<堀山の尾根にて>
蒸し暑い霧の丹沢:塔ノ岳(今年29回目)
(単独山行)
2009年6月25日(木)
■久々の塔ノ岳
この所,塔ノ岳から遠ざかっていた.
今月(6月)の7日から18日まで,モロッコのツブカル山登頂のために,留守にしていたためである.帰国してから,そろそろ1週間になるのに,私は,まだ,時差に悩まされている.夕方になると無性に眠くなる.眠気に耐えられず寝てしまうと,その日の22時頃,目が覚めてしまう.それから再びウトウトすると,こんどは1時頃目が覚めてしまう.ここからはどんなにあがいても眠れない.ところが,朝,5時頃になると,また,偉く眠くなり,今度は8時過ぎまで寝てしまう.
こんなぐうたらな生活を何時までも続ける訳には行かないので,丹沢へ行こうかと,常々思っているのだが,今は折悪しく梅雨時である.いくら丹沢へ行きたいといっても,雨の中を登る気はしない.そんなこんなで,結局,丹沢行は今日まで実現しなかった.
■ご常連で一杯の1番バス
久々に,5時10分に家を出発する.今朝も例によって,深夜の1時に目が覚めてしまった.その後,眠っていないので,寝不足感が付きまとう.大船5時44分発小田原行電車に乗車する.電車の座席に座った途端に居眠りを始める.電車の中で深い眠りに入っているようでも,目的地の小田原に到着すると,「ハッ」と目が覚めるから不思議である.
小田原で小田急電車の急行に乗り換える時間は2分しかない.私はまだ眠い身体をむりやり走らせて,小田急電車に飛び乗る.私には,この乗換が一番きつく感じる.
1番バスはに,ご常連が沢山乗り込んでくる.定期券で通われているTさん,三角髭のTさん,2000回登頂間近のMさん,カメラマンのMさん,ネコのSさんなど多士済々である.平素あまり見掛けない登山者も含めて,1番バスはほぼ満席である.
■ネコのSさん
6時56分にバスは大倉に到着する.定期券のTさん,Mさんなどご常連は,早々に,塔ノ岳に向けて歩き出す.少し遅れて,カメラマンのMさんも出発する.私はグズグズしている内に,ご常連の皆様よりも5分ほど遅くなったが,ネコのSさんと暫くの間雑談する.
「どこかへ行っていたんですか・・?」
「モロッコへ行っていました.沢山ネコの写真を撮ってきました・・・でも,尊仏山荘の営業部長が一番可愛いです・・」
「そう,あの子は性格がおとなしくて良いですね・・・ところで,貴方のブログにネコが載っているというので見たいという方が居られますよ・・・」
・・・という訳で,このブログのアドレスをネコのSさんにお渡しする.
■体調がどうもダメだな
Sさんと一緒に,7時06分に歩き出す.Sさんがユックリ登られるというので,私は単独で登ることにする.
登り始めて直ぐに,歩き続けるのが厭になるほど,身体がとても重いことに気が付く.その上,気温,湿度ともにとても高い.少し歩いただけで,汗が滲み出てくる.
「これは,どうもダメだな・・・」
と思いながら,最初からペースを落として,暫くの間,身体の様子を見ながら歩くことにする.
足許は,降り続いた雨のために,かなり濡れている.登山口から杉林に入ると,ますます湿気が強くなって,辺り一面に靄が掛かっている.私の前方には,平日にもかかわらず,かなり沢山の登山客の姿が終えている.
私はゆっくりしたペースで歩いているものの,前方の登山者を少しずつ追い抜きながら,マイペースで登り続ける.やがて,雑事場ノ平手前で,何かを写真に撮っているカメラマンのMさんに追いつく.私は,
「何か良いものがありますか・・?」
と質問する.
「何かって・・その・・.1/8秒でしかシャッターが落ちないんで・・カバー写真ぐらいにはなるでしょうが・・」
「今日は暑いので,2時間30分くらいを目標にしています・・・」
私は,Mさんを追い越させて貰う.
■暑いこと・・
7時41分に見晴茶屋を通過する.気温は25.3℃もある.すぐに急坂の上り階段になる.階段に差し掛かると,今日の自分の体調の悪さが一段とハッキリする.とにかく止めどもなく汗が出てくる.それに,汗だけでなく,身体にベトベトとまとわりつく湿気で,メガネが曇ってくる.メガネは,拭いても,拭いても,直ぐに曇ってしまう.これが,著しく意欲を喪失させる.
「こりゃ~ぁ・・ダメだ・・」
重い身体と,曇るメガネに,途中で,もう下山してしまおうかとすら迷い出すが,まあ,もう少し上ってみようと思いながら,ずるずると登り続ける.そして,超ユックリペースで,駒止茶屋手前の長い階段を登り詰める.
8時13分に駒止茶屋を通過する.大倉を歩き出してから1時間07分経過している.私が目安にしている1時間を7分も超過している.これでは,2時間30分以内に山頂に到着するのは無理だなと判断する.駒止茶屋の気温は19.9℃.大分涼しくなっているようである.
<深い霧に覆われた堀山の尾根>
■ウグイスとツツドリが賑やかだ
駒止茶屋を過ぎると,堀山の尾根道になる.何時もなら富士山を眺めながら快調に飛ばす所だが,今日は,深い霧に覆われていて眺望は全くない.歩調を早めようと言う気も全く起きないまま,惰性で歩き続ける.そして,8時22分に堀山ノ家を通過する.
周囲の山からウグイスやツツドリの活発な啼き声が聞こえてくる.私は元気な小鳥の声を聞きながら,
「あいつら,暑くないのかな・・・」
と不思議に思っている.
そうこうしている内に,後から来た登山者に追い抜かれる.
<あいにく富士山は見えない>
■静かな萱場平
8時22分に堀山ノ家を通過する.この辺りには人影がなく静まりかえっている.ここから花立山荘まで長い登り坂が続く.私の歩行速度はますます落ちる.それでも,前を行く何人かの登山者を追い抜くが,逆に1人の登山者に追い抜かれる.私は自分の年齢も念頭に置いて,とにかく無理がないように念じながら,半ば惰性で登り続ける.
その内に,自分が,体調不良ながら,それなりのリズムで登り続けていることを自覚する.
<今日の萱場平>
■長い階段がシンドイ
やがて,花立山荘手前の長い階段に差し掛かる.私は心の中で,
「この階段,7分だけ登り続ければ終わりになるぞ・・」
と叫びながら,ユックリと登り始める.階段の途中で,後を振り返ると,今まで姿が見えなかったカメラマンのMさんの姿が見える.やっぱり追いつかれてしまったかと思う.
<長い階段でご常連とすれ違う:後からカメラマンのMさんがせまる>
■ご常連が下山してくる
9時14分に花立山荘を通過する.調子の良いときならば,そろそろ塔ノ岳山頂に到着する時間である.ここから花立場までの登り坂が結構辛い.花立場からの富士山,南アルプスの眺望が楽しみなのだが,今日は霧の中,眺望は期待できないので,ノソノソと惰性で登り続ける.
足の速いご常連が,もう下山してくる.
「今日は暑いですね・・・」
と私を庇うような挨拶をしてすれ違う.
金冷シ手前で,定期券のTさんとすれ違う.
「折角登ったのに,何も見えなかったですよ・・」
続いて,三角髭のTさんとすれ違う.お二人とも,私と同じバスに乗っていた方である.驚嘆すべき登攀速度である.
金冷シ手前の林の中からセミの声が木霊するように聞こえてくる.蛙の鳴き声に良く似た啼き声である.セミの声を聞きながら,季節が急ピッチで変わっていくのを実感する.
<山頂のシカ>
■雲ばかりの山頂
9時29分に金冷シを通過する.いつもは感じたことはないが,今回は何となく疲労感がある.でも,まあ,ここまで登れば,塔ノ岳山頂はもうすぐである.
私の前方には2人の登山者が,今にも止まりそうになりながら,喘ぐように登っている.このお二人を追い抜くのは,何となく気が引けるが,私の直ぐ後にカメラマンのMさんが追いついている.私は,思い切って,このお二人を追い抜いて,一気に山頂まで登り詰める.
9時44分,塔ノ岳山頂に到着する.今日の大倉から塔ノ岳山頂までの所要時間は,2時間38分,私の今年最悪の記録となる.
雲に覆われた山頂からの眺望は,残念ながらどうにもならない.山頂で2頭のシカがのんびりと座り込んでいる写真を撮る.
山頂には,2000回のMさんが居る.
