本文詳細↓
次も、その次も、鬼が殺される時には必ず人間の姿が目撃された」
薄闇にぼんやりと、般若の面と人間の面とが交互に浮かんでは消えていく。
「毎日交代で里を見回り、死人が出たとなれば山狩りを行えど、犯人の行方は杳として知れぬ。だのに、そのとき誰かが何かを見れば、それは必ず人間であるという。さても奇妙なことよ。
それが三月前のある晩、腹を裂かれても、かろうじて命だけは失わなかった鬼がいた。なんとか助けられた鬼は荒い息を整えぬまま、
「我らは間違っていたのやも知れぬ。あれは人間なぞではない。変化(へんげ)じゃ、変化の術を持つ輩の仕業じゃ。わしは逃げる奴の姿を見たが、上半身から消えていきおった。騙されてはならぬ。変化の種族を捕らえるのだ」
と言った。
そして樹のうろ、川縁、家の下、山中のありとあらゆる場所を探しまわり、一匹の貂を捕らえた。貂には『狐七化け、狸八化け、貂九化け』という話がある。切なげに泣くこの小さなケモノがまことに鬼殺しの犯人かという疑いもあれど、首めがけて刀を振り下ろせば、なんと貂は大層な悲鳴をあげて人の姿へ化けて逃げ出そうとした。それを見逃すような間の抜けた鬼はおらぬ。再び捕らえられた貂は浅ましくも、
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます