縁起笑店

縁起の道も招き猫から
陶芸家猫社長のつれづれコラム
横浜の縁起村から伊豆の満腹村に移住

洋書、翻訳者で読み比べたら

2011-01-08 | Weblog
柴田元幸訳の「紙の空から」からを読んでいる。英語で書かれた海外のいろいろな小説家の短編集だ。
ところが期待していたのに冒頭の小説からつまらない、筋がどうとかではない。とにかく読みにくい。
その理由がわかった。
「紙の空から」にジュディ・バドニッツのdirectionsが入っていた。偶然猫社長はバドニッツの短編集を
持っていてその中にもこのdirectionsがあることに読んでいて気がついた。
directoinsは「紙の空から」では題名が道順になっている。バドニッツの短編集では道案内。
冒頭読み比べ。
ここは多くの顔を持つ街だ。折り重なりながら、暗い片隅まで伸びていく。ネオンサインとアスファルトの
指を広げ、魔法の絨毯のようにみずからを開く。日ごとに街は変わる。街の中心には脈打つ心臓が
あるが、どこが中心なのか誰も知らない。
ナタリーは実際的な女の子である。お金とか、日常の雑事とかに関してではない。心に関して
実際的なのだ。(柴田訳)
ここはいくつもの顔をもつ街だ。幾重にも折りたたんだ壁の奥に暗い角を隠している。街はネオンと
アスファルトの指を細く長く伸ばす。魔法の絨毯を広げるように。ほどけて開く。街は一日一日
姿を変える。中心には心臓が脈打っているがその中心がどこにあるのか誰も知らない。
ナタリーは堅実な娘だ。お金や日々の暮らしのことではない。自分の心に関して堅実なのだ(岸本佐知子訳)

柴田訳は王様みたいにほぼ直訳なんだろう。高速道路の星だ。これでは読解力の乏しい猫社長は
面白く読めない。
それにしても岸本さんはすごい。きっとそれほどでもない洋書も岸本佐知子さんの手にかかれば
魔法をかけて面白い作品に仕上げてしまうのだろう。
これから洋書は翻訳者で選ぼう。ね、ピノコ。