毎日が観光

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アンドレア・シェニエ

2005年12月01日 10時51分27秒 | 音楽
 わかりやすいコンセプトに基づいた演出が、舞台をよく見せていたと思います。
 舞台を閉じる斜めの幕から、幕間に映し出される映像まで、ギロチンずくめ(舞台をしきるポールや十字架まで斜め、と御念が入ってます)。強く迫ってくるフランス革命の血塗られた側面。イタリア人って、たまにこういう形でフランスを批判する。ジョルダーノのこのオペラもそうだし、ヴェルディの「シチリア島の夕べの祈り」もそう。あるいは現代においては「アルジェの戦い」か。
 他にも回転舞台を多用した舞台割り、回転するたびに天国と地獄のような落差が展開され、ダイナミックな舞台表現に心を奪われました。
 幕間のドラムロールがちょっとうるさかったり、マイクを通した表現や花火の効果音など疑問点も多いのも確か。もっとも、オペラ上演においてこういうことに不慣れなので、単に拒否反応を起こしているだけなのかもしれませんが。
 大きな感情を抱かせるラスト。これを希望ととるか、それとも、大人たちが倒れたのち、まだ国旗を担う子どもたちの姿に悲劇を感じるか、人によって解釈は分かれるかもしれません。明るい光と白い舞台(全体の基調だったけれど)に照らされた子どもたちの姿は、多くの人にとって希望を意味するものと映るでしょう。
 それにしても、第一幕で羊飼いに扮する貴族たち。ジャン・ジャック・ルソーの「自然に帰れ」という思想を、マリー・アントワネットあたりがどう解釈したのか、晩餐会などで羊飼いの少女のコスプレをするのが流行ったのだけれど、こうなっては社会体制は末期。この第1幕は、そうした革命前の退廃的な空気をよく描いていたように思います。
 さて、音楽は、もう、お客さん、みなさん、正直なんだからあ、と苦笑してしまいました。タイトル・ロールを演じたタナーよりも、代役でジェラールを歌ったレイフェルクスの方が激しく拍手を受けていました。これじゃ、カルメンはだめだけどカルメン以外の歌手はまあまあだった「カルメン」だとか、カラフ以外は好演だった「トゥーランドット」とかと一緒。アンドレア・シェニエがいまいちの「アンドレア・シェニエ」なんて。ルカーチは高音が鋭く耳に刺さる気がしたけれど、好演。マデリン役は役得もあったかもしれないけれど、その歌唱は胸に響きました。
 最後に指揮。鋭いリズムを刻み、血なまぐさい舞台とよくあってはいたものの、歌う、という感じはあまり感じられませんでした。
 どこかちぐはぐした印象はいなめないものの、全体を通してみれば、まあまあだったかな、という感じの舞台でありました。さ、これで2005年のオペラは終了。2006年モーツァルトの「魔笛」まで少し休憩です。さみしい。
(11月29日公演)
コメント
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