気を取り直して、再び旧歓楽街へ戻ろうとした。
しかし、わたしを待っていたのは、このような道であった。
都市計画からいつの間にかはぐれてしまった街、「ぬけられます」と書かれて決してぬけられない迷路のような道……。
再び路地。
路地にあるいろいろと面白いものたち。
このコンクリートの水槽は、かなり年代を感じさせる。昔は何に使われていたのだろうか?
今は紅いめだかが泳いでいた。
この家の人はかなり几帳面な人なのか? 雨樋のパイプが面白く固定してある。
一瞬考えたが、これはまさしくトイレですね。便所という言葉が似つかわしい。
ところで、これは先の家のものではない。
手前に、ありふれたトマソンがあり、そのむこうに、なんとコンクリートの円形でない蓋のついた便所のふたがあるのだ。溶けたちり紙が汚っぽい。
この、穴と蓋に何やら歴史が感じられた。
ところで、脱線するが、わたしが愛して止まない波形トタン、しかもかなり錆びている物件を発見。
ただし、キリコタイプととらえるのにはかなりむりがあって、側面に屋根の斜面を見せる独特のびんぼーなつくりとなっている。
また、違う物件。
エアコン室外機が、格子で囲まれている。
狭いながらも一戸建てなのである。
格子縞がきれいだな……。
同様に、木で作られた消化器入れ。これもなかなか年代物ですぞ。
灯油のタンクらしきものと、エアコンの室外機らしきものが、竹で編まれた塀に囲われている。
しかも、堂々と庇まで設けられているのである。
下の、マンホール状の蓋を押さえているつもりなのだろうか、まっ赤なれんがが唐突に現れて1枚撮った。
ああ、きれいだな。
こういう玄関のデザインを見ると、遊郭風に思えるのであるが、結論は急いではならない。
熟考すべきである。
この建物もそう。タイルに、壁にはめ込んだ硝子のブロック。
単純に遊郭風と決めてはなりませぬ。
普通の物件に戻ろう。
窓の戸袋と思いきや、そうでもないらしい。
しかし、この戸袋に見えた出っ張りの部分にも、庇が……。
そのぜいたくな庇の下方には、くみ取り式便所のあとが。
かなりぼろいが、一階はつながっていて二階が別れている。
二世帯住宅の元祖?
お地蔵様の近くであったが、こんなにもわたしが惹きつけられる物件に出会うとは……。
ただの廃屋とはお思いなさるな。次の1枚をご覧いただきたい。
反対側から撮ってみたのだが、なんとパラボラアンテナ装備ですぞ。
もう少し正面に寄ってみた。
建物自身がもうトマソンなのである。
ところでその右手を見てみた。
洗濯機だけではなく、なんと乾燥機さえ動いていたのである。
洗濯機が二槽式であるので、時代がしのばれる。
手前には、鮮やかな緑の流しが!
これもアールというのか。縁が丸くなっているのがなかなかの時代物である。
もしや、遊郭で……。(つづく)
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