・漢方薬Chinese herbal medicine かんぽうやく
その四
西洋医学の医者30人に聞いた「プライベートでも使いたい漢方薬」が、テレビ番組で話題になっていました。
取り上げられた漢方薬は次の4種類です。
◇葛根湯(かっこんとう)
◇芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)
◇五苓散(ごれいさん)
◇加味逍遥散(かみしょうようさん)
これらの漢方薬を四回に分けて、含まれる薬草などについて調べています。
ちなみに西洋医学の薬剤では、鎮痛とか、血圧を下げる、特定ウイルスのひとつの症状、病気に、直接的な治療に作用するといいます。
漢方薬は、何種類もの生薬、薬草を混ぜ合わせることによってできているため、幅広い症状緩和を特徴としているといえるでしょう。それぞれに良さがあります。
四回目の最終回は、
◇加味逍遥散(かみしょうようさん)第2類医薬品についてです。
主に更年期障害に用います。冷え性、のぼせ、肩こり、疲労感、便秘、頭痛、月経不順などの自律神経失調症状、虚弱体質などがあります。
加味逍遙散は、漢方の1000年前の著書である『和剤局方(わざいきょくほう)』に記載し血液循環をよくして体をあたためる一方、のぼせなど上半身の熱をさましをします。
ホルモンのバランスを整えることに働き、体が虚弱で疲れやすく、イライラや不安感のある人が服用するとよいでしょう。
柴胡(さいこ)、芍薬(しゃくやく)、蒼朮(そうじゅつ)または白朮(びゃくじゅつ)、当帰(とうき)、茯苓(ぶくりょう)、山梔子(さんしし)、牡丹皮(ぼたんぴ)、甘草(かんぞう)を主として、製品によって生姜(しょうきょう)、薄荷(はっか)を処方することもあり8~10種もの薬草が使われます。
乾燥品を煎じたり、エキス、顆粒とし用いられます。
■柴胡(さいこ)はセリ科、山野に自生する多年生の草本で草丈40~60cmになります。ミシマサイコ またはその変種の根を柴胡(さいこ)といっています。
葉は、細長く互生(ごせい)し、湾曲して数本の葉脈(ようみゃく)があります。
花は、9~10月ころに茎頂(けいちょう)に、小さな5弁花で内側に曲がった黄色の多数の複散形花序(ふくさんけいかじょ)をつけます。
果実は、長さ2.5cmくらいの楕円形で、褐色に熟します。
11月頃に全草、根を掘り起こし、乾燥させ煎じて生薬として用いています。サポニン、フィトステロールなどを含み肝機能を調整し、肝炎、黄疸など解熱、解毒、鎮痛、消炎作用があり、食欲不振、胃炎、風邪に使われます。
■芍薬Peonyはボタン科、4~5年経過した根を秋から冬にかけて掘り起こし主成分ペオニフロリンPaeoniflorin、アルビフロリンAlbiflorinのモノテルペン配糖体を含み鎮静、鎮痙、鎮痛、抗炎作用があり筋肉、腱の痙攣、腹痛、婦人病に用いられます。
■蒼朮(そうじゅつ)または白朮(びゃくじゅつ)は朮(おけら)の根茎です。キク科、日当たりの良い野原に草丈1mになる宿根草で自生しています。
晩秋に太くなった根を乾燥させ、お正月の屠蘇散(とそさん)に、精油成分のアトラクチロンAtractylonに特異な芳香があり健胃剤として、漢方で蒼朮(そうじゅつ)といいホソバオケラの根茎が健胃・利尿・発汗・鎮静・血糖値降下作用などあるとして用いています。
蒼朮(ホソバオケラの根茎)は発汗に作用し、 白朮(びゃくじゅつ:オケラ・オオバナオケラの根茎)は止汗に作用すると本草綱目 (1578年 漢方薬の古書) に記載です。
■当帰(とうき)はセリ科、多年草で50cm~1mほどに生育し茎は赤く葉は複葉で縁にぎざぎざがあります。独特の芳香を有し6~8月に白い小さな花を無数にロート状に咲かせます。
根を乾燥させ鎮痛、鎮静、解熱、抗炎、抗菌、末梢血管を拡張させるとし古くから代表的女性の薬草として冷え性、滋養強壮、更年期障害、婦人病に使われています。
漢方で当帰芍薬(とうきしゃくやく)はよく知られます。
■茯苓(ぶくりょう)はサルノコシカケ科、βー1,3グルカン(多糖類)が多く漢方で外層を除いて用い健胃、整腸、鎮痛、鎮静、利尿、抗がん作用が認められ利用しています。
比較的体力があり、肩こり・頭重・めまい・のぼせがみられる人に月経不順、月経痛、月経異常、更年期障害に用いています。β-1,6結合をもつ多糖体 パヒマンPachymanが得られパヒマランPachymaranに抗がん性があるといわれています。
■山梔子(さんしし)は、梔子(くちなし)アカネ科に属し、果実を天日乾燥させた生薬です。
原産地は、中国。温暖な地域を好み常緑低木高さ2mぐらい、雨期の6月に白い花を咲かせ甘いふくよかな香りを漂わせます。
10~11月に黄橙色のアーモンド型の実をつけ果実からの黄色の色素(クロシン:カロチノイド系、水溶性)を食品(きんとん、中華そば、漬物、飲み物、菓子)の天然着色料、また染料として古くから使用してきました。
漢方で山梔子(さんしし)として鎮静、消炎、止血、打撲、解熱、利尿に用いクロシンの黄色の色素が血行をよくし、冷え性改善、脳を活性化させます。
■牡丹皮(ぼたんひ)は牡丹の根皮(こんぴ)でボタン科、日本には奈良時代中期(730年代)に空海により薬用として中国より持ち帰ったのが最初といわれます。
