<霧の大倉尾根>
濃霧・泥濘,そしてネコの丹沢:塔ノ岳(今年10回目)
(単独山行)
2009年2月26日(木)
■迷いながらも家を出発
この所,前線が太平洋沖に停滞していて,来る日も来る日もお天気が冴えない.ときどき鎌倉の山野を歩いてはいるものの,丹沢からは,かれこれ1週間も遠ざかっている.幸いなことに,天気予報では,今日一日は曇ながら雨の心配はなさそうである.
何時ものように,4時頃,目が覚める.寝床の中で,
「今日,丹沢へ行く,いや,行かない・・」
の自問自答を繰り返す.今朝はそれ程寒くはないが,それでも暖かい寝床の中から抜け出すのには多少の勇気が要る.怠惰な私が,もう一人の私に,
「寒いから丹沢行きはやめておこうよ・・・」
と盛んに提案する.
「どうしよう・・?」
私は寝床の中で,何回も,何回も,自問自答する.
4時15分,意を決し,起床する.そして,山行き用の下着に着替える.リュックの中身をチェックしている内に,どうやら丹沢へ行く気になる.
■豪華な顔ぶれ
登山途中で,シャリバテにならないように,朝食を十分に摂ってから,5時10分に家を出る.雨は降っていないが,道路はビシャビシャに濡れている.上空には雲が低く垂れ下がっている.街中の照明の明かりが垂れ下がった雲に反射して,空全体が薄暗く赤茶けた色になっている.
藤沢から小田急電車に乗って,渋沢に出る.天気がこんなにハッキリしない日には,塔ノ岳に登る登山者は殆ど居ないと思っていたが,大倉行の2番バスは,ほぼ座席が埋まるほどの乗客が乗り込んでいる.何時もに比較したら大混雑である.
どうやら,1番バスに乗り遅れた方々が大分混じっているようである.1番バスのご常連,Hさん,Tさん,カメラマンのMさんも乗って居られる.また,2番バスご常連のNさんの顔も見える.兎に角凄い顔ぶれが揃っている.
■ご常連の皆様と一緒に登り始める
バスが大倉に到着すると,ご常連のTさんは,塔ノ岳を目指して,直ぐに歩き出す.続いてMさんも出発する.Mさんから2~3分遅れて,7時33分,同じバスに乗り合わせたご常連のNさんと一緒に,私も歩き出す.例によって,Nさんのスタートダッシュは速い.数分の間,私もNさんの後を付けて頑張ったが,このままでは後半持たないなと感じたので,私はNさんにお断りして歩行速度を落とす.
登山道はグショグショに濡れている.雲が厚く垂れ込めていて,周囲の山々も雲の中である.
7時44分,丹沢ベースを通過する.私は,少々オーバーペースだなと思いながらも,Nさんから10数メートルほど後で,付かず離れずの距離を保ちながら,歩き続ける.その内に,先発したMさんに追いついてしまう.
霧が深くなってくる.霧というよりは,雲の中に入ったのだろう.
7時54分に観音茶屋を通過する.足許が濡れているので歩きにくい.それに,前回,塔ノ岳に登ってから今日まで,1週間ほど間があいているので,どうも身体が重い感じがしてならない.今日も体調は思わしくないようである.ひょっとしたら体重が増えているのかなと心配になる(帰宅後,体重をチェックしたが,体重は増減なしで,BMIは20.5.マアマアである).
<私の前をご常連が行く>
■2分遅れの駒止茶屋
8時09分,見晴茶屋を通過する.私はご常連のMさんと,多少の距離を置きながら,登り続ける.このとき,私と一緒に大倉を出発したNさんの姿は見えなくなっている.スタートダッシュで歩行の調子が少し狂っているが,それでも無理をしないように注意しながら,見晴茶屋からの急勾配を登り続ける.濃い霧が掛かっているので,前後の様子は良く分からないものの,どうやら私の近くには,Mさん以外は居なさそうである.
8時22分に一本松を通過する.やがて平らな尾根道になるが,足許が泥濘なので,何時もの調子で,歩行速度を上げることができない.泥で滑って転倒したら一巻の終わりである.歩行速度を上げられないために,歩き出してから1時間02分経った8時36分に,ようやく駒止茶屋に到着する.
