<途中に登山者を計測する機械が設置された>
キツツキが騒がしい丹沢:塔ノ岳(今年7回目)
(単独山行)
2009年2月9日(月)
■出掛けるのが億劫だ
昨夜から,今日こそ,塔ノ岳に出掛けようと思っていた・・・・が,未だ暗くて寒い早朝,どうしても家を出るのが億劫である.もうとっくに目が覚めているのに,グズグズとしていて,なかなかベッドから起きあがれない.
今日の天気予報は,9時頃までは晴,それ以降は曇.ただ深夜まで雨が降ることはなさそうである.10分ほどの間,出掛けるか,それとも,もう一寝入りするかで迷い続ける.でも,億劫がってグズグズしていると,たちまちの内に身体が鈍ってしまうのも怖い.そこで,とにかく,起床する.そして,リュックの中身を点検する.リュックを弄っている内に,兎に角,出掛けることにする.
5時10分に家を出発する.寒い.外はまだ暗いが,西の空に大きな満月が煌々と輝いている.
■大倉を歩き出す
例によって,藤沢から相模大野経由で渋沢に向かう.途中,電車が2分ほど遅延する.渋沢発大倉行の2番バスに乗り遅れるのではないかとヒヤヒヤするが,発車時間ギリギリにバスに飛び乗る.バスの入口近くに座っていた女性が,私に挨拶する.山旅スクール6期のNさんである.塔ノ岳で良く出会う方である.同じバスに乗り合わせた登山客は,たった4名である.
バスは7時28分に大倉に到着する.例によって,軽くストレッチを済ませる.そして,ウインドウブレーカーを脱いで薄着になる.Nさんとは別に,7時40分に大倉バス停を歩き出す.空気が乾燥しているためか路面は乾いている.空一面に雲が垂れ込めているが,雲は高いので,近くの大山,二ノ塔など表尾根の山々は,頂上まで良く見えている.
<枯れ木の間から表尾根が見える>
■自動ロボットのように黙々と登る
今日のテーマは「なるべく疲れないように歩く」にしようと思う.具体的には,一歩歩いて貯まった疲れは,次の一歩を踏み出す前に,取り去ってしまうということであろう.それには,負荷を常に一定に保ちながら歩く必要がある.
私は歩きながら,負荷を一定に保つって,どういうことかな・・なんて,考え続ける.するとお題目とは裏腹に,ついつい惰性でダラダラ歩きをしてしまう.
「・・・つまり,ΔQ/Δt=k ってことか.でもkはどうやって決めるんだ・・・
kは,天候,気温,道路の状況,体調,等々によって,値が異なってくる筈である.
k=f(g1,g2,g3,・・・・)
う~ん・・・これは一筋縄では纏まらないな~ぁ・・・」
そんな下らないことを考えながら,何となく自動運転のロボットになったような気分になって,ユックリと登り続ける.
8時41分に駒止茶屋を通過する.歩き出して1時間01分経過している.一生懸命に歩いても1時間を切るのはなかなか困難である.ブラブラ歩きの今日,1時間をわずか1分超過しただけで通過できたのは幸いである.やっぱり,最初の歩き出しを超ユックリペースだったので,疲労せずに駒止茶屋手前の坂道が登れた結果であろう.
<中央に富士山が見えるはずだが今日は雲の中>
■キツツキとご常連のYさん
堀山の尾根からの眺望は,近場の丹沢の山が見えるだけで,富士山は雲の中である.風はないが,陽ざしもないので,結構寒い.気が付くと,観音茶屋を過ぎた辺りから,全くの一人旅である.同じバスに乗り合わせた方々は,私よりもうずっと後だが,追い越す人も,追い越される人も全く居ない.
登山道近くの林の中から,キツツキが木の幹を突っつく音が「ドドドド・・・,ドドドド・・・,」と木霊しながら聞こえてくる.
私は何時もの撮影ポイントで,富士山が全く見えない雲だけの写真を撮る.
8時57分に堀山ノ家を通過する.小屋の周辺には,全く人気がない.今日は疲れないように歩いているので,疲労感は全くなく,汗も全くかいていない.堀山ノ家からの急坂も,あまり速度を落とさずに,意外と楽に登り続けられる.
