
<ピスコ山山頂>
ペルー訪問記(55):第16日目(2):ピスコ山登頂(2)
2008年7月16日(木)(つづき)
<ピスコ山山頂>
■まずは記念写真
早朝,というよりは深夜1時28分にモレーンキャンプを出発した私達は,氷河の尾根を登り続けて,8時52分に,ようやくピスコ山山頂に到着する.モレーンキャンプから,ピスコ山山頂までの所要時間は,実に7時間24分にもなってしまった.
ここは,標高5,752メートルの別世界である.
幸いなことに天気が良く,上空には青空が広がっている.風も殆ど吹いていない.
私達は山頂に打ち込んだアンカーと自分の身体をロープで確保したまま,暫くの間,山頂で至福の時を過ごす.
まずは全員揃って記念写真を撮る.この中に,従前からの山友達のトーマスさんの姿がないのが,とても残念である.

<ピスコ山山頂での集合写真(9:23頃)>
※写真掲載については,事前に全員の了承を得ている.この中にflower-hillも居る.
■360度が6,000メートル級の山々
山頂から周囲を見渡す.ここからは正に360度の視野が開けている.四方八方を標高6,000メートル級の山々で囲まれている.どの山も峻険な氷河に覆われている.どの方向を見ても,真っ白な尖鋒がそそり立っている.これまでの想像を超えた気高い風景が広がっている.

<ピスコ山から見た方位と周囲の山塊>
※紙面の大きさに制限があるため,一部の山の位置が,この図の外になっている.
※この図は,プリントすると綺麗に見える.
まずは東を望む.そこには,ピスコ山よりやや低いヤナパクチャ峰(Yanapaqucha,標高5,400m)が聳えている.その先には雲海が幾重にも広がっている.目線を南へ転じると遙か遠くに随分と高い山が見えているが,山の名前は分からない.その南側にリャンガヌーコ峠(Llanganuco,標高4,767m),チョピカルキ峰(Chopicaruqui,標高6,354m)と続く.チョピカルキは鋭く尖った三角形の山である.

<東に見える山々> ※KAさん提供の写真
南には,双耳峰のワスカラン南峰(Huascaran South,標高6,768m),ワスカラン北峰(標高6,664m)が一段と高く聳えている.
ワスカランから大きな谷を隔てて,南西の目の前に一段と大きくワンドイ南峰(Huandoy South,標高6,160m),北峰(標高6,395m),東峰(6,000m)が並んでいる.私達はこの大きな谷間を登ってきたことになる.

<南に見える山々> ※KAさん提供の写真
西に目を転じると,再び大きな谷を隔てて,遠くにアグアス峰(Agujas,標高5,888m),カラス峰(Caraz,標高6,025m),キタラフ峰(Quitaraju,標高6,038m),アルパマヨ(Alpamayo,標高5,947m)が連なっている.

<西に見える山々> ※KAさん提供の写真
さらに時計回りに北へ廻ると,遠くにアルテソンラフ峰(Artesonraju,標高6,025m),近くにピラミデ峰(Piramide,標高5,885m),さらに双耳峰のチャクラフ西峰(Chacraraju West,標高6,112m)とチャクラフ東峰(標高6,001m)と続く.
時間さえ許せば,暫くの間,雄大な眺望を堪能したいと思う.

<北に見える山々> ※KAさん提供の写真
■山頂で食事
三井リーダーから,
「何か食べ物を摂りなさい・・」
と言われる.ところが高度障害のためか,私には全く空腹感がない.
結局,私は,景色を眺めているだけで,殆ど何も食べなかった.
<ピスコ山から下山>
■氷河の急な下り坂
9時25分,下山を開始する.
登りとは反対の順序で,最初にチーフリーダーのパーティ,続いて私達のパーティの順で下り始める.寒いところで休憩を取っていたので,歩き始めると,足の筋肉が,幾分,強張っているのが分かる.
登るときに苦労した氷壁は,ロープダウンで難なくクリアーする.後はひたすら下り続けるだけである.
しかし,登りでかなりの体力を消耗しているので,長い下り坂は辛い.ついつい足元がふらつく.リーダーが,
「もっと,足幅を横に大きくした方が安定しますよ・・・」
と私に忠告する.
勿論,私も頭の中では,そのようなことは重々承知しているが,身体がなかなか言うことを聞いてくれない.
急坂の氷河を下りながら,心の中で,
「よくもまあ,こんなに急で長い坂を登ったものだ・・・」
半ば呆れながら下り続ける.
■コルに到着
11時48分,これまで下り続けた稜線から外れて,モレーンキャンプへ下る分岐のコルに到着する.ここまで下れば,幾ら私でも幾分は気持に余裕ができる.そこで,リーダーに,
「ちょっと写真を撮らせてくれ・・」
と言って,小休止する.
私は急いで辺りの風景をデジカメに収める.
足元には氷河が広がっている.その氷河の先に,青空を背景にして,ワンドイ東峰がクッキリと連なって見えている.
「やっぱり,凄い景色だな・・・」
と私は大いに感激する.
「苦労して登って良かったな・・」

