
二次創作
宇宙戦艦ヤマトー新たなる旅立ちー
第十一話
真田は、古代たちの前で白いカーテンを開けた。
そこには地球へ潜入した時と変わらない容姿のイローゼが、拘束された状態で古代たちを見つめ、立っていた。
「真田さん!この人は?」
イローゼを見て、最初に口を開いたのは島だった。
「何故、拘束を?」
「彼女は破壊工作を行った。今、尋問中で俺が預かっている。」
「破壊工作?こんなまだ、幼さの残る顔をした女性が?」
「年格好からしてまだ、18、9と見えるけど。」
「だが島、残念な事に、この娘は人間ではない。アンドロイドなんだ。」
「アンドロイド?」
島に遅れて古代が口を開いた。
「そうだ。アンドロイドだ。しかもイスカンダルから送られて来たアンドロイドだ。」
「なんと云うか。アサシンいや、刺客と云うか、俺からすれば殺戮マシーンだ。」
「殺戮マシーン!?」
「ああ。今は拘束した時に制御チップを埋め込んだので、一時的に大人しいのだが。」
「しかし真田さん!イスカンダルが何故、殺戮マシーン何んかを地球に?」
「しかも、宇宙船も無しに?」
「彼女、イローゼの話によると、潜入時に使用した波動カプセルとやらは、遮蔽膜を張っていて、周りの景色と同化しているらしい。」
「波動カプセルは瞬間物質転送機によって、送られたと。」
「瞬間物質転送機!」
「では、この事態はガミラスも絡んでいるのですか?」
更に古代は問う。
「全く関係ない訳ではないが、どうやらガミラスも抹消の対象らしいのだが。」
「…ガミラスも。」
「まぁ。とにかく古代、このイローゼを預かって要られる時間は、もう僅かしかない。廃棄処分が迫っている。」
「俺が埋め込んだ制御チップの有効時間が、あと72時間しかない。」
「少なくとも、24時間前には連邦防衛軍によって、宇宙に放り出され、処分される。」
「で、何故、わざわざ宇宙なんです?」
「このイローゼには、ハイペノン即ち、重核子微粒子が含まれた"潤滑油"が流れている。」
「ハイペノンとは、簡単には云えば、脳死状態に出来る物質だ。」
「微粒子が空気中に散布されれば、やがて地球人類は死滅する。」
古代も島も言葉を失い、目を丸くした。
「だから、俺は言葉は悪いが、イスカンダルが、この銀河系にワープした事は、不幸中の幸いと捉えている。」
「このイローゼを送り返す為にも、イスカンダルが何故、ワープしたかを含め、調査を理由に出来るからな。」
「スターシャに直接、逢う必要があると、俺は考える。」
「ですが真田さん。イローゼをヤマトに乗せるにしても、この宇宙航路図を観た感じでは、地球から一週間から十日は掛かる距離。」
「イローゼがヤマトで事を起こせば、我々、ヤマトのクルーは助からないではありませんか?」
「それなら大丈夫だ。島。」
「制御チップをもう一つ、作ったのでな。」
「それに、このまま処分してしまうには惜しい代物なんでな。」
「真の姿は正に殺戮マシーンなのだが、武装解除したこのアンドロイドを量産出来れば、医療用にも使う事も可能で、人員不足も今以上に補えると、考えている。」
「なるほど。」
「藤堂長官には俺から話を通す。」
「古代は集められるだけ、旧ヤマトのクルーを集めて欲しい。」
「島は第810宇宙港に停泊しているヤマトの発進準備をお願いしたい。」
「三時間後にヤマトで会おう。」
古代、島の両名は真田の研究室を後にした。
「さて、イローゼ、君をイスカンダルへ送り届ける。」
「君にはヤマトのクルーに成りすましして貰う。」
「スターシャを守り、我々を抹消するのが、任務なのだろう!?」
「真田とやら。急にどうした?」
「俺も同感だからだ。」
真田には考えが、あった_。
「同感!?」
「ああ。今は云えないがスターシャの前で話せる事だ。」
「俺を信じるなら、制御チップをはずしても構わん。」
「君が、裏切りと感じたならば、散布させればいい。」
「どうするかね?」
イローゼは一度、瞳を閉じ、再び開き、真田の提案を呑んだ。
◆
「なぁ。古代、どう思う?」
帰り際、古代のエアカーの中で、島は古代に問いかけた。

「真田さんを信じるしかない。」
「…そうか。古代が、そう云うなら大丈夫かも知れないな。」
第810宇宙港で島と別れた古代は、旧市街地、英雄の丘へ向かった。
そこから緊急通信を使い、旧クルーたちを集める事にした。
英雄の丘から第810宇宙港まで一時間、残り一時間で集められるだけ集め、ヤマトへ向かった。

「・・・と、云う訳だ。」
「藤堂長官には話は通してある。」
「残るかイスカンダルへゆくか。決めて欲しい。」
「俺はゆくよ。…事情が事情だけに複雑だけどな。」
集まった中の一人、元砲雷長の南部が呟くように云った。
「私も行くわ。」
「俺も。俺もだ。」
集まった旧クルーたちは全員、ゆくと決めた。
「て云うか、雪さんは?」
「雪は司令部から直でヤマトに来る事に成っている。」