駒止茶屋まで,1時間を切ることができなかった.やっぱり,余り体調は良くなさそうである.
■霧の萱場平
ようやく堀山の稜線に出る.本来ならば,この平坦な場所で,思う存分に歩行速度を上げられる筈だが,今日は足許がどろどろで,とてもまともな速度では歩けない.ますます霧が濃くなって,見通しはせいぜい20~30メートルほどになっている.
8時52分,堀山ノ家を通過する.私より少し前を歩いていたMさんが,ベンチに座って休憩を取っている.ここで,先頭が入れ替わって,私がMさんの前を歩く.Mさんは,10メートルほど間を空けて,私にピッタリと付いてくる.
相変わらず濃い霧の中を,登り続けるが,調子が出ない.岩稜地帯を抜けて,長い階段道になる.濡れた丸太を踏まないように,かなり気を付けながら登り続ける.霧がますます濃くなってくる.
9時09分,萱場平に到着する.霧の中,私の直ぐ前を1人の男性が歩いている.その男性が画面に入らないようにしながら,定点観測用の写真を撮る.
写真を撮り終えて,ふと男性を見ると,なんと「ネコ好きのSさん」である.Sさんは,大倉1番目のバスに乗ってきたとのことである.
<薄暗い霧の萱場平>
■花立山荘を通過
私がSさんと話している間に,Mさんが追いつく.私は塔ノ岳の大先輩であるMさんに敬意を表して,私の前を歩いて頂く.私は,Mさんから10メートルほど後に付いて登り続ける.霧がますます濃くなり,わずかしか離れていないMさんの姿も良く見えなくなる.
9時29分に花立山荘を通過する.辺りには誰も居ない.山荘の建物が冷たく濡れている.
今日の堀山ノ家から花立山荘までの所要時間は37分.私の標準時間より2分遅い.今日は足場が悪いので仕方がないなと心の中で言い訳をする.
<霧で見事なシルエット>
■霧の塔ノ岳山頂
私の前を行くMさんとの距離が少し開いたような気がするが,これも止むを得ない.
トボトボと濡れた岩稜帯を登り詰めて,9時39分に花立台を通過する.この辺りは景色の良い所だが,今日は全く霧の中である.
9時44分,金冷シを通過する.泥濘がますますひどくなる.私の前を行くMさんとの距離が少し離れたようである.何となく気力が落ちてくる.霧の中を,大分速度を少し落として,足への負担を少なくする.
山頂直下の階段下で,とっくに山頂に到着して下山してきたTさんとすれ違う.
「・・・今日は,ダメ・・・」
とTさんが言う.ダメと言いながら,同じバスに乗ったのに,これだけの差が付くとは・・・やはり,Tさんは凄いなと実感する.
9時59分,私も,漸く,塔ノ岳山頂に到着する.大倉から山頂までの所要時間は,何と2時間26分も掛かっている.
「・・・ダメだな・・これは,」
私は「情けない私」を叱りつける.そうは言いながら,もう一方の私は,
「一週間も間を空けて登ったんだし,足許も悪かったんだから,まあ,仕方がないさ・・・」
と言い訳をする.
「一体,どっちなんだ・・・」
と焦れったい私を責める.
山頂も濃い霧の中である.近くにあるはずの尊仏山荘の陰すら,余程近付かないと見えてこない.山頂には誰も居ないようである.ただ,私の直ぐ前を登っていたMさんが,山頂付近に居られるはずだが,霧が深くて良く分からない.
<塔ノ岳山頂は濃霧で見通しが利かない>
■尊仏山荘でネコの写真を撮りまくる
何も見えない上に,とにかく寒い.半ば義務で,霧の山頂の写真を数枚撮る.写真は真っ白で殆ど何も見えないのに・・・何をやって居るんだろうと自分に呆れながら写真を撮る.
尊仏山荘に入る.一本松付近で私を追い越したXさんが先客である.Xさんは山頂まで2時間10分ほどだったという.私を追い越しざまに,
「・・・flower-hillさんより,一回り若いんです.私もflower-hillさんの年になったときに,果たして塔へ登れるか分かりません.是非,登れるようになっていたいです・・」
と言っていた.
