<塔ノ岳山頂からの富士山>
真夏日の性懲りもなく登る丹沢:塔ノ岳(今年28回目)
(単独山行:途中Yさんに同行)
2010年9月22日(水)
■夏日に出掛ける
出掛ける前から,今日は真夏日になることは知っていたが,とにかく塔ノ岳に出掛けることにする.数日前に塔ノ岳に出掛けたときと比較しても,夜明けの時間は目に見えて遅くなっている.まだ,辺りがほんの少し明るくなり始めた5時10分に家を出る.
小田原駅で,少しモタモタしている内に,何時もなら駆け足で間に合う小田急線の電車に乗り遅れる.そして,残念ながら渋沢発大倉行1番バスにも乗り遅れる.ここで意気消沈.2番バスではローギヤー氏とバッタリ.
7時35分に大倉を出発する.何時もより約30分遅い出発である.この時点の大倉の気温は29.6℃.もう十分に暑い.ジッとしていても暑いので,少し歩き出しただけで汗が出てくる.
「・・こりゃ,ダメだ・・」
私は歩き出した時点で,塔ノ岳山頂まで登ろうという意欲がなくなる.
「まあ,いいか・・暫くの間,ブラブラと登ってみるか・・」
7時40分,登山口に到着.何時もなら大倉から4分少々で登山口に到着するが,今日は既に5分少々も掛かっている.この分だと,仮に塔ノ岳山頂まで行っても,所要時間は3時間10分程度掛かるなと,悲観的な見透しを立てる.
7時51分,観音茶屋を通過する.ここで,私のすぐ後に歩き出したローギヤー氏が私に追いつく.私は道を譲って,ローギヤー氏に先に行って貰う.
■駒止茶屋
8時16分,見晴茶屋を通過する.前方に長い急坂が見える.坂の中程を2本ストックの男性が止まりそうな速度で登っているのが見える.私はローギヤー氏と5メートルほど離れて登り続ける.急坂の終わり近くで,登山道が二手に分岐するところで,2本ストックの男性に追いつく.男性が,私に話しかける.
「・・今日はバカに暑いですね・・どちらからですか?」
「鎌倉からです・・・本当に暑いですね・・」
二言三言雑談をしている間に,ローギヤー氏との間隔が10数メートルも空いてしまう.私はローギヤー氏の後を付けるのを諦める.
やがて,駒止茶屋手前の急階段に到着する.ここでも私の前方をユックリ,ユックリと登っている人が見える.私もユックリだが少しずつ距離が縮まる.8時47分,漸く駒止茶屋を通過する.大倉を歩き出してから実に1時間17分も経過している.いくら気温が高いとはいえ,1時間を17分もオーバーするとは,呆れてものも言えない.私も随分脚力が落ちたなと実感,とても自分が哀れに思えてくる.
このとき,何となく足許が良く見えないなと気がつく.
「いけない・・パソコン用の眼鏡を掛けたまま出掛けてしまった」
私は自分のそそっかしさに愛想が尽きる.パソコン用の眼鏡は,手許が良く見えるように作ったもの.足許ほどの距離になると,もう良く見えなくなる.でもまあ,リュックの中に予備の眼鏡が入っている.どうしても不都合になったら“眼鏡を代えればいいや”で,そのまま登り続ける.
更に,更に・・である.肝心の携帯電話も,家に忘れたまま.マイッタナ!
今日一日,事故を起こさないように一層の注意をしなければ・・・
■堀山の家
駒止茶屋近くの森から,「ジージー・・」と高い音色の虫の啼き声が絶えず聞こえてくる.明日は秋分の日.いくら暑いと言っても,虫の音を聞いていると,近付く秋を実感する.
8時39分,例によって上の方からもの凄い勢いで駆け下りてくるYさんとすれ違う.
「こんにちは・・」
と挨拶している内に,10数メートル先へ行ってしまう.
私は虫の音に聞き耳を立てながら,堀山の尾根に入る.緩やかな上り下りのある尾根道は,大倉尾根の中で,歩いていて最も楽しいところである.ここまで登るといくらか風も吹くし,尾根からの眺望も開ける.
