花とウグイスと寒風の塔ノ岳
(単独山行)
2007年3月26日(月)
パソコンで天気予報を確かめる。3月26~27日は,どうやら「晴」のようである。26日早朝に,「・・・ならば,早速,塔ノ岳を往復しよう」と思い立つ。
実は来月上旬に十王岩グループのジャイアン氏と一緒に大倉尾根を経由して塔ノ岳を往復する約束になっている。私としては,事前に,果たしてどの程度の所要時間で,塔ノ岳を往復できるかを確認しておきたかった。
気が付けば,ずいぶんと夜明けも早くなっている。もう3月下旬である。何時ものように,大船発6時04分発静岡行に飛び乗る。つい1ヶ月ほど前には,大船を発車する頃は真っ暗だった。それが,今日はもうすっかり明るくなっている。
何時もの通り,7時26分に大倉へ到着する。もうすっかり明るくなっている。ただ,頭上には薄雲が一面に広がっている。丹沢連山の山頂付近は雲の中に隠れたままである。
7時35分に,大倉バス停から塔ノ岳山頂を目指して歩き始める。バス停から大倉尾根登山口まで,両側に広がる畑や民家の庭先には,沢山の花が咲き乱れている。どこからともなくウグイスの啼き声が聞こえてくる。もうすっかり春である。登山道は,昨日,午前中に降り続いた雨のために幾分濡れている。石が敷き詰められているところは,随分と滑りやすい。
今日は,気温,湿度ともにやや高そうである。何時もの調子で歩き続けるが,気温が高いので,直ぐに汗ばんでくる。今日の体調が良いのか悪いのかあまり良く分からないが,今日は気儘に歩こうと心に決める。最初の内は,少し速い歩調で登り続ける。そして,観音茶屋付近で,同じバスに乗っていた登山客全員を追い抜く。歩きながらついついいろいろと余計なことを考え始める。すると途端に歩行速度が遅くなる。「ありゃ~っ」と気が付き,また速度を上げる。まずまずの調子で,見晴茶屋,観音茶屋を通過する。この辺りでは,私の前後に登山客の姿はない。
<花立山荘からの眺望>
8時43分頃,堀山を通過する。晴れていれば,この辺りの尾根道から真っ白な富士山が良く見えるのだが,今日は雲が邪魔をして全く見えない。昨日の雨にもかかわらず,登山道はそれほどぬかるんではいないのが有り難い。私は,かなり良い調子で登り続ける。
9時25分に花立山荘を通過する。この辺りから先の登山道は雲の中である。雲の中に入ると,途端に寒くなる。見通しも利かなくなる。何時も立ち止まって富士山の写真を撮る場所も,濃い霧に被われていて,全く見通しが利かない。
金冷しに近付く頃,顔なじみのご常連が上から降りてくる。
「おはようございます・・・山頂の様子は如何ですか?」
と私が伺う。
「全く見通しが利きません・・・それにとっても寒いです。道は結構歩きやすいですよ・・・」
と教えてくれる。
9時35分,金冷しを通過する。私の前方を超ユックリペースで登っている夫婦がいる。私は,申し訳ないなと思ったが,挨拶をして先に行かせて貰う。夫婦は茹で蛸のように真っ赤な顔になっている。顔からは汗がしたたれ落ちている。霧の中を進む。山頂直下の急な階段で,もう1人の男性を追い抜く。そして,9時51分に塔ノ岳山頂に到着する。 山頂に出ると,かなり強い西風が吹いている。とにかく冷たい。手袋をしていない手の甲は瞬く間に真っ赤になる。尊仏山荘を背景にして1枚の写真を撮る儀式を終えると,すぐに尊仏山荘に飛び込む。山頂があまりに寒いためか,山荘には珍しく数人の先客がいる。私は例によって300円也のお茶を所望する。
私が小屋に入ってから,5分ほどして,60歳前後と思われる男性が小屋に入ってくる。そして,私の隣に座って,話しかけてくる。
「・・・友達がバカ尾根を2時間30分で登ったと自慢していたんで,私も登ってみましたよ・・・それで,何とか2時間15分で登りましたよ・・・・今日はどのくらいでのぼりましたか」
と自慢しながら,私に質問する。
「私はそんなに速く登れませんよ・・・・大倉を7時35分に昇り始めましたので,今日は,2時間16分でした。私にしては速い方ですよ・・」
と答える。
「2時間16分ですか・・・じゃあ,途中で休憩は取らないでしょう・・」
