金正恩委員長が完工した順川リン酸肥料工場(平安南道) でテープカットしている映像を公開するなどして、北朝鮮当局は金委員長が健在であるとアピールしているが、その映像では不思議なことに誰もマスクを着用していない。
同工場は金委員長が今年の1月7日に訪問したとされ、今年最初の現地指導場所だったのだそうだ。
4月15日に建国の父で祖父である金日成主席の108回目の生誕祭行事(北朝鮮では太陽節という最も大切な国家行事なのだそうだが)を欠席し、3週間姿をみせなかった理由についても一切の言及もなし。
■マスク着用は?
医療体制が貧弱な北朝鮮ではこれまで、「今のような非常時にマスクを着用しないのは国に罪を犯すほどの深刻な社会的、政治的問題になる」などと、必死の防疫に努め、国家の最高指導者がこれに反していては矛盾しているにもかかわらずである。
マスク着用で歩く北朝鮮市民。
脱北者の人権運動家、池成浩(チ・ソンホ)未来韓国党比例代表で韓国の国会議員に当選した人物は1日、「北朝鮮のお正恩国務委員長が先週末に死亡したようだ」と主張しており、「北の内部情報筋を通じて確認した結果、金委員長が最近、心血管関連の手術を受けた後、ショックや後遺症で死亡したようだ」「金委員長の死亡を99%確信する側に傾いている。生きている可能性が1%ほどあり、断定するのは難しいが、奇跡はないようだ」と述べ、「金委員長の死亡推定場所は分からない」と語った。
どうやら今回の映像は過去に取られたものか、合成映像か、金委員長の影武者を使った映像ということらしい。
■北朝鮮の現状
WHOに新型コロナウイルスが感染者が報告されていない国として、4月15日の時点で国連加盟国193カ国の内16カ国で感染者の報告がなく、最初に感染爆発が起きた中国との国境を接している国では北朝鮮とタジキスタンで「感染者ゼロ」であるとされてきた。
しかし今月に入り、タジキスタンでも感染者がみつかり、5月2日現在感染者15人と報告されている。一方の北朝鮮は世界に向けては相変わらず「自国内の感染者は0」という主張を続けている。
■中朝国境に始まって感染者は5万人?
北朝鮮は「感染者はゼロだが隔離は2.5万人超」などと報じているが、韓国の脱北者組織「北朝鮮人民解放戦線」の報告書(4月10日付)をもとに産経新聞(4月26日付)は、4万8528人が隔離され267人の死者が出ていると報じた。
既に中国との国境地帯に駐屯する北朝鮮軍の国境警備隊で新型コロナウイルスの感染がまん延し、一部の部隊は壊滅状態に陥っているとも報じられている。
「感染拡大の舞台となっているのは、両江道(リャンガンド)の道庁所在地、恵山(ヘサン)から鴨緑江沿いに金正淑(キムジョンスク)郡までの国境を守っている、第25国境警備旅団第1連隊で川向うは中国・吉林省の長白朝鮮族自治県という部隊らしい。その中の第5中隊には指揮官と兵士合わせて32人が配属されているが、高熱と咳の症状が現れている者が20人に達し、ほぼ壊滅状態となった」
「感染が始まったのは3月の中旬から20日頃にかけてと見られ、同中隊の士官長が、ひどい頭痛、咳、喀血の症状で、金正淑郡人民病院に緊急搬送され、感染は他の中隊にまで広がり、4月11日時点で連隊は勤務組織の編成すらできない状態に陥っている」など。
北朝鮮当局は集団感染を起こした第1連隊のみならず、第25旅団全体に隔離命令を下したが、国境警備を行う補充人員を確保できず、勤務を継続させる措置を取っているのそうだ。
軍医局は3月3日「1~2月に180人が死亡し、3700人を隔離している」との情報を最高司令部に報告しており、死者は両江道の他、中国と国境を接する平安北道(ピョンアンブクト)、慈江道(チャガンド)、咸鏡北道(ハムギョンブクト)に駐屯する国境警備隊で集中的に発生したと報じられている。
■北朝鮮の防疫体制のこれまで