漢方では地中に四方に広がる根皮で、根の芯の部分を除いて皮を乾燥させ牡丹皮とし利用、血の巡りをよくする作用の強い生薬とし、女性用に体力のある場合地黄、当帰とともによく配合しています。
妊娠初期、妊娠中、授乳中には、作用が強くあまり用いられていません。
牡丹皮(ぼたんひ)にモノテルペン配糖体のペオニフロリンPaeoniflorin や芳香族化合物のペオノールPaeonol などを含み消炎、鎮痛、鎮静、浄血、利尿によいでしょう。
■甘草Licoriceはマメ科、西アジアを主産地とし薄黄色のちょうに似た形の花が咲き、卵型の葉をつけ高さ70cm程度の多年草です。
独特の甘味(砂糖の50~200倍)のある根です。
甘草は、漢方薬として咳止めに、抗炎(グリチルリチン酸二カリウムDipotassium glycyrrhizate)、鎮痛、鎮咳(ちんがい)、健胃、抗アレルギー、保湿に用いられます。
グリチルリチン酸(Glycyrrhizinate,Glycyrrhizic acid )が代謝加水分解されグリチルレチン酸Glycyrrhetic acid となり水分を体内に貯留する低カリウム血症を伴う作用があるため高血圧症では使用を避けた方が良いといわれています。
■生姜・生薑Gingerはショウガ科、熱帯アジア原産です。
漢方で根茎を蒸して乾燥させたものを乾姜(かんきょう)として辛味のジンゲロールGingerol、ジンゲロンZingerone(結晶)、ショウガオールShogaolが新陳代謝を高め、発汗作用があります。
黄色の色素クルクミンが肝臓の働きを強くし、アミラーゼ、プロテアーゼなどの分解酵素が微量含まれ消化、吸収を助けます。
香りの精油成分は主にジンギベレンZingibereneを含み他にカンフェンCamphene、シネオールCineole、ゲラニオールGeraniol、ガラノラクトンGalanolactoneが血流をよくし、保温効果が高く、痛みを和らげ消炎作用を有し風邪引き、咳、冷え性に生姜湯、湿布にし利用しています。
■薄荷Peppermint(はっか)はシソ科、西アジア、日本、ヨーロッパを主産地とする多年草で交雑しやすく種類が多く存在しています。
大別してハッカ、ペパーミント、スペアミントSpearmint 、ベニーロイヤルミントPennyroyalに分けられます。
近年は、石油よりメントールMentholが合成され市販の8割が合成品といわれ、天然のものの多くは中国、インドからの輸入です。
清涼感のあるよい香りが葉茎、花より精油されその成分(メントール)が食品、化粧品、医薬品で消臭、鎮痛、整腸、目薬、歯磨き、入浴剤、殺菌など多くのものに利用しています。
柴胡(さいこ)3~9g、芍薬(しゃくやく)3g、蒼朮(そうじゅつ)または白朮(びゃくじゅつ)3~9g、当帰(とうき)3~12g、茯苓(ぶくりょう)3~9g、山梔子(さんしし)2~6g、牡丹皮(ぼたんぴ)2~6g、甘草(かんぞう)2~3gを主として、
製品によって生姜(しょうきょう)1~3g、薄荷(はっか)1~3gを処方することもあります。
乾燥品を煎じたり、エキス、顆粒としたものを用いています。
成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間(食事と食事の間)に服用します。
肝機能を強化する柴胡(さいこ)を中心として、更年期障害の症状に最も適しているといえます。
重い副作用は、ほとんどみられていませんが、甘草の大量服用により、浮腫(むくみ)を生じたり血圧が上がってくることがあります。「偽アルドステロン症」と呼ばれる症状です。
ひどい倦怠感、強い吐き気、発熱、食欲不振、皮膚や白目が黄色くなる、といった症状の肝障害の報告があるようです。
漢方では、血流の異常を「お血(おけつ)」および「血虚(けっきょ)」という概念でとらえます。「お血」は血流停滞、「血虚」は血流不足としています。
更年期障害、女性の月経トラブルを含め、そのような血流異常(血の道症)を改善する『加味逍遥散』の漢方薬剤が使われています。
◇葛根湯(かっこんとう):免疫力の強化【麻黄】・風邪
◇芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう): 筋肉の緊張を緩和
◇五苓散(ごれいさん):一部のむくみ改善 ・こどもの体調不良
◇加味逍遥散(かみしょうようさん):更年期障害
これらの生薬の効き目は、血流改善にあるようです。甘草の大量に用いると副作用があることから妊産婦、持病のある方は飲用にさいして注意する必要があります。
薬草としているものは、野菜といわれるものと異なることは、その効果が早くに現れるということではないでしょうか。
野菜から薬草が見出され、さらに、モルヒネ、アスピリン(発見当初ヤナギの樹液より採取:鎮痛作用)に始まる西洋医学ももとは、アスピリンの柳の樹液です。そこから精製度の高いものが生まれ、多くの合成品が生まれるに至っています。
食事の大切さが認識されアメリカの食事指針で1977年のマクガバン報告があります。
現代の医学は、薬や手術といったことだけに片寄り過ぎ、栄養に盲目的な片目の医学であった。栄養に盲目的でない医学に作りかえる必要がある。としています。
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