「勿論。何時も山頂まで休憩無し,1ピッチで登るようにしています・・」
さきほどの夫婦が小屋に入ってくる。私は,
「先ほどは失礼しました・・・」
と挨拶する。この夫婦は,わざわざ岡山から丹沢へ来たという。
「所で,どちらにお住まいですか?」
と私に聞く。
「鎌倉です」
と答えると,先ほどの男性が,
「鎌倉ですか! 随分遠いですね! 電車賃高いでしょう・・?」
と私に聞く。正に図星! 正直なところ,1回,塔ノ岳に登ると,およそ3,000円の出費になる。仮に月に10回通えば,塔ノ岳だけで月3万円の出費になってしまう。サンデー毎日の身には,3万円の出費には,結構辛いものがある。
10時25分に尊仏山荘を出発して下山を開始する。小屋の外へ出ると,冷たい風が吹き付ける。思わず身震いする。前方の霧の中に,2頭の鹿がいるのが見える。多分,人から食べ物を貰いたがっているのだろう。
<山頂の鹿>
足下の状態が良いので,かなり楽に下り続ける。そして,12時10分に大倉バス停に到着する。振り返って大倉尾根を見ると,いつの間にかスッカリと晴れ上がっている。バスで,ご常連の方と乗り合わせる。彼が,
「もう少し早く晴れれば,富士山が見えたのに・・・」
と残念がる。私も同感である。でも,後の祭りである。
<大倉付近の花>
[ラップタイム]
7:35 バス停大倉歩き出し
↓
7:54 観音茶屋
↓
8:09 見晴茶屋
↓
8:36 駒止茶屋
↓
8:50 堀山の家
↓
9:25 花立山荘
↓
9:51 塔ノ岳山頂着
10:25 〃 発
↓
12:10 バス停大倉着
■登攀下降高度 1201(m)
■登攀所要時間 2時間16分(2.27h)
登攀速度 1201(m)/2.27(h)=529.1(m/h)
■下降所要時間 1時間45分(1.75h)
下降速度 1201(m)/1.75(h)=686.3(m/h)
※このデータを,ジャイアンさんと登るときの参考にするつもりである。
ジャイアンさん。よろしくお願いします。
(おわり)
(単独山行)
2007年3月26日(月)
パソコンで天気予報を確かめる。3月26~27日は,どうやら「晴」のようである。26日早朝に,「・・・ならば,早速,塔ノ岳を往復しよう」と思い立つ。
実は来月上旬に十王岩グループのジャイアン氏と一緒に大倉尾根を経由して塔ノ岳を往復する約束になっている。私としては,事前に,果たしてどの程度の所要時間で,塔ノ岳を往復できるかを確認しておきたかった。
気が付けば,ずいぶんと夜明けも早くなっている。もう3月下旬である。何時ものように,大船発6時04分発静岡行に飛び乗る。つい1ヶ月ほど前には,大船を発車する頃は真っ暗だった。それが,今日はもうすっかり明るくなっている。
何時もの通り,7時26分に大倉へ到着する。もうすっかり明るくなっている。ただ,頭上には薄雲が一面に広がっている。丹沢連山の山頂付近は雲の中に隠れたままである。
7時35分に,大倉バス停から塔ノ岳山頂を目指して歩き始める。バス停から大倉尾根登山口まで,両側に広がる畑や民家の庭先には,沢山の花が咲き乱れている。どこからともなくウグイスの啼き声が聞こえてくる。もうすっかり春である。登山道は,昨日,午前中に降り続いた雨のために幾分濡れている。石が敷き詰められているところは,随分と滑りやすい。
今日は,気温,湿度ともにやや高そうである。何時もの調子で歩き続けるが,気温が高いので,直ぐに汗ばんでくる。今日の体調が良いのか悪いのかあまり良く分からないが,今日は気儘に歩こうと心に決める。最初の内は,少し速い歩調で登り続ける。そして,観音茶屋付近で,同じバスに乗っていた登山客全員を追い抜く。歩きながらついついいろいろと余計なことを考え始める。すると途端に歩行速度が遅くなる。「ありゃ~っ」と気が付き,また速度を上げる。まずまずの調子で,見晴茶屋,観音茶屋を通過する。この辺りでは,私の前後に登山客の姿はない。
<花立山荘からの眺望>
