・漢方薬Chinese herbal medicine かんぽうやく
西洋医学の医者30人に聞いた「プライベートでも使いたい漢方薬」が、テレビ番組で話題になっていました。
取り上げられた漢方薬は次の4種類です。
◇葛根湯(かっこんとう)
◇芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)
◇五苓散(ごれいさん)
◇加味逍遥散(かみしょうようさん)
これらの漢方薬を四回に分けて、含まれる薬草などについて調べてみることと致します。
ちなみに西洋医学の薬剤では、鎮痛とか、血圧を下げる、特定ウイルスのひとつの症状、病気に、直接的な治療に作用するといいます。
漢方薬は、何種類もの生薬、薬草を混ぜ合わせることによってできているため、幅広い症状を緩和するのを特徴としているといえるでしょう。それぞれに良さがあります。
三回目の今回は、五苓散(ごれいさん)第2類医薬品 について
漢方の原典としている傷寒論(しょうかんろん)、金匱要略(きんきようりゃく)に記載している漢方薬です。幅広い年齢層に用い、二日酔い、子供のノド(喉)の渇きがあり、尿量が少なく、はきけ、嘔吐、腹痛、頭痛、むくみなどのいずれかを伴う水様性下痢、暑気中り(しょきあたり:暑さ負け、熱疲労・熱けいれん・熱射病・日射病)等に用いています。
「五苓散」に含まれている5種類の生薬のうち、4種類の生薬、茯苓(ぶくりょう)を中心として沢瀉(たくしゃ)、沢瀉(ちょれい)、蒼朮(そうじゅつ)を、さらに蒼朮(けいひ)を加えた漢方薬です。
■茯苓(ぶくりょう)はサルノコシカケ科、枯れて4~5年したアカマツ、クロマツの地下15~30cmの根に発生、主に中国で産出しています。地表からは、わからないので枯れ松の付近を茯苓突きという先のとがった道具で地中に刺してその感触で採取しています。
菌核(菌糸が絡み合って硬くなったもの)の、かたまりで5~20cm、重量が100g~200gと大きく、不ぞろいで表面は濃褐色だか中部は白いです。傘状にならず子実体は、表面にできます。
βー1,3グルカン(多糖類)が多く漢方で外層を除いて用い健胃、整腸、鎮痛、鎮静、利尿、抗がん作用が認められ利用しています。
比較的体力があり、肩こり・頭重・めまい・のぼせがみられる人に月経不順、月経痛、月経異常、更年期障害に用いています。β-1,6結合をもつ多糖体 パヒマンPachymanが得られるパヒマランPachymaranに抗がん性があるとしています。
■沢瀉(たくしゃ)は匙沢瀉・匙面高(さじおもだか)の塊茎のことでオモダカ科、日本原産で北海道から東北北部の沢地や水田に生える多年草です。クワイと同じオモダカ科で根元から長い柄のあるサジのような形の葉を多数出します。8-9月の夏から秋、高さ約80cmの花茎を出し、茎先に花径15-20mmくらいの3弁花を輪生させ白色の小花を多数つけます。
根を掘り起こし、皮をむいて乾燥させた塊茎は沢瀉(たくしゃ)といい、利尿に用いています。
■猪苓(ちょれい)はサルノコシカケ科、ブナ、ナラ、カエデなどの根に寄生しています。チョレイマイタケ(猪苓舞茸)の地中に作る菌核のことで子実体が食用としている舞茸に似ていることから名づけられました。
猪苓は表面が黒く凸凹で、猪の糞に似て中国語で猪は、豚を意味し猪苓は、「猪の糞」を意味するといいます。
子実体は、菌核からマイタケのように発生し、中国では猪苓花といい、東北の地域では食用にしています。木材腐朽菌で栽培も容易にされているようです。トリテルペノイド、多糖類(βーグルカン)を含み漢方で利尿・解熱・健胃整腸・抗腫瘍・血小板凝集増強作用が認められ用いています。
■蒼朮(そうじゅつ)または白朮(びゃくじゅつ)は朮(おけら)の根茎です。キク科、日当たりの良い野原に草丈1mになる宿根草で自生しています。
葉は互生で楕円状で表面は無毛でつやがあり、裏は一面に綿毛でおおわれ、縁は細かい切れ込み状で柄があり、茎の下方から3~5裂に羽状に分裂しています。
秋に先端に白色あるいは淡紅色の花をつけ根茎はやや長く節があります。
食用には春先の4、5月を旬とし若芽、若葉を採取し汁の実、お浸し、和え物、揚げ物に用いられます。