西を見ると,いくらか霞が掛かった富士山が良く見えている.私はカメラを取り出して,富士山の写真を何枚も撮り続ける.
8時56分,堀山を通過する.ここから暫くの間,緩やかな下り坂になる.下り坂では,歩行速度を上げる.下り坂が終わると,短い登り返しがあり,9時04分,堀山の家に到着する.気温23.6℃.平坦なところで歩行速度を上げたので,堀山の家ではゴーギヤー氏のすぐ後,5メートルほどのところまで追いつく.私の気配に気がついたのか,ローギヤー氏が振り向いて,
「今日は富士山が綺麗に見えますね・・」
と話しかける.
一言二言,お話をしながら,並行して歩くが,徐々に,徐々に,ローギヤー氏との間が開いていく.勿論,無理をしてまでローギヤー氏の後を追うことはしない.ときどき,ハイドレーションシステムから水分を一口,二口と補給しながら,マイペースで登り続ける.
■萱場平
9時22分,戸沢分岐を通過する.その2分後,萱場平に到着.気温23.8℃.まだまだ気温は高い.
萱場平には全く人気がない.鳥の声もない.静寂そのものである.私は,そのまま,萱場平を通過して,再び登り階段に差し掛かる.
「やれ,やれ,難儀だな・・」
と思いながら,半ば惰性でエッチラ,ホッチラと登り続ける.
余談になるが,大倉尾根は,ずぼらな私にとって,実に都合の良い尾根だと,常日頃から思っている.その理由は適当にメリハリが付いていることである.メリハリは次の箇所である.
第1に,大倉から歩き出して,そろそろ飽きてくるところに見晴山荘があることである.山荘の先の急坂を仰ぎ見てため息が出るが,逆に,この坂を登って一本松まで辿り着けば,その先に心地よい尾根道が待っている.
第2に,駒止茶屋手前の急坂.この急坂を仰ぎ見ると,毎回,ウンザリする.でも,ほんの数分,我慢して登りきれば,眺望の素晴らしい堀山の尾根が待っている.天気さえ良ければ富士山も拝める.この尾根の心地良さを想像すれば,この急坂でもファイトが沸く.
第3は堀山の家である.運が良ければ富士山が見える.それに,ここまで来れば,40分ほど辛抱して坂を登っていれば,花立山荘に辿りつける.途中の萱場平に到着したら,堀山の家から花立山荘までの半分は登ったぞと勇気づけられる.
花立山荘まで来れば,もう山頂に登ったのと同じで,先が見えている.もう一寸頑張って花立山まで登れば,後は下りの尾根道.金冷シから先は,いくら急いでも,いくらユックリでも,所要時間に大差ない.
そんな意味からも,ここ萱場平は精神的な息抜きに重要な地点である.
「ここまで来たら,四の五の言わずに,今日も山頂まで行くぞ・・」
■努力家のYさん
やがて階段の幅が開け,見透しの良い所に到着する.遙か先を軽快に登っているローギヤー氏の後ろ姿が見える.その後ろに2~3人の登山者が見える.一番後ろをユックリと登っている男性がいる.近付くと,この頃,熱心に丹沢に通っているYさんである. ここから暫くの間,Yさんと雑談しながら,定速で登り続ける.
「・・・先日,ロッキー山脈でFHさんとご一緒した方と,尊仏山荘で一緒になりましたよ.FHさんのことが話題になっていましたよ.その方,ノートに何か書いていましたよ・・」
とYさんがいう.
9時40分,花立山荘手前の階段近くを登っているとき,1番バスで来られた韋駄天のHさんとすれ違う.
「・・今日は2番バスで来ました.萱場平を過ぎたところからYさんと,雑談しながら来ました」
とYさんに経過報告.韋駄天のHさんが別れ際に,Yさんに,
「・・この方のペースに巻き込まれないで,ユックリ歩いて下さいよ・・」
と忠告する.このHさんの忠告を聞いて,ひょっとして,私がYさんのペースを乱したかもしれないと,「ハッ」とする.人それぞれに自分のペースというものがある.そのペースを乱す恐れのあることは,以後,慎むべきだと大いに反省する.