8時43分頃,堀山を通過する。晴れていれば,この辺りの尾根道から真っ白な富士山が良く見えるのだが,今日は雲が邪魔をして全く見えない。昨日の雨にもかかわらず,登山道はそれほどぬかるんではいないのが有り難い。私は,かなり良い調子で登り続ける。
9時25分に花立山荘を通過する。この辺りから先の登山道は雲の中である。雲の中に入ると,途端に寒くなる。見通しも利かなくなる。何時も立ち止まって富士山の写真を撮る場所も,濃い霧に被われていて,全く見通しが利かない。
金冷しに近付く頃,顔なじみのご常連が上から降りてくる。
「おはようございます・・・山頂の様子は如何ですか?」
と私が伺う。
「全く見通しが利きません・・・それにとっても寒いです。道は結構歩きやすいですよ・・・」
と教えてくれる。
9時35分,金冷しを通過する。私の前方を超ユックリペースで登っている夫婦がいる。私は,申し訳ないなと思ったが,挨拶をして先に行かせて貰う。夫婦は茹で蛸のように真っ赤な顔になっている。顔からは汗がしたたれ落ちている。霧の中を進む。山頂直下の急な階段で,もう1人の男性を追い抜く。そして,9時51分に塔ノ岳山頂に到着する。 山頂に出ると,かなり強い西風が吹いている。とにかく冷たい。手袋をしていない手の甲は瞬く間に真っ赤になる。尊仏山荘を背景にして1枚の写真を撮る儀式を終えると,すぐに尊仏山荘に飛び込む。山頂があまりに寒いためか,山荘には珍しく数人の先客がいる。私は例によって300円也のお茶を所望する。
私が小屋に入ってから,5分ほどして,60歳前後と思われる男性が小屋に入ってくる。そして,私の隣に座って,話しかけてくる。
「・・・友達がバカ尾根を2時間30分で登ったと自慢していたんで,私も登ってみましたよ・・・それで,何とか2時間15分で登りましたよ・・・・今日はどのくらいでのぼりましたか」
と自慢しながら,私に質問する。
「私はそんなに速く登れませんよ・・・・大倉を7時35分に昇り始めましたので,今日は,2時間16分でした。私にしては速い方ですよ・・」
と答える。
「2時間16分ですか・・・じゃあ,途中で休憩は取らないでしょう・・」
「勿論。何時も山頂まで休憩無し,1ピッチで登るようにしています・・」
さきほどの夫婦が小屋に入ってくる。私は,
「先ほどは失礼しました・・・」
と挨拶する。この夫婦は,わざわざ岡山から丹沢へ来たという。
「所で,どちらにお住まいですか?」
と私に聞く。
「鎌倉です」
と答えると,先ほどの男性が,
「鎌倉ですか! 随分遠いですね! 電車賃高いでしょう・・?」
と私に聞く。正に図星! 正直なところ,1回,塔ノ岳に登ると,およそ3,000円の出費になる。仮に月に10回通えば,塔ノ岳だけで月3万円の出費になってしまう。サンデー毎日の身には,3万円の出費には,結構辛いものがある。
10時25分に尊仏山荘を出発して下山を開始する。小屋の外へ出ると,冷たい風が吹き付ける。思わず身震いする。前方の霧の中に,2頭の鹿がいるのが見える。多分,人から食べ物を貰いたがっているのだろう。
<山頂の鹿>
足下の状態が良いので,かなり楽に下り続ける。そして,12時10分に大倉バス停に到着する。振り返って大倉尾根を見ると,いつの間にかスッカリと晴れ上がっている。バスで,ご常連の方と乗り合わせる。彼が,
「もう少し早く晴れれば,富士山が見えたのに・・・」
と残念がる。私も同感である。でも,後の祭りである。
<大倉付近の花>
[ラップタイム]
7:35 バス停大倉歩き出し
↓
7:54 観音茶屋
↓
8:09 見晴茶屋
↓
8:36 駒止茶屋
↓
8:50 堀山の家
↓
9:25 花立山荘
↓
9:51 塔ノ岳山頂着
10:25 〃 発
↓
12:10 バス停大倉着
■登攀下降高度 1201(m)
■登攀所要時間 2時間16分(2.27h)
登攀速度 1201(m)/2.27(h)=529.1(m/h)
■下降所要時間 1時間45分(1.75h)
下降速度 1201(m)/1.75(h)=686.3(m/h)
※このデータを,ジャイアンさんと登るときの参考にするつもりである。
ジャイアンさん。よろしくお願いします。
(おわり)