<ピスコ山のコルに到着(11:48頃)>
■美しい湖水
ほんの2~3分の休憩の後,11時52分頃,コルから南側の斜面を下り始める.
この辺りは,まだ真っ暗なときに登っていたので,明るいときに風景を眺めるのは,今が初めてである.まずは,素晴らしい眺めに感激する.
登るときは,夢中だったので,コルまでそれほど長い距離だとは思わなかったが,辺りが見える下りでは,よくもまあ,こんなに長い登り坂を登ったものだと呆れるほどの長い下り坂である.疲れ切っている足には結構つらいものがある.
12時12分頃,眼下にモレーンキャンプと,例の「名のない湖」が見え始める.まるで飛行機の窓から見下ろしているような風景である.湖の水の色が何とも言えないほど美しい.私は,すかさず,この美しい風景をデジカメに収める.

<コルから少し下ると,綺麗な湖水とモレーンキャンプが見え始める(12:12頃)>
■レモン水
長い下り坂が続く.草臥れ果てた身体には結構堪える.それでも,何とか下り続けて,12時28分に,氷河の縁まで到着する.
氷河の縁では,先発隊と一緒に下山していたチーフガイドのクラウディオさんと若いガイドが,私達が下ってくるのを待っている.私達が氷河の縁に到着すると,寡黙なクラウディオさんが,「やあ~」というような仕草をして,ニッコリと笑う.そして, 「冷たいレモン水は,いかが・・・」と言って,コップに並々とレモン水を注いでくれる.
冷たいといっても,別に冷蔵庫がある訳ではないので,多少,生ぬるいが,それでも疲れた身体には,とても美味しい.私は立て続けにコップ2杯のレモン水を頂戴する.
ここで,アイゼン,スパッツ,防寒具など,余計なものは全て脱ぎ捨てる.それを無理矢理リュックに詰め込む.すると,若いガイドが,私のリュックを持ってあげるという.有り難いことである.私はガイドに感謝しながら,リュックを預ける.

<ガイドのクラウディオさんからレモン水を頂戴する(12:28頃)>
※頂戴したレモン水は,とても美味しかった.
■ようやくモレーンキャンプに戻る
12時45分,私達はクラウディオさんを先頭にして,氷河の端から,モレーンキャンプを目指して下り始める.急でジグザグの下り坂が連続する.浮き石がゴロゴロしているモレーンは,結構,歩きにくい.
眼下にモレーンキャンプが見えているが,下っても,下っても,なかなかキャンプ場に到着しない.
「随分,長いな~ぁ・・」
と思いながら下り続ける.
そして,13時10分,ようやく,モレーンキャンプに辿り着いた.
ピスコ山山頂から,モレーンキャンプまで下る所要時間は,休憩時間を含めて,3時間45分であった.決して芳しい記録ではないが,とにかく,何とか無事に登頂できたので,心底から「ホッ」とする.
(つづく)
謝辞
今回のブログに掲載したピスコ山山頂からのパノラマ写真は,同行したKAさんのご厚意により,KAさんの写真を転載させていただいたものである.ここに記して謝意を表する次第である.
「ペルー訪問記」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/92e5a6cfd5d0a0931b6a10354179711b
「ペルー訪問記」の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/b3fecb7ac76392b5ee7823dddd0f4e5e
このシリーズの最初の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/6fee0e316085f32cce0c47a424821346
ペルー訪問記(55):第16日目(2):ピスコ山登頂(2)
2008年7月16日(木)(つづき)
<ピスコ山山頂>
■まずは記念写真
早朝,というよりは深夜1時28分にモレーンキャンプを出発した私達は,氷河の尾根を登り続けて,8時52分に,ようやくピスコ山山頂に到着する.モレーンキャンプから,ピスコ山山頂までの所要時間は,実に7時間24分にもなってしまった.
ここは,標高5,752メートルの別世界である.
幸いなことに天気が良く,上空には青空が広がっている.風も殆ど吹いていない.
私達は山頂に打ち込んだアンカーと自分の身体をロープで確保したまま,暫くの間,山頂で至福の時を過ごす.
まずは全員揃って記念写真を撮る.この中に,従前からの山友達のトーマスさんの姿がないのが,とても残念である.

<ピスコ山山頂での集合写真(9:23頃)>
※写真掲載については,事前に全員の了承を得ている.この中にflower-hillも居る.
■360度が6,000メートル級の山々
山頂から周囲を見渡す.ここからは正に360度の視野が開けている.四方八方を標高6,000メートル級の山々で囲まれている.どの山も峻険な氷河に覆われている.どの方向を見ても,真っ白な尖鋒がそそり立っている.これまでの想像を超えた気高い風景が広がっている.

<ピスコ山から見た方位と周囲の山塊>
※紙面の大きさに制限があるため,一部の山の位置が,この図の外になっている.
※この図は,プリントすると綺麗に見える.
まずは東を望む.そこには,ピスコ山よりやや低いヤナパクチャ峰(Yanapaqucha,標高5,400m)が聳えている.その先には雲海が幾重にも広がっている.目線を南へ転じると遙か遠くに随分と高い山が見えているが,山の名前は分からない.その南側にリャンガヌーコ峠(Llanganuco,標高4,767m),チョピカルキ峰(Chopicaruqui,標高6,354m)と続く.チョピカルキは鋭く尖った三角形の山である.

<東に見える山々> ※KAさん提供の写真
南には,双耳峰のワスカラン南峰(Huascaran South,標高6,768m),ワスカラン北峰(標高6,664m)が一段と高く聳えている.
ワスカランから大きな谷を隔てて,南西の目の前に一段と大きくワンドイ南峰(Huandoy South,標高6,160m),北峰(標高6,395m),東峰(6,000m)が並んでいる.私達はこの大きな谷間を登ってきたことになる.

<南に見える山々> ※KAさん提供の写真
西に目を転じると,再び大きな谷を隔てて,遠くにアグアス峰(Agujas,標高5,888m),カラス峰(Caraz,標高6,025m),キタラフ峰(Quitaraju,標高6,038m),アルパマヨ(Alpamayo,標高5,947m)が連なっている.

<西に見える山々> ※KAさん提供の写真
さらに時計回りに北へ廻ると,遠くにアルテソンラフ峰(Artesonraju,標高6,025m),近くにピラミデ峰(Piramide,標高5,885m),さらに双耳峰のチャクラフ西峰(Chacraraju West,標高6,112m)とチャクラフ東峰(標高6,001m)と続く.
時間さえ許せば,暫くの間,雄大な眺望を堪能したいと思う.

<北に見える山々> ※KAさん提供の写真
■山頂で食事
三井リーダーから,
「何か食べ物を摂りなさい・・」
と言われる.ところが高度障害のためか,私には全く空腹感がない.
結局,私は,景色を眺めているだけで,殆ど何も食べなかった.
<ピスコ山から下山>
■氷河の急な下り坂
9時25分,下山を開始する.
登りとは反対の順序で,最初にチーフリーダーのパーティ,続いて私達のパーティの順で下り始める.寒いところで休憩を取っていたので,歩き始めると,足の筋肉が,幾分,強張っているのが分かる.
登るときに苦労した氷壁は,ロープダウンで難なくクリアーする.後はひたすら下り続けるだけである.
しかし,登りでかなりの体力を消耗しているので,長い下り坂は辛い.ついつい足元がふらつく.リーダーが,
「もっと,足幅を横に大きくした方が安定しますよ・・・」
と私に忠告する.
勿論,私も頭の中では,そのようなことは重々承知しているが,身体がなかなか言うことを聞いてくれない.
急坂の氷河を下りながら,心の中で,
「よくもまあ,こんなに急で長い坂を登ったものだ・・・」
半ば呆れながら下り続ける.
■コルに到着
11時48分,これまで下り続けた稜線から外れて,モレーンキャンプへ下る分岐のコルに到着する.ここまで下れば,幾ら私でも幾分は気持に余裕ができる.そこで,リーダーに,
「ちょっと写真を撮らせてくれ・・」
と言って,小休止する.
私は急いで辺りの風景をデジカメに収める.
足元には氷河が広がっている.その氷河の先に,青空を背景にして,ワンドイ東峰がクッキリと連なって見えている.
「やっぱり,凄い景色だな・・・」
と私は大いに感激する.
「苦労して登って良かったな・・」

