
<花立場のオキナグサ>
まるで初夏のような丹沢:塔ノ岳(今年21回目)
(上り単独:下りMさんと同行)
2009年4月22日(水)
■小田原経由で渋沢へ
前回,塔ノ岳に登ったのは4月16日である.この所,何かとあって,ほぼ1週間振りの塔ノ岳詣でである.例によって,早朝5時10分に家を出る.日の出には,まだ少々時間があるが,外は,もうすっかり夜が明けている.朝焼けの東の空に,鋭く尖った三日月が光っている.
大船5時44分発東海道本線小田原行に乗車する.小田原駅で小田急線に乗り換えるが,乗換時間はたった3分しかない.私は韋駄天のようにJRの階段を駆け上がり,小田急の階段を駆け下りる.途端に発車ベルが鳴る.こうして,小田原発6時23分新宿行急行電車に滑り込む.
6時41分に渋沢駅に着く.大倉行バス乗り場に降りると,7~8名の登山客が並んでいる.すぐにバスが入ってくる.バスの座席に座って,ホッとしていると,下り電車が着いたらしく,沢山の登山客がドヤドヤと乗り込んでくる.その中に,ご常連のTさん,Sさん,Kさん,Mさんが居られる.
■小鳥が賑やかに囀っている
バスは6時57分に大倉へ到着する.Tさん,Sさん,Kさんの3人組は,直ぐに登山を開始する.続いてMさんも出発する.私は,型通りのストレッチをしないと,どうも気分が悪いので,そそくさとストレッチを済ませる.そして,7時02分に大倉から歩き出す.
昨夜から今朝の未明に掛けて,かなり強い雨が降ったために,路面はかなり濡れている.この分だと,登山道は,途中から泥濘になるかもしれないなと覚悟する.
気温が何度あるか分からないが,初夏を思わせる蒸し暑さである.これからは,夏バージョンで行動しなければならないなと自分自身に言い聞かせる.まあ,この暑さだから,山頂までの所要時間は2時間30分程度になるだろう.あまり無理はすまいと思う.
7時14分,丹沢ベースを通過する.登山道周辺の森が次第に深くなる.森が深くなるにつれて,小鳥の鳴き声もだんだんと賑やかになる.鳥のことはカラッキシ分からないが,啼き声が 「ピーポヨ,ピーポヨ,・・・」と聞こえる小鳥が絶え間なく聞こえてくる.
■キツツキが木を叩いている
7時21分に観音茶屋を通過する.蒸し暑いので,どうも調子が出ないが,この先,どうにでもなれと割り切る.そして,ノンビリと歩き続ける.7時25分,高原の家への分岐近くで,私より先に歩き出したMさんに追いつく.私はMさんに,
「とりあえず先に行かせて貰います.私は急坂の登りに弱いので,多分,花立山荘辺りで追い抜かれると思いますが・・・」
と挨拶して,Mさんの先に出させて貰う.
途中,何人かの登山客を追い抜き,7時35分に見晴茶屋を通過する.ここから始まる急坂では,多分,同じバスに乗っていたと思われる登山者が数名,ユックリペースで登っている.私は挨拶をしながら,先に行かせて貰う.
西側の山裾辺りから,時々,ツツドリが木の幹を叩く「ドドドド,ドドドド,・・」という音が聞こえてくる.この音を聞くと,夏が近いなと思う.

<堀山ノ家の桜>
■富士山が綺麗に見えている
8時02分に駒止茶屋を通過する.ここで,駒止茶屋前の急坂を,もの凄い勢いで登ってきた男性に追い抜かれてしまう.
今日は,大倉を歩き出してから,駒止茶屋までの所要時間は,丁度,1時間である.この暑さの中で,1時間なら,今日の私の体調はまあまあである.
堀山ノ家からもう少し登り坂を進むと,なだらかな堀山の尾根になる.尾根道を前方からご常連のYさんが,2本ストックを上手に使いながら降りてくる.擦れ違いざまにお互いに挨拶をする.
私は,定点観測の場所で,富士山の写真を撮る.今日の富士山は5合目付近まで真っ白な雪で覆われている.今朝方まで降っていた雨のために,空気が澄んでいる.そのため,細かい山の襞まで,とても良く見えている.
8時18分に堀山ノ家を通過する.この辺りから先は,殆ど人にも会わずに1人旅になる.自重して歩いてきたために,今のところ,ほとんど疲労感はない.
8時36分,萱場平を通過する.前方に抜けるような青空が広がっている.