途中で,繁忙期に尊仏山荘へお手伝いに来ている方と,すれ違う.
9時14分に,堀山ノ家と花立山荘の中間点,萱場平に到着する.何時ものように定点に立って,萱場平の写真を撮る.丁度そのとき,前方からご常連のYさんが駆け下りてくる.
今日は冷え込みが強いらしくて,萱場平には泥濘に刻み込まれた無数の足跡が,そのままカチカチに凍り付いている.凍り付いた足跡が凸凹していて,とても歩きにくい.
<凍てついたままの今日の萱場平:たまたまYさんが下山してくる>
■何となく花立山荘を通過
萱場平を通過して階段道に差し掛かる.ここも案外軽く登れる.そして岩稜地帯に入る.急坂のガレ場を登っている内に,何となく気分が高揚してくる.坂道を登りながら,とても楽しくて,嬉しくなってくる.なぜ嬉しく感じるんだろう.それが自分にも分からない.とにかく,だんだんとルンルン気分になってくる.
花立山荘手前の階段道も,今日は苦にならない.何時もならば,この階段道を登り切るのに,およそ7分掛かるが,今日は6分足らずで登り切る.そして,9時32分に花立山荘を通過する.今日の堀山ノ家から花立山荘までのラップタイムは35分.標準並みだが,今日は疲労感が少ない.
<花立山荘から秦野を見下ろす>
■ご常連のTさんとMさん
そのままの速度で,花立場へ向かう.
前方から,ご常連のTさんが降りてくる.前回とほぼ同じ所ですれ違う.Tさんが,
「・・・今日の山頂の気温はマイナス3.0℃でしたよ」
と私に教えてくれる.今度は私がTさんに質問する.
「相変わらず,毎日登っておられるんですか・・・」
「先日,法事があって2日間休みましたが,その他の日は毎日登っています・・」
修行僧にも似たTさんの精進には,全く感服するばかりである.
金冷シの手前で,今度はご常連のMさんとバッタリ会う.Mさんが,
「なんだ! 元気にしているの・・・」
と私に話しかける.
「この所,あまりお会いしませんでしたね.何時ものように登っておられるんですか」
「今年になって,今日で15回目だよ・・」
「そうでしたか,私は今日で7回目.まだまだ足許にも及びませんね・・」
9時46分に金冷シを通過する.気温が一段と下がって,腕まくりしている手の肌が赤くなる.寒いので,少し歩行ピッチを上げる.そして,9時58分に塔ノ岳山頂に到着する.
<塔ノ岳山頂からの眺望:残念ながら富士山は見えない>
■尊仏山荘
冷たい風が山頂を吹き抜けている.高曇りのために,富士山や南アルプスは全く見えないが,近場の丹沢の山々は良く見えている.私は大急ぎで辺りの写真を撮そうと思う.ところが,寒いためかデジカメのレンズの蓋がうまく開かない.指でこじ開けるようにして蓋を開いてから,何枚かの写真を撮る.
そのまま,大急ぎで尊仏山荘に飛び込む.山荘の温度計によると,10時現在の山頂の気温はマイナス3.8℃.先ほどTさんに伺った気温より下がっている.
今日の小屋番は営業部長の部下,Oさん.ところが営業部長はどこでサボっているのか顔を出さない.
先客はカメラマン氏と女性.どちらもご常連.Oさんから早速,
「今日の2番バス.何人乗っていましたか?」
との質問がある.
お茶を飲みながら,暫くの間,雑談.
半時ほど経つ.私は,
「・・そろそろ,帰ろうかな・・・」
と腰を浮かす.
その途端に,私は自分に,
「折角登ったのに,もう下山するの?・・・そんなら,一体,何でここまで登ってきたの・・」
と心の中で質問する.答えは自分でも分からない.私は何で塔ノ岳に登っているんだろう?
<塔ノ岳山頂から海を望む>
■下山途中で呼び止められる
10時18分に尊仏山荘を出発,下山を開始する.寒いので,下りはヤッケを着込み,手袋をしている.
山頂と金冷シの間の坂道で,同じバスに乗り合わせた山旅スクールのNさんとすれ違う.
「お先にユックリ下山しています・・・」
と挨拶する.
私は,大倉発12時52分のバスに乗るつもりである.時間はタップリある.ユックリと山の雰囲気を楽しみながら下山したいと思っている.
