◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
南アルプス:光岳・聖岳縦走(12)
(アルパインツアーサービス)
飯田線と東海道新幹線
2007年9月1日(土)~5日(水)
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
←引き続き南アルプス:光岳・聖岳の記事をご覧になる場合は,
左の『CATEGORY』欄から,
「南アルプスの山旅」を選んでクリックして下さい。
※9月8日(土)の「鎌っこ倉ぶ例会」の様子,
および9月9日(日)の「東海道五十三次宿場巡り」の様子は,
この「光岳・聖岳」の連載が終わった後,掲載します。
第5日目:9月5日(水)(つづき) 晴
<便ヶ島から飯田へ>
■ワゴンタクシーに分乗
11時04分,私達はワゴンタクシー2台に分乗して,便ヶ島を発車する。ここから飯田市まで約2時間の行程である。タクシーは凸凹した砂利の林道をひた走る。車体がガタガタと揺れて,乗り心地は余り良くない・・・・が,揺られる内に,今年6月に訪れたパプアニューギニアの国道を走ったときのことを思い出す。パプアニューギニアの悪路は,想像に絶する。とても,こんなものではなかった。それに較べれば,まだまだ天国と地獄ほどの差がある。
<便ヶ島でワゴンタクシー2台に分乗>
タクシーは切り立った深い谷の中腹を等高線に沿うようにクネクネと走る。同じような風景が延々と続く。それでも,次第に標高が下がって,何時しか谷間の彼方此方に,民家が見え始める。このような山間に,よくもまあ人が住んでいるなと感心する。
■どんなルートで帰るか迷う
飯田から帰宅するには,いくつかのルートがある。飯田駅前から高速バスに乗って真っ直ぐ新宿へ戻るのが一番楽なようである。飯田駅前から1時間に1本の割合でバスが出ている。ただ,新宿から遅い通勤時間帯に,満員の湘南新宿ラインに乗って大船まで帰らなければならない。それには何としても風呂に入って,汗くさい身体を洗い流して,着物を着替えないと周りの方々が迷惑する。
次いで,飯田から飯田線と中央本線を乗り継いで帰るルートがある。これも遅い通勤時間帯にサラリーマンと乗り合わせなければならない。飯田線の電車は1時間に2本程度出ている。 第3に,特急電車で飯田から豊橋に出て,新幹線をのりついで小田原へ。そこから東海道本線に乗って大船に戻るルートがある。少々費用がかかるが,通勤時間帯も大方のサラリーマンと反対の方向の電車に乗るし,電車も空いている。それに,遠い昔,学生時代に,わざわざ豊橋から辰野まで飯田線の電車に乗ったときの記憶がある。
あのとき,車窓からの美しい風景に見とれていたような気がする。あれから,もう50年も経っている。これを機会に,もう一度,飯田線の風景を楽しみたい。ただ,特急列車は,飯田発13時33分と,15時47分の2本しかない・・・13時33分に間に合えば良いが風呂には入れない。風呂に入れば,15時47分に乗るしかない。それでは遅すぎるので,やっぱり高速バスで帰ろうか,それとも中央本線経由にしようか・・・ こんな贅沢なことを悩みに悩みながら,タクシーに身を任せている。
<天竜川を眺めながら帰省>
■飯田に到着
タクシーが便ヶ島を発車してから,そろそろ2時間近くになる12時50分頃,ようやくタクシーは,行く手に天竜川の平野が見渡せるところまで来た。眼下に飯田市の市街地が見え始める。
「待てよ・・このまま行けば,13時33分の特急に間に合うかな・・・そんなら風呂にはいるのを止めて,特急に駆け込み乗車しようか・・・でも,やっぱり風呂に入りたいな」
のグルグル問答が頭の中を激しく往来する。
途中で赤信号があると,えらくイライラする。ほんの暫くだが,遅いバスが私達の前をノロノロと走る。私の頭に血が上る。遅いぞ,遅いぞと心の中でタクシーをむち打つ。やがて,天竜川に架かる大きな橋を渡り,登り坂を登って,意外に早く,12時40分にホテル「なかや」に到着する。
私は真っ先にタクシーから外に飛びだす。
Tガイドが締めくくりの挨拶をする。挨拶が終わるとすぐに,4階の風呂に飛び込んで,ソソクサと汗を流し,髭を剃る。ほんの5分程で風呂を飛びだす。旅館に預けていた荷物を無理矢理リュックに入れて,13時02分にホテル「なかや」を飛びだす。
やや登り坂になっている通りを駅へ急ぐ。たちまちの内に汗をかき始める。何のために風呂に入ったのか分からない状態になるが,新しい汗はそれ程臭わないぞと言い聞かせて,13時13分に飯田駅へ飛び込む。
■バカ丁寧な出札掛
飯田駅の出札口は1箇所しかない。先客が2人居る。最初の方は何処かの会社の事務員である。飯田から豊橋までの回数券を買っている。駅員がバカ丁寧に説明しながらのろのろと売っている。次は私達のお仲間である。「大人の休日」の書類を出している。駅員はバカ丁寧に書類にチェックを入れて,やおら発券機を操作する。そして出てきたキップを一枚一枚,これは特急券,これが乗車券・・・と説明している。やっと私の番,同じようにこれが特急券,これが新幹線乗継,これが乗車券・・・と説明する。
「もういいから,早くキップをくれ」
と心の中で怒鳴る。
■特急列車「伊那2号」
