「いや、それがですて、こう申しちゃなんだが、わしは警察よりも先生をたよりにしておるのです。二十面相を向こうにまわして、ひけをとらぬ探偵さんは、先生のほかにないということを、わしは信じておるのです。
"That's it. I'm afraid that I rely on you more than police. I believe it's only you who can be better than Twenty Faces.
それに、ここには小さい警察分署しかありませんから、腕ききの刑事を呼ぶにしたって、時間がかかるのです。なにしろ二十面相は、今夜わしのところをおそうというのですからね。ゆっくりはしておられません。
There is only small branch police-office. It takes time to call the good detectives. You know Twenty Faces is going to attack my place tonight. There is no time.
ちょうどその日に、先生がこの温泉に来ておられるなんて、まったく神さまのおひきあわせと申すものです。先生、老人が一生のおねがいです。どうかわしを助けてください。」
左門老人は、手をあわさんばかりにして、かきくどくのです。
On that critical day you are here, that's God's work. Master, this old man is begging. Please help me."
Old Samon pleaded almost praying.
「それほどにおっしゃるなら、ともかくおひきうけしましょう。二十面相はぼくにとっても敵です。早くあらわれてくれるのを、待ちかねていたほどです。
"If you ask me that much, I answer for that anyway. Twenty Faces is my enemy too. I had been waiting for him.
では、ごいっしょにまいりましょうか、そのまえに、いちおうは警察とも打ちあわせをしておかなければなりません。宿へ帰ってぼくから電話をかけましょう。そして、まんいちの用意に、二―三人刑事の応援をたのむことにしましょう。あなたは一足先へお帰りください。ぼくは刑事といっしょに、すぐかけつけます。」
Then let us go together. Before that I have to have briefing meeting with the police. I go back to my room and make a phonecall. I should get some policemen to help us in case. You go back ahead. I will go there with the policemen soon."
明智の口調は、にわかに熱をおびてきました。もう釣りざおなんか見向きもしないのです。
His tone got enthusiastic suddenly. He didn't see the fishing rod anymore.
「ありがとう、ありがとう。これでわしも百万の味方をえた思いです。」
老人は胸をなでおろしながら、くりかえしくりかえし、お礼をいうのでした。
"Thank you, thank you. I feel like I got a million ally."
Old man felt relieved, thanking him again and again.
これでこの章は終わりです。