のそのそと,堀山ノ家付近の急坂を下っていると,下から登ってきた女性に,
「あら・・・flower-hillさんですか.一度ご一緒に登ってみたいと思っていました・・」
と声をかけられる.私には見覚えのない方である.話を伺うと山旅スクール10期のKさんという方である.物忘れの激しいロートルの私は,お目に掛かった記憶は全くないが,そんなことは毎度のことなので,気にしても仕方がない.
「尊仏山荘で,ときどきflower-hillさんは来られますかと伺っているんです.山荘の方の話だと,flower-hillさんは,随分と速いんですってね・・・」
「飛んでもない・・・常連の中では遅い方ですよ・・」
「いえ,そうではなく・・・勿論,速いでしょうが,とても早い時間に山荘にお見えになるって,伺いました・・」
私は,心の中で,「なんだ,速いでなくて,早いか・・」と,少しガッカリした気分になって,
「そうですね,大体,10時前後に尊仏山荘に到着するようにしています・・」
とお答えする.次いで,Kさんが,質問する.
「・・・5期のIさんと一緒に歩きたいんですが・・・あの方と歩いていると,とても楽しいので.Iさんとはご一緒のことありますか・・・」
「Iさんですか? 普段,良く一緒にハイキングしていますよ・・」
「今度,Iさんと何処かへ行かれるときには,是非,私も誘ってください」
「じゃあ~・・・下山したらIさんと相談してみます」
■何で塔ノ岳なんだろう
ノンビリ,ユックリと楽しみながら下山し続ける.少し急げば大倉発12時22分のバスに間に合いそうだが,急ぐ気にならない.彼方此方で道草しながら,12時31分に大倉に到着する.水道で靴の泥を洗い流したり,荷物を整理したりで時間を過ごす.
12時45分頃,往路のバスで一緒だったNさんが大倉に到着する.バスから小田急に乗り継いで相模大野まで,Nさんと雑談しながらご一緒する.
「・・この頃寒いので,朝,出掛けるのに決心が必要です・・」
と私が言いたいことをNさんが話し出す.全く同感である.家を出てしまえば,どうということはないのだが,寒くて暗い外へ家から一歩踏み出すのに勇気が要る.
「あれこれ考えているより,塔ノ岳に登る方が,気が楽なので,塔ノ岳ばかり登っています・・」
これもまた同感である.私もついつい塔ノ岳往復を繰り返している.
それにしても,一体,何でこんなに何回も塔ノ岳に登るんだろう.
何が楽しみで,私は塔ノ岳に登っているんだろう.
どうして塔ノ岳に登っていると気分が良くなるんだろう.
私は塔ノ岳の不思議を考えている内に,乗換駅の藤沢に到着する.登山後の気分はとても爽快である.多分,また,今週中に,塔ノ岳詣でをするんだろうなと思っている.
[ラップタイム]
7:40 大倉歩き出し
7:59 観音茶屋
8:14 見晴茶屋
8:28 一本松
8:41 駒止茶屋
8:57 堀山ノ家
9:12 戸沢分岐
9:32 花立山荘
9:46 金冷シ
9:58 塔ノ岳山頂着
============================================
10:18 塔ノ岳山頂発(-3.8℃)
10:29 金冷シ
10:41 花立山荘
11:07 戸沢分岐
11:20 堀山ノ家
11:36 駒止茶屋
11:48 一本松
12:00 見晴茶屋
12:13 観音茶菓
12:31 大倉着
[山行記録]
■水平歩行距離 7.0km(片道)
■累積登攀下降高度 1201m
■登り所要時間
大倉発 7:40
塔ノ岳山頂着 9:58
(所要時間) 2時間18分(2.30h)
登攀速度 1201m/2.30h=522.2m/h
水平歩行速度 7.0km/2.30h=3.04km/h
■下り所要時間
塔ノ岳山頂発 10:18
大倉着 12:13
(所要時間) 2時間13分(2.22h)
下降速度 1201m/2.22h=541.0m/h
水平歩行速度 7.0km/2.22h=3.15km/h
(おわり)
「丹沢の山旅」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/fc184991c22dfb2305aa612c68c71d04
「丹沢の山旅」の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/ebb53f9e90f3136534b8da463168837a
キツツキが騒がしい丹沢:塔ノ岳(今年7回目)
(単独山行)
2009年2月9日(月)
■出掛けるのが億劫だ
昨夜から,今日こそ,塔ノ岳に出掛けようと思っていた・・・・が,未だ暗くて寒い早朝,どうしても家を出るのが億劫である.もうとっくに目が覚めているのに,グズグズとしていて,なかなかベッドから起きあがれない.