山頂の気温は0.0℃.意外に寒い.
今日の小屋番は,営業部長の忠実な僕(しもべ)であるOさん.それに,もう少し待っていれば,「ネコ好きのSさん」も到着する.私はお茶を飲みながら,早い昼食を摂り始める.
暫くすると,大倉を一緒に歩き出したNさんが到着する.続いて,カメラマンのMさんも山荘に入ってくる.山荘に顔を出す人はご常連ばかりである.もっとも,こんなに天気が良くないときに登ってくるのは余程奇特な方々,つまりご常連だけなのだろうと勝手に想像する.
私がOさんに,
「・・外は何も見えないんで,ネコちゃんの写真を撮るしか楽しみがないですね・・」
と言う.すると,Oさんが,
「・・ミーや・・寝ている場合じゃないよ.こっちに出ておいで・・」
と営業部長を呼ぶ.ミー君が,奥の部屋からスタスタと出てきて,素直に番台に登る.
「・・あんたが羨ましいよ.気儘に昼寝して,食べるものにも苦労しないし・・日向ぼっこをしながらの毎日だもの・・」
そうこうしている内に,ネコ好きのSさんが山荘に到着する.ミー君がSさんの所に近寄っていく.
私は,ミー君の頭を撫でながら,
「・・・こいつは性根が素直で,本当に良いネコですね・・」
と褒める.すると,Sさんが,
「こいつをお医者さんに連れて行ったときに,お医者さんも『気だての良いネコだ』って言っていましたよ・・・」
と相槌を打つ.
<番台の営業部長と部下のOさん>
<抱っこする営業部長>
<番台でガッチリ守る営業部長>
■霧の中を下山
私は例によって,大倉発12時52分のバスに乗りたいと思う.そこで下りの時間を十分に見て,10時28分に,尊仏山荘を出発して下山を開始する.
外に出ると,やけに寒く感じる.霧はますます深くなる.私は大倉尾根を頻繁に往復しているので,10メートルほど視界があれば,特段の心配もなく下山できるが,平素あまり登っていない人は,多分,不安になるだろう.
何時もならば,多くの登山客とすれ違うが,今日はすれ違う人も少ない.どうやら,大方のご常連は早朝のバスに集中しているようである.
登山道が濡れていて,滑りやすいので,ユックリと,慎重に下り続ける.それでも,泥に足を取られそうになる.濃い霧の中では,立ち止まって景色を眺めても仕方がない.順調に下り続け,予定通り,12時34分にバス停大倉に到着する.
12時52分発のバスは,少し遅れて,12時55分に大倉を出発する.大倉で乗車したのは,私1人だけ.結局,終点の渋沢まで,乗降客は誰も居ない.私,1人しか乗っていないのに,
「・・・次は○○です・・」
とアナウンスが車内に響き渡る.
[ラップタイム]
7:33 大倉歩き出し
7:54 観音茶屋
8:05 見晴茶屋
8:35 駒止茶屋
8:52 堀山ノ家
9:07 戸沢分岐
9:29 花立山荘
9:44 金冷シ
9:59 塔ノ岳山頂 着
==========================================
10:28 塔ノ岳山頂 発(0.0℃)
10:39 金冷シ
10:51 花立山荘
11:09 戸沢分岐
11:23 堀山ノ家
11:39 駒止茶屋
12:03 見晴茶屋
12:17 観音茶屋
12:34 大倉 着
[山行記録]
■水平歩行距離 7.0km(片道)
■累積登攀下降高度 1201m
■登攀所要時間
大倉発 7:33
塔ノ岳山頂着 9:59
(所要時間) 2時間26分(2.43h)
登攀速度 1202m/2.43h=494.2m/h
水平速度 7.0km/2.43h=2.88km/h
■下降所要時間
塔ノ岳山頂発 10:27
大倉着 12:32
(所要時間) 2時間05分(2.08h)
下降速度 1201m/2.08h=57.4m/h
水平速度 7.0km/2.08h=3.30km/h
(おわり)
「丹沢の山旅」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/924d6138f8c8e093095322f6210e6c92
「丹沢の山旅」の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/bfc84239f35e4e3b7c3bf057f5b5393c
濃霧・泥濘,そしてネコの丹沢:塔ノ岳(今年10回目)
(単独山行)
2009年2月26日(木)
■迷いながらも家を出発
この所,前線が太平洋沖に停滞していて,来る日も来る日もお天気が冴えない.ときどき鎌倉の山野を歩いてはいるものの,丹沢からは,かれこれ1週間も遠ざかっている.幸いなことに,天気予報では,今日一日は曇ながら雨の心配はなさそうである.