医療体制が脆弱な北朝鮮はウイルス流入防止のため中国の武漢封鎖よりも1日早い2020年1月22日までに中国からの観光客の受け入れを全面停止。
1月30日には朝鮮労働党と政府の緊急措置によって構成された「非常設中央人民保健医療指導委員会」が、新型コロナウイルス感染症の危険性がなくなるまで衛生防疫システムを「国家非常防疫システム」に切り替えると宣布。
国家非常防疫システムの司令塔になった非常設中央人民保健医療指導委員会によって、中央政府と道・市・郡に非常防疫指揮部が組織。
各非常防疫指揮部は国境や港湾、空港など外国との出入り口での検査・検疫に取り組み、30日以降の新たな入国者は全て15日間隔離。1月13日以降の入国者も遡って検診を受けさせるという徹底ぶりだった。
住民を対象とする医療監視も強め、感染が疑われる人々の早期発見と入院・隔離政策を始め、2月1日には北朝鮮に駐在する外交官や国際機関職員などの外国人に対して、大使館と外交官区域を離れることを禁じ、国境を封鎖。
1月31日までに中国と北朝鮮を結ぶ全ての航空便と列車を停止する措置を決定し、2月1日までにロシアとの間の全ての航空便と列車を停止する措置も決定。
換気・手洗い・マスク着用が各地で宣伝・奨励。
2月6日には平壌市衣料工業管理局衣料技術準備所がマスク生産の準備を始めたことが報道され、マスクの増産に着手。
2月22日に北朝鮮の朝鮮労働党機関紙、労働新聞で、新型コロナウイルス感染予防のため、屋外や人が集まる場所では必ずマスクを着けるよう訴えて、「今のような非常時にマスクを着用しないのは国に罪を犯すほどの深刻な社会的、政治的問題になる」とした。
しかし外国に出張していた北朝鮮人が帰ってくることもあったため、入国者がゼロになったわけではなく、貿易も縮小しつつ続けられ、ウイルスは容赦なく栄養状態の悪い北朝鮮の国民の間にひろまっていったらしい。
北朝鮮国営メディアの朝鮮中央通信(KCNA)と労働新聞は2日までに、、「最高指導者である金正恩委員長が金与正と共にメーデーを祝う催しに登場し順川リン酸肥料工場の完成に合わせテープカットを行った」と報じた。
4月11日の朝鮮労働党政治局会議を最後に公の場に姿を現さず、4月15日には祖父・金日成主席の108回目の誕生日(北朝鮮では太陽節)行事にも出席せず、「身辺異常説」が提起されていた。
順川リン肥料工場は金委員長が1月7日に既に訪問し、今年最初の現地指導場所とされているそうだ。今回の映像はいつのものなのだろう?
服装は真冬のものではないが、今のこの時期であればマスクをしていないはずもなく・・
4万人(5万人?)と言われる感染者を抱えている北朝鮮の指導部はもとより、米、中、ロシア、韓国など周辺国にとっても、今このタイミングで北朝鮮が体制崩壊すれば制御不能なカオス状態で飢餓状態の北難民の大量流出や、クーデターの勃発による不測の事態が起きるなど周辺国に影響が及ぶ状況が懸念され、当面北は現状のままがよいというこで思惑が一致しているということらしい。
引用元:
妹の金与正でしょうか後ろに立つ女性が膝上のスカートで、1月の戸外の服装とは思えません。
この写真は時期が違うように思われます。
泉城さんがご指摘されておられる様に、服装などから、北朝鮮が公開した映像は冬の訪問の際の映像ではなさそうですし、今回の完工式のテープカットを行っているのは数人いる金正恩の影武者の一人だと思います。(動画映像では左耳の付け根にぼかしが入っており、だからこそ逆に本物でないということかと思います)
北の正恩健在アピール報道に対しトランプ大統領は「適切な時期に話す」とコメントを避けつつも、後で I, for one, am glad to see he is back, and well! とツイートしていましたね。当面は影武者で体制維持してもらっていた方が今は都合がいいということだと思います。