今日の天気予報は,9時頃までは晴,それ以降は曇.ただ深夜まで雨が降ることはなさそうである.10分ほどの間,出掛けるか,それとも,もう一寝入りするかで迷い続ける.でも,億劫がってグズグズしていると,たちまちの内に身体が鈍ってしまうのも怖い.そこで,とにかく,起床する.そして,リュックの中身を点検する.リュックを弄っている内に,兎に角,出掛けることにする.
5時10分に家を出発する.寒い.外はまだ暗いが,西の空に大きな満月が煌々と輝いている.
■大倉を歩き出す
例によって,藤沢から相模大野経由で渋沢に向かう.途中,電車が2分ほど遅延する.渋沢発大倉行の2番バスに乗り遅れるのではないかとヒヤヒヤするが,発車時間ギリギリにバスに飛び乗る.バスの入口近くに座っていた女性が,私に挨拶する.山旅スクール6期のNさんである.塔ノ岳で良く出会う方である.同じバスに乗り合わせた登山客は,たった4名である.
バスは7時28分に大倉に到着する.例によって,軽くストレッチを済ませる.そして,ウインドウブレーカーを脱いで薄着になる.Nさんとは別に,7時40分に大倉バス停を歩き出す.空気が乾燥しているためか路面は乾いている.空一面に雲が垂れ込めているが,雲は高いので,近くの大山,二ノ塔など表尾根の山々は,頂上まで良く見えている.
<枯れ木の間から表尾根が見える>
■自動ロボットのように黙々と登る
今日のテーマは「なるべく疲れないように歩く」にしようと思う.具体的には,一歩歩いて貯まった疲れは,次の一歩を踏み出す前に,取り去ってしまうということであろう.それには,負荷を常に一定に保ちながら歩く必要がある.
私は歩きながら,負荷を一定に保つって,どういうことかな・・なんて,考え続ける.するとお題目とは裏腹に,ついつい惰性でダラダラ歩きをしてしまう.
「・・・つまり,ΔQ/Δt=k ってことか.でもkはどうやって決めるんだ・・・
kは,天候,気温,道路の状況,体調,等々によって,値が異なってくる筈である.
k=f(g1,g2,g3,・・・・)
う~ん・・・これは一筋縄では纏まらないな~ぁ・・・」
そんな下らないことを考えながら,何となく自動運転のロボットになったような気分になって,ユックリと登り続ける.
8時41分に駒止茶屋を通過する.歩き出して1時間01分経過している.一生懸命に歩いても1時間を切るのはなかなか困難である.ブラブラ歩きの今日,1時間をわずか1分超過しただけで通過できたのは幸いである.やっぱり,最初の歩き出しを超ユックリペースだったので,疲労せずに駒止茶屋手前の坂道が登れた結果であろう.
<中央に富士山が見えるはずだが今日は雲の中>
■キツツキとご常連のYさん
堀山の尾根からの眺望は,近場の丹沢の山が見えるだけで,富士山は雲の中である.風はないが,陽ざしもないので,結構寒い.気が付くと,観音茶屋を過ぎた辺りから,全くの一人旅である.同じバスに乗り合わせた方々は,私よりもうずっと後だが,追い越す人も,追い越される人も全く居ない.
登山道近くの林の中から,キツツキが木の幹を突っつく音が「ドドドド・・・,ドドドド・・・,」と木霊しながら聞こえてくる.
私は何時もの撮影ポイントで,富士山が全く見えない雲だけの写真を撮る.
8時57分に堀山ノ家を通過する.小屋の周辺には,全く人気がない.今日は疲れないように歩いているので,疲労感は全くなく,汗も全くかいていない.堀山ノ家からの急坂も,あまり速度を落とさずに,意外と楽に登り続けられる.