何時ものように,4時頃,目が覚める.寝床の中で,
「今日,丹沢へ行く,いや,行かない・・」
の自問自答を繰り返す.今朝はそれ程寒くはないが,それでも暖かい寝床の中から抜け出すのには多少の勇気が要る.怠惰な私が,もう一人の私に,
「寒いから丹沢行きはやめておこうよ・・・」
と盛んに提案する.
「どうしよう・・?」
私は寝床の中で,何回も,何回も,自問自答する.
4時15分,意を決し,起床する.そして,山行き用の下着に着替える.リュックの中身をチェックしている内に,どうやら丹沢へ行く気になる.
■豪華な顔ぶれ
登山途中で,シャリバテにならないように,朝食を十分に摂ってから,5時10分に家を出る.雨は降っていないが,道路はビシャビシャに濡れている.上空には雲が低く垂れ下がっている.街中の照明の明かりが垂れ下がった雲に反射して,空全体が薄暗く赤茶けた色になっている.
藤沢から小田急電車に乗って,渋沢に出る.天気がこんなにハッキリしない日には,塔ノ岳に登る登山者は殆ど居ないと思っていたが,大倉行の2番バスは,ほぼ座席が埋まるほどの乗客が乗り込んでいる.何時もに比較したら大混雑である.
どうやら,1番バスに乗り遅れた方々が大分混じっているようである.1番バスのご常連,Hさん,Tさん,カメラマンのMさんも乗って居られる.また,2番バスご常連のNさんの顔も見える.兎に角凄い顔ぶれが揃っている.
■ご常連の皆様と一緒に登り始める
バスが大倉に到着すると,ご常連のTさんは,塔ノ岳を目指して,直ぐに歩き出す.続いてMさんも出発する.Mさんから2~3分遅れて,7時33分,同じバスに乗り合わせたご常連のNさんと一緒に,私も歩き出す.例によって,Nさんのスタートダッシュは速い.数分の間,私もNさんの後を付けて頑張ったが,このままでは後半持たないなと感じたので,私はNさんにお断りして歩行速度を落とす.
登山道はグショグショに濡れている.雲が厚く垂れ込めていて,周囲の山々も雲の中である.
7時44分,丹沢ベースを通過する.私は,少々オーバーペースだなと思いながらも,Nさんから10数メートルほど後で,付かず離れずの距離を保ちながら,歩き続ける.その内に,先発したMさんに追いついてしまう.
霧が深くなってくる.霧というよりは,雲の中に入ったのだろう.
7時54分に観音茶屋を通過する.足許が濡れているので歩きにくい.それに,前回,塔ノ岳に登ってから今日まで,1週間ほど間があいているので,どうも身体が重い感じがしてならない.今日も体調は思わしくないようである.ひょっとしたら体重が増えているのかなと心配になる(帰宅後,体重をチェックしたが,体重は増減なしで,BMIは20.5.マアマアである).
<私の前をご常連が行く>
■2分遅れの駒止茶屋
8時09分,見晴茶屋を通過する.私はご常連のMさんと,多少の距離を置きながら,登り続ける.このとき,私と一緒に大倉を出発したNさんの姿は見えなくなっている.スタートダッシュで歩行の調子が少し狂っているが,それでも無理をしないように注意しながら,見晴茶屋からの急勾配を登り続ける.濃い霧が掛かっているので,前後の様子は良く分からないものの,どうやら私の近くには,Mさん以外は居なさそうである.
8時22分に一本松を通過する.やがて平らな尾根道になるが,足許が泥濘なので,何時もの調子で,歩行速度を上げることができない.泥で滑って転倒したら一巻の終わりである.歩行速度を上げられないために,歩き出してから1時間02分経った8時36分に,ようやく駒止茶屋に到着する.