漸くキップを購入した私は,13時25分に特急列車「伊那2号」に飛び乗る。3両編成の綺麗な電車である。私は自由席の特急券を購入していたので,一番先頭の車両中央の左側の席に座る。車内は空いている。私を含めて4人しか乗っていない。席について漸く落ち着くと,
「この列車には車内販売はありません。お飲物などは駅の自動販売機をご利用下さい・・」
というアナウンスがある。
<特急伊那2号の車内:ガラガラに空いている>
アナウンスを聞いた途端に,まだ昼飯を食べていないことに気が付く。駅の売店を利用しなさいと言われても,発車まで2分しかない。もうどうにもならないので観念する。 列車は定刻13時33分に飯田駅を発車する。
私は,リュックの中の品物を出して,整理しながらパッキングをし直し始める。発車すると直ぐに,白い制服,白い帽子を被った車掌が検札に来る。
■天竜川に沿って飯田線を下る
発車して間もなく車窓から,広大な飯田盆地が見下ろせるようになる。私も荷物のパッキングを終えて,やっと落ち着きを取り戻す。
リュックから賞味期限をとっくに過ぎてしまったパンを取りだして,試しに一囓り食べてみる。少々固くなっているものの別に悪くなっている様子もないので,そのまま食べてしまう。それに第1日目に飯田駅前のスーパーで購入したパブリカが1個残っていたので,これも食べる。次いで,5日前に大船駅前のコンビニで購入した魚肉ソーセージ1本を食べる。これで今日の昼食代わりにする。
やがて列車は長い鉄橋を渡る。肝心の天竜川は進行方向右側の車窓に代わる。私は車掌に断って,右側の席に移動する。車窓から美しい天竜川の風景を心ゆくまで堪能することができた。
<天竜峡駅>
私の乗った列車は特急である。でも随分と沢山の駅に停車する。飯田を出てから,天竜峡,温田(ぬくた),平岡,八窪,中部天竜,湯屋温泉,本長篠,豊川,豊橋と,長野県,静岡県,愛知県に跨る駅を通り抜ける。沿線には,こんな山奥に・・と思うほど意外に大きな街があるのに驚く。
<車窓から天竜川を望む>
単線の飯田線も,豊川から先は複線になっているようである。電車の本数も随分多くなっているらしく,また乗客も随分と増えてくる。
■東海道新幹線で帰着
16時10分,豊橋に到着する。豊橋からは16時32分発「こだま586号」に乗り継ぐ。まだ少々時間がある。私は新幹線の待合室の売店で,一番安い駅弁,「三河路」を購入する。特段に腹が空いている訳ではないが,ここ数日,本当に美味しい食事に有り付いていない。勿論,ガイドの調理した食事や山小屋の食事は美味しかったが,毎日続けると,何かが物足りない。私は,ユックリと走る「こだま」を選んだ。「こだま」の禁煙席に座って,外の景色を眺めながらユックリと駅弁を味わいたかった。
<豊橋駅の駅弁>
定刻に「こだま」に乗車する。予想通りに空いている。私は山側で窓際の席に座る。そして,席の前のテーブルに,先ほど買った駅弁を置く。
「さて,何時頃から,この駅弁を賞味しようか」
と一人悦に入っている。
やがて,車内販売のワゴン車が通りかかる。私は,コーヒーをオーダーする。そして,香しいコーヒーをユックリと味わいながら,次から次へと後に流れていく外の景色を,ボンヤリと眺めている。
ゆったりとして落ち着いた時間が過ぎていく。こういう一瞬のことを至福の時と言うのだろう。私は何とか光岳と聖岳に登ることができた。念願の山行を成就して,今,満ち足りた気持で,車窓の風景を楽しんでいる。
私は,やおら駅弁を開く。日の丸弁当の右側にエビフライ,シャケの切り身,山菜などが並んでいる。
「美味しい!・・・兎に角,美味しい!」
目的を達成した後,一人で旅をする。こんなに素晴らしいことはないなと感激しながら満ち足りた気持のまま旅行を続ける。
列車が東京に近付くに連れて乗客が増えてくる。沼津を過ぎると,ついに私の隣の席にも見知らぬ客が座る。この辺りから,私も通常の旅行と同じ気分になってくる。駅に停まるごとに「のぞみ」や「ひかり」に追い抜かれるが,それでも意外に早く18時16分に小田原に到着する。
小田原で東海道本線,大船でモノレールに乗り換えて,19時30分頃帰宅。
やれやれ,これで一息である。
(つづく)
最新の画像[もっと見る]
-
精密検査から戻って;長女が老夫婦を日比谷花壇大船フラワーセンターへ招待・・・ 4年前
-
精密検査から戻って;長女が老夫婦を日比谷花壇大船フラワーセンターへ招待・・・ 4年前
-
精密検査から戻って;長女が老夫婦を日比谷花壇大船フラワーセンターへ招待・・・ 4年前
-
精密検査から戻って;長女が老夫婦を日比谷花壇大船フラワーセンターへ招待・・・ 4年前
-
精密検査から戻って;長女が老夫婦を日比谷花壇大船フラワーセンターへ招待・・・ 4年前
-
精密検査から戻って;長女が老夫婦を日比谷花壇大船フラワーセンターへ招待・・・ 4年前
-
精密検査から戻って;長女が老夫婦を日比谷花壇大船フラワーセンターへ招待・・・ 4年前
-
精密検査から戻って;長女が老夫婦を日比谷花壇大船フラワーセンターへ招待・・・ 4年前
-
精密検査から戻って;長女が老夫婦を日比谷花壇大船フラワーセンターへ招待・・・ 4年前
-
精密検査から戻って;長女が老夫婦を日比谷花壇大船フラワーセンターへ招待・・・ 4年前