途中で,繁忙期に尊仏山荘へお手伝いに来ている方と,すれ違う.
9時14分に,堀山ノ家と花立山荘の中間点,萱場平に到着する.何時ものように定点に立って,萱場平の写真を撮る.丁度そのとき,前方からご常連のYさんが駆け下りてくる.
今日は冷え込みが強いらしくて,萱場平には泥濘に刻み込まれた無数の足跡が,そのままカチカチに凍り付いている.凍り付いた足跡が凸凹していて,とても歩きにくい.
<凍てついたままの今日の萱場平:たまたまYさんが下山してくる>
■何となく花立山荘を通過
萱場平を通過して階段道に差し掛かる.ここも案外軽く登れる.そして岩稜地帯に入る.急坂のガレ場を登っている内に,何となく気分が高揚してくる.坂道を登りながら,とても楽しくて,嬉しくなってくる.なぜ嬉しく感じるんだろう.それが自分にも分からない.とにかく,だんだんとルンルン気分になってくる.
花立山荘手前の階段道も,今日は苦にならない.何時もならば,この階段道を登り切るのに,およそ7分掛かるが,今日は6分足らずで登り切る.そして,9時32分に花立山荘を通過する.今日の堀山ノ家から花立山荘までのラップタイムは35分.標準並みだが,今日は疲労感が少ない.
<花立山荘から秦野を見下ろす>
■ご常連のTさんとMさん
そのままの速度で,花立場へ向かう.
前方から,ご常連のTさんが降りてくる.前回とほぼ同じ所ですれ違う.Tさんが,
「・・・今日の山頂の気温はマイナス3.0℃でしたよ」
と私に教えてくれる.今度は私がTさんに質問する.
「相変わらず,毎日登っておられるんですか・・・」
「先日,法事があって2日間休みましたが,その他の日は毎日登っています・・」
修行僧にも似たTさんの精進には,全く感服するばかりである.
金冷シの手前で,今度はご常連のMさんとバッタリ会う.Mさんが,
「なんだ! 元気にしているの・・・」
と私に話しかける.
「この所,あまりお会いしませんでしたね.何時ものように登っておられるんですか」
「今年になって,今日で15回目だよ・・」
「そうでしたか,私は今日で7回目.まだまだ足許にも及びませんね・・」
9時46分に金冷シを通過する.気温が一段と下がって,腕まくりしている手の肌が赤くなる.寒いので,少し歩行ピッチを上げる.そして,9時58分に塔ノ岳山頂に到着する.
<塔ノ岳山頂からの眺望:残念ながら富士山は見えない>
■尊仏山荘
冷たい風が山頂を吹き抜けている.高曇りのために,富士山や南アルプスは全く見えないが,近場の丹沢の山々は良く見えている.私は大急ぎで辺りの写真を撮そうと思う.ところが,寒いためかデジカメのレンズの蓋がうまく開かない.指でこじ開けるようにして蓋を開いてから,何枚かの写真を撮る.
そのまま,大急ぎで尊仏山荘に飛び込む.山荘の温度計によると,10時現在の山頂の気温はマイナス3.8℃.先ほどTさんに伺った気温より下がっている.
今日の小屋番は営業部長の部下,Oさん.ところが営業部長はどこでサボっているのか顔を出さない.
先客はカメラマン氏と女性.どちらもご常連.Oさんから早速,
「今日の2番バス.何人乗っていましたか?」
との質問がある.
お茶を飲みながら,暫くの間,雑談.
半時ほど経つ.私は,
「・・そろそろ,帰ろうかな・・・」
と腰を浮かす.
その途端に,私は自分に,
「折角登ったのに,もう下山するの?・・・そんなら,一体,何でここまで登ってきたの・・」
と心の中で質問する.答えは自分でも分からない.私は何で塔ノ岳に登っているんだろう?
<塔ノ岳山頂から海を望む>
■下山途中で呼び止められる
10時18分に尊仏山荘を出発,下山を開始する.寒いので,下りはヤッケを着込み,手袋をしている.
山頂と金冷シの間の坂道で,同じバスに乗り合わせた山旅スクールのNさんとすれ違う.
「お先にユックリ下山しています・・・」
と挨拶する.
私は,大倉発12時52分のバスに乗るつもりである.時間はタップリある.ユックリと山の雰囲気を楽しみながら下山したいと思っている.