<ピスコ山のコルに到着(11:48頃)>
■美しい湖水
ほんの2~3分の休憩の後,11時52分頃,コルから南側の斜面を下り始める.
この辺りは,まだ真っ暗なときに登っていたので,明るいときに風景を眺めるのは,今が初めてである.まずは,素晴らしい眺めに感激する.
登るときは,夢中だったので,コルまでそれほど長い距離だとは思わなかったが,辺りが見える下りでは,よくもまあ,こんなに長い登り坂を登ったものだと呆れるほどの長い下り坂である.疲れ切っている足には結構つらいものがある.
12時12分頃,眼下にモレーンキャンプと,例の「名のない湖」が見え始める.まるで飛行機の窓から見下ろしているような風景である.湖の水の色が何とも言えないほど美しい.私は,すかさず,この美しい風景をデジカメに収める.

<コルから少し下ると,綺麗な湖水とモレーンキャンプが見え始める(12:12頃)>
■レモン水
長い下り坂が続く.草臥れ果てた身体には結構堪える.それでも,何とか下り続けて,12時28分に,氷河の縁まで到着する.
氷河の縁では,先発隊と一緒に下山していたチーフガイドのクラウディオさんと若いガイドが,私達が下ってくるのを待っている.私達が氷河の縁に到着すると,寡黙なクラウディオさんが,「やあ~」というような仕草をして,ニッコリと笑う.そして, 「冷たいレモン水は,いかが・・・」と言って,コップに並々とレモン水を注いでくれる.
冷たいといっても,別に冷蔵庫がある訳ではないので,多少,生ぬるいが,それでも疲れた身体には,とても美味しい.私は立て続けにコップ2杯のレモン水を頂戴する.
ここで,アイゼン,スパッツ,防寒具など,余計なものは全て脱ぎ捨てる.それを無理矢理リュックに詰め込む.すると,若いガイドが,私のリュックを持ってあげるという.有り難いことである.私はガイドに感謝しながら,リュックを預ける.

<ガイドのクラウディオさんからレモン水を頂戴する(12:28頃)>
※頂戴したレモン水は,とても美味しかった.
■ようやくモレーンキャンプに戻る
12時45分,私達はクラウディオさんを先頭にして,氷河の端から,モレーンキャンプを目指して下り始める.急でジグザグの下り坂が連続する.浮き石がゴロゴロしているモレーンは,結構,歩きにくい.
眼下にモレーンキャンプが見えているが,下っても,下っても,なかなかキャンプ場に到着しない.
「随分,長いな~ぁ・・」
と思いながら下り続ける.
そして,13時10分,ようやく,モレーンキャンプに辿り着いた.
ピスコ山山頂から,モレーンキャンプまで下る所要時間は,休憩時間を含めて,3時間45分であった.決して芳しい記録ではないが,とにかく,何とか無事に登頂できたので,心底から「ホッ」とする.
(つづく)
謝辞
今回のブログに掲載したピスコ山山頂からのパノラマ写真は,同行したKAさんのご厚意により,KAさんの写真を転載させていただいたものである.ここに記して謝意を表する次第である.
「ペルー訪問記」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/92e5a6cfd5d0a0931b6a10354179711b
「ペルー訪問記」の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/b3fecb7ac76392b5ee7823dddd0f4e5e
このシリーズの最初の記事
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