<花立山荘からの眺望>
今年12回目の塔ノ岳
泥濘とアイスバーン
(単独山行)
2008年2月28日(木)
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■天気が良いぞ!
天気予報によると,今日は絶好の好天である。ならば,塔ノ岳に登るしかない。
何時ものように,5時10分に家を出る。今日は長靴で登ろうと思う。
外は寒い。南の空に,大分欠け始めた月が輝いている。湘南モノレールから東海道本線に乗り継ぐ。平塚辺りから眩しい太陽が車窓から射し込んでくる。小田原で小田急電鉄に乗り換える。電車が新松田の手前に差し掛かると,矢倉岳と富士山がとても良く見える。デジカメで,写真を撮ろうと思うが,シャッターにタイムラグがあって,なかなか思うように取れない。何枚も失敗する内に,カメラを床に叩き付けたくなるほど,イライラしてくる。
<矢倉岳と富士山:小田急電鉄新松田付近の車窓から>
■バスの中
渋沢から,7時16分発の定番,2番バスに乗車する。ステップから飛び乗った私は,適当な席に座る。登山客は,私を含めて5名ほど。ご常連は乗っていない。
たまたま通路を挟んで反対側に座った年輩の男性が,
「・・・何時も山へ登って居るんですよ・・・」
と山の蘊蓄を語り出す。でも,男性から出てくる山名は,高尾山と大山,それに塔ノ岳だけである。しかも,塔ノ岳には年間数回しか登っていないようである。その程度の経験だけで,今日の塔ノ岳の気温や,雪の状態について,相手構わずに話し出すのは,如何なものかと,私は心の中で思っている・・・・が,口には出さない。
私も,勿論,山の経験は少ない。それでも,この種の自慢話にお付き合いするのは,どうも苦手である。私は車内で黙ったまま過ごす。
■今日のテーマ
バスは,7時28分に,大倉に到着する。私が軽くストレッチをしている間に,同じバスに乗り合わせた登山客は,次々に歩き始める。お一人は鍋割山方面に向かうが,残りの方々は,全員,塔ノ岳に向けて歩き出す。
まだ朝方の放射冷却が残っている。正確な気温は分からないが,とても寒い。でも,歩き出せば暖かくなるので,着ていた防寒具を脱いで,リュックに仕舞い込む。そして,4本爪簡易アイゼンを何時でも出せるように,リュックの一番上に入れる。
7時39分に大倉から歩き出す。寒いので,ついつい早足になりそうになるが,私は今日のテーマを,「最も効率よく歩く」の一点に絞り込もうと思う。具体的には,次の3点を遵守しながら登り続けることにする。
(1)汗ばむ程度の速度で歩く(流れる汗は絶対にかかない)。
(2)普通の腹式呼吸で済む程度の負荷で歩く(絶対にハアハアしない)。
(3)何時も一定した負荷で歩く(当然,平坦な道は速く,坂道は遅くなる)。
これらの条件を満たしながら登ったら,山頂まで,一体,どの程度の時間で歩けるのだろうか。これが今日の最大の関心事である。
■春うららの散策路
負荷が,オーバーにならないように,加減しながら登り始める。登山口手前で同じバスに乗っていた1人の男性に追いつく。追い越しざまに,男性から色々質問を受けるが,1分ほど一緒に歩きながら雑談をした後,すぐに失礼する。
7時58分に観音茶屋を通過する。路面は乾いていて,とても歩きやすい。高原の家分岐を過ぎると,日当たりの良いトラバース道になる。背中から柔らかい春の日差しを受ける。包み込むような日差しの暖かさが,とても心地良い。
雑事場ノ平付近で,先ほどバスの中で蘊蓄を披露していた男性に追いつく。
「とりあえず,先に行かせて貰います・・・でも,何時,ダウンするかもしれませんので,その時は,どうぞ,また,追い抜いてください・・・」
と,自分でも訳の分からない挨拶をして,先に行かせて貰う。
8時12分に見晴茶屋を通過して,いよいよ急な上りの階段道に差し掛かる。つい先日まで,この辺りにも残雪があったが,今日は,もう残雪はない。路面が良く乾いていて,とても登りやすい。正に春うららの散策路である。
■アイスバーンが潜んでいる
8時26分に一本松を通過する。そして,日陰道に差し掛かる。石を敷き詰めた上り道を登ると,水平な尾根道になる。
地形の影響のためか,この辺りのアイスバーンは,何時までも残っているようである。今日も一向に溶けていない。ただ,沢山の登山者が残した泥がアイスバーンの上に積もっているので,殆ど滑ることはない。
トップギヤー型で歩く私は,水平道で速度を上げるのを常としている。でも,アイスバーン残っているところは,慎重に歩くしかない。この辺りは,何時もよりも安全第一をモットーにして歩く。
8時40分に駒止茶屋を通過する。茶屋直前の急坂には,まだ,テラテラになった氷が残っている。道を選んで,このテラテラ坂を慎重に登る。茶屋を過ぎると,見晴らしの良い平坦道になるが,ここにも凍り付いた根雪が,まだまだ沢山残っている。
眺望の良い尾根道を,慎重に歩く。今日も真っ白な富士山がとても良く見えている。
8時49分に堀山を通過する。ここから先,暫くの間,ゆるやかな下り坂になる。日陰になる坂道には,泥で覆われているものの,氷の層が溶けずにずっと残っている。とても滑りやすいので慎重に下る。アイゼンを履こうかとも思ったが,アイスバーンは短い距離しかないので,アイゼンなしで我慢して通過する。
<今日の萱場平:雪は殆ど消えている>
■のんびりと花立山荘を通過
堀山ノ家の直ぐ下のトラバース道には,何時までもアイスバーンが残っていて滑りやすい。今日も,まだ,しぶとく残っている。8時57分に堀山ノ家を通過する。杉の木立の間から,快晴の空の下に,真っ白な富士山が聳えているのが良く見える。
急な露岩帯に差し掛かる。私より1本前のバスで来たと思われる登山者が,チラホラと見えている。特に追い越したい訳ではないが,だんだんと近付いてしまう。仕方なく追い越させて頂く。
やがて,急な階段道が始まる。歩き出しで体力をセーブしていたためか,階段道を登るのが意外に楽である。何となく淡々と歩いている内に,11時22分に萱場平を通過する。萱場平の残雪は,つい先日と比較しても,随分と少なくなっている。
そのまま,惰性で登り続ける。何とはなしに登っている内に,9時34分に花立山荘を通過する。途端に,あちらこちらの残雪が目立つようになるが,ノーアイゼンで,そのまま登り続ける。
露岩帯に出る。富士山,南アルプスの塩見岳,蝙蝠岳辺りが良く見えている。
■テラテラ,ツルツルのアイスバーン
トラバース道を過ぎて,下り坂に差し掛かる。登山道には青白く分厚い氷がベッタリと張り付いている。アイゼンなしでは,到底,通過できそうもない。急遽,長靴の上から4本爪アイゼンを装着する。
9時53分,金冷しを通過する。前方から,三角鼻髭のご常連が降りてくる。
「おや,今日は,今日は三ノ塔からですか・・」
と三角髭に話しかける。
「いえ,今日はバカ尾根往復です・・・滑りやすくて往生しますね・・・」
と三角鼻髭が言う。
山頂付近の階段は,まだ殆どが雪に埋もれている。その雪がアイスバーン状態になっているので,4本爪アイゼンを履いていても,登りにくい。それでも,何とか登り続けて,10時07分に塔ノ岳山頂に到着する。大倉からの塔ノ岳山頂までの所要時間は,アイゼン装着時間を含めて2時間28分。あまり芳しくない。
<山頂からの眺望:富士山と南アルプス>
■尊仏山荘
尊仏山荘に入る。今日の小屋番はOさんである。先客は男女2名。何れもご常連らしい。どうやら1番バスで来られたようである。私と入れ替わるように,山荘を出て下山し始める。
山荘の寒暖計によると,今日の山頂の気温はマイナス6.7℃。随分と寒い。
お茶を飲みながら,Oさんと暫く雑談をする。例によって,
「2番バスに何人ぐらい乗っていましたか・・」
と聞かれる。
「5人です。1人は鍋割山の方へ行きましたので,こちらに向かったのは4人です。花立山荘付近でも,数人の登山客を追い越しましたよ」
「多分,1番バスのお客さんでしょう」
山荘の窓から,富士山が見事に見えている。
「今日は良い天気ですね・・・昨日は風で大変でしたよ。あそこに張っていたテントが風で吹き飛ばされてしまいましたよ・・・それに午後から曇ってしまいました」
「そうでしたか。実は,昨日,塔へ登ろうかと思っていましたが,今日にして良かった」
「ところで,flower-hillさんのお住まいは,鎌倉でしたよね・・・」
私が頷くと,
「鎌倉へは良く行きますよ・・・花を見に・・鎌倉は適当の食事するところがないですね・・・若い人など,どうしているんでしょうね・・・」
私は,小町通にある行きつけのレストラン「モア」を紹介する。
「モアのサンドイッチは美味しいですよ・・・1000円出せばお腹一杯になりますよ・・」
コタツから出たネコのミー君がのっそりと現れる。そしてバケツに首を突っ込んで,ピシャピシャと水を飲み始める。
<運動不足のミー君:水をピチャピチャ>
■山旅スクールの方々に会う
10時38分に下山を開始する。山頂直下の急坂では,さすがの4本爪アイゼンも利きが悪い。往生しながら,慎重に下る。金冷し付近で,バスの中で蘊蓄を述べていた男性とすれ違う。
「おや・・・もう下山ですか。速いですね・・・」
とビックリしている。私に言わせれば,ご自分が遅いだけなのだが・・・
11時04分に花立山荘を通過する。ここでアイゼンを外す。長い階段を下っていると,同じバスに乗り合わせたもう一人の男性とすれ違う。彼も「速いですね」と驚く。たまにしか登らないくせに,苦労しているflower-hillと較べてくれるなと私は心の中で返事をする。
11時24分,戸沢分岐を通過する。戸沢分岐から階段を数分下ったところで,登ってくる2人の女性と鉢合わせする。山旅スクール5期のスケルトンさんと,ノシイカさんである。私を見ると,
「おや,今日は。こんなに天気が良いので,きっとflower-hillさんに会うと思っていましたよ・・」
伺うと,お二人は,小田急電車の中で,偶然,一緒になったとのことである。余りに天気が良いので,お二人とも家でジッとして居られなかったようである。
ここで,5分ほど立ち話をする。
それにしても,このお二人,涼しい顔をして塔ノ岳に登っている。とにかく強い。
■無事帰宅
ノンビリしている内に,時間が押してくる。一本松付近からピッチを上げる。
12時33分に観音茶屋を通過する。
12時38分に丹沢ベースを通過する。その時,丹沢ベースのベンチに座っていた2人の女性から声を掛けられる。
「山頂まで行って来られたんですか?」
「はい・・・」
「凄い! 何時から登られたんですか・・?」
と矢継ぎ早に質問を浴びせかけられる。
「大倉を7時40分頃歩き出して,山頂には10時10分頃着きました・・・山頂で30分ほど休憩して下ってきました」
と大急ぎで答えて通り過ぎる。
急ぎ足で下って,12時49分,大倉バス停に戻る。12時52分の渋沢行のバスに乗車する。大倉で乗った乗客は私1人だけ。
小田急電鉄,東海道本線を順調に乗り継いで,14時44分に,無事,帰宅する。
残念ながら,今日はテレビの「水戸黄門」はない。
[ラップタイム]
7:39 大倉歩き出し
7:43 登山口
7:47 克董窯
7:51 丹沢ベース
7:56 観音茶屋
8:01 分岐
8:10 雑事場ノ平
8:12 見晴茶屋
8:26 一本松
8:40 駒止茶屋
8:49 堀山
8:57 堀山ノ家
9:12 戸沢分岐
9:14 萱場平
9:39 花立山荘
9:43 コルの頂上(9:47までアイゼン装着)
9:53 金冷シ
10:07 塔ノ岳山頂 着
======================================
10:32 塔ノ岳山頂 発(-6.7℃)
10:49 金冷シ
11:04 花立山荘(アイゼン外し)
11:22 萱場平
11:24 戸沢分岐
11:34 階段合流点(1:37までノシイカ・スケルトン氏と雑談)
11:41 堀山ノ家(11:43までアイゼン装着)
11:51 堀山
11:59 駒止茶屋
12:00 稜線上(12:02までアイゼン脱着)
12:10 一本松
12:21 見晴茶屋
12:23 雑事場ノ平
12:31 分岐
12:33 観音茶屋
12:38 丹沢ベース
12:42 克董窯
12:44 登山口
12:49 大倉 着
[山行記録]
■登攀・下降高度 1201m
■水平移動距離 6.5km
■登攀所要時間(アイゼン装着時間を含む)
大倉発 7:39
塔ノ岳山頂着 10:07
(所要時間) 2時間28分(2.47h)
登攀速度
1,201m/2.47h=486.2m/h
■下降所要時間(アイゼン装着時間を含む)
塔ノ岳山頂発 10;38
大倉発 12:49
(所要時間) 2時間11分(2.18h)
下降速度
1,201m/2.18h=550.9m/h
(おわり)
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私のブログにお運び頂きありがとうございました。
明星ヶ岳山行の様子は,Kiyomaさんのブログで拝見しております。5期の高橋さん(?),名前と顔が一致しないので,どなたか分かりませんが,山旅スクールの指導は大変良いなと今でも思っています。
実は,後で私のブログに掲示しますが,3月1日にも塔ノ岳に登りました。下山途中で,尊仏山荘のHさんに会いました。Kiyomaさんのことが話題になりましたよ。
なるべく早く,塔ノ岳にも復帰されることを祈っています。