■ご常連のS藤さん
9時45分,「あと7分坂」の袂に到着する.Yさんが,
「ここで一休みしていきます・・・ひょっとしたら,山頂まで行かずに下山しますので,尊仏山荘の方に宜しく言って下さい」
という.
それではということで,Yさんとお別れして,急坂の階段を登る.もう少しで階段が終わる頃,ご常連のS藤さんが上から降りてくる.
「FHさん,相変わらずお元気そうですね・・」
と私に話しかける.内心,私はちっとも元気ではないが,汗を流さない速度で登っているので,見た目には気楽に登っているように見えるのだろう.
2~3分,立ち止まって四方山話をする.
「・・また,大船辺りでお会いしましょう・・」
でお別れ.
9時57分,花立山荘に到着する.気温23.8℃.風が通って涼しい.
大倉から歩き出して,実に2時間22分も経過している.せめて,2時間10分程度で登りたかったが,やむを得ない.
階段を登っている最中に,急速で私を追い上げていた中年男性は,倒れ込むようにして,山荘前のベンチに座り込む.
■眺望の花立山
花立山荘を通過する.気温26.3℃.直射日光のためか花立山荘より3℃近く高い.今日はやたらに暑いが,良く晴れているので,見晴らしがよい.富士山や南アルプスの写真を撮りながら,10時08分に花立山を通過する.
■塔ノ岳山頂
どうせ遅れ次いでに,写真を撮りながら,ノソノソと歩き続けて,10時14分,金冷シを通過.気温26.3℃.涼しくなる.
塔ノ岳山頂直下の階段で,下ってくるローギヤー氏とすれ違う.
「ついに,今頃になってしまいました」
と挨拶.その後,惰性で登り続けて,10時31分に塔ノ岳山頂に到着.気温は花立山と同じ26,3℃.
山頂からの富士山や南アルプスの眺望が相変わらず素晴らしい.山頂には数名の先客が居る.
私は3~4分の間,展望写真を撮りまくる.
■尊仏山荘
10時40分頃,尊仏山荘に入る.小屋番は,先日,見晴山荘ですれ違ったXさん.
私の顔を見ると開口一番,
「ネコ,無事に生きていますよ」
と教えてくれる.ただ,何時も小屋のどこかに潜んでいて,どこに居るのか分からないが,餌を食べに出てくるという.私はホッとする.
「そうでしたか,良かった.あいつも,もう11歳.心配になりますよ・・」
と答える.
先客はカメラマンのMさん.
「今日は,途中でYさんと一緒になったので,ユックリ登ってきましたよ・・」
「良かった.私も今到着したばかりですよ.追い抜かれるところだった・・」
内心では,私にはとてもMさんを追い抜くことなどできないし,追い抜くことなどしたくない思っているが,黙っている.
その後,Oさんのことが話題になる.Xさんが,
「・・××日の頃,お見舞いに行ってきますよ.今のOさんの体調では,すぐには手術ができないので,手術は,××日後の××日になるそうです・・また,様子が分かったらお話ししますよ」(注:プライバシィ保護のため日付は伏せる.)
「よろしく,お願いします.早く快癒されることを期待していますよ.Oさんだけでなく,ミー君のためにも・・」
その後も雑談.カメラマンのMさんによると,丹沢山に向かうキレット周辺のシロヤシオが,もう真っ赤に紅葉しているとのこと,本来の紅葉の時期になると,茶色の枯葉になってしまう心配があるという.
今日は,ノソノソと登ったので,時間が押している.効用を見に行くのは諦めるが,近々,私もキレット付近まで行ってみようかと思っている.
Yさんの尊仏山荘への到着を待っていたが,ついに現れなかった.
■ユックリ下山
大倉発13時52分の渋沢駅行のバスに間に合うように,11時07分に尊仏山荘を出発する.
