ウイルヘルム山登頂記(5):ケグルスグルへ(1)
死体入りの棺桶騒動で出発が遅れる
2007年2月10日(土)~17日(日)
第2日目 2007年2月11日(日)
■出鱈目な席順
8時45分の搭乗時間は,とっくに過ぎたが,何故遅れるのか,何時頃搭乗になるのか,何のアナウンスもない。遅れる理由は,
「キャプテンが居ない・・・」
である。
じたばたしても仕方がないので,成り行きに身を任せて,ノンビリと待っている。 それでも,8時53分に搭乗開始になる。
上翼の小さなターボプロップ機である。どことなくYS11に似た雰囲気があるって可愛い。建物の外に出て,地上の屋根付き廊下を10数メートル歩く。そして,飛行機のタラップを登って,機内に入る。客室の中央に通路があって,両側に2座席が並んでいる。 搭乗券に書いてあるFlower-hillの座席は19Aである。座席番号を,1,2,3と辿りながら,後の方へ移動する。ところが,この飛行機の座席は12までしかない。
「ありゃ~・・・,19番は何処だ・・?」
と戸惑う。すると,近くにいた客室乗務員が,
「適当に空いているところに座りなさい・・・」
とボデーランゲージで,窓際の席を指さす。私は乗務員の指示に従って,11Aの席に座る。他の団員も,自分が指定されている座席に,もう他の人が座っているので戸惑っている。やはり乗務員の指示で,近くの空いている席に座る。
私も,それ程沢山外国に行っているわけではないが,デタラメ座席は,今回が初めての経験である。
<マウントハーゲン行のターボプロップ機>
■一向に出発しないぞ・・!
定刻8時45分の出発時間はとっくに過ぎている。だが,飛行機は一向に出発する気配がない。
9時26分,キャプテンの機内アナウンスがある。聞き取りにくい英語で,
「荷物の積み込みでトラブルがあって,出発が遅れているので申し訳ない・・・」
という趣旨の説明がある。
まあ,仕方がないなと思って,私は居眠りを始める。眠りながら一体自分は今何処にいるのだろうかと寝ぼける。どれほど居眠りしていたのだろうか。目覚めるとまだ飛行機は止まったままである。外を見ると,進行方向左側のプロペラの下で,数人のクルーが何か打合せをしている。その内に,客室の下の荷物室で,何やらゴトゴトと音がする。積み荷をいじっているらしい。
■けったいな積み荷
機内が静かになった。
9時43分,左右両側のプロペラが回り出し,救命胴衣の説明(Safety Instructions)が始まる。やれやれ,やっと飛び立つかと思うとホッとする。ところが,10時02分,また左側のプロペラが止まる。
「何かエンジントラブルでもあるのだろうか・・・」
と大変心配になる。
10時04分,どこからともなくジープが現れる。そして,客室の出入口が開けられる。明るい外の日差しが出入り口から機内に射し込む。小太りの男が,係員に誘導されながら飛行機から降りる。外でこの男と数名の係員が何か立ち話をしている。
やがて,この男は飛行機の荷物室から運び出された荷物と一緒にジープに乗って立ち去る。
何が起こっているのか,乗客には全く分からない。ところが,われわれの勇敢なツアーリーダーのケイさんは,早速,乗務員から事の次第を聞いてくる。それによると,たった今,降りた男は,死体の入った棺桶を手荷物で預けていたとのことである。そして,棺桶を「下ろす,下ろさない」でもめていたようである。この男は,
「グズグス言っていないで,飛行機を早く飛ばしてくれ・・・」
と言っていたらしい。
<死体入りの棺桶をどうするかの話合い>
それにしても,何故,死体入りの棺桶が,セキュリティチェックを通り抜けたのだろうか?
何故,後になって,死体入り棺桶が積み込まれたと分かったのだろうか?
前代未聞の怪事件で,私も開いた口がふさがらない。
いやはや・・・これから先,一体,何が起こるか予想すらつかない。やっぱり,PNGは不思議な国である。
■やっと離陸
10時09分,再び両側のプロペラが回り出す。10時15分,無事,ポートモレスビー空港を飛び立った。
眼下には住宅地が広がっている。一面に被われた緑の木々が美しい。すぐに住宅地は消えて,飛行機は,人跡が全く見えない山地の上をブンブンと飛んでいく。すぐに,海の上に出る。
<機内で配られたTake me Home>
10時32分,乗務員がコップを配り始める。コップには”Take me home”と書いたラベルが張ってある。中を見ると,花びらの形をした包み紙の中から小さなビスケット2枚が出てきた。
「すばらしいセンスだな~ぁ・・・!」
私は心底から,センスの良さに感心する。
11時24分,”fasten seat belt”のアナウンスがある。雲が多くなり機体が揺れ始める。眼下には密林が広がっている。その密林の間を蛇行する大きな川が見えている。
(つづく)
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