「そっか。俺はてっきり古代さんの事だから、置いてきぼりなのかと思ったよ。」
元通信長、相原が云った。
「あ、相原。」
顔を赤くした古代。
「アハハハハハ。」
そこに集まった元クルーたちの笑い声が、英雄の丘に拡がった。
◆
ー第810宇宙港ー
停泊中の宇宙戦艦ヤマトに旧クルーたちが乗り込んでゆく_。
どうやら雪は、佐渡先生と先にヤマトに乗艦していたようだ。
藤堂長官の計らいで、旧クルーたち以外にも、新たにクルーが加わった。
元ヤマト機関長の次男、徳川太助もその一人であった。
◆
「北野。航海科に転属し、ヤマトを操縦した経験者が、ボートを転覆させるとは、あり得んぞ。」
「徳川も、亡くなられたお父様がガッカリするぞ。」
「はっ、はい。」
「二人とも、着替えて部署に着け!」
古代は二人に軽く注意を促し、命じた。
◆
第810宇宙港に停泊中の宇宙戦艦ヤマトの補助エンジンに火が入った。
「回転数3000。安定に入りました。」新機関長に就任した山崎が告げてくる。
「コクリ」と頷く操縦桿を握る北野に緊張が走る。
「補助エンジン回転数4700。波動エンジン点火まであと90秒。」
「固定ガントリーロック解除。」
「微速前進、0.5。」ゆっくりと操縦桿を手前に引く北野に合わせるかのように、ガントリーロックから解放された宇宙戦艦ヤマトは一度、僅かに艦が沈み、固定されていた深度、喫水線まで浮き上がる。
北野の額に汗が滲む。
ヤマトの操縦桿を握るのは、今回がはじめてではない。
五年前のイスカンダル航海時にも、航海長である島の代わりに握った経験がある。
とは言うものの、重力下での操艦は今回が初である。
「補助エンジン、回転数上昇、8000へ。」
「更に上昇、12.500へ。」
波しぶきが激しさを増す。
洋上で70.000トンクラスの艦を操艦するのは、シミュレーションとは全くと言っていいほど異なる。
シミュレーションはやり直しが可能だが、"本物"では、そうは行かない。
リセットは出来ないのだ。
「補助エンジン、回転数18.200!」
山崎の報告にも力が入る。
「フライホイール、接続点火!」
操縦桿を目一杯に引き寄せる北野。
その腕が小刻みに震える。
それに合わせるかのようにヤマトも揺れた。
「北野。主翼を展開させるだ。」そっと北野の肩に手を置き、アドバイスを伝える航海長:島。
「ハッ。はい。主翼展開します。」
ヤマトの艦、中央部から競り出るダルレッドカラーに塗られた主翼が展開した。
「緊張し過ぎたよ北野。」
「まぁ。初の離陸にしては上出来だ。」
「あとは俺がやろう。」
「回転数3000。安定に入りました。」新機関長に就任した山崎が告げてくる。
「コクリ」と頷く操縦桿を握る北野に緊張が走る。
「補助エンジン回転数4700。波動エンジン点火まであと90秒。」
「固定ガントリーロック解除。」
「微速前進、0.5。」ゆっくりと操縦桿を手前に引く北野に合わせるかのように、ガントリーロックから解放された宇宙戦艦ヤマトは一度、僅かに艦が沈み、固定されていた深度、喫水線まで浮き上がる。
北野の額に汗が滲む。
ヤマトの操縦桿を握るのは、今回がはじめてではない。
五年前のイスカンダル航海時にも、航海長である島の代わりに握った経験がある。
とは言うものの、重力下での操艦は今回が初である。
「補助エンジン、回転数上昇、8000へ。」
「更に上昇、12.500へ。」
波しぶきが激しさを増す。
洋上で70.000トンクラスの艦を操艦するのは、シミュレーションとは全くと言っていいほど異なる。
シミュレーションはやり直しが可能だが、"本物"では、そうは行かない。
リセットは出来ないのだ。
「補助エンジン、回転数18.200!」
山崎の報告にも力が入る。
「フライホイール、接続点火!」
操縦桿を目一杯に引き寄せる北野。
その腕が小刻みに震える。
それに合わせるかのようにヤマトも揺れた。
「北野。主翼を展開させるだ。」そっと北野の肩に手を置き、アドバイスを伝える航海長:島。
「ハッ。はい。主翼展開します。」
ヤマトの艦、中央部から競り出るダルレッドカラーに塗られた主翼が展開した。
「緊張し過ぎたよ北野。」
「まぁ。初の離陸にしては上出来だ。」
「あとは俺がやろう。」
第十二話へ
つづく。
この物語りは私設定が混ざった《宇宙戦艦ヤマト2205ー新たなる旅立ちー》の二次創作です。
使用している画像はイメージです。また一部、Ps版「宇宙戦艦ヤマト・ イスカンダルへの追憶」等の設定資料から引用。拾い画を使用しています。
つづく。
この物語りは私設定が混ざった《宇宙戦艦ヤマト2205ー新たなる旅立ちー》の二次創作です。
使用している画像はイメージです。また一部、Ps版「宇宙戦艦ヤマト・ イスカンダルへの追憶」等の設定資料から引用。拾い画を使用しています。