診察室でのひとり言

日常の診察室で遭遇する疑問、難問、奇問を思いつくままに書き記したひとり言

保険診療と人間ドック

2016年12月24日 | 医療、健康

「 先生、TVで血液検査をすれば癌がわかると言ってました。癌マーカーというのがあるらしいですね。 」と検査を希望するKさん。「 腫瘍マーカーのことですね。」 夫々の臓器にできる癌が特殊な物質を作り出し、血液中に放出してきます。これを検査で測定するものです。数十種類あります。例えば、胃がんや大腸がんであれば CEA などのマーカーが高値を示し、肝がんであれば AFP や PIVKA-Ⅱ などが上昇することがあります。しかしながら、あくまでも補助診断的な意味しかなく、異常値が出ても癌の存在は認められなかったり、正常だからといっても癌が隠れていることも良くあります。一般的には保険診療では特別な場合(癌の治療中や治療後の経過を見る目的)しか測定することはできません。「 Kさん、心配だから調べて下さいというのは皆さんが診察室で受けている保険診療ではできません。心配なので検査を受けたいという場合は、全額自己負担(保険がきかない)の人間ドックで検査を受けてください。心配だから・・・なんて検査していたら、保険制度がパンクしてしまいますよ。」 保険診療とは、何らかの症状があって病気を疑われる場合に医療機関を受診し、医師の判断で必要な検査や治療を行うことで、何の症状もなく、ただ心配だからというのでは保険診療にあたいしません。高齢者は1割負担なので自己負担が少なく、腫瘍マーカーのみならず、何でも心配だからと検査を受けたがる傾向が非常に強く感じます。検査の必要性は医師が判断するのであって、患者が希望するものではありません。