<今日の萱場平> 写真の人物は無関係
■雲がわき出す
マイペースで花立山荘手前の急坂を登る.すると,中年女性が下山してくる.お互いに挨拶する.私は,あまりに早い時間なので,ビックリして,
「・・・随分速いですね.もう下山ですか・・」
と質問する.
「いえ,尊仏山荘に泊まったんです」
「ネコは居ましたか?」
「今日はOさんとWさんが小屋番ですので,ネコが番台まで出てきましたよ」
8時57分に花立山荘を通過する.堀山ノ家からの所要時間は39分.いくら暑いとはいえ,ここは37分程度で登りたかった.たった2分の差とはいえ,この2分を縮めるのは容易なことではない.
先ほどまで良く見えていた富士山の南半分が,湧いてきた雲で,いつの間にか,見えなくなっている.
山荘前のベンチには誰も居ない.山荘をそのまま通過する.花立場へ続く坂道に取りかかる.疲れていると,山荘から花立場まで10分ほど掛かることがあるが,今日は8分ほどで花立場に到着する.晴れていれば,ここから,南アルプスの山々が見えるが,今日は雲が湧いていて,残念ながら見えない.

<鹿がノンビリ,金冷シ付近>
■漸く塔ノ岳山頂へ
9時11分,金冷シを通過する.金冷シ手前の上り階段付近で,3頭の鹿が頻りに草を食べている.私が近付いても,登山道の直ぐ脇で悠然としている.実に可愛い眼をしている.鹿が登山道を離れるまで,立ち止まる.その間に,何枚かの鹿の写真を撮る.
金冷シ近くの道路は,この時期,何時も泥んこになっているが,今日は,今朝方まで雨が降っていたにしては,まあまあの状態である.
今日もまた,何時もの癖が出て,もうすぐ山頂だと思うと,気が抜ける.そして,知らぬ間にラダラ歩きになってしまう.
「おや,これではいかん.気を入れて歩かなければ・・・」
と自分を戒める.
山頂直下の最後の急な階段に差し掛かったときに,下山してくる韋駄天のご常連,Tさん,Sさん,Kさんとすれ違う.私と同じバスに乗っていたのに,登頂時間に随分と差が付いてしまう.お三方は,今日も,多分,2時間前後で登られたに違いない.
9時25分に塔ノ岳山頂に到着する.大倉からの所要時間は2時間25分である.いくら夏バージョンとは言え,この所,久しく2時間10分台の記録が出ない.他人と比較しても詮ないことだが,我ながら情けない.やっぱり年を取ったのかと寂しくなる.
山頂は次第に霧に覆われ始めている.富士山は雲の中である.ベンチで2人の登山客が休憩を取っている.私は何時ものように,山頂からの風景を写真に納める.

<塔ノ岳から富士山方面を望む:雲が湧いている>

<尊仏山荘の工事が進んでいる>
■尊仏山荘
尊仏山荘に入る.小屋番のWさんが,
「いらっしゃい・・・」
と眠そうな声で私を出迎える.先客は居ない.山荘の寒暖計によると,山頂の気温は+11.0℃.やっぱり随分と暖かい.300円也の定番のお茶を所望する.Wさんと雑談をしていると,営業部長の忠実な僕,小屋番のOさんが,山荘の奥から出てくる.私の顔を見るとすぐに,
「ミーや・・・出てお出で! ミーや,何処にいるの? 出てお出で・・」
と大声で営業部長のミー君を呼ぶ.
すると何処からともなく,ミー君がノッソリ,コトコトと現れる.
早速,ミー君とOさんのツーショットを何枚も,何枚も写真に収める.ミー君がOさんに頼り切った表情を示す.Oさんもミー君が可愛くて仕方がないという顔つきをしている.
Wさんが,ミー君を見ながら,ボソボソした口調で,
「このネコは,気だてが良くて,とても良いネコですよ」
と褒める.私も同感である.おっとりとしていて,従順なミー君は,すばらしいネコだと私も感じている.ミー君を見馴れると,他のネコがどうも胡散臭く感じるから不思議である.
「ところで,ネコのSさんはバスに乗っていなかったですか?」
とOさんが私に質問する.私も,この所,Sさんとはすれ違ってばかりで,ユックリお話をしたことがない.

