ウイルヘルム山登頂記(6):ケグルスグルへ(2)
マウントハーゲンの暇な見物客
2007年2月10日(土)~17日(日)
第2日目 2007年2月11日(日)
■ようやくマウントハーゲンに到着
「キャプテンが居ない・・・」「死体入りの棺桶が積み込まれた・・・」と,いろいろあって予定時刻を大分遅れて,ポートモレスビーを出発した私達の飛行機は,PNGを西北西に飛び続ける。眼下には人跡未踏と思われるジャングルが延々と続く。ときどき大蛇がのたうち回ったような姿の大河が,遠くガルフ湾に流下するのが見える。
11時過ぎに飛行機は次第に高度を下げ始める。機内には飛行高度の表示がないので,どの程度の高度で巡航しているのか良く分からないが,多分,4000~5000メートル程度の高度で飛んでいたのではないかと思われる。飛行機の高度が下がるにつれて,機体が小刻みに揺れ始める。やがて,眼下に民家が見え始める。そして,谷間の道沿いに民家が建ち並んでいるのが手に取るように見えるようになる。
余興に,手持ちの高度計を見ると,丁度1500メートルを指している。勿論,巡航中の機内の気圧は一定に調節されているので,高度計を見るのは,あくまで余興である。耳がツンとしてくる。
11時31分,私達の飛行機は,無事,マウントハーゲン(Mt.Hagen)飛行場に着陸した。
11時33分,ディッセンバーグ。
■ソロモンさんとベティさん
小さな飛行場である。飛行機からいきなり地上に降りる。そして眼に前にある小さな飛行場の建物へ向かう。建物のすぐ後に,飛行場の指示地に沿って,高さ2メートルほどの金網の柵が連なっている。その金網に何十人という人達がしがみついて,私達乗客を物珍しげに凝視している。私は,自分たちが見せ物小屋の出し物になったような妙な気分になる。
飛行場の建家に入る。狭くて薄暗い。
11時42分,現地のパラダイス観光のソロモン(Mr. Solomon)さんと,ケグルスグルのBetty’ Lodgeのオーナー,ベティ(Ms. Betty Higgings)さんのお二人が,愛想良く,私達を出迎えてくれる。ソロモンさんは,小太りで黒髭を貯えた逞しい男性。これから先,ずっとお世話になる。ベティさんは中年の実業家で,クルクルと良く回る眼が魅力的である。私は,早速,手持ちのノートの上に,お二人にサインをお願いした。
<ソロモンさん(左)とベティさん(中央)>
私のノートには,旅行中に気になるもの,とくに食べ物のスケッチが多い。いい加減に書き殴ったものだが,たまたまサインをお願いした隣のページに機内で配られたコーヒーカップのスケッチがあった。それを見たソロモンが,
「貴方はアーティストか・・・?」
と私に質問する。この質問は,過去にも何回も受けている。その度に,私は恥ずかしくて仕方がない。
「いえ,いえ,・・・ほんの趣味でして・・・アーティストではありません・・」
と答える。
<ソロモンさんとベティさんのサイン>
■暇な見物客
11時53分,飛行場の建物から外へ出る。強い日差しが眩しい。沢山の見物人が,私達に好奇の眼を向ける。その中を通り抜けて,出迎えの小さなリムジンバスに乗車する。
「どうして,こんなに沢山の人が空港に集まっているんですか?」
と私が質問する。
「・・・今日はたまたま日曜日なので,バナナ持って飛行機を見に来ているんですよ・・他にすることがないんです・・・」
とのことである。私は,平和な彼らが,何となく羨ましくなってくる。
12時02分,私達を乗せたリムジンバスは空港を出発する。運転手さんはワーク(Wak)さんである。小太りでガッチリした体格の中年男性である。
出発すると間もなく,ベティさんとソロモンが交互に色々と説明してくれる。それをツアーリーダーのケイさんが日本語に翻訳する。
「・・・マウントハーゲンは,65年前に白人が来て作った新しい町です・・・近くで,金が発見されたのが切っ掛けで,この町は発展しました。もともとはオーストラリア,今は中国の資本が主体となって,いろいろな企業が進出してきました・・・」
私達はこの国唯一のハイウェーをマウントハーゲン市内に向けて走っている。町中を走っている車は,ほとんど日本製である。それもTOYOTAが圧倒的に多い。
「・・・TOYOTAは性能は良いけれども,値段が高いよ・・・」
とソロモンがぼやく。
カラフルな服装をした人達が道端に屯している。一寸安っぽく見える構えの店が軒を連ねている。
ベティさんが,さかんに日本のことを褒める。
「・・・日本の資本が,あの病院を作ったんだよ・・・」
<マウントハーゲンの賑わう市場>
■ハイランダーホテル着
12時13分頃,マウントハーゲンのダウンタウンに入る。大きな市場には沢山の人が出ている。
12時18分,私達は高い塀と鉄条網に囲まれたハイランダーホテル(HaighLander Hotel: P.O.BOX 34, Mt. Hagen, PNG)に到着する。大きな木製の扉を開けて,私達のバスがホテルの敷地に入る。すると,すぐに扉が閉じられる。扉の上には,まるで朝鮮半島の38度線を想起させるようなグルグル巻きの鉄条網が設置されている。
ホテルの敷地内は,外とは隔絶された静かな空間になっている。ちなみに私の高度計によれば,ここの標高は1630メートルである。外気は暑くなく寒くなく実に快適である。
部屋割が決まる。私は鹿児島から参加したIさんと同室になる。鍵を貰って,指定された部屋へ向かう。受付を通り抜けると,目の前に綺麗なプールがある。受付の建物を出て右折,廊下伝いに数メートル進み,更に左折する。すると芝生が美しい中庭に出る。中庭を囲むように客室が並んでいる。私達が割り当てられた部屋は,プールと中庭に挟まれた場所にある。大きな部屋にダブルベッド1台,シングルベッド1台が置かれている。テレビなど付属施設も,先進国のホテル並みである。ただ,土地柄のためかバスはなく,シャワーだけである。勿論,お湯もチャンと出る。ただ残念なのは,洗面台の栓がない。また,石鹸も一つしかない。
(つづく)
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