給与未払い JFL条件満たさず
可否 23日にも判断
サッカー・日本フットボールリーグ(JFL)の「FC神楽しまね」が、リーグ残留の瀬戸際に立たされている。
昨年11月、成績上は2022年シーズンを残留で終えたが、約半年間にわたり選手らへの給与未払いが続き、
JFLのクラブ条件を満たしていない危機的状況にある。残留可否を決める理事会は、今月23日にも最終判断を
下すとみられ、クラブの行方に注目が集まっている。(玉田響子、小松夕夏)
■資金難
Jリーグ参入を目指し、運営会社「松江シティFC」(松江市)は前身のNPO法人を引き継ぎ、17年に設立。
チームは地域リーグの中国リーグで好成績を収め、19年、アマチュア最高峰のJFLへと昇格するなどステップ
アップしてきた。
そんな中、主な収入源をスポンサー収入と子どもらに教える「スクール収入」とするクラブは、会社設立当初
から厳しい経営状態にあった。
19年に約9700万円だった赤字は、20年に約8200万円、21年には約1億円に。コロナ禍による
試合数の大幅減などが資金難に追い打ちをかけるも、クラブは適切な打開策を打ち出すことができず、担当者は
「累積赤字が膨らんでしまった。応援してくれるサポーターらに心配をかけ、申し訳ない」と吐露する。
残留可否について、JFLの理事会は当初、昨年12月中に決める予定だったが、クラブ側からの再建計画書
の提出が遅れたことなどから判断を年明けに持ち越した。ただ、理事会が今月6日に行った審議でも計画書の実
効性に対する疑問などが解消されず、結論は先送りされた。加藤桂三理事長は「(JFLのクラブとして)存続
してほしいが、ここまで時間がかかるとは。給与問題の解消が判断に大きく関わる」と語った。
■選手ら退団
経営難が続く中、選手やスタッフらの退団も相次いでいる。
松江シティFCによると、給与が未払いになった昨年7月以降、実信憲明監督や垣根拓也主将らチーム全体の
半数以上にあたる約20人が現場を去った。
その中の一人、遊馬将也選手(29)は今月7日に退団を発表。今年30歳を迎えるのを前に苦渋の決断を
下した遊馬選手は「昨年中には方向性が決まると聞いていたのに、結局発表されなかった。年齢的にもこれ以上
待っている余裕はなかった」と話した。今後もサッカーを続けるつもりだが、移籍先はまだ決まっていないという。
応援してきた人たちからも不安の声が上がる。遠藤 鍼灸 整骨院(安来市)の遠藤亘院長(40)は「試合に足
を運んでも、客席の熱気は高くなかった。地元の大企業がスポンサーにつくなど、もう少し地域に根付けていたら、
ここまでの事態にはならなかったんじゃないか」と嘆いた。
収入アップの方法は・・・観客増やす工夫を
天理大准教授に聞く
地方のクラブチームが収入を上げるにはどのような方法があるのか――。天理大の筑紫智行准教授(スポーツ経営学)
に聞いた。
収入源は主にスポンサー収入や入場料収入、財団などからの補助金などのため、観客数の増加を目指すことがセオリー
です。例えば、観客動員に苦労しているドイツの地方クラブでは、サッカー教室を開いた際、子どもたちに選手の似顔絵
を描いてもらい、顔と名前を覚えてもらう。その子どもたちが「あの人に会いたい」と親にせがむことで、結果、2人分
の入場料収入が増えました。
大口スポンサーを増やすなどの手段もありますが、地方では大企業が少なく、容易ではありません。行政が無償で練習
施設を提供したり、観光とスポーツを絡め、選手が観光案内をした対価に補助金を得たりするなど、公的な支援も大きな
後押しになります。