「・・今日は直ぐ下山するの・・?」
と私に聞く.
「尊仏山荘に寄って,暫くのんびりしてから,12時22分のバスに間に合うように下山しようと思っています・・」
「そうだな・・折角登ったんだから,何も急ぐことないよ.俺もときどき12時のバスで帰ることがあるよ・・」
<塔ノ岳山頂からの眺望>
■尊仏山荘
カメラマンのMさんと一緒に尊仏山荘に入る.
今日の尊仏山荘の小屋番は,オーナーのHさんである.ご常連の先客が3人ほどいる. 早速,山荘の寒暖計を覗き込む.今日の9時45分現在の塔ノ岳山頂の気温は,18.3℃.やはり暑い.
Hさんが,
「・・・この間,トドさんが来ましたよ・・」
と言いながら,記録ノートを開いて見せてくれる.なるほど,トドさんが「・・・ヤビツ峠から登った云々・・」と自筆で書いている.私は,ノートを見ながら,
「・・・自分で『トドさん』って言っているんだから世話ないな・・」
と思いながら心の中で笑いこける.Hさんが,
「今日辺り,(トドさん,)登ってこないですかね・・・」
と私に尋ねる.
「今日はお仲間と,鎌倉くんだりを散策するようですよ・・」
「そういえば,(FHさん),どこか外国へ行っていたんでしょう・・・」
「ツブカル山へ登ってきましたよ.モロッコにある山です・・・」
「へぇ~・・モロッコに山があるんですか?」
「あるんですよ.ツブカル山は北アフリカ最高峰で,海抜4,167メートルです.」
Mさんがご常連と花の話を始める.
■のんびりと下る
私は,12時22分のバスに乗りたいので,10時03分に尊仏山荘を出て下山を開始する. 金冷シの手前で,ネコのSさんとすれ違う.私は,
「今日は営業部長に会えませんでした・・・」
と報告する.
「多分,別棟に居るんでしょう・・・」
私は,Sさんと,もう一度,登り返して,営業部長に会いたいなという衝動に駆られるが止めておく.
駒止茶屋辺りを下るころ,霧がますます濃くなる.足許も霧でボンヤリするほどである.登ってくる登山客と絶えずすれ違うが,霧の中から粋なり人が出てくるような感じである.
途中からかなり急いで,12時17分に大倉に到着する.下りの所要時間は2時間14分であった.
■やれやれ! 疲れた
渋沢から小田原行の電車に乗る.席に着いた途端に居眠りをする.ほんの5分ほど寝たつもりだったのに,小田原終点に到着する.寝ぼけ眼で,東海道本線の電車に乗り換える.また居眠りをする.ふと気が付くと,乗降客が多い駅に停まっている.大船かなと思って飛び降りると藤沢である.慌てて降りた電車に飛び乗って,大船まで立ったまま過ごす.14時過ぎに帰宅.
「やれやれ・・疲れた!」
久しぶりの塔ノ岳登頂は,結構,疲れる.体中が汗でベタベタになっている.早速,シャワーで汗を洗い直す.勢いよくお湯が出るシャワーを浴びながら,
「わが家のシャワーは,モロッコの四つ星ホテルよりも上等だな・・」
と,改めてモロッコの旅を思い出す.
[ラップタイム]
7:06 大倉歩き出し
7:26 観音茶屋
7:41 見晴茶屋
8:13 駒止茶屋
8:22 堀山ノ家
9:14 花立山荘
9:29 金冷シ
9:44 塔ノ岳山頂 着
==================================
10:03 塔ノ岳山頂 発(+18.3℃)
10:15 金冷シ
10:29 花立山荘
11:06 堀山ノ家
11:24 駒止茶屋
11:50 見晴茶屋
12:02 観音茶屋
12:17 大倉 着
[山行記録]
■水平歩行距離 7.0km(片道)
■累積登攀下降高度 1201m
■登攀所要時間
大倉 発 7:06
塔ノ岳山頂 着 9:44
登攀所要時間 2時間38分(2.63h)
登攀速度 1201m/2.63h=456.7m/h
■下降所要時間
塔ノ岳山頂 発 10:03
大倉 着 12:17
下降所要時間 2時間23分(2.38h)
下降速度 1201m/2.38h=515.5m/h
(おわり)
「丹沢の山旅」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/68eae9f67cb06fafe271ddf133dc6069
「丹沢の山旅」の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/2a512ecc7704b1394bb53932a1d6dc21
蒸し暑い霧の丹沢:塔ノ岳(今年29回目)
(単独山行)
2009年6月25日(木)
■久々の塔ノ岳
この所,塔ノ岳から遠ざかっていた.
