就寝
睡眠とは、ねむること、すなわち、周期的に繰り返す、意識を喪失する生理的な状態のことである。ねむりとも言う。
(動物の、動物などの)からだの動きが止まり、外的刺激に対する反応が低下して意識も失われているが、簡単に目覚める状態のことをこう呼んでいる。
睡眠の目的は、心身の休息、記憶の再構成など高次脳機能にも深く関わっているとされる。下垂体前葉は、睡眠中に2時間から3時間の間隔で成長ホルモンを分泌する。放出間隔は睡眠によって変化しないが、放出量は多くなる。したがって、子供の成長や創傷治癒、肌の新陳代謝は睡眠時に特に促進される。その他、免疫力の向上やストレスの除去などがあるが、完全に解明されていない部分も多い。
人に必要な睡眠量には個体差があり、7〜8時間の場合が多い。カリフォルニア大学サンディエゴ校のDaniel KripkeらのSleep medicine掲載論文や名古屋大学医学部大学院玉腰暁子の研究では、睡眠時間が7時間の場合に平均余命が最も長くなり、死亡リスクも軽減する。
睡眠中は刺激に対する反応がほとんどなくなり、移動や外界の注視などの様々な活動も低下する。一般的には、閉眼し意味のある精神活動は停止した状態となるが、適切な刺激によって容易に覚醒する。
このため睡眠と意識障害とはまったく異なるものである。
またヒトをはじめとする大脳の発達したいくつかの動物では、睡眠中に夢と呼ばれるある種の幻覚を体験することがある。
短期的には睡眠は栄養の摂取よりも重要である。ネズミの実験では、完全に睡眠を遮断した場合、約1、2週間で死亡するが、これは食物を与えなかった場合よりも短い。極端な衰弱と体温調節の不良と脳では視床の損傷が生じている。ヒトの場合でも、断眠を続けると思考能力が落ち、妄想や幻覚が出て、相当期間、強制的に、眠らない状態でいさせると恐らく死んでしまうと言われている。
人間の睡眠
睡眠が不足した場合に最も影響のある精神活動は気分、記憶力、集中力である。
睡眠時間と健康 統計的に、うつ病は平均的な睡眠時間(7時間台)の人がもっともなりにくい。
睡眠時間が短い人は、血中の食欲を抑えるレプチンが少なく食欲を増進させるグレリンが多い。その結果、睡眠時間が短くなるほど食欲が亢進しやすく肥満になるリスクが高くなる。
子供は睡眠を大人に比べて長く必要とする。
睡眠不足は子どもの身体能力や学業成績に多大な影響を及ぼす(脳は睡眠中に、昼間体感・学習した情報から余計な情報を省いて効率よく整理し、長期的な感覚や記憶として処理される)。子供たちの学習量は増える一方なのに、学んだことを処理するための睡眠量は最近どんどん削られている。
夜更かしした翌日に長時間睡眠をとって寝不足を解消することはできるが、逆に前日に長時間睡眠し、翌日に夜更かしするなどといった「寝貯め」はできないとされている。また、前者のような「まとめ寝」も、寝不足は解消できるが、長時間睡眠により睡眠の質が下がったり、睡眠バランスや体のリズムを崩すためよくないとされる。
熟睡のポイント 睡眠サイクル(体内時計)を固定する。特に起床時刻を同じにすることが重要。
毎日起きる時刻に日光を浴びることは体内時計リセットに効果的。
朝食をとることで末梢の体内時計をリセットできるので、日光を浴びた後1時間以内に朝食をとること。
寝る数時間前に運動や入浴をして体温を上げることで、眠りに就くときに体温が急激に低下する。これを利用すれば眠りに入りやすくなる
。
寝る30分~2時間前から照明を暗くしメラトニンの分泌を促す。
毎日の食事で炭水化物とたんぱく質(トリプトファン)をしっかり摂取する。トリプトファン摂取→セロトニン合成&分泌→メラトニンができる。
短眠について(ショートスリーパー) 稀にではあるが、遺伝的に睡眠時間が短い人間は存在する。