山頂付近の気温が実に心地よいので,できるだけユックリと風景を眺めながら下る.途中,2~3人の方々に追い抜かれるが,なるべく気にしないようにして,同じテンポで下り続ける.
花立山荘辺りから,地面からの熱気がムッと来るようになる.見晴山荘を過ぎると,絶え間なく蚊やアブが纏わり付く.秋が近いとはいえ,まだまだ,夏だなと思う.
途中,数名の登山客とすれ違う.駒止茶屋の階段ですれ違った登山者から,
「もうすぐ山頂じゃないですか」
と聞かれて,返答に窮する.
13時34分に大倉着.気温32.0℃.真夏日である.
今日は,ユックリと登山したつもりだが,何となく疲れた.でも,沢山の知り合いとお話が出来て良かったなと思っている.
<やがて山麓から雲が沸いてきた>
<山行記録>
7:35 大倉歩き出し(29.6℃)
7:59 観音茶屋(26.4℃)
8:16 見晴茶屋
8:47 駒止茶屋(23.7℃)
9:04 堀山の家(23.6℃)
9:57 花立山荘(23.8℃)
10:14 金冷シ(26.3℃)
10:31 塔ノ岳山頂 着
============================================
11:07 塔ノ岳山頂 発(+23.6℃)
11:20 金冷シ
11:33 花立山荘
12:10 堀山の家
12:26 駒止茶屋
12:52 見晴茶屋
13:09 観音茶屋
13:34 大倉 着(31.9℃)
[山行記録]
■水平距離 7.0km(片道)
■累積登攀下降高度 1269m
■登攀所要時間
大倉 発 7:35
塔ノ岳 着 10:31
(所要時間) 2時間56 分(2.93h)
登攀速度 1269m/2.93h=433.1m/h
■下降所要時間
塔ノ岳 発 11:07
大倉 着 13:34
(所要時間) 2時間27分(2.45h)
下降速度 1269m/2.45h=518.0m/h
(おわり)
「丹沢の山旅」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/7efa28afab58d21d67848acda75ccad8
「丹沢の山旅」の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/aee5b251b58bd6ce6248a7cc4ff8d1ad
真夏日の性懲りもなく登る丹沢:塔ノ岳(今年28回目)
(単独山行:途中Yさんに同行)
2010年9月22日(水)
■夏日に出掛ける
出掛ける前から,今日は真夏日になることは知っていたが,とにかく塔ノ岳に出掛けることにする.数日前に塔ノ岳に出掛けたときと比較しても,夜明けの時間は目に見えて遅くなっている.まだ,辺りがほんの少し明るくなり始めた5時10分に家を出る.
小田原駅で,少しモタモタしている内に,何時もなら駆け足で間に合う小田急線の電車に乗り遅れる.そして,残念ながら渋沢発大倉行1番バスにも乗り遅れる.ここで意気消沈.2番バスではローギヤー氏とバッタリ.
7時35分に大倉を出発する.何時もより約30分遅い出発である.この時点の大倉の気温は29.6℃.もう十分に暑い.ジッとしていても暑いので,少し歩き出しただけで汗が出てくる.
「・・こりゃ,ダメだ・・」
私は歩き出した時点で,塔ノ岳山頂まで登ろうという意欲がなくなる.
「まあ,いいか・・暫くの間,ブラブラと登ってみるか・・」
7時40分,登山口に到着.何時もなら大倉から4分少々で登山口に到着するが,今日は既に5分少々も掛かっている.この分だと,仮に塔ノ岳山頂まで行っても,所要時間は3時間10分程度掛かるなと,悲観的な見透しを立てる.
7時51分,観音茶屋を通過する.ここで,私のすぐ後に歩き出したローギヤー氏が私に追いつく.私は道を譲って,ローギヤー氏に先に行って貰う.
■駒止茶屋
8時16分,見晴茶屋を通過する.前方に長い急坂が見える.坂の中程を2本ストックの男性が止まりそうな速度で登っているのが見える.私はローギヤー氏と5メートルほど離れて登り続ける.急坂の終わり近くで,登山道が二手に分岐するところで,2本ストックの男性に追いつく.男性が,私に話しかける.