今月(6月)の7日から18日まで,モロッコのツブカル山登頂のために,留守にしていたためである.帰国してから,そろそろ1週間になるのに,私は,まだ,時差に悩まされている.夕方になると無性に眠くなる.眠気に耐えられず寝てしまうと,その日の22時頃,目が覚めてしまう.それから再びウトウトすると,こんどは1時頃目が覚めてしまう.ここからはどんなにあがいても眠れない.ところが,朝,5時頃になると,また,偉く眠くなり,今度は8時過ぎまで寝てしまう.
こんなぐうたらな生活を何時までも続ける訳には行かないので,丹沢へ行こうかと,常々思っているのだが,今は折悪しく梅雨時である.いくら丹沢へ行きたいといっても,雨の中を登る気はしない.そんなこんなで,結局,丹沢行は今日まで実現しなかった.
■ご常連で一杯の1番バス
久々に,5時10分に家を出発する.今朝も例によって,深夜の1時に目が覚めてしまった.その後,眠っていないので,寝不足感が付きまとう.大船5時44分発小田原行電車に乗車する.電車の座席に座った途端に居眠りを始める.電車の中で深い眠りに入っているようでも,目的地の小田原に到着すると,「ハッ」と目が覚めるから不思議である.
小田原で小田急電車の急行に乗り換える時間は2分しかない.私はまだ眠い身体をむりやり走らせて,小田急電車に飛び乗る.私には,この乗換が一番きつく感じる.
1番バスはに,ご常連が沢山乗り込んでくる.定期券で通われているTさん,三角髭のTさん,2000回登頂間近のMさん,カメラマンのMさん,ネコのSさんなど多士済々である.平素あまり見掛けない登山者も含めて,1番バスはほぼ満席である.
■ネコのSさん
6時56分にバスは大倉に到着する.定期券のTさん,Mさんなどご常連は,早々に,塔ノ岳に向けて歩き出す.少し遅れて,カメラマンのMさんも出発する.私はグズグズしている内に,ご常連の皆様よりも5分ほど遅くなったが,ネコのSさんと暫くの間雑談する.
「どこかへ行っていたんですか・・?」
「モロッコへ行っていました.沢山ネコの写真を撮ってきました・・・でも,尊仏山荘の営業部長が一番可愛いです・・」
「そう,あの子は性格がおとなしくて良いですね・・・ところで,貴方のブログにネコが載っているというので見たいという方が居られますよ・・・」
・・・という訳で,このブログのアドレスをネコのSさんにお渡しする.
■体調がどうもダメだな
Sさんと一緒に,7時06分に歩き出す.Sさんがユックリ登られるというので,私は単独で登ることにする.
登り始めて直ぐに,歩き続けるのが厭になるほど,身体がとても重いことに気が付く.その上,気温,湿度ともにとても高い.少し歩いただけで,汗が滲み出てくる.
「これは,どうもダメだな・・・」
と思いながら,最初からペースを落として,暫くの間,身体の様子を見ながら歩くことにする.
足許は,降り続いた雨のために,かなり濡れている.登山口から杉林に入ると,ますます湿気が強くなって,辺り一面に靄が掛かっている.私の前方には,平日にもかかわらず,かなり沢山の登山客の姿が終えている.
私はゆっくりしたペースで歩いているものの,前方の登山者を少しずつ追い抜きながら,マイペースで登り続ける.やがて,雑事場ノ平手前で,何かを写真に撮っているカメラマンのMさんに追いつく.私は,
「何か良いものがありますか・・?」
と質問する.
「何かって・・その・・.1/8秒でしかシャッターが落ちないんで・・カバー写真ぐらいにはなるでしょうが・・」
「今日は暑いので,2時間30分くらいを目標にしています・・・」
私は,Mさんを追い越させて貰う.
■暑いこと・・
7時41分に見晴茶屋を通過する.気温は25.3℃もある.すぐに急坂の上り階段になる.階段に差し掛かると,今日の自分の体調の悪さが一段とハッキリする.とにかく止めどもなく汗が出てくる.それに,汗だけでなく,身体にベトベトとまとわりつく湿気で,メガネが曇ってくる.メガネは,拭いても,拭いても,直ぐに曇ってしまう.これが,著しく意欲を喪失させる.
「こりゃ~ぁ・・ダメだ・・」
重い身体と,曇るメガネに,途中で,もう下山してしまおうかとすら迷い出すが,まあ,もう少し上ってみようと思いながら,ずるずると登り続ける.そして,超ユックリペースで,駒止茶屋手前の長い階段を登り詰める.
8時13分に駒止茶屋を通過する.大倉を歩き出してから1時間07分経過している.私が目安にしている1時間を7分も超過している.これでは,2時間30分以内に山頂に到着するのは無理だなと判断する.駒止茶屋の気温は19.9℃.大分涼しくなっているようである.
<深い霧に覆われた堀山の尾根>
■ウグイスとツツドリが賑やかだ
駒止茶屋を過ぎると,堀山の尾根道になる.何時もなら富士山を眺めながら快調に飛ばす所だが,今日は,深い霧に覆われていて眺望は全くない.歩調を早めようと言う気も全く起きないまま,惰性で歩き続ける.そして,8時22分に堀山ノ家を通過する.
周囲の山からウグイスやツツドリの活発な啼き声が聞こえてくる.私は元気な小鳥の声を聞きながら,
「あいつら,暑くないのかな・・・」
と不思議に思っている.
そうこうしている内に,後から来た登山者に追い抜かれる.
<あいにく富士山は見えない>
■静かな萱場平
8時22分に堀山ノ家を通過する.この辺りには人影がなく静まりかえっている.ここから花立山荘まで長い登り坂が続く.私の歩行速度はますます落ちる.それでも,前を行く何人かの登山者を追い抜くが,逆に1人の登山者に追い抜かれる.私は自分の年齢も念頭に置いて,とにかく無理がないように念じながら,半ば惰性で登り続ける.
その内に,自分が,体調不良ながら,それなりのリズムで登り続けていることを自覚する.
<今日の萱場平>
■長い階段がシンドイ
やがて,花立山荘手前の長い階段に差し掛かる.私は心の中で,
「この階段,7分だけ登り続ければ終わりになるぞ・・」
と叫びながら,ユックリと登り始める.階段の途中で,後を振り返ると,今まで姿が見えなかったカメラマンのMさんの姿が見える.やっぱり追いつかれてしまったかと思う.
<長い階段でご常連とすれ違う:後からカメラマンのMさんがせまる>
■ご常連が下山してくる
9時14分に花立山荘を通過する.調子の良いときならば,そろそろ塔ノ岳山頂に到着する時間である.ここから花立場までの登り坂が結構辛い.花立場からの富士山,南アルプスの眺望が楽しみなのだが,今日は霧の中,眺望は期待できないので,ノソノソと惰性で登り続ける.
足の速いご常連が,もう下山してくる.
「今日は暑いですね・・・」
と私を庇うような挨拶をしてすれ違う.
金冷シ手前で,定期券のTさんとすれ違う.
「折角登ったのに,何も見えなかったですよ・・」
続いて,三角髭のTさんとすれ違う.お二人とも,私と同じバスに乗っていた方である.驚嘆すべき登攀速度である.
金冷シ手前の林の中からセミの声が木霊するように聞こえてくる.蛙の鳴き声に良く似た啼き声である.セミの声を聞きながら,季節が急ピッチで変わっていくのを実感する.
<山頂のシカ>
■雲ばかりの山頂
9時29分に金冷シを通過する.いつもは感じたことはないが,今回は何となく疲労感がある.でも,まあ,ここまで登れば,塔ノ岳山頂はもうすぐである.
私の前方には2人の登山者が,今にも止まりそうになりながら,喘ぐように登っている.このお二人を追い抜くのは,何となく気が引けるが,私の直ぐ後にカメラマンのMさんが追いついている.私は,思い切って,このお二人を追い抜いて,一気に山頂まで登り詰める.
9時44分,塔ノ岳山頂に到着する.今日の大倉から塔ノ岳山頂までの所要時間は,2時間38分,私の今年最悪の記録となる.
雲に覆われた山頂からの眺望は,残念ながらどうにもならない.山頂で2頭のシカがのんびりと座り込んでいる写真を撮る.
