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そして吹いた。
悶絶する僕に、ヤクシャ童子さんが水を差し出し、さらに周りの鬼をいさめてくれた。
「おいおい、何をしとるんだ。人間にこれはちとキツいと言われたのを忘れたか。ほれ、水じゃ」
「……あ゛、あ゛りがどゔござ゛います……」
「おおっ、そういえばそうだったか」
「人間なんぞと酌み交わすなど、久方ぶりすぎて忘れておったわ」
「すまんのぉ、坊ちゃん!」
残念ながら、謝られてる気がしなかった。いや、まあ悪意がないからいいけどさ……
「やれやれ……。好みの酒があれば用意させるが?」
「いえ、お気遣いなく……。今のがだいぶ効きました……」
「それでは茶にしよう。鬼の宝珠茶は人間にも好評だ」
そう言ってヤクシャ童子さんは奥へ向かって声を張り上げた。もらった温かいお茶は、五臓六腑に沁みわたるぐらい美味しかった。
宴もたけなわの頃、僕はトイレに立ったついでに、少し縁側に出てみた。
縁側というと普通、庭と家の間をつなぐものだと思っていた。けど、この家の縁側は、文字通り家の縁(ふち)だった。枝からほんの少し外に張り出しただけだから、足を踏み外したら下へ真っ逆さまだ。
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