<トレイズピーク山頂にて>
ロッキー山脈紀行(33):第7日目(1):グレイズピークからトレイズピーク
(アルパインツアー)
2010年8月19日(木)~28日(土)
第7日目:2010年8月25日(水) (つづき)
<グレイズピーク山頂>
■ジグザグの急勾配
頂上に近付くにつれて,登山道の勾配がややきついジグザグ道になる.遅組の歩行速度はますます遅くなる.そして,すぐにハア,ハアと苦しそうな息になる.その度に立ち止まって,
「・・・深呼吸を4~5回しましょう・・」
と促す.
私のすぐ後ろに居る女性が,
「FHさん,汗もかいていないし,苦しくないんですか・・」
と不思議そうに私に聞く.
「ええ・・まあ・・それなりに・・」
と訳の分からない返事をする.
少々,いやみに聞こえるかもしれないが,随分とユックリしたペースで登っているので,正直なところ,平らな道を歩くのと,大差がないほど楽なのである.私は心の中で,
「普段,登っている丹沢のバカ尾根より,ずっと楽だな・・」
と感じている.でも,こんなことを言うと嫌みになるので,口には出さない.
■全員がグレイズピーク山頂に到着
途中,何回も,何回も,立ち止まって深呼吸を繰り返す.それでも,少しずつは登る.塵も積もれば山となるで,少しずつ,少しずつ前に進む.そして,9時56分,ついに遅組全員がグレイズピーク山頂に到着する.
期せずして,
「・・万歳!!!・・ついにヤッタ~ッ・・」
今日は一人の落伍者も出さずに,全員で標高4,348メートルのグレイズピーク山頂に立つことができた.一緒に登った遅組の皆さんが私に握手を求める.嬉しい.私には皆さんが喜んでくれるのが一番嬉しいのだ.面目躍如である.
それにしても・・・
一昨日のエルバート山でも,今日のようなペースで,きめ細かくケアーしながら登ったら,多分,全員が登頂できたかもしれない.そう思うと,とても残念である.
もう大分前に山頂に到着していた早組も,私達の到着を待っていた.早組の皆さんも私達の到着を祝福してくれる.
記念に遅組一同の記念写真を撮る.この記念写真こそ,私にとって,今回の旅で一番感銘深い1枚になった.
■記念写真
私達遅組が山頂に到着してから,一休み後,10時16分に全員の記念写真を撮る.一人の落伍者も居ない全員の記念写真である.こんなに嬉しいことは滅多にない.
同時に,ツアースタッフの方にも,参加者の様子をもう少しきめ細かく観察しながら,全員登頂の努力をして貰いたいなとつくづく思う.
全員の記念写真を撮影してから間もなく,先発隊は次のトレイズピークを目指して出発する.
<鞍部を経由してトレイズピークへ>
■鞍部が見える
10時30分頃,私達遅組もグレイズピーク山頂を出発する.
ここから南の鞍部へ向かう.標高差で200メートル近くあるやや急な岩稜下りである.鞍部の前方には,これから登るトレイズピークが聳えている.岩稜下りではあるが,それほど歩きにくいところでもない.私は周囲の風景を楽しみながら遅組の先頭を歩く.そして,後ろから付いてくる仲間の気配を絶えず気にしている.
眼下のすぐ側に鞍部が見えているが,歩いてみると結構な道程である.
■油断して転倒
鞍部に向けての下り坂がそろそろ終わりに近付いた頃,後ろの様子が気になっている私は,ついつい足許がお留守になってしまい,不覚に小さな浮き石に乗ってバランスを崩してしまう.標高が4,000メートルを越える高所のためか,それとも高齢による運動神経の鈍さのためか,右後ろに転倒.
咄嗟に,地面に手をつくことは避けて,背中に背負っているリュックをクッションにして衝撃を避ける.転倒しながら,
「これまで,たいそうなことを言っているのに,転倒して面目ないな」
と思う.
ところが,末尾に付いてきたガイドを含めて,一同が,
「リュックをクッションにするなんて・・転倒の仕方が上手いですね・・」
と妙な褒め方をする.
登山学校で,後ろに転倒したときは手をつかずに,リュックで体重を受けなさいと口酸っぱく指導を受けていた.それが反射的に出ただけのこと.転倒しないのが一番である.
とにかく,いくら褒められても転倒すると自体が最低である.
<グレイズピークからトレイズピークを望む>
■鞍部を通過して急な登り坂へ
11時13分,漸く鞍部に到着する.ここで,立ち休憩を取る.