<営業部長と忠実な僕,Oさん>
■Mさんと一緒に下山開始
私は大倉発11時52分のバスに乗ろうかと思う.そこで9時45分に尊仏山荘から外へ出る.
何時の間にか,かなり沢山の登山客が山頂に屯している.近くのベンチに,ご常連のMさんが座っている.私を見付けると,ベンチに置いている自分のリュックをずらして,ボデーランゲージで,
「ここへ座れ・・!」
と私に命令口調で言う.私は素直に,Mさんの隣に座る.
「なに? 山荘で休んでいたんかね?」
とMさんが私に問いかける.Mさんは,
「良い木の棒があったんで,皮を剥いて杖にしたよ・・」
と言いながら,真っ白な木の棒を見せてくれる.成る程,真っ直ぐで使い勝手の良さそうな杖である.
3~4分雑談をした後,Mさんの後に付いて,一緒に下山を開始する.
今日は天気予報が良かったので,登ってくる沢山の登山客と次から次へとすれ違う.
■可憐なオキナグサの花
10時03分,花立場を通過する.コルの直ぐ近くで,Mさんが,
「ここを見なさい・・・オキナクサが咲いているよ・・」
と私に教える.私は花のことはカラッキシ分からないけれども,美しい花だと思う.釣り鐘型の可憐な花が下を向いてヒッソリと咲いている.茎には白い毛が密集している.やや大きな礫の陰に咲いているので,普通に歩いていては,殆ど見えない.
「良く見付けましたね・・」
と感心する.すると,Mさんは,
「毎年,ここに咲くんだよ・・・何時もは5月に咲くよ.でも,今年は随分と速く咲いたよ・・」
と教えてくれる.

