24・5・9 Thu
昨年に挑戦した火の御子峰の山行は扇の御峰にて敗退。今年はそのリベン
ジです。この火の御子峰の山行で今シーズンの敗退ムードを払拭して挽回
したいところ。6時にⅠ垣さんと市ノ瀬に集合して砂防新道から室堂へ。大
汝峰からお花松原方面へと下って真砂嶽の下にベース(15:17)を置いて
明日の火の御子峰へのアタックに備えました。
24・5・10 Fri
3:40に起床して朝食を済ませてベースを出発(5:30)。メインのロープ
40m×2本と補助ロープ×2本・スリング多数・ハーケン/ハンマーを携え
真砂嶽の鞍部から地獄谷の雪渓を利用して扇の御峰手前(6:50)の地獄
尾根へと取り付きます。ここまでは昨年の敗退時の経験を活かしてスム
ーズに進むことが出来ました。
脆くガレた岩稜を辿って扇の御峰の山頂稜(7:40)へ。這松を漕いで山頂
の端から火の御子峰へと延びる痩せた岩稜へと下ってゆきます。足元には
獄谷や仙人谷へと延びる脆そうな支稜やその山肌の異様な光景を俯瞰でき
ます。
足場も手掛かりも脆いのでスタカットで確保しながらクライムダウンで・
2004のピークを目指します。扇の御峰からの岩稜は痩せて脆く相応の緊張
を強いられる内容はなかなかの手強さです。
高度を下げて岩稜が平坦になってくると進みやすくなりました。途中にあ
る小岩峰を極楽谷側の緩い斜面から通過して・2004のピーク(10:30)へ。
見た目の怖ろし気な景色とは裏腹に比較的スムーズに通過できてありがた
い区間でした。・2004を越えていよいよ今回の核心部となる火の御子峰と
の鞍部を目指して固定ロープで下ってゆきます。
20mと40mと固定ロープを繋いでゆく途中、最低鞍部手前の岩峰で僕は行
き詰まってしまいました。何とかこの岩峰を越えることが出来ても帰路に
ここを再び通りたくはないし、今ここにきて気付いたことなのだが目の前
の鞍部からそのまま地獄谷へと繋がる雪渓を下るルートの方が今辿ってき
たルートよりも気楽で安全にみえる。
そうなると固定ロープが残置になった分だけ装備が減ってしまう…、ここ
で自分の作戦ミスに気が付きました。ミスを修正しつつ次善策として足元
に見えた地獄谷からの雪渓がルートに使えそうなのでそこにルートを取る
ことにしました。一旦・2004の肩までロープを回収しながら戻ってそこか
ら火の御子峰の鞍部へ延びる雪渓に踏み換えられる地点まで地獄谷側の雪
渓を下ってゆくことにします。
バックステップで200m近くを下ったところで火の御子峰鞍部へと延びる
雪渓とを分けている小尾根を踏み換えて雪渓上に降り立ちました。そこか
ら先ほどの岩稜の鞍部を仰ぎみると主岩稜がとても遠くに見えます。
ここまでですっかり気勢を削がれた僕に代わってⅠ垣さんへとトップ交代。
再び主岩稜を目指して雪渓を詰め上がってゆきます。
鞍部から山頂への登り返しも脆く痩せた岩稜を攀じ登ってゆきます。支
点を取ることがままならず、とにかく緩んでいたり古びていたりする残
置を補強したり岩峰上にある岩の突起にスリングを懸けながら登ってゆ
きます。途中の岩峰の捲きの箇所が怖くて思い切りがつかず、一旦引き
返してトップをⅠ垣さんに交代してもらい事なきを得ました。
その後も続く脆く痩せた岩稜はSUSハーケンで補強された残置ロープがあ
る大岩の基部で終わりました。この先も危険なことに変わりはない様です
が傾斜が落ち着き痩せ尾根だけどそこまで狭くもありません。とはいえ滑
落しては大変な事になるのでロープを延ばしながら山頂の高まりを目指し
て慎重に進みます。
山頂に近づくにつれ岩稜の幅は広く緩やかになり、暫しの間ですが緊張感
から解放されてホッとしました。
今回で二度目の火の御子峰の山頂(15:03)に立つことができました。
赤茶色をした礫岩の孤高にも似た異様さと、控えめながらも白山の雄
大な景色から隔絶された距離を置いて俯瞰されるばかりの火の御子峰
に今日こうして登頂出来たことは登山者冥利に尽きるなと思いました。
登頂の実感を満喫したあとは同ルートを下ります。今日の行動内容からす
ると登りよりも下る方が難しい内容なので知らずに気も引き締まるという
もの。登るときに使った支点毎にピッチを切りながら慎重に懸垂で降りて
ゆきます。脆い足場と手掛かりの岩稜を終え、鞍部下の雪渓へと下りて立
った所で漸くホッと出来ました(16:50)。
鞍部からの雪渓を下った標高1740mの地獄谷本谷との出合から標高2380m
の真砂嶽の鞍部へと雪渓を登り返してベースへと戻ります。途中にあった
枝沢から水が流れていたので2ℓ水筒を満タンにして持ち帰ります。時折振
り返り見る火の御子峰の景色が懐かしい…
鞍部手前(19:20)で暗くなって先が見通せなくなったのでヘッデンを点
けます。鞍部を乗越して這松藪の中にルートを見出しながらテントへ向か
って下るのには苦労しました。14時間行動の末にベースへと帰着(19:38)。
疲れた体には水作りの手間がないのはありがたい。遅めの夕飯を食べて早
々に就寝…
24・5・11 Sat
翌朝は七時にベースを発って入山時と同じルートとなる砂防新道から下山
しました。別当出合(11:30)から市ノ瀬(13:00)までの車道歩きがツラ
かったのは、今さら言うまでもないです。
昨年の敗退時の経験が活かされて、今回の山行での登頂が出来たのかもし
れません。Ⅰ垣さん、登攀でのフォローや食当など、いつもありがとうご
ざいます。疲れさまでした。