「・・今日はバカに暑いですね・・どちらからですか?」
「鎌倉からです・・・本当に暑いですね・・」
二言三言雑談をしている間に,ローギヤー氏との間隔が10数メートルも空いてしまう.私はローギヤー氏の後を付けるのを諦める.
やがて,駒止茶屋手前の急階段に到着する.ここでも私の前方をユックリ,ユックリと登っている人が見える.私もユックリだが少しずつ距離が縮まる.8時47分,漸く駒止茶屋を通過する.大倉を歩き出してから実に1時間17分も経過している.いくら気温が高いとはいえ,1時間を17分もオーバーするとは,呆れてものも言えない.私も随分脚力が落ちたなと実感,とても自分が哀れに思えてくる.
このとき,何となく足許が良く見えないなと気がつく.
「いけない・・パソコン用の眼鏡を掛けたまま出掛けてしまった」
私は自分のそそっかしさに愛想が尽きる.パソコン用の眼鏡は,手許が良く見えるように作ったもの.足許ほどの距離になると,もう良く見えなくなる.でもまあ,リュックの中に予備の眼鏡が入っている.どうしても不都合になったら“眼鏡を代えればいいや”で,そのまま登り続ける.
更に,更に・・である.肝心の携帯電話も,家に忘れたまま.マイッタナ!
今日一日,事故を起こさないように一層の注意をしなければ・・・
■堀山の家
駒止茶屋近くの森から,「ジージー・・」と高い音色の虫の啼き声が絶えず聞こえてくる.明日は秋分の日.いくら暑いと言っても,虫の音を聞いていると,近付く秋を実感する.
8時39分,例によって上の方からもの凄い勢いで駆け下りてくるYさんとすれ違う.
「こんにちは・・」
と挨拶している内に,10数メートル先へ行ってしまう.
私は虫の音に聞き耳を立てながら,堀山の尾根に入る.緩やかな上り下りのある尾根道は,大倉尾根の中で,歩いていて最も楽しいところである.ここまで登るといくらか風も吹くし,尾根からの眺望も開ける.
西を見ると,いくらか霞が掛かった富士山が良く見えている.私はカメラを取り出して,富士山の写真を何枚も撮り続ける.
8時56分,堀山を通過する.ここから暫くの間,緩やかな下り坂になる.下り坂では,歩行速度を上げる.下り坂が終わると,短い登り返しがあり,9時04分,堀山の家に到着する.気温23.6℃.平坦なところで歩行速度を上げたので,堀山の家ではゴーギヤー氏のすぐ後,5メートルほどのところまで追いつく.私の気配に気がついたのか,ローギヤー氏が振り向いて,
「今日は富士山が綺麗に見えますね・・」
と話しかける.
一言二言,お話をしながら,並行して歩くが,徐々に,徐々に,ローギヤー氏との間が開いていく.勿論,無理をしてまでローギヤー氏の後を追うことはしない.ときどき,ハイドレーションシステムから水分を一口,二口と補給しながら,マイペースで登り続ける.
■萱場平
9時22分,戸沢分岐を通過する.その2分後,萱場平に到着.気温23.8℃.まだまだ気温は高い.
萱場平には全く人気がない.鳥の声もない.静寂そのものである.私は,そのまま,萱場平を通過して,再び登り階段に差し掛かる.
「やれ,やれ,難儀だな・・」
と思いながら,半ば惰性でエッチラ,ホッチラと登り続ける.
余談になるが,大倉尾根は,ずぼらな私にとって,実に都合の良い尾根だと,常日頃から思っている.その理由は適当にメリハリが付いていることである.メリハリは次の箇所である.
第1に,大倉から歩き出して,そろそろ飽きてくるところに見晴山荘があることである.山荘の先の急坂を仰ぎ見てため息が出るが,逆に,この坂を登って一本松まで辿り着けば,その先に心地よい尾根道が待っている.