<大きな礫の陰でオキナグサが咲いている>
■空き缶拾い
10時26分に戸沢分岐を通過する.長い階段を終えて,岩稜帯に入る.相変わらず,これから登る登山客とすれ違う.ご常連のカメラマンIさん,それにHさんともすれ違う.
10時38分,堀山ノ家に到着する.Mさんが,
「一服するか・・」
と提案する.勿論,異論はない.
小屋前のベンチで,数分,休憩を取る.その間に,Mさんは自分のリュックからビニール袋を取りだして,自分で飲んだ飲み物の空き缶を入れる.わざわざ奇妙なことをするなと思っていると,歩きながら落ちている空き缶を拾って,このビニール袋に入れる.
「私も65才から塔ノ岳に登り始めて,もうすぐ登頂回数が2000回になるよ.ただ登っていても仕方がないので,何か役に立つことをしたくなったよ・・」
と言って,Mさんは空き缶拾いを始めた動機を話す.なるほど,そういうことだったのか.私は,ただ,ただ感心する.
11時20分,見晴茶屋を通過する.登山道の片隅で,
「ここにキンランが咲くから,場祖を覚えておきなよ・・・ただ,山を上り下りしていてもつまらない・・・花でも楽しまなければ・・」
とMさんが言う.尤もである.
■バスで三角髭のTさんとバッタリ
11時34分,観音茶屋を通過する.Nさんが,
「今から急げば,11時52分のバスに間に合うよ・・・私はユックリ下るけど,先に行っても良いよ」
と言う.それではお言葉に甘えて,ということで,私はMさんとお別れする.私は,半ば走るようにして,猛スピードで下り続ける.
11時47分にバス停大倉に到着する.水道で靴の泥を落としてから,バスに飛び乗る.乗客は2人だけ.
発車間際に,登山客が1人飛び乗ってくる.ご常連,三角髭のTさんである.私の顔を見て,ビックリしながら話しかける.
「あれ,このバスでflower-hillさんに会うとは思わなかった.随分と急いだんでしょう・・」
「ええ,まあ・・・ところで今日は三ノ塔ですか?」
「ヤビツから三ノ塔を廻って下山しました・・登山道が大分整備されて歩きやすくなりましたよ」
Tさんは,どうやら連続6日間,登っておられるようである.丹沢で何時も思うことだが,随分と凄い方が沢山居られる.私も是非あやかりたいものだと感じている.
小田原を経由して,14時過ぎに帰宅する.
つい先日横断した三浦アルプスも良いが,やっぱり歩きごたえのあるバカ尾根が一番良いなと実感している.
[ラップタイム]
7:02 大倉歩き出し
7:21 観音茶屋
7:35 見晴茶屋
8:02 駒止茶屋
8:18 堀山ノ家
8:57 花立山荘
9:11 金冷シ
9:25 塔ノ岳山頂 着
============================================
9:45 塔ノ岳山頂 発(+11.0℃)
10:10 花立山荘
10:38 堀山ノ家(11:40まで休憩)
10:56 駒止茶屋
11:20 見晴茶屋
11:34 観音茶屋
11:47 大倉 着
[山行記録]
■水平歩行距離 7.0km(片道)
■累積登攀下降高度 1,201m
■登攀所要時間
大倉発 7:02
塔ノ岳山頂着 9:25
(所要時間) 2時間25分(2.42h)
登攀速度 1,201m/2.42h=496.3m/h
水平速度 7.0km/2.42h=2.89km/h
■下降所要時間(休憩時間込み)
塔ノ岳山頂発 9:45
大倉着 11:47
(所要時間) 2時間02分(2.03h)
下降速度 1,201m/2.03h=591.6m/h
水平速度 7.0km/2.03h=3.44km/h
(おわり)
「丹沢の山旅」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/7864b4fe1d0ee04fe57ada7d89d734f1
まるで初夏のような丹沢:塔ノ岳(今年21回目)
(上り単独:下りMさんと同行)
2009年4月22日(水)
■小田原経由で渋沢へ
前回,塔ノ岳に登ったのは4月16日である.この所,何かとあって,ほぼ1週間振りの塔ノ岳詣でである.例によって,早朝5時10分に家を出る.日の出には,まだ少々時間があるが,外は,もうすっかり夜が明けている.朝焼けの東の空に,鋭く尖った三日月が光っている.
大船5時44分発東海道本線小田原行に乗車する.小田原駅で小田急線に乗り換えるが,乗換時間はたった3分しかない.私は韋駄天のようにJRの階段を駆け上がり,小田急の階段を駆け下りる.途端に発車ベルが鳴る.こうして,小田原発6時23分新宿行急行電車に滑り込む.
6時41分に渋沢駅に着く.大倉行バス乗り場に降りると,7~8名の登山客が並んでいる.すぐにバスが入ってくる.バスの座席に座って,ホッとしていると,下り電車が着いたらしく,沢山の登山客がドヤドヤと乗り込んでくる.その中に,ご常連のTさん,Sさん,Kさん,Mさんが居られる.
■小鳥が賑やかに囀っている
バスは6時57分に大倉へ到着する.Tさん,Sさん,Kさんの3人組は,直ぐに登山を開始する.続いてMさんも出発する.私は,型通りのストレッチをしないと,どうも気分が悪いので,そそくさとストレッチを済ませる.そして,7時02分に大倉から歩き出す.
昨夜から今朝の未明に掛けて,かなり強い雨が降ったために,路面はかなり濡れている.この分だと,登山道は,途中から泥濘になるかもしれないなと覚悟する.
気温が何度あるか分からないが,初夏を思わせる蒸し暑さである.これからは,夏バージョンで行動しなければならないなと自分自身に言い聞かせる.まあ,この暑さだから,山頂までの所要時間は2時間30分程度になるだろう.あまり無理はすまいと思う.
7時14分,丹沢ベースを通過する.登山道周辺の森が次第に深くなる.森が深くなるにつれて,小鳥の鳴き声もだんだんと賑やかになる.鳥のことはカラッキシ分からないが,啼き声が 「ピーポヨ,ピーポヨ,・・・」と聞こえる小鳥が絶え間なく聞こえてくる.
■キツツキが木を叩いている
7時21分に観音茶屋を通過する.蒸し暑いので,どうも調子が出ないが,この先,どうにでもなれと割り切る.そして,ノンビリと歩き続ける.7時25分,高原の家への分岐近くで,私より先に歩き出したMさんに追いつく.私はMさんに,
「とりあえず先に行かせて貰います.私は急坂の登りに弱いので,多分,花立山荘辺りで追い抜かれると思いますが・・・」
と挨拶して,Mさんの先に出させて貰う.
途中,何人かの登山客を追い抜き,7時35分に見晴茶屋を通過する.ここから始まる急坂では,多分,同じバスに乗っていたと思われる登山者が数名,ユックリペースで登っている.私は挨拶をしながら,先に行かせて貰う.
西側の山裾辺りから,時々,ツツドリが木の幹を叩く「ドドドド,ドドドド,・・」という音が聞こえてくる.この音を聞くと,夏が近いなと思う.

