……「ぶはっ!」……え?」
振り返った瞬間、何故か大笑いされた。
「お、おま……フッ、なんだ、その格好……ハハハッ!」
そんな笑われるような格好はしてないはず……と自分の体を見下ろして、アダムと揃って絶句した。
「なんだこれはあぁぁあ!? 粉砂糖と灰と動物の毛まみれではないか! なぜこんなことに!?」
アダムの嘆きが全てを表していた。どうやら僕たちは逃げているとき知らぬ内に、大道芸人の間や屋台の中を駆け抜けていたらしい。
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