一期一会の塔ノ岳(1)
糖尿病と登山靴
(単独山行)
2007年5月22日(火) 晴
■自家製の弁当を持って出発
今週前半の天候は安定しているという。実は昨日(5月22日(月))に塔ノ岳へ登ろうと思っていたが,何となく多忙で登れなかった。そこで,何はさておき,今日は登山に出掛けてしまおうと決めた。
下賎な話だが,自宅のある鎌倉から塔ノ岳へ登ると,交通費や昼食代など,1回4,000円ほどかかる。月に10回塔ノ岳(または類似の山)へ登るとすれば,その費用は4万円ほどになる。サンデー毎日のflower-hllにとっては,月に4万円の出費は結構堪える。そこで,出来心で今日の山行には,自作の弁当を持参することにした。
つい先日,岩稜練習のために廻り目平へ行った。その途中で購入した駅弁は,竹の皮で作った弁当箱に入っていた。この弁当箱,捨ててしまうのは勿体ないので,そのまま自宅へ持ち帰っていた。
家を出る5分前に思いつき,この弁当箱にゴハンを適当に入れ,その上からシャケの振りかけを適当に掛ける。真ん中に梅干しを埋め込む。そして,端っこにキムチを少々載せる・・・冷蔵庫にあった適当な品を入れて弁当が完成する。これを新聞紙でくるんでリュックに入れる。
■変な匂いがする
私は自分で作った弁当を持って,意気揚々と出掛ける。大船駅から東海道本線の電車に乗り込む。ラッシュアワー前の時間帯なので,列車は空いている。幸い窓側の席に座ることができた。膝の上にリュックを抱えて,小田原までの車窓を楽しむことにする。
座席で一息ついた頃,車内のどこからともなく,厭な刺激臭が漂ってくる。厭な匂いだなと思いながらも,席を変えるほどでもないので,そのまま小田原駅に到着する。
小田原で小田急電鉄の電車に乗り換える。まだ少々時間が早いので,この電車もユックリと座れる。朝日が車内に射し込んでいる。暑くも寒くもなく,とても気分がよい。車内で落ち着いて暫くすると,またどこからともなく,霊の刺激臭が漂ってくる。おかしいなと思いながら,刺激臭がどこから臭って来るのかを探る。
膝に置いたリュックを何気なく嗅ぐと,この刺激臭の発生源は自分のリュックであった。今朝の俄造りの弁当に入れたキムチが臭っている。気が付いた途端に隣の席に座っている方に迷惑を掛けているのではないかと気になり始める。それからは,早く渋沢駅へ着いてくれと念ずるばかりである。
■蒸し暑い登山道
大倉行のバスには,15名ほどの登山客が乗っていた。バスは7時28分に大倉バス停に到着する。軽くストレッチをしてから,7時39分に登山を開始する。例によって,同じバスに乗り合わせた登山客の一番後になる。
山の中腹辺りから上は雲に覆われている。私が山頂に着く頃,この雲が晴れ渡ることを期待しながら登り始める。登り始めの沢筋の登山道は,風が通らない上に,杉林の中でジメジメしている。このところ雨は降っていないはずなのに,石を敷き詰めた路面はぬるぬるとしていて滑りやすい。
<新芽を食べるのに余念のないシカ>
■今日の目標
「今日は,山頂まで,2時間20分で登ろう」と目標を決める。この所の私のテーマは,登山速度が速い遅いではなく,目標の時間をどこまで正確に守れるかという点に絞っている。山頂への到着時間を念頭に置きながら,途中の通過時間を合わせながら登り続ける・・・これは面倒だが大変楽しいことでもある。
7時58分に観音茶屋を通過する。予定ピッタリの時間である。「この調子・・」と自分を鼓舞する。広い道では先発の登山者を適当に追い抜けるが,登山道が狭くなると,そうはいかない。どうしても前の方の同じペースで登らなければならない。そんな時は,道が広くなるところで,追い越させて頂き,その後,少しペースを上げて,できるだけ所定の時間に戻るように心掛ける。
<新緑が美しい登山道>
■男性の同行する
8時26分に一本松を通過する。ここから少し坂道を登ると,見晴らしの良い尾根道にでる。残念ながら今日は霧に覆われていて,周辺の景色を楽しむことができない。その代わりに,霧で濡れた若葉がトンネルのように登山道を覆っている。綺麗な若葉のトンネルを潜りながらマイペースで登り続けるのも,なかなか乙な気分である。
やがて,駒止茶屋手前の急坂に差し掛かる。中年の女性が汗ビッショリになって急坂を登っている。私は,「すみません・・」と挨拶をしながら,先へ行かせて貰う。
8時43分に駒止茶屋を通過する。茶屋を過ぎた坂道で,年輩の男性に追いつく。
「こんにちは・・」
と挨拶すると,男性は,
「こんにちは・・・なかなか大変ですね。実は途中で靴底が剥がれそうになって困りましたよ・・・」
と私に話しかけてくる。
「どうしたんですか・・」
と聞くと,2年ほど履いていなかった靴を持ち出して,履いてきたら途中で右側の靴の踵が剥げかかったという。小田急の駅に駆け込んで,粘着テープを輪のようにして,踵と靴底の間に入れて貼り付ける応急処置をしたという。これから山頂まではまだ長い。それに下山のことを考えると,危険極まりない。
■糖尿病と登山靴
お節介ながら,私は暗に直ぐ下山するように勧めるが,彼は登り続けるという。そこで,暫くの間,この男性と一緒に登ることにする。彼は藤沢在住。現在,糖尿病に罹患しているとのこと。そのために左足がむくんで歩きづらいという。医師の薦めもあって軽登山を始めたようである。
「私,四国の石槌山へどうしても登りたいんです。去年は都合がつかなくていけなかったので,今年は是非登りたいと思ってます・・・」
雑談をしながら,ごく,ごく,ユックリとした速度で,一緒に登り続ける。
「この靴,殆ど履いていないですが,もう毀れてしまったんです。セメダインで接着すればなおるんでしょうね・・・」
と私に聞く。見ると,普通の運動靴を履いている。
「私も素人ですから正確なことは分かりませんが,靴は履いていても履かなくても,5年も経つと劣化して剥がれやすくなるそうですよ・・・登山には靴が最重要アイテムですから,登山用品の専門店に行って,しっかり相談して購入された方が宜しいですよ・・それに,できれば私が履いているような踝を覆う革製の軽登山靴が良いですよ。」
とアドバイスする。
「山で会う人は,皆,親切で良いですね・・・良く分かりました。帰ったら横浜のカモシカへ行って,靴を買いますよ」
ひきつづき,私はこの男性と雑談しながら登り続ける。
<路傍のタンポポ>
(つづく)
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