のそのそと,堀山ノ家付近の急坂を下っていると,下から登ってきた女性に,
「あら・・・flower-hillさんですか.一度ご一緒に登ってみたいと思っていました・・」
と声をかけられる.私には見覚えのない方である.話を伺うと山旅スクール10期のKさんという方である.物忘れの激しいロートルの私は,お目に掛かった記憶は全くないが,そんなことは毎度のことなので,気にしても仕方がない.
「尊仏山荘で,ときどきflower-hillさんは来られますかと伺っているんです.山荘の方の話だと,flower-hillさんは,随分と速いんですってね・・・」
「飛んでもない・・・常連の中では遅い方ですよ・・」
「いえ,そうではなく・・・勿論,速いでしょうが,とても早い時間に山荘にお見えになるって,伺いました・・」
私は,心の中で,「なんだ,速いでなくて,早いか・・」と,少しガッカリした気分になって,
「そうですね,大体,10時前後に尊仏山荘に到着するようにしています・・」
とお答えする.次いで,Kさんが,質問する.
「・・・5期のIさんと一緒に歩きたいんですが・・・あの方と歩いていると,とても楽しいので.Iさんとはご一緒のことありますか・・・」
「Iさんですか? 普段,良く一緒にハイキングしていますよ・・」
「今度,Iさんと何処かへ行かれるときには,是非,私も誘ってください」
「じゃあ~・・・下山したらIさんと相談してみます」
■何で塔ノ岳なんだろう
ノンビリ,ユックリと楽しみながら下山し続ける.少し急げば大倉発12時22分のバスに間に合いそうだが,急ぐ気にならない.彼方此方で道草しながら,12時31分に大倉に到着する.水道で靴の泥を洗い流したり,荷物を整理したりで時間を過ごす.
12時45分頃,往路のバスで一緒だったNさんが大倉に到着する.バスから小田急に乗り継いで相模大野まで,Nさんと雑談しながらご一緒する.
「・・この頃寒いので,朝,出掛けるのに決心が必要です・・」
と私が言いたいことをNさんが話し出す.全く同感である.家を出てしまえば,どうということはないのだが,寒くて暗い外へ家から一歩踏み出すのに勇気が要る.
「あれこれ考えているより,塔ノ岳に登る方が,気が楽なので,塔ノ岳ばかり登っています・・」
これもまた同感である.私もついつい塔ノ岳往復を繰り返している.
それにしても,一体,何でこんなに何回も塔ノ岳に登るんだろう.
何が楽しみで,私は塔ノ岳に登っているんだろう.
どうして塔ノ岳に登っていると気分が良くなるんだろう.
私は塔ノ岳の不思議を考えている内に,乗換駅の藤沢に到着する.登山後の気分はとても爽快である.多分,また,今週中に,塔ノ岳詣でをするんだろうなと思っている.
[ラップタイム]
7:40 大倉歩き出し
7:59 観音茶屋
8:14 見晴茶屋
8:28 一本松
8:41 駒止茶屋
8:57 堀山ノ家
9:12 戸沢分岐
9:32 花立山荘
9:46 金冷シ
9:58 塔ノ岳山頂着
============================================
10:18 塔ノ岳山頂発(-3.8℃)
10:29 金冷シ
10:41 花立山荘
11:07 戸沢分岐
11:20 堀山ノ家
11:36 駒止茶屋
11:48 一本松
12:00 見晴茶屋
12:13 観音茶菓
12:31 大倉着
[山行記録]
■水平歩行距離 7.0km(片道)
■累積登攀下降高度 1201m
■登り所要時間
大倉発 7:40
塔ノ岳山頂着 9:58
(所要時間) 2時間18分(2.30h)
登攀速度 1201m/2.30h=522.2m/h
水平歩行速度 7.0km/2.30h=3.04km/h
■下り所要時間
塔ノ岳山頂発 10:18
大倉着 12:13
(所要時間) 2時間13分(2.22h)
下降速度 1201m/2.22h=541.0m/h
水平歩行速度 7.0km/2.22h=3.15km/h
(おわり)
「丹沢の山旅」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/fc184991c22dfb2305aa612c68c71d04
「丹沢の山旅」の次回の記事
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