<堀山ノ家の桜>
■富士山が綺麗に見えている
8時02分に駒止茶屋を通過する.ここで,駒止茶屋前の急坂を,もの凄い勢いで登ってきた男性に追い抜かれてしまう.
今日は,大倉を歩き出してから,駒止茶屋までの所要時間は,丁度,1時間である.この暑さの中で,1時間なら,今日の私の体調はまあまあである.
堀山ノ家からもう少し登り坂を進むと,なだらかな堀山の尾根になる.尾根道を前方からご常連のYさんが,2本ストックを上手に使いながら降りてくる.擦れ違いざまにお互いに挨拶をする.
私は,定点観測の場所で,富士山の写真を撮る.今日の富士山は5合目付近まで真っ白な雪で覆われている.今朝方まで降っていた雨のために,空気が澄んでいる.そのため,細かい山の襞まで,とても良く見えている.
8時18分に堀山ノ家を通過する.この辺りから先は,殆ど人にも会わずに1人旅になる.自重して歩いてきたために,今のところ,ほとんど疲労感はない.
8時36分,萱場平を通過する.前方に抜けるような青空が広がっている.

<今日の萱場平> 写真の人物は無関係
■雲がわき出す
マイペースで花立山荘手前の急坂を登る.すると,中年女性が下山してくる.お互いに挨拶する.私は,あまりに早い時間なので,ビックリして,
「・・・随分速いですね.もう下山ですか・・」
と質問する.
「いえ,尊仏山荘に泊まったんです」
「ネコは居ましたか?」
「今日はOさんとWさんが小屋番ですので,ネコが番台まで出てきましたよ」
8時57分に花立山荘を通過する.堀山ノ家からの所要時間は39分.いくら暑いとはいえ,ここは37分程度で登りたかった.たった2分の差とはいえ,この2分を縮めるのは容易なことではない.
先ほどまで良く見えていた富士山の南半分が,湧いてきた雲で,いつの間にか,見えなくなっている.
山荘前のベンチには誰も居ない.山荘をそのまま通過する.花立場へ続く坂道に取りかかる.疲れていると,山荘から花立場まで10分ほど掛かることがあるが,今日は8分ほどで花立場に到着する.晴れていれば,ここから,南アルプスの山々が見えるが,今日は雲が湧いていて,残念ながら見えない.

