鹿島《少将》の航海日誌

改めてブログ作り直しました。
ヤマト関係を中心に、興味あるもの等をお届け。

宇宙戦艦ヤマトー新たなる旅立ちー第十一話

2019-11-25 13:34:00 | 宇宙戦艦ヤマト:二次創作



二次創作
宇宙戦艦ヤマトー新たなる旅立ちー

第十一話


真田は、古代たちの前で白いカーテンを開けた。
そこには地球へ潜入した時と変わらない容姿のイローゼが、拘束された状態で古代たちを見つめ、立っていた。

「真田さん!この人は?」
イローゼを見て、最初に口を開いたのは島だった。
「何故、拘束を?」

「彼女は破壊工作を行った。今、尋問中で俺が預かっている。」

「破壊工作?こんなまだ、幼さの残る顔をした女性が?」
「年格好からしてまだ、18、9と見えるけど。」

「だが島、残念な事に、この娘は人間ではない。アンドロイドなんだ。」

「アンドロイド?」
島に遅れて古代が口を開いた。

「そうだ。アンドロイドだ。しかもイスカンダルから送られて来たアンドロイドだ。」
「なんと云うか。アサシンいや、刺客と云うか、俺からすれば殺戮マシーンだ。」

「殺戮マシーン!?」

「ああ。今は拘束した時に制御チップを埋め込んだので、一時的に大人しいのだが。」

「しかし真田さん!イスカンダルが何故、殺戮マシーン何んかを地球に?」
「しかも、宇宙船も無しに?」

「彼女、イローゼの話によると、潜入時に使用した波動カプセルとやらは、遮蔽膜を張っていて、周りの景色と同化しているらしい。」
「波動カプセルは瞬間物質転送機によって、送られたと。」

「瞬間物質転送機!」
「では、この事態はガミラスも絡んでいるのですか?」
更に古代は問う。

「全く関係ない訳ではないが、どうやらガミラスも抹消の対象らしいのだが。」

「…ガミラスも。」

「まぁ。とにかく古代、このