診察室でのひとり言

日常の診察室で遭遇する疑問、難問、奇問を思いつくままに書き記したひとり言

コロナワクチンによるアナフィラキシー

2021年05月05日 | 新型コロナウィルス

今回のファイザー社のワクチンで起こり得るアナフィラキシー(重度のアレルギー)の原因物質はワクチンに含まれるポリエチレングリコールという成分であると考えられています。これはメッセンジャーRNA(m-RNA)というコロナウイルスの表面の突起状のスパイク蛋白を真似て作り出したタンパク質で、これに反応させて免疫細胞に抗体を作らせるというわけです。しかしながら、この m-RNA は非常に安定性が悪く、接種してもすぐに消えてしまうので、すぐ消えない為に、このポリエチレングリコールで覆うようにすることでワクチンを上手く作ることができたのです。しかし、このポリエチレングリコールで極一部の人がアレルギー反応(アナフィラキシー)を起こしてしまいます。ポリエチレングリコールは抗菌薬、下剤、注射薬の成分として、また化粧品にも含めれており、珍しい物質ではありません。蕎麦を食べて蕎麦アレルギーを起こす人、エビやカニを食べてアレルギーを起こす人がいるように、ポリエチレングリコールに対してアレルギーを起こす人がいるわけです。蕎麦でアレルギーが起こるからといって、エビやカニでアレルギーが起こる訳ではありません(中には両者にアレルギーを持っている人もいますが)。従って、何らかの食物アレルギーがあるからと、喘息があるからと、アトピー性皮膚炎、花粉症、蕁麻疹があるからと怖がる必要はありません。インフルエンザや肺炎球菌などの他のワクチンはポリエチレングリコールは使っていないので、これらのワクチン接種でアナフィラキシーになったからといって、今回のワクチンでアナフィラキシーが起こるのは無関係です。しかし、抗菌薬や注射薬、化粧品などで酷い湿疹などのアレルギー反応の既往がある方は注意が必要です。万が一、ポリエチレングリコールに対してのアレルギー反応が起こっても、症状に応じてアドレナリン、ステロイド、抗ヒスタミン薬等で対処できます。回復に時間が掛かる場合のみ、連携病院で1~2日の入院となります。過剰に恐れる必要はありません。但し、アナフィラキシーというのは簡単に言えば重度のアレルギー反応であり、原因物質の初回接触では起こらず、2回目に起こります。従って、1回目の接種で起こし得る人は上述の抗菌剤や下剤、化粧品などで何らかのアレルギー歴のある人であって、そのような既往の無い人が起こす可能性は非常に低いはずです。しかし、ポリエチレングリコールが他にどのような物資に含まれていて、それに対して過去に反応を起こしたか否かまでは判らない場合も多く、結局は誰が起こるかはわからないというのが正解なのかもしれません。但し、1回目のワクチン接種で何らかのアレルギー反応を起こした人は2回目のワクチン接種は受けることはできません。

 

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