ここから,標高差約200メートルの登り返しになる.目の前には草木が一本もない石ころだらけの急坂が見えている.
高所の急坂である.よほどユックリ登らないと,すぐに息切れがしてしまう.高所で一旦息切れをすると回復するのが大変である.私は,
「とにかく,ユックリ,ユックリ・・時々深呼吸をして・・」
を一行に言い続ける.
それでも,ハア,ハアと苦しそうな人が出て来る.ほんの10歩ほど歩いては立ち止まって深呼吸.また10歩ほどで深呼吸を繰り返す.
「あと,もう少し・・あと一寸ですよ・・焦らないで深呼吸をしましょう」
こんなことを繰り返しながら,ジリジリと登り続ける.
トレイズピーク山頂まで,あと数10メートルの所で,また一休み.ご夫婦で参加されている旦那さんの方の息切れがひどい.「ハア,ハア」と荒い呼吸をしながら,よろめいている.明らかに酸素不足である.しかし,吐き気や頭痛はないようなので,立ち止まって深呼吸をすれば回復すると確信する.
「ここで,暫く休憩しましょう.まず息を吐いてから空気を吸い込むようにして,繰り返し深呼吸をして下さい・・・山頂はもうすぐ,あそこです.」
<鞍部を通過する>
■深呼吸,また,深呼吸で遂に山頂へ
暫く深呼吸をしている内に,この男性の呼吸は少し正常に近付く.
ツアーリーダーからも,私に,これまでの調子で,引き続き,遅組の面倒を見てやって下さいと言われる.私が,この男性のリュックを持とうというと,ツアーリーダーが率先して,男性にリュックを持ってくれる.これは当然と受け止める.ここからほんの数10メートルの所を,正に,超牛歩.一歩,また一歩と登る.そして,12時丁度に,私達遅組も,遂にトレイズピーク山頂(標高4,347m)に到着する.
「登ったぞ!・・万歳!!!」
<トレイズピーク山頂直下からの眺望>
<トレイズピーク山頂>
■全員が登頂に成功する
山頂では早組の皆さんが私達遅組の到着を迎えてくれる.今日は一人の落伍者も出さなかった.これは凄いことである.暫くの間,全員で雑談をしながら休憩を取る.
山頂には,私達以外の登山者も沢山来ている.グレイズピークでも,私達以外の登山者に会ったが,ここほどには多くなかった.こんなに沢山の登山者は一体どこから登ってきたんだろう.不思議な気分になる.
とにかく,ここも一人の落伍者もなく,全員が登頂できた.万々歳である.焦らずユックリ登れば,必ず山頂まで行けると信じていた私の勘が当たったのだ!
全員登頂.こんなに嬉しいことはない.
それにしても・・それにしても,・・である.一昨日のエルバート山でも,今日のようなスローバットステディの登山に徹するべきだった.そうすれば,全員が登頂できたに違いない.そう思うと悔しさが蘇ってくる.
山頂で遅組の集合写真を撮る.
■山頂からの眺望
山頂から350度の眺望が楽しめる.
すぐ近くには,先ほど登ったグレイズピークが見えている.そして,その周辺にはロッキー山脈の山々が際限なく連なっているように見える.素晴らしい眺望である.
暫くして,先発隊が私達より一足先に下山を開始するという.ツアーリーダーが,
「早く着いた方々は,もう十分に休憩を取ったので,先に下山しています・・」
と私達に言い残して,下山を開始する.
先発組の仲間達が居なくなると,山頂は途端に静まり返ってしまう.
(つづく)
「ロッキー山脈紀行」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/49c4160aac9be2ff38b4df26ba7f95cf
「ロッキー山脈紀行」の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/4f55ac20e1ab5bca221fd604212eb970
[編集後記]
■甲州街道四十九宿の旅
本日(11月13日)から,2泊3日で講習会道中四十五宿の旅に出ます.その間,当ブログの記事はダイジェスト版だけになります.
■2010神奈美会員展覧
下記より,2010神奈美会員展が開催されます.
会場はJR関内駅すぐ近くです.是非,お立ち寄り下さい.FHも山の絵を1枚出展しております.皆様のご高覧を賜りたいと思います.
なお,FHは11月17日,および19日の午後は会場に居る予定です(16日,18日も時間があったら…).
記
開催期間: 2010年11月13日(土)~19日(金) 10:00~18:00
初日は14:00より
会 場: 横浜市民ギャラリー
JR関内駅直近(根岸線線路を挟んで横浜市庁舎の反対側).
以上
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