駒止茶屋まで,1時間を切ることができなかった.やっぱり,余り体調は良くなさそうである.
■霧の萱場平
ようやく堀山の稜線に出る.本来ならば,この平坦な場所で,思う存分に歩行速度を上げられる筈だが,今日は足許がどろどろで,とてもまともな速度では歩けない.ますます霧が濃くなって,見通しはせいぜい20~30メートルほどになっている.
8時52分,堀山ノ家を通過する.私より少し前を歩いていたMさんが,ベンチに座って休憩を取っている.ここで,先頭が入れ替わって,私がMさんの前を歩く.Mさんは,10メートルほど間を空けて,私にピッタリと付いてくる.
相変わらず濃い霧の中を,登り続けるが,調子が出ない.岩稜地帯を抜けて,長い階段道になる.濡れた丸太を踏まないように,かなり気を付けながら登り続ける.霧がますます濃くなってくる.
9時09分,萱場平に到着する.霧の中,私の直ぐ前を1人の男性が歩いている.その男性が画面に入らないようにしながら,定点観測用の写真を撮る.
写真を撮り終えて,ふと男性を見ると,なんと「ネコ好きのSさん」である.Sさんは,大倉1番目のバスに乗ってきたとのことである.
<薄暗い霧の萱場平>
■花立山荘を通過
私がSさんと話している間に,Mさんが追いつく.私は塔ノ岳の大先輩であるMさんに敬意を表して,私の前を歩いて頂く.私は,Mさんから10メートルほど後に付いて登り続ける.霧がますます濃くなり,わずかしか離れていないMさんの姿も良く見えなくなる.
9時29分に花立山荘を通過する.辺りには誰も居ない.山荘の建物が冷たく濡れている.
今日の堀山ノ家から花立山荘までの所要時間は37分.私の標準時間より2分遅い.今日は足場が悪いので仕方がないなと心の中で言い訳をする.
<霧で見事なシルエット>
■霧の塔ノ岳山頂
私の前を行くMさんとの距離が少し開いたような気がするが,これも止むを得ない.
トボトボと濡れた岩稜帯を登り詰めて,9時39分に花立台を通過する.この辺りは景色の良い所だが,今日は全く霧の中である.
9時44分,金冷シを通過する.泥濘がますますひどくなる.私の前を行くMさんとの距離が少し離れたようである.何となく気力が落ちてくる.霧の中を,大分速度を少し落として,足への負担を少なくする.
山頂直下の階段下で,とっくに山頂に到着して下山してきたTさんとすれ違う.
「・・・今日は,ダメ・・・」
とTさんが言う.ダメと言いながら,同じバスに乗ったのに,これだけの差が付くとは・・・やはり,Tさんは凄いなと実感する.
9時59分,私も,漸く,塔ノ岳山頂に到着する.大倉から山頂までの所要時間は,何と2時間26分も掛かっている.
「・・・ダメだな・・これは,」
私は「情けない私」を叱りつける.そうは言いながら,もう一方の私は,
「一週間も間を空けて登ったんだし,足許も悪かったんだから,まあ,仕方がないさ・・・」
と言い訳をする.
「一体,どっちなんだ・・・」
と焦れったい私を責める.
山頂も濃い霧の中である.近くにあるはずの尊仏山荘の陰すら,余程近付かないと見えてこない.山頂には誰も居ないようである.ただ,私の直ぐ前を登っていたMさんが,山頂付近に居られるはずだが,霧が深くて良く分からない.
<塔ノ岳山頂は濃霧で見通しが利かない>
■尊仏山荘でネコの写真を撮りまくる
何も見えない上に,とにかく寒い.半ば義務で,霧の山頂の写真を数枚撮る.写真は真っ白で殆ど何も見えないのに・・・何をやって居るんだろうと自分に呆れながら写真を撮る.
尊仏山荘に入る.一本松付近で私を追い越したXさんが先客である.Xさんは山頂まで2時間10分ほどだったという.私を追い越しざまに,
「・・・flower-hillさんより,一回り若いんです.私もflower-hillさんの年になったときに,果たして塔へ登れるか分かりません.是非,登れるようになっていたいです・・」
と言っていた.