第2に,駒止茶屋手前の急坂.この急坂を仰ぎ見ると,毎回,ウンザリする.でも,ほんの数分,我慢して登りきれば,眺望の素晴らしい堀山の尾根が待っている.天気さえ良ければ富士山も拝める.この尾根の心地良さを想像すれば,この急坂でもファイトが沸く.
第3は堀山の家である.運が良ければ富士山が見える.それに,ここまで来れば,40分ほど辛抱して坂を登っていれば,花立山荘に辿りつける.途中の萱場平に到着したら,堀山の家から花立山荘までの半分は登ったぞと勇気づけられる.
花立山荘まで来れば,もう山頂に登ったのと同じで,先が見えている.もう一寸頑張って花立山まで登れば,後は下りの尾根道.金冷シから先は,いくら急いでも,いくらユックリでも,所要時間に大差ない.
そんな意味からも,ここ萱場平は精神的な息抜きに重要な地点である.
「ここまで来たら,四の五の言わずに,今日も山頂まで行くぞ・・」
■努力家のYさん
やがて階段の幅が開け,見透しの良い所に到着する.遙か先を軽快に登っているローギヤー氏の後ろ姿が見える.その後ろに2~3人の登山者が見える.一番後ろをユックリと登っている男性がいる.近付くと,この頃,熱心に丹沢に通っているYさんである. ここから暫くの間,Yさんと雑談しながら,定速で登り続ける.
「・・・先日,ロッキー山脈でFHさんとご一緒した方と,尊仏山荘で一緒になりましたよ.FHさんのことが話題になっていましたよ.その方,ノートに何か書いていましたよ・・」
とYさんがいう.
9時40分,花立山荘手前の階段近くを登っているとき,1番バスで来られた韋駄天のHさんとすれ違う.
「・・今日は2番バスで来ました.萱場平を過ぎたところからYさんと,雑談しながら来ました」
とYさんに経過報告.韋駄天のHさんが別れ際に,Yさんに,
「・・この方のペースに巻き込まれないで,ユックリ歩いて下さいよ・・」
と忠告する.このHさんの忠告を聞いて,ひょっとして,私がYさんのペースを乱したかもしれないと,「ハッ」とする.人それぞれに自分のペースというものがある.そのペースを乱す恐れのあることは,以後,慎むべきだと大いに反省する.
■ご常連のS藤さん
9時45分,「あと7分坂」の袂に到着する.Yさんが,
「ここで一休みしていきます・・・ひょっとしたら,山頂まで行かずに下山しますので,尊仏山荘の方に宜しく言って下さい」
という.
それではということで,Yさんとお別れして,急坂の階段を登る.もう少しで階段が終わる頃,ご常連のS藤さんが上から降りてくる.
「FHさん,相変わらずお元気そうですね・・」
と私に話しかける.内心,私はちっとも元気ではないが,汗を流さない速度で登っているので,見た目には気楽に登っているように見えるのだろう.
2~3分,立ち止まって四方山話をする.
「・・また,大船辺りでお会いしましょう・・」
でお別れ.
9時57分,花立山荘に到着する.気温23.8℃.風が通って涼しい.
大倉から歩き出して,実に2時間22分も経過している.せめて,2時間10分程度で登りたかったが,やむを得ない.
階段を登っている最中に,急速で私を追い上げていた中年男性は,倒れ込むようにして,山荘前のベンチに座り込む.
■眺望の花立山
花立山荘を通過する.気温26.3℃.直射日光のためか花立山荘より3℃近く高い.今日はやたらに暑いが,良く晴れているので,見晴らしがよい.富士山や南アルプスの写真を撮りながら,10時08分に花立山を通過する.
■塔ノ岳山頂
どうせ遅れ次いでに,写真を撮りながら,ノソノソと歩き続けて,10時14分,金冷シを通過.気温26.3℃.涼しくなる.
塔ノ岳山頂直下の階段で,下ってくるローギヤー氏とすれ違う.
「ついに,今頃になってしまいました」
と挨拶.その後,惰性で登り続けて,10時31分に塔ノ岳山頂に到着.気温は花立山と同じ26,3℃.
