「セクハラ教頭別講師にも」
「採用口利き」と交際迫る
土佐清水市の小学校で2022年度、教頭だった男性教諭(51)が20代の女性講師にしつこく交際を迫り、女性が体調を崩して退職した問題で、元教頭が20年度に別の20代の女性講師にも教員採用試験の口利きを持ちかけ交際を迫ったことが本紙取材で分かった。この講師も教員の道を去ったという。市教委は20年度に事態を把握しながら元教頭を教壇に立たせ続け、2人目の被害を防げなかった。
「市教委把握後も教壇に」
22年度に被害を受けた女性は、既婚者である元教頭から「自分の女にしてもっといい女にする」などとLINEで何度も送られ、教員採用試験で女性の口利きをしたように装った元教育次長名の手紙も渡された。
関係者によると、元教頭は20年度にも別の女性講師に同様の事案を起こしていた。
元教頭はこの女性が赴任した直後の4月から「ドライブに行こう」などと誘い、携帯電話に「すごく大人で魅力的な女ですね。 惹かれます」といったメッセージを送った。机に「先週よりもきれいだね」とメモを置いたこともあった。
不倫しているという中傷も受け、ストレスから病気になり今年1月に退職した。
さらに県教委幹部の名前を告げ、「(幹部は)採用試験で権力を持っているので紹介したい。 高知市に家があるので一緒に行こう。(女性の笑顔が見たい。好き」などと誘っていた。
女性は4月下旬、当時の校長に相談。 メッセージの内容を見た校長はセクハラ
と判断して叱責し、弘田浩三市教育長(当時)に口頭で報告していた。女性はその年度限りで学校現場を離れた。
ただ、市教委に20年度の案件に関する文書は残っていない。弘田氏は取材に「校長からの報告は全く覚えていない」とする。
現在の岡崎哲也教育長が1件目のセクハラを知ったのは昨年8月下旬で、現校長から2件目の報告を受けた際に併せて聞いたとい
う。しかし岡崎教育長も、昨年12月に県教委に報告した際は1件目には触れておらず、「(1件目は)終わった案件と思っており、詳しい内容も分からなかった」と説明する。
このため元教頭は教壇に立ち続け、2件目発覚以降の今年6月に現場を外され市教委付になった。2件目の被害を受けた元講師の女
性は、「元教頭が過去に同じようなことをしたと知っていれば、謝罪を受け入れる
ことはなかったと思います」と話した。
「教委に危機意識欠如」
土佐清水市の教頭のセクハラは、単年度契約で雇用が不安定な講師に対し、学校のナンバー2が教員採用試験での口利きをほのめかして交際を迫るという卑劣な手口だ。
2年のうちに2人が教員の道を断念しており、市教育委員会をはじめ、周囲の意識の低さが被害を広げた。責任は極めて重い。
元教頭の2件の行為を各校長はセクハラと判断し、叱責の上、それぞれ市教育長に伝えたという。しかし両教育長はいずれも県教委
に報告していない。
県教委が知ったのは、2件目の女性が休職した後の昨年12月上旬で、その際も1件目は報告されなかった。
県教委は元教頭の降格の申し出を受け、今春、市内の別の小学校に異動させた。結果として元教頭は今年6月に市教委付になるまでクラス担任を務めた。
こうした経緯に、保護者から「判断が浅はか」「なぜ担任になるのを止めなかったのか」と厳しい声が上がるのも当然だ。市教委、県教委とも元教頭の行為と被害の重大さを軽んじたと見られても仕方がない。
県教委担当課は昨年12月2件目の報告を受け、その後の調査で1件目を把握したが、長岡幹泰県教育長に情報を上げていない。長
岡教育長は1件目を知らずに、6月27日の県議会一般質問で2件目を「懲戒処分
を視野に入れるべき重大な「事案」と答弁した。
長岡教育長は「重大な事案」としながら、今春、元教頭を別の小学校に異動させている。この点、本紙取材に「『学校現場から外したらどうか』と助言をしても良かった。市教委との対話が不十分で、反省している」と述べるが、いかにもちぐはぐだ。
被害女性は「セクハラを繰り返すような、反省のない教員を教壇に立たせ続けた。教育機関がそのおかしさに気付いていないことが怖い」と訴える。 両教委はこの指摘をいったい、どう受け止めるのか。