山頂の気温は0.0℃.意外に寒い.
今日の小屋番は,営業部長の忠実な僕(しもべ)であるOさん.それに,もう少し待っていれば,「ネコ好きのSさん」も到着する.私はお茶を飲みながら,早い昼食を摂り始める.
暫くすると,大倉を一緒に歩き出したNさんが到着する.続いて,カメラマンのMさんも山荘に入ってくる.山荘に顔を出す人はご常連ばかりである.もっとも,こんなに天気が良くないときに登ってくるのは余程奇特な方々,つまりご常連だけなのだろうと勝手に想像する.
私がOさんに,
「・・外は何も見えないんで,ネコちゃんの写真を撮るしか楽しみがないですね・・」
と言う.すると,Oさんが,
「・・ミーや・・寝ている場合じゃないよ.こっちに出ておいで・・」
と営業部長を呼ぶ.ミー君が,奥の部屋からスタスタと出てきて,素直に番台に登る.
「・・あんたが羨ましいよ.気儘に昼寝して,食べるものにも苦労しないし・・日向ぼっこをしながらの毎日だもの・・」
そうこうしている内に,ネコ好きのSさんが山荘に到着する.ミー君がSさんの所に近寄っていく.
私は,ミー君の頭を撫でながら,
「・・・こいつは性根が素直で,本当に良いネコですね・・」
と褒める.すると,Sさんが,
「こいつをお医者さんに連れて行ったときに,お医者さんも『気だての良いネコだ』って言っていましたよ・・・」
と相槌を打つ.
<番台の営業部長と部下のOさん>
<抱っこする営業部長>
<番台でガッチリ守る営業部長>
■霧の中を下山
私は例によって,大倉発12時52分のバスに乗りたいと思う.そこで下りの時間を十分に見て,10時28分に,尊仏山荘を出発して下山を開始する.
外に出ると,やけに寒く感じる.霧はますます深くなる.私は大倉尾根を頻繁に往復しているので,10メートルほど視界があれば,特段の心配もなく下山できるが,平素あまり登っていない人は,多分,不安になるだろう.
何時もならば,多くの登山客とすれ違うが,今日はすれ違う人も少ない.どうやら,大方のご常連は早朝のバスに集中しているようである.
登山道が濡れていて,滑りやすいので,ユックリと,慎重に下り続ける.それでも,泥に足を取られそうになる.濃い霧の中では,立ち止まって景色を眺めても仕方がない.順調に下り続け,予定通り,12時34分にバス停大倉に到着する.
12時52分発のバスは,少し遅れて,12時55分に大倉を出発する.大倉で乗車したのは,私1人だけ.結局,終点の渋沢まで,乗降客は誰も居ない.私,1人しか乗っていないのに,
「・・・次は○○です・・」
とアナウンスが車内に響き渡る.
[ラップタイム]
7:33 大倉歩き出し
7:54 観音茶屋
8:05 見晴茶屋
8:35 駒止茶屋
8:52 堀山ノ家
9:07 戸沢分岐
9:29 花立山荘
9:44 金冷シ
9:59 塔ノ岳山頂 着
==========================================
10:28 塔ノ岳山頂 発(0.0℃)
10:39 金冷シ
10:51 花立山荘
11:09 戸沢分岐
11:23 堀山ノ家
11:39 駒止茶屋
12:03 見晴茶屋
12:17 観音茶屋
12:34 大倉 着
[山行記録]
■水平歩行距離 7.0km(片道)
■累積登攀下降高度 1201m
■登攀所要時間
大倉発 7:33
塔ノ岳山頂着 9:59
(所要時間) 2時間26分(2.43h)
登攀速度 1202m/2.43h=494.2m/h
水平速度 7.0km/2.43h=2.88km/h
■下降所要時間
塔ノ岳山頂発 10:27
大倉着 12:32
(所要時間) 2時間05分(2.08h)
下降速度 1201m/2.08h=57.4m/h
水平速度 7.0km/2.08h=3.30km/h
(おわり)
「丹沢の山旅」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/924d6138f8c8e093095322f6210e6c92
「丹沢の山旅」の次回の記事
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