<鹿がノンビリ,金冷シ付近>
■漸く塔ノ岳山頂へ
9時11分,金冷シを通過する.金冷シ手前の上り階段付近で,3頭の鹿が頻りに草を食べている.私が近付いても,登山道の直ぐ脇で悠然としている.実に可愛い眼をしている.鹿が登山道を離れるまで,立ち止まる.その間に,何枚かの鹿の写真を撮る.
金冷シ近くの道路は,この時期,何時も泥んこになっているが,今日は,今朝方まで雨が降っていたにしては,まあまあの状態である.
今日もまた,何時もの癖が出て,もうすぐ山頂だと思うと,気が抜ける.そして,知らぬ間にラダラ歩きになってしまう.
「おや,これではいかん.気を入れて歩かなければ・・・」
と自分を戒める.
山頂直下の最後の急な階段に差し掛かったときに,下山してくる韋駄天のご常連,Tさん,Sさん,Kさんとすれ違う.私と同じバスに乗っていたのに,登頂時間に随分と差が付いてしまう.お三方は,今日も,多分,2時間前後で登られたに違いない.
9時25分に塔ノ岳山頂に到着する.大倉からの所要時間は2時間25分である.いくら夏バージョンとは言え,この所,久しく2時間10分台の記録が出ない.他人と比較しても詮ないことだが,我ながら情けない.やっぱり年を取ったのかと寂しくなる.
山頂は次第に霧に覆われ始めている.富士山は雲の中である.ベンチで2人の登山客が休憩を取っている.私は何時ものように,山頂からの風景を写真に納める.

<塔ノ岳から富士山方面を望む:雲が湧いている>

<尊仏山荘の工事が進んでいる>
■尊仏山荘
尊仏山荘に入る.小屋番のWさんが,
「いらっしゃい・・・」
と眠そうな声で私を出迎える.先客は居ない.山荘の寒暖計によると,山頂の気温は+11.0℃.やっぱり随分と暖かい.300円也の定番のお茶を所望する.Wさんと雑談をしていると,営業部長の忠実な僕,小屋番のOさんが,山荘の奥から出てくる.私の顔を見るとすぐに,
「ミーや・・・出てお出で! ミーや,何処にいるの? 出てお出で・・」
と大声で営業部長のミー君を呼ぶ.
すると何処からともなく,ミー君がノッソリ,コトコトと現れる.
早速,ミー君とOさんのツーショットを何枚も,何枚も写真に収める.ミー君がOさんに頼り切った表情を示す.Oさんもミー君が可愛くて仕方がないという顔つきをしている.
Wさんが,ミー君を見ながら,ボソボソした口調で,
「このネコは,気だてが良くて,とても良いネコですよ」
と褒める.私も同感である.おっとりとしていて,従順なミー君は,すばらしいネコだと私も感じている.ミー君を見馴れると,他のネコがどうも胡散臭く感じるから不思議である.
「ところで,ネコのSさんはバスに乗っていなかったですか?」
とOさんが私に質問する.私も,この所,Sさんとはすれ違ってばかりで,ユックリお話をしたことがない.

<営業部長と忠実な僕,Oさん>
■Mさんと一緒に下山開始
私は大倉発11時52分のバスに乗ろうかと思う.そこで9時45分に尊仏山荘から外へ出る.
何時の間にか,かなり沢山の登山客が山頂に屯している.近くのベンチに,ご常連のMさんが座っている.私を見付けると,ベンチに置いている自分のリュックをずらして,ボデーランゲージで,
「ここへ座れ・・!」
と私に命令口調で言う.私は素直に,Mさんの隣に座る.
「なに? 山荘で休んでいたんかね?」
とMさんが私に問いかける.Mさんは,
「良い木の棒があったんで,皮を剥いて杖にしたよ・・」
と言いながら,真っ白な木の棒を見せてくれる.成る程,真っ直ぐで使い勝手の良さそうな杖である.
3~4分雑談をした後,Mさんの後に付いて,一緒に下山を開始する.
今日は天気予報が良かったので,登ってくる沢山の登山客と次から次へとすれ違う.
■可憐なオキナグサの花
10時03分,花立場を通過する.コルの直ぐ近くで,Mさんが,
「ここを見なさい・・・オキナクサが咲いているよ・・」
と私に教える.私は花のことはカラッキシ分からないけれども,美しい花だと思う.釣り鐘型の可憐な花が下を向いてヒッソリと咲いている.茎には白い毛が密集している.やや大きな礫の陰に咲いているので,普通に歩いていては,殆ど見えない.
「良く見付けましたね・・」
と感心する.すると,Mさんは,
「毎年,ここに咲くんだよ・・・何時もは5月に咲くよ.でも,今年は随分と速く咲いたよ・・」
と教えてくれる.

<大きな礫の陰でオキナグサが咲いている>
■空き缶拾い
10時26分に戸沢分岐を通過する.長い階段を終えて,岩稜帯に入る.相変わらず,これから登る登山客とすれ違う.ご常連のカメラマンIさん,それにHさんともすれ違う.
10時38分,堀山ノ家に到着する.Mさんが,
「一服するか・・」
と提案する.勿論,異論はない.
小屋前のベンチで,数分,休憩を取る.その間に,Mさんは自分のリュックからビニール袋を取りだして,自分で飲んだ飲み物の空き缶を入れる.わざわざ奇妙なことをするなと思っていると,歩きながら落ちている空き缶を拾って,このビニール袋に入れる.
「私も65才から塔ノ岳に登り始めて,もうすぐ登頂回数が2000回になるよ.ただ登っていても仕方がないので,何か役に立つことをしたくなったよ・・」
と言って,Mさんは空き缶拾いを始めた動機を話す.なるほど,そういうことだったのか.私は,ただ,ただ感心する.
11時20分,見晴茶屋を通過する.登山道の片隅で,
「ここにキンランが咲くから,場祖を覚えておきなよ・・・ただ,山を上り下りしていてもつまらない・・・花でも楽しまなければ・・」
とMさんが言う.尤もである.
■バスで三角髭のTさんとバッタリ
11時34分,観音茶屋を通過する.Nさんが,
「今から急げば,11時52分のバスに間に合うよ・・・私はユックリ下るけど,先に行っても良いよ」
と言う.それではお言葉に甘えて,ということで,私はMさんとお別れする.私は,半ば走るようにして,猛スピードで下り続ける.
11時47分にバス停大倉に到着する.水道で靴の泥を落としてから,バスに飛び乗る.乗客は2人だけ.
発車間際に,登山客が1人飛び乗ってくる.ご常連,三角髭のTさんである.私の顔を見て,ビックリしながら話しかける.
「あれ,このバスでflower-hillさんに会うとは思わなかった.随分と急いだんでしょう・・」
「ええ,まあ・・・ところで今日は三ノ塔ですか?」
「ヤビツから三ノ塔を廻って下山しました・・登山道が大分整備されて歩きやすくなりましたよ」
Tさんは,どうやら連続6日間,登っておられるようである.丹沢で何時も思うことだが,随分と凄い方が沢山居られる.私も是非あやかりたいものだと感じている.
小田原を経由して,14時過ぎに帰宅する.
つい先日横断した三浦アルプスも良いが,やっぱり歩きごたえのあるバカ尾根が一番良いなと実感している.
[ラップタイム]
7:02 大倉歩き出し
7:21 観音茶屋
7:35 見晴茶屋
8:02 駒止茶屋
8:18 堀山ノ家
8:57 花立山荘
9:11 金冷シ
9:25 塔ノ岳山頂 着
============================================
9:45 塔ノ岳山頂 発(+11.0℃)
10:10 花立山荘
10:38 堀山ノ家(11:40まで休憩)
10:56 駒止茶屋
11:20 見晴茶屋
11:34 観音茶屋
11:47 大倉 着
[山行記録]
■水平歩行距離 7.0km(片道)
■累積登攀下降高度 1,201m
■登攀所要時間
大倉発 7:02
塔ノ岳山頂着 9:25
(所要時間) 2時間25分(2.42h)
登攀速度 1,201m/2.42h=496.3m/h
水平速度 7.0km/2.42h=2.89km/h
■下降所要時間(休憩時間込み)
塔ノ岳山頂発 9:45
大倉着 11:47
(所要時間) 2時間02分(2.03h)
下降速度 1,201m/2.03h=591.6m/h
水平速度 7.0km/2.03h=3.44km/h
(おわり)
「丹沢の山旅」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/7864b4fe1d0ee04fe57ada7d89d734f1