世間のことわざとして「山で旨いは、オケラにトトキ(ツリガネニンジン)、里で旨いは、ウリ、なすび(茄子)」といわれています。
晩秋に太くなった根を乾燥させ、お正月の屠蘇散(とそさん)に、精油成分のアトラクチロン(Atractylon)に特異な芳香があり健胃剤として、漢方で蒼朮(そうじゅつ)といいホソバオケラの根茎が健胃・利尿・発汗・鎮静・血糖値降下作用などで用います。
夏には蒼朮(そうじゅつ)を燻した煙で蚊(か)を追い出したり梅雨の時の湿気払いやかびの防止にも使用していました。蒼朮(:ホソバオケラの根茎)は発汗に作用し、 白朮(びゃくじゅつ:オケラ・オオバナオケラの根茎)は止汗に作用すると本草綱目 (1578年 漢方薬の古書) に記載しています。
■桂皮とはシナモンCinnamonのことです。クスノキ科、漢方では、樹皮を桂皮(ケイヒ)、若い小枝を刻んだものを桂枝(ケイシ)と呼んでいます。
桂皮に含まれる有効成分のケイヒアルデヒドは、香りの成分で体内の水分を調節してむくみを改善したり、血流を良くして冷えを改善します。
樹皮、葉と若い枝から精油し特有の芳香、辛味のある黄色の液体でニッキ(肉桂に由来)飴、芳香剤、防虫剤に使われ合成でも製造しています。
民間療法で健胃、発汗、解熱、鎮痛に用います。
「五苓散」に含む5種類の生薬のうち、4種類の生薬、茯苓(ぶくりょう)を中心として沢瀉(たくしゃ)、猪苓(ちょれい)、蒼朮(そうじゅつ)は、利尿作用があり、体内の水分の代謝が改善できむくみなど体の一部に水が偏ってしまう状態を改善するようです。
子供は成人に比し、水分量が多く、吐気、下痢が出やすいので効き易いとしています。
ほとんど副作用の出ない使いやすい漢方薬の1つとしています。水分循環をよくし、はき気や嘔吐、むくみ、下痢などに用います。
桂皮は軽い胃痛、頭痛やめまい、健胃によいとしています。
二日酔いで飲みすぎにより胃腸にたまった水、アルコールの排泄を促す作用があります。
口が渇き、尿量が少ないことを目安として広くに用いることができます。今日では 乾燥エキス剤を用いるのが一般的です。
通常、成人1日6~7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に服用します。4歳未満での服用は避けたほうがよいとの見解があります。年齢、体重、症状により適宜増減しています。
一般に、漢方薬は食前もしくは食間(空腹時)に飲みます。顆粒は、お湯で溶かして飲むようにします。
症状が強くむかつくときは、そのまま水で服用することもあるようです。 もし、食欲がなくなったり、吐き気を催すようでしたら、食後でもよいとしています。漢方の特徴は、体全体をみるということです。
五苓散は茯苓(ぶくりょう):3~4.5g、沢瀉(たくしゃ):5~6g、猪苓(ちょれい):3~4.5g、蒼朮(そうじゅつ)または白朮(びゃくじゅつ):3~4.5g、桂皮(けいひ):2~3g を配合しています。
添加物として乳糖、白糖、D-ソルビトール、セルロース、澱粉、クエン酸、安息香酸Na、パラベン、ポリソルベート80、エタノール、その他の成分を飲みやすさ、保存上から加えていることがあります。
二日酔いや子供の体調不良に「五苓散」、大人から子供まで幅広い年齢層が初期症状に安心して使える漢方薬なようです。
薬草としているものは、野菜といわれるものと異なることは、その効果が早くに現れるということではないでしょうか。
野草、野菜から薬草を見出し、さらに、1804年にモルヒネ(ケシ)、1897年アスピリン(発見当初ヤナギの樹液より採取:鎮痛作用)に始まる西洋医学ももとは、アスピリンの柳の樹液などです。そこから精製度の高いものが生まれ、多くの合成品が生まれるに至っています。
食事の大切さが認識されアメリカの食事指針で1977年のマクガバン報告があります。
現代の医学は、薬や手術といったことだけに片寄り過ぎ、栄養に盲目的な片目の医学であった。栄養に盲目的でない医学に作りかえる必要がある。としています。
ご愛読戴きましてありがとうございます。よりよい情報をお届けしてまいります。