家づくり、行ったり来たり

ヘンなコダワリを持った家づくりの記録。詳しくは「はじめに」を参照のほど。ログハウスのことやレザークラフトのことも。

「学習に集中できる子ども部屋」への大きな疑問

2007年07月17日 | 家について思ったことなど
前エントリの「トクホ住宅」の記事には、他に気になる一文があった。
ネット上ではその文は省略されているが日本経済新聞17日朝刊には全文が載っている。

曰く
「快眠しやすい寝室の照明やデザイン、学習に集中できる子ども部屋、……などが研究課題になる見込みだ」

子ども部屋の議論には大抵、勉強の問題が関わってくる。それは自然な流れではあるが、こと勉強に関しては、そもそも子ども部屋でやるべきものなのか、というところから議論を展開して欲しいと思う。
「勉強部屋」の発想は、一人で誰にも邪魔されない環境を作って集中しやすくする、というものだが、その発想は勉強自体が趣味となった超優等生か、せっぱつまって真に心を入れ替えた受験生くらいしか通用しない。人間というものはたしかに一人になって集中することもあるが、それ以上にサボるものである。自分が一人になったら何をするか想像してみればいい、自分の子どもも同じようなものと考えるべきだ。

我が家では、勉強はみんなで使う作業机兼勉強机でやることになっている。あるものはそこで勉強しているが、あるものは工作していて、あるものはPCをいじっている、そんな環境である。
「それでは集中できないではないか」というようなことを言われるかもしれないが、逆に「そんなことで集中できないというのは困る」というのがこちらの言い分になる。

子どもが、密室でしか集中できないまま社会人になったことを考えてみてほしい。
会社に入れば机がずらりと並んでいて、社員が仕事をしている。学校の教室も同じではないかというかもしれないが、教室の場合は皆同じ勉強を同じペースでしているのに対し、会社の場合は、それぞれ違う仕事を違うペースでやるし、時には机のうえを片付けたり、電話したりしているのだ。隣に人間がいることで仕事ができない、などという言い分が通用するような世界ではない。
最近、社会でメンタル面が弱い人材が増えているのは、もしかしたら一人じゃないと集中できないまま成長してしまったせいかもしれない、などと思い始めている。一人でない場所でも勉強できるように意識的に育てておかないといけないとすら思う。
それに、勉強で分からないことがあったら隣のお母さんに聞けるという利点もあるし、工作に熱中する私のようなお父さん(笑)がうるさいと思ったら、「ちょっと静かにしてよ」って言えばいいのだ。それはコミュニケーション能力を鍛える機会にもなるはずだ。親子の断絶の予防効果も期待できる。

私は「快適な環境」というものに対し、問題意識を持っている。抵抗力の衰えた老人にはできるだけインパクトが小さい環境を用意するべきだと思うが、子供たちは別だ。子供たちには順応力・適応能力を身につけさせねばならない。負荷のある環境下でも行動できる人間に育てなければならない。快適な環境でないと勉強できないなどという性質はハンディキャップになってしまう可能性すらある。
そういうことは外部で鍛えろという人もいるけれど、勉強などというものは習慣であり、日常生活で身につけるのが適していると考える。

なお、記事にあった「快眠しやすい寝室」というのは魅力的ではあるが、やはり子供のことを考えると全面的には受け入れがたい。私は大抵の場所で眠ることができるという自分の能力に少々誇りを持っている。快適な環境でないと眠れないようなヤワな子供には育てたくはないのである。それこそ日常生活で身につける能力でもある。
ただし、何と言っても家は休息する場所である。老人もいるし、快眠しやすいのはいいことに違いない。子供にも時にはそうしてやりたいし。
運用次第でどうにでも使える家というのがいいかもしれない。

そうだ。ひとつ思いついた。今年の夏休みは古屋で蚊帳をつって子供を寝かせてみるか。仏壇もあるし、先祖も喜びそうだ。さて蚊帳はどこにしまってあるのだろう。

関連エントリ
勉強部屋?子供部屋?
http://blog.goo.ne.jp/garaika/e/c640e30f6cb732fa11a0ba6aaf4d9a29


「より健康になる家」の認定に反対したい

2007年07月17日 | 家について思ったことなど
Nikkei.netより
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20070717AT3S1301Q16072007.html
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「トクホ住宅」産学官で研究・国交省が認定制度めざす
 国土交通省は「健康増進につながる住宅」の認定制度の導入に向けて、産学官による研究を始める。国が健康に役立つ食品にお墨付きを与える特定保健用食品(通称「トクホ」)は、「脂肪がつきにくい」とうたう飲料などで、普及が進んでいる。同じような枠組みを住宅に設けて、「より健康になる家」の普及を目指す。
 18日に建築学や医学などの研究者や、住宅や設備のメーカー、厚生労働省など関係省庁で構成する研究委員会を立ち上げる。
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上記記事に思いっきり疑問符をつけたい。
「脂肪がつきにくい」食品だって、「健康になる」とはうたってない。
脂肪分の多い食品をガンガン摂ったら「脂肪のつきにくいお茶」を飲んでも、そもそも脂肪分の少ない食品を心がけている人より不健康になりやすい。
それから考えれば「より健康になる家」は言いすぎである。
「健康になる」のではなくて、せいぜい「健康を維持しやすい」くらいの表現にとどめるべきだ。「健康になる」というのは本人の自助努力こそが最大の効果を発揮するもののはずだ。以前も言ったが、こういうことをやると「仏作って魂入れず」になりかねない。

いかにも「箱物」が好きな行政の考えそうなことである。
こういうことをやる前に子供達に「健康教育」をやるべきだろう。そちらのほうが健康増進に「より有効になる」だろう。