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けど、今のナイトウォ―カーの言葉は、それを否定している。
「全てを整えられた快適な《世界(ぶたい)》と、そこで生まれ育つ人々の台本のない人生(ストーリー)。それはとても華やかで、美しくて、刺激的で、長年ブロッケンを虜にしてきた。あのとき人間たちは、いい選択をしたのだと思うわ。
私だってね、この《世界》を観るのが大好き。約束の通り、これからもここで芝居を続けてほしい。でも、人間にだけ選択肢がないのはどうかしら。生きとし生けるものは全ての感情を肯定されるべきだけど、その感情は真実のもとで生まれたものであるべきだと思うの」
「ど、どうしてそんなことを?」
「さあ。自分でもよく分かってないし、いつからかも覚えてないの。魔法の技術とか、他者の感情や思考のプロセスとか、一度気になれば他のことについても知りたくなるものなのね。何故、と聞いたとき、同胞たちは何も答えてくれなかった。代わりに答えてくれた他の種族や悪魔たちについてまわってるうちに、不思議とそんなことを思うようになったの。彼らも面白がって色々話してくれたし。これが、学びというやつかしら?」
人での喩えを続けるなら、きっとそう言うのが一番合うだろう。僕はのろのろと頷いた。
何か、心臓が縮むような嫌な感じがする。会いたくて会いたくて仕方がなかった彼女が目の前にいるのに、急に逃げ帰りたくなった。これ以上は知りたくない、知らなくていいと、脳の奥で警鐘が鳴っている。
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