後天的に睡眠時間を縮めてコンディションを維持することについて、多くの睡眠専門医は不可能だと述べている。(短眠関連の本を書いている著者のほぼすべては、睡眠専門医とは全く関係のない人である。本には机上の空論が多々見られる。)
非常に稀なケースでは全く睡眠を取らずにほぼ健康に生活している者がいる。
その他
睡眠の取りやすさにも個体差がある。さらに、入眠時の身体状態や精神状態、外部環境に依存するため、睡眠が取りやすかったり、睡眠が取りにくかったりするなど、同一個体でも状態による差が大きい。そのため、睡眠を快く取る為の安眠法が幾つも発明されている。後述する入眠ニューロンは体温の上昇によって活動が亢進するため、入眠前の入浴や入眠時に寝室を暖かくすることが有効である。また睡眠にはメラトニンが関わっており、メラトニンを脳にある松果体で生成するには起床中に2500ルクス以上の光を浴びる必要がある。
ヒトの睡眠は、脳波と眼球運動のパターンで分類できることが知られている。成人はステージI~REMの間を睡眠中反復し、周期は90分程度である。入眠やステージI - IVとレム睡眠間の移行を司る特別なニューロン群が存在する。入眠時には前脳基部(腹外側視索前野)に存在する入眠ニューロンが活性化する。レム睡眠移行時には脳幹に位置するコリン作動性のレム入眠ニューロンが活動する。覚醒状態では脳内の各ニューロンは独立して活動しているが、ステージI - IVでは隣接するニューロンが低周波で同期して活動する。
ステージI
傾眠状態。脳波上、覚醒時にみられたα波が減少し、低振幅の電位がみられる。ステージI - IVをまとめてノンレム睡眠と呼ぶ。
ステージII
脳波上、睡眠紡錘 (sleep spindle) がみられる。
ステージIII
低周波のδ波が増える。20% - 50%
ステージIV
δ波が50%以上。
レム (REM) 睡眠
急速眼球運動 (Rapid Eye Movement) の見られる睡眠である。脳波は比較的早いθ波が主体となる。この期間に覚醒した場合、夢の内容を覚えていることが多い。レム睡眠中の脳活動は覚醒時と似ており、エネルギー消費率も覚醒時とほぼ同等である。急速眼球運動だけが起こるのは、目筋以外を制御する運動ニューロンの働きが抑制されているためである。人間では、6〜8時間の睡眠のうち、1時間半〜2時間をレム睡眠が占める。
睡眠に関わる神経伝達物質
覚醒を維持する神経伝達物質には、ノルアドレナリン、セロトニン、ヒスタミン、アセチルコリン、オレキシンなどがあるが、睡眠中はこれらの神経伝達物質を産生する神経細胞が抑制されている。その抑制には腹背側視索前野に存在するGABA作動精神系が関与しているとされる。アセチルコリン作動性神経の一部はレム睡眠の生成にも関与している。
動物の睡眠
必要な睡眠時間は種ごとの体の大きさに依存する。例えば小型の齧歯類では15時間〜18時間、ネコでは12〜13時間、イヌでは10時間、ゾウでは3〜4時間、キリンではわずか30分〜1時間である。これは大型動物ほど代謝率が低く、脳細胞の傷害を修復する必要が少なくなるためとも考えられている。また草食動物は睡眠をする間は無防備で捕食者に狙われやすいので睡眠時間は短い傾向がある。
すべての陸生哺乳類にレム睡眠が見られるものの、レム睡眠時間の種差は体の大きさとは無関係である。例えば、カモノハシは9時間の睡眠時間のうち、レム睡眠が8時間を占める。イルカはレム睡眠をほとんど必要としない。
脊椎動物以外の動物、例えば節足動物にも睡眠に類似した状態がある。神経伝達物質の時間変化を観察すると、レム睡眠と似た状態になっているらしい
。