山頂には,2000回のMさんが居る.
「・・今日は直ぐ下山するの・・?」
と私に聞く.
「尊仏山荘に寄って,暫くのんびりしてから,12時22分のバスに間に合うように下山しようと思っています・・」
「そうだな・・折角登ったんだから,何も急ぐことないよ.俺もときどき12時のバスで帰ることがあるよ・・」
<塔ノ岳山頂からの眺望>
■尊仏山荘
カメラマンのMさんと一緒に尊仏山荘に入る.
今日の尊仏山荘の小屋番は,オーナーのHさんである.ご常連の先客が3人ほどいる. 早速,山荘の寒暖計を覗き込む.今日の9時45分現在の塔ノ岳山頂の気温は,18.3℃.やはり暑い.
Hさんが,
「・・・この間,トドさんが来ましたよ・・」
と言いながら,記録ノートを開いて見せてくれる.なるほど,トドさんが「・・・ヤビツ峠から登った云々・・」と自筆で書いている.私は,ノートを見ながら,
「・・・自分で『トドさん』って言っているんだから世話ないな・・」
と思いながら心の中で笑いこける.Hさんが,
「今日辺り,(トドさん,)登ってこないですかね・・・」
と私に尋ねる.
「今日はお仲間と,鎌倉くんだりを散策するようですよ・・」
「そういえば,(FHさん),どこか外国へ行っていたんでしょう・・・」
「ツブカル山へ登ってきましたよ.モロッコにある山です・・・」
「へぇ~・・モロッコに山があるんですか?」
「あるんですよ.ツブカル山は北アフリカ最高峰で,海抜4,167メートルです.」
Mさんがご常連と花の話を始める.
■のんびりと下る
私は,12時22分のバスに乗りたいので,10時03分に尊仏山荘を出て下山を開始する. 金冷シの手前で,ネコのSさんとすれ違う.私は,
「今日は営業部長に会えませんでした・・・」
と報告する.
「多分,別棟に居るんでしょう・・・」
私は,Sさんと,もう一度,登り返して,営業部長に会いたいなという衝動に駆られるが止めておく.
駒止茶屋辺りを下るころ,霧がますます濃くなる.足許も霧でボンヤリするほどである.登ってくる登山客と絶えずすれ違うが,霧の中から粋なり人が出てくるような感じである.
途中からかなり急いで,12時17分に大倉に到着する.下りの所要時間は2時間14分であった.
■やれやれ! 疲れた
渋沢から小田原行の電車に乗る.席に着いた途端に居眠りをする.ほんの5分ほど寝たつもりだったのに,小田原終点に到着する.寝ぼけ眼で,東海道本線の電車に乗り換える.また居眠りをする.ふと気が付くと,乗降客が多い駅に停まっている.大船かなと思って飛び降りると藤沢である.慌てて降りた電車に飛び乗って,大船まで立ったまま過ごす.14時過ぎに帰宅.
「やれやれ・・疲れた!」
久しぶりの塔ノ岳登頂は,結構,疲れる.体中が汗でベタベタになっている.早速,シャワーで汗を洗い直す.勢いよくお湯が出るシャワーを浴びながら,
「わが家のシャワーは,モロッコの四つ星ホテルよりも上等だな・・」
と,改めてモロッコの旅を思い出す.
[ラップタイム]
7:06 大倉歩き出し
7:26 観音茶屋
7:41 見晴茶屋
8:13 駒止茶屋
8:22 堀山ノ家
9:14 花立山荘
9:29 金冷シ
9:44 塔ノ岳山頂 着
==================================
10:03 塔ノ岳山頂 発(+18.3℃)
10:15 金冷シ
10:29 花立山荘
11:06 堀山ノ家
11:24 駒止茶屋
11:50 見晴茶屋
12:02 観音茶屋
12:17 大倉 着
[山行記録]
■水平歩行距離 7.0km(片道)
■累積登攀下降高度 1201m
■登攀所要時間
大倉 発 7:06
塔ノ岳山頂 着 9:44
登攀所要時間 2時間38分(2.63h)
登攀速度 1201m/2.63h=456.7m/h
■下降所要時間
塔ノ岳山頂 発 10:03
大倉 着 12:17
下降所要時間 2時間23分(2.38h)
下降速度 1201m/2.38h=515.5m/h
(おわり)
「丹沢の山旅」の前回の記事
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