山頂からの富士山や南アルプスの眺望が相変わらず素晴らしい.山頂には数名の先客が居る.
私は3~4分の間,展望写真を撮りまくる.
■尊仏山荘
10時40分頃,尊仏山荘に入る.小屋番は,先日,見晴山荘ですれ違ったXさん.
私の顔を見ると開口一番,
「ネコ,無事に生きていますよ」
と教えてくれる.ただ,何時も小屋のどこかに潜んでいて,どこに居るのか分からないが,餌を食べに出てくるという.私はホッとする.
「そうでしたか,良かった.あいつも,もう11歳.心配になりますよ・・」
と答える.
先客はカメラマンのMさん.
「今日は,途中でYさんと一緒になったので,ユックリ登ってきましたよ・・」
「良かった.私も今到着したばかりですよ.追い抜かれるところだった・・」
内心では,私にはとてもMさんを追い抜くことなどできないし,追い抜くことなどしたくない思っているが,黙っている.
その後,Oさんのことが話題になる.Xさんが,
「・・××日の頃,お見舞いに行ってきますよ.今のOさんの体調では,すぐには手術ができないので,手術は,××日後の××日になるそうです・・また,様子が分かったらお話ししますよ」(注:プライバシィ保護のため日付は伏せる.)
「よろしく,お願いします.早く快癒されることを期待していますよ.Oさんだけでなく,ミー君のためにも・・」
その後も雑談.カメラマンのMさんによると,丹沢山に向かうキレット周辺のシロヤシオが,もう真っ赤に紅葉しているとのこと,本来の紅葉の時期になると,茶色の枯葉になってしまう心配があるという.
今日は,ノソノソと登ったので,時間が押している.効用を見に行くのは諦めるが,近々,私もキレット付近まで行ってみようかと思っている.
Yさんの尊仏山荘への到着を待っていたが,ついに現れなかった.
■ユックリ下山
大倉発13時52分の渋沢駅行のバスに間に合うように,11時07分に尊仏山荘を出発する.
山頂付近の気温が実に心地よいので,できるだけユックリと風景を眺めながら下る.途中,2~3人の方々に追い抜かれるが,なるべく気にしないようにして,同じテンポで下り続ける.
花立山荘辺りから,地面からの熱気がムッと来るようになる.見晴山荘を過ぎると,絶え間なく蚊やアブが纏わり付く.秋が近いとはいえ,まだまだ,夏だなと思う.
途中,数名の登山客とすれ違う.駒止茶屋の階段ですれ違った登山者から,
「もうすぐ山頂じゃないですか」
と聞かれて,返答に窮する.
13時34分に大倉着.気温32.0℃.真夏日である.
今日は,ユックリと登山したつもりだが,何となく疲れた.でも,沢山の知り合いとお話が出来て良かったなと思っている.
<やがて山麓から雲が沸いてきた>
<山行記録>
7:35 大倉歩き出し(29.6℃)
7:59 観音茶屋(26.4℃)
8:16 見晴茶屋
8:47 駒止茶屋(23.7℃)
9:04 堀山の家(23.6℃)
9:57 花立山荘(23.8℃)
10:14 金冷シ(26.3℃)
10:31 塔ノ岳山頂 着
============================================
11:07 塔ノ岳山頂 発(+23.6℃)
11:20 金冷シ
11:33 花立山荘
12:10 堀山の家
12:26 駒止茶屋
12:52 見晴茶屋
13:09 観音茶屋
13:34 大倉 着(31.9℃)
[山行記録]
■水平距離 7.0km(片道)
■累積登攀下降高度 1269m
■登攀所要時間
大倉 発 7:35
塔ノ岳 着 10:31
(所要時間) 2時間56 分(2.93h)
登攀速度 1269m/2.93h=433.1m/h
■下降所要時間
塔ノ岳 発 11:07
大倉 着 13:34
(所要時間) 2時間27分(2.45h)
下降速度 1269m/2.45h=518.0m/h
(おわり)
「丹沢の山旅」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/7efa28afab58d21d67848acda75ccad8
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