ヒトと異なり、生物の中には、長い期間覚醒しない種もある。これは冬眠と呼ばれる。冬眠する生物の例として、クマ、リス、カエルなどが挙げられる。
睡眠の際の姿勢も生物によって異なる。魚は単に水中を漂う形で睡眠状態に入る。フラミンゴは片足で立ったまま眠るとされる。またイルカは数秒程度の半球睡眠(大脳半球ずつ交互に眠ること)を繰り返して取るため、眠りながら泳ぎ続けることが可能である。
ネコは丸くなって寝ているという印象が多いが、これは身を守ろうとしているか寒い時の状態で、飼い猫などはほぼ確実に攻撃を受けないと確信したリラックス状態では仰向けで寝ることもある。
文化と睡眠、地域と睡眠
世界
スペインを初めとする地中海地方などに於いては昼食の後に睡眠を含む一休みをする「午睡(シエスタ)」の風習がみられる。2000年代に入ってLifehack(ハッカー文化の一端にある仕事術)の延長で、短時間の昼寝が注目される現象も見られる。しかしその一方で、労働時間の増加により地中海地方の国々に於いてもシエスタを行わない企業が増加しつつある。
日本
現代日本の場合、電車やバスによる通勤・通学をする者も多く、またこれらの交通機関においての治安も非常に良いため、その中で眠る者も多い。肉体労働の多い職種では、昼の食事の後、午後の作業開始までの間の短い睡眠をとる場合が多い。
座ったままで眠る行為は「居眠り」と呼ばれる。授業中、仕事中、運転中など、眠ってはいけない場所・場合で無意識のうちに居眠りをしてしまう例もある。夜の睡眠は、伝統的には体を横たえて布団の中(昨今ではベッドの中も多い)でとられるが、これは「寝る」(横になること)とも呼ばれる。
風呂の中での居眠りは溺死につながる事もあるため要注意である。
2001年2月に発表されたNHKの調査によると、日本人の平均睡眠時間は平日で7時間26分、土曜日で7時間41分、日曜日で8時間13分であった。
年をとると早寝早起きの習慣が身につくと一般に考えられている。しかし、本当に習慣であるのか、高齢者に多く見られる睡眠相前進症候群の症状であるのかは、容易には判断できない。
仏教思想と結び付けて、頭を北に、足を南に配置する形で寝ることは北枕と呼ばれ、忌避されている。
昼寝
最近、日本でも昼寝の効用について研究が行われている。昼寝を行うことにより、事故の予防・仕事の効率アップ・自己評価のアップなどが期待されるため、職場・学校などで昼寝が最近、奨励されるようになった。また、昼寝により、脳が活発になるため、独創的なアイデアが浮かびやすい環境になるという。
(昼寝におけるその他の研究報告)
30分以下の昼寝を習慣的にとる人は、それ以外の人に比べてアルツハイマー病にかかる危険性が0.2倍になるという報告がある。
昼寝後と前では最大血圧で平均8.6mmHg、最小血圧で平均15.6mmHgも血圧が降下したという報告もあり、生活習慣病予防も期待される。(広島大学)
(昼寝の方法)
目安としては午後1~3時ごろが良いとされる。(遅くとると、夜、眠れなくなることがあるため)
15~30分程度が良いとされる。1時間とると、逆に疲労になることがある。(30分以上睡眠をとると、多くの人が深睡眠に入り寝起きが悪くなるため。)
睡眠をめぐる言語表現
しばしば死は睡眠に例えられる。死を睡眠になぞらえた例には次のようなものがある。
永眠
the eternal sleep
また、「寝る」、「眠る」という語を含むことわざとして次のようなものがある。
果報は寝て待て
寝る間も惜しんで
寝る子は育つ(科学的・医学的に正しいが、ことわざとして語句通りの意味で用いた場合は誤用[18])
寝ても覚めても
寝た子を起こす
草木も眠る丑三つ時
猫鼠同眠
寝食を忘れる
寝るより楽は無かりけり 浮世の馬鹿が起きて働く
出典・ウィキペディアフリー百科事典。
