<鍋割山稜の紅葉>
紅葉とネコに出会った丹沢:塔ノ岳(今年32回目)
(単独山行)
2010年10月29日(金)
■台風14号が近付いている
季節外れの大型台風14号が,刻々と本州南会場を北北東に進んでいる.天気予報はめまぐるしく変わっているが,どうやら明日(10月30日)から明後日に掛けて,本州は大荒れの天気になるようである.
五十三次洛遊会メンバーで予定していた中山道中六十九宿巡りも中止になった.すると台風が日本列島を通過するまでの3日間は外に出られなくなるかも知れない.そうなると,丹沢塔ノ岳に出掛けるのは今日しかない.
私は,急遽,4時に起床して,丹沢に出掛けることにする.昨日の朝よりは少し気温が高いようだが,それでも季節並みに寒い.こんなに寒くて真っ暗な時間に敢えて外出することもないなと一方では思う.でも,他の山へ行っていたとはいえ,10月になってから,まだ2回しか塔ノ岳に登っていない.このまま10月が終わったんでは男が廃る.私は思いきって丹沢を訪れることにする.
今日の丹沢地方の予報では,午前中は曇,12時頃から晴とのことである.でも,小田急電鉄の車窓から丹沢方面を見ると山麓まで分厚い雲に覆われていて,今にも雨が降り出しそうである.渋沢発大倉行の1番バスの乗客は,そんな天候のためか,僅か10名ほど.その中の5~6名が登山客.登山客のほぼ全員がご常連である.韋駄天のTさん,三角髭のTさん,それに熱心に丹沢に通っておられるYさんなど.一般登山客は居ない.
6時54分,大倉に到着する.
何時の間にか,雲が高くなり,丹沢の尾根が見え始める.谷間から雲が湧き出ている.その雲の上に尾根が浮いているように見える.なかなか見応えのある風景である.
<渋沢駅から大山を望む>
■登山道はビショビショ
7時05分に大倉から歩き出す.ご常連はバスが到着すると同時に,もうとっくに出発している.どういう訳か,何時も私は出足で遅れてしまうが,これも致し方ないことである.登山道は昨日来の雨でぐっしょりと濡れている.
私は,安物の靴ながら,まだ卸したての靴を履いている.ビブラム底とはいかないが,でも足底のギザギザがたっぷりある靴である.それにも関わらず,雨でグッショリと濡れた敷石は良く滑る.私は怪我をしたら百年目と注意しながら登り続ける.
韋駄天組はとっくに先を歩いている.私の後ろにも誰も居ない.誰にも煩わされることもなく一人気儘に登り続ける.ビショビショの道を,克董窯,丹沢ベース,観音茶屋と登り続ける.辺りの霧が段々と濃くなる.どうやら山裾に纏わり付くような雲の中に入っているようである.
丹沢ベースを過ぎたところで,Yさんに追いつく.Yさんのペースを狂わせてはもし分けないので,
「お先に失礼します・・」
と一言二言挨拶して,先に行かせて貰う.
<富士山は雲の中>
■堀山の家から萱場平へ
8時11分,駒止茶屋を通過する.大倉からの所要時間は1時間06分.足許が悪いとはいえ,随分と遅めである.気温は10.8℃.歩きやすい気温である.
8時21分,堀山を通過する.富士山は残念ながら濃い霧の中.何も見えないまま先へ進む.
8時28分,堀山の家に到着.ベンチには大きなリュックを背負った若い男女7~8人が休憩を取っている.
「こんにちは,随分と大きな荷物ですね・・」
と挨拶して追い抜く.彼らも,暫くの間,私のすぐ後に付いて登っていたが,やがて見えなくなる.
7時47分,萱場平を通過する.全く人気がない.気温10.6℃.
<Yさんが下る>
■つぎつぎにご常連とすれ違う
後7分坂を7分掛けて登って,9時09分に花立山荘に到着する.ここからも富士山は見えない.気温11.3℃.大倉を歩き出してからの所要時間は2時間04分.大分遅いが,この辺りが今の私の限界.ただ,マイペースで登っているので,汗は殆どかいていないし,呼吸も普通.疲れも全く感じない.
7分坂を登り切る頃,2人のご常連が下ってくる.
「こんにちは,随分速いですね」
「おう,・・いや自家用車で来て,早く登り始めたんですよ・・」
花立山荘を過ぎて,花立山へ向かう.ノンビリ登っていると.前方からローギャー氏の弟さんが下ってくる.
「相変わらずお元気ですね・・・10年後,私はFHさんのように歩けるかな・・」
と私に話しかける.内心,私は照れる.
「大丈夫ですよ・・歩けますよ」
これ本心である.継続は「金」.とにかく無理せずに歩いていれば10年ぐらい平気と本心から信じている.でも,翻って自分のこととなると,如何にも怪しい.90才近くになって丹沢を登っている自分の姿は,到底,見られないだろうなと思う.