睡眠とは、ねむること、すなわち、周期的に繰り返す、意識を喪失する生理的な状態のことである。ねむりとも言う。
(動物の、動物などの)からだの動きが止まり、外的刺激に対する反応が低下して意識も失われているが、簡単に目覚める状態のことをこう呼んでいる。
睡眠の目的は、心身の休息、記憶の再構成など高次脳機能にも深く関わっているとされる。下垂体前葉は、睡眠中に2時間から3時間の間隔で成長ホルモンを分泌する。放出間隔は睡眠によって変化しないが、放出量は多くなる。したがって、子供の成長や創傷治癒、肌の新陳代謝は睡眠時に特に促進される。その他、免疫力の向上やストレスの除去などがあるが、完全に解明されていない部分も多い。
人に必要な睡眠量には個体差があり、7〜8時間の場合が多い。カリフォルニア大学サンディエゴ校のDaniel KripkeらのSleep medicine掲載論文や名古屋大学医学部大学院玉腰暁子の研究では、睡眠時間が7時間の場合に平均余命が最も長くなり、死亡リスクも軽減する。
睡眠中は刺激に対する反応がほとんどなくなり、移動や外界の注視などの様々な活動も低下する。一般的には、閉眼し意味のある精神活動は停止した状態となるが、適切な刺激によって容易に覚醒する。
このため睡眠と意識障害とはまったく異なるものである。
またヒトをはじめとする大脳の発達したいくつかの動物では、睡眠中に夢と呼ばれるある種の幻覚を体験することがある。
短期的には睡眠は栄養の摂取よりも重要である。ネズミの実験では、完全に睡眠を遮断した場合、約1、2週間で死亡するが、これは食物を与えなかった場合よりも短い。極端な衰弱と体温調節の不良と脳では視床の損傷が生じている。ヒトの場合でも、断眠を続けると思考能力が落ち、妄想や幻覚が出て、相当期間、強制的に、眠らない状態でいさせると恐らく死んでしまうと言われている。
人間の睡眠
睡眠が不足した場合に最も影響のある精神活動は気分、記憶力、集中力である。
睡眠時間と健康 統計的に、うつ病は平均的な睡眠時間(7時間台)の人がもっともなりにくい。
睡眠時間が短い人は、血中の食欲を抑えるレプチンが少なく食欲を増進させるグレリンが多い。その結果、睡眠時間が短くなるほど食欲が亢進しやすく肥満になるリスクが高くなる。
子供は睡眠を大人に比べて長く必要とする。
睡眠不足は子どもの身体能力や学業成績に多大な影響を及ぼす(脳は睡眠中に、昼間体感・学習した情報から余計な情報を省いて効率よく整理し、長期的な感覚や記憶として処理される)。子供たちの学習量は増える一方なのに、学んだことを処理するための睡眠量は最近どんどん削られている。
夜更かしした翌日に長時間睡眠をとって寝不足を解消することはできるが、逆に前日に長時間睡眠し、翌日に夜更かしするなどといった「寝貯め」はできないとされている。また、前者のような「まとめ寝」も、寝不足は解消できるが、長時間睡眠により睡眠の質が下がったり、睡眠バランスや体のリズムを崩すためよくないとされる。
熟睡のポイント 睡眠サイクル(体内時計)を固定する。特に起床時刻を同じにすることが重要。
毎日起きる時刻に日光を浴びることは体内時計リセットに効果的。
朝食をとることで末梢の体内時計をリセットできるので、日光を浴びた後1時間以内に朝食をとること。
寝る数時間前に運動や入浴をして体温を上げることで、眠りに就くときに体温が急激に低下する。これを利用すれば眠りに入りやすくなる
。
寝る30分~2時間前から照明を暗くしメラトニンの分泌を促す。
毎日の食事で炭水化物とたんぱく質(トリプトファン)をしっかり摂取する。トリプトファン摂取→セロトニン合成&分泌→メラトニンができる。
短眠について(ショートスリーパー) 稀にではあるが、遺伝的に睡眠時間が短い人間は存在する。
後天的に睡眠時間を縮めてコンディションを維持することについて、多くの睡眠専門医は不可能だと述べている。(短眠関連の本を書いている著者のほぼすべては、睡眠専門医とは全く関係のない人である。本には机上の空論が多々見られる。)
非常に稀なケースでは全く睡眠を取らずにほぼ健康に生活している者がいる。
その他
睡眠の取りやすさにも個体差がある。さらに、入眠時の身体状態や精神状態、外部環境に依存するため、睡眠が取りやすかったり、睡眠が取りにくかったりするなど、同一個体でも状態による差が大きい。そのため、睡眠を快く取る為の安眠法が幾つも発明されている。後述する入眠ニューロンは体温の上昇によって活動が亢進するため、入眠前の入浴や入眠時に寝室を暖かくすることが有効である。また睡眠にはメラトニンが関わっており、メラトニンを脳にある松果体で生成するには起床中に2500ルクス以上の光を浴びる必要がある。
ヒトの睡眠は、脳波と眼球運動のパターンで分類できることが知られている。成人はステージI~REMの間を睡眠中反復し、周期は90分程度である。入眠やステージI - IVとレム睡眠間の移行を司る特別なニューロン群が存在する。入眠時には前脳基部(腹外側視索前野)に存在する入眠ニューロンが活性化する。レム睡眠移行時には脳幹に位置するコリン作動性のレム入眠ニューロンが活動する。覚醒状態では脳内の各ニューロンは独立して活動しているが、ステージI - IVでは隣接するニューロンが低周波で同期して活動する。
ステージI
傾眠状態。脳波上、覚醒時にみられたα波が減少し、低振幅の電位がみられる。ステージI - IVをまとめてノンレム睡眠と呼ぶ。
ステージII
脳波上、睡眠紡錘 (sleep spindle) がみられる。
ステージIII
低周波のδ波が増える。20% - 50%
ステージIV
δ波が50%以上。
レム (REM) 睡眠
急速眼球運動 (Rapid Eye Movement) の見られる睡眠である。脳波は比較的早いθ波が主体となる。この期間に覚醒した場合、夢の内容を覚えていることが多い。レム睡眠中の脳活動は覚醒時と似ており、エネルギー消費率も覚醒時とほぼ同等である。急速眼球運動だけが起こるのは、目筋以外を制御する運動ニューロンの働きが抑制されているためである。人間では、6〜8時間の睡眠のうち、1時間半〜2時間をレム睡眠が占める。
睡眠に関わる神経伝達物質
覚醒を維持する神経伝達物質には、ノルアドレナリン、セロトニン、ヒスタミン、アセチルコリン、オレキシンなどがあるが、睡眠中はこれらの神経伝達物質を産生する神経細胞が抑制されている。その抑制には腹背側視索前野に存在するGABA作動精神系が関与しているとされる。アセチルコリン作動性神経の一部はレム睡眠の生成にも関与している。
動物の睡眠
必要な睡眠時間は種ごとの体の大きさに依存する。例えば小型の齧歯類では15時間〜18時間、ネコでは12〜13時間、イヌでは10時間、ゾウでは3〜4時間、キリンではわずか30分〜1時間である。これは大型動物ほど代謝率が低く、脳細胞の傷害を修復する必要が少なくなるためとも考えられている。また草食動物は睡眠をする間は無防備で捕食者に狙われやすいので睡眠時間は短い傾向がある。
すべての陸生哺乳類にレム睡眠が見られるものの、レム睡眠時間の種差は体の大きさとは無関係である。例えば、カモノハシは9時間の睡眠時間のうち、レム睡眠が8時間を占める。イルカはレム睡眠をほとんど必要としない。
脊椎動物以外の動物、例えば節足動物にも睡眠に類似した状態がある。神経伝達物質の時間変化を観察すると、レム睡眠と似た状態になっているらしい
。
ヒトと異なり、生物の中には、長い期間覚醒しない種もある。これは冬眠と呼ばれる。冬眠する生物の例として、クマ、リス、カエルなどが挙げられる。
睡眠の際の姿勢も生物によって異なる。魚は単に水中を漂う形で睡眠状態に入る。フラミンゴは片足で立ったまま眠るとされる。またイルカは数秒程度の半球睡眠(大脳半球ずつ交互に眠ること)を繰り返して取るため、眠りながら泳ぎ続けることが可能である。
ネコは丸くなって寝ているという印象が多いが、これは身を守ろうとしているか寒い時の状態で、飼い猫などはほぼ確実に攻撃を受けないと確信したリラックス状態では仰向けで寝ることもある。
文化と睡眠、地域と睡眠
世界
スペインを初めとする地中海地方などに於いては昼食の後に睡眠を含む一休みをする「午睡(シエスタ)」の風習がみられる。2000年代に入ってLifehack(ハッカー文化の一端にある仕事術)の延長で、短時間の昼寝が注目される現象も見られる。しかしその一方で、労働時間の増加により地中海地方の国々に於いてもシエスタを行わない企業が増加しつつある。
日本
現代日本の場合、電車やバスによる通勤・通学をする者も多く、またこれらの交通機関においての治安も非常に良いため、その中で眠る者も多い。肉体労働の多い職種では、昼の食事の後、午後の作業開始までの間の短い睡眠をとる場合が多い。
座ったままで眠る行為は「居眠り」と呼ばれる。授業中、仕事中、運転中など、眠ってはいけない場所・場合で無意識のうちに居眠りをしてしまう例もある。夜の睡眠は、伝統的には体を横たえて布団の中(昨今ではベッドの中も多い)でとられるが、これは「寝る」(横になること)とも呼ばれる。
風呂の中での居眠りは溺死につながる事もあるため要注意である。
2001年2月に発表されたNHKの調査によると、日本人の平均睡眠時間は平日で7時間26分、土曜日で7時間41分、日曜日で8時間13分であった。
年をとると早寝早起きの習慣が身につくと一般に考えられている。しかし、本当に習慣であるのか、高齢者に多く見られる睡眠相前進症候群の症状であるのかは、容易には判断できない。
仏教思想と結び付けて、頭を北に、足を南に配置する形で寝ることは北枕と呼ばれ、忌避されている。
昼寝
最近、日本でも昼寝の効用について研究が行われている。昼寝を行うことにより、事故の予防・仕事の効率アップ・自己評価のアップなどが期待されるため、職場・学校などで昼寝が最近、奨励されるようになった。また、昼寝により、脳が活発になるため、独創的なアイデアが浮かびやすい環境になるという。
(昼寝におけるその他の研究報告)
30分以下の昼寝を習慣的にとる人は、それ以外の人に比べてアルツハイマー病にかかる危険性が0.2倍になるという報告がある。
昼寝後と前では最大血圧で平均8.6mmHg、最小血圧で平均15.6mmHgも血圧が降下したという報告もあり、生活習慣病予防も期待される。(広島大学)
(昼寝の方法)
目安としては午後1~3時ごろが良いとされる。(遅くとると、夜、眠れなくなることがあるため)
15~30分程度が良いとされる。1時間とると、逆に疲労になることがある。(30分以上睡眠をとると、多くの人が深睡眠に入り寝起きが悪くなるため。)
睡眠をめぐる言語表現
しばしば死は睡眠に例えられる。死を睡眠になぞらえた例には次のようなものがある。
永眠
the eternal sleep
また、「寝る」、「眠る」という語を含むことわざとして次のようなものがある。
果報は寝て待て
寝る間も惜しんで
寝る子は育つ(科学的・医学的に正しいが、ことわざとして語句通りの意味で用いた場合は誤用[18])
寝ても覚めても
寝た子を起こす
草木も眠る丑三つ時
猫鼠同眠
寝食を忘れる
寝るより楽は無かりけり 浮世の馬鹿が起きて働く
出典・ウィキペディアフリー百科事典。