<高速二人組>
■紅葉が見頃を迎え始めた
花立山を過ぎると,途端に美しく紅葉し始めた山並みが見え始める.特に鍋割山稜の紅葉は見事.
私はラップタイムなどそっちのけで,漸く紅葉し始めた辺りの風景を立て続けにデジカメに収める.歩く速度はメチャメチャに遅れるが,そんなことよりも紅葉を愛でることに夢中になる.
9時25分に金冷シを通過する.すでに,手当たり次第に,50枚ほどの紅葉の写真を撮っているが,それでも飽きたらずに写真を撮り続ける.
金冷シを過ぎて最初の長い階段を登っているときに,下ってくる韋駄天のTさん,引き続き三角髭のTさんとすれ違う.お二人の韋駄天振りは羨ましい限りである.
<紅葉の中を下るご常連>
■塔ノ岳山頂
9時41分,漸く塔ノ岳山頂に到着する.大倉からの所要時間は,実に2時間36分.途中で写真を撮っていたにしても遅すぎる.
そういえばバスの中で,三角髭のTさんから,
「人間誰しも,年を取れば遅くなりますよ.致し方ないことです」
と諭されたことを思い出す.
山頂には誰も居ない.残念ながら,富士山は見えない.でも,私は何時ものように,山頂からのパノラマ写真をぐるりと撮る.気温,9.6℃.風は殆ど吹いていないが,とにかく寒い.
<塔ノ岳山頂からの眺望>
■尊仏山荘
尊仏山荘に向かう.山荘入口の戸を開けようとすると,足許にミー君が寄ってくる.私と一緒に山荘の中へ入りたいのだろう.
「おや・・ミー君,暫く振りだったね・・」
私は戸を開ける前にミー君の写真を撮る.
先客は誰も居ない.小屋番はオーナーのHさんと,お手伝いのYさん.Yさんが愛想良く300円也のお茶を入れてくれる.
ネコはOさんが居ないため,何となくオドオドしている.バケツの水をピチャピチャと飲んだ後,ほんの暫くストーブの前で暖を取る.Hさんが顔を出すと,オズオズと腰掛けの下に隠れてしまう.
「此奴も11才・・良い年だな.」
もう少し,何枚か,ネコの写真を撮ろうかと思ったが,乾電池が予想以上に早く空になる.
「紅葉の写真を撮りすぎたんでしょう・・」
とYさんが私をからかう.
今日は十分に写真を撮ったので,もうカメラはいいなと思う.早々とカメラをリュックの中に仕舞い込む.
<寒い! 入口の戸を開けてくれ>
■寒い中,下山
10時05分,尊仏山荘を出発.下山開始.寒い.相変わらず山頂に登山者の姿はない.
金冷シ手前で,丹沢ベース付近で追い越させていただいたYさんとすれ違う.若い男性を連れている.
「これ私の息子です・・」
寒いので,やや急ぎ足で下山し続ける.
金冷シ付近で,先ほど堀山の家で出会った学生群とすれ違う.さらに何時ものご常連とすれ違う.彼とは何時も同じ場所ですれ違う.
「やあ,こんにちは.天気が悪いので登るのは今日しかないと思って登ってきました」
「私もそうです.考えることは皆同じですね・・」
何となく速歩で下り続けている内に,予定のバスより1本早い12時22分のバスに間に合いそうだと気がつく.それからは真面目に下山し続けて,12時14分に大倉に到着する.
小田原経由で順調に乗り継いで,13時50分頃帰宅.
早速,熱めの風呂を沸かして入浴.冷え切った手足の先がお湯でジリジリ感じる.快感!
これだから登山は止められない.
<ラップタイム>
7:05 大倉歩き出し
7:26 観音茶屋(14.8℃)
7:42 見晴茶屋
8:11 駒止茶屋(10.8℃)
8:28 堀山の家(10.5℃)
9:09 花立山荘
9:25 金冷シ(11.7℃)
9:41 塔ノ岳山頂 着(9.62℃) ===================================================
10:05 塔ノ岳山頂 発
10:17 金冷シ
10:30 花立山荘
11:05 堀山の家
11:20 駒止茶屋
11:45 見晴茶屋
11:58 観音茶屋
12:14 大倉 着
[山行記録]
■水平距離 7.0km(片道)
■累積登攀下降高度 1269m
■登攀所要時間(雑談時間を含む)
大倉 発 7:05
塔ノ岳 着 9:41
(所要時間) 2時間36分(2.60h)
登攀速度 1269m/2.60h=488.0m/h
■下降所要時間
塔ノ岳 発 10:05
大倉 着 12:14
(所要時間) 2時間09分(2.15h)
下降速度 1269m/2.15h=590.2m/h
(おわり)
「丹沢の山旅」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/086949232c48f1cadac0633724c64fbc
「丹沢の山旅」の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/4541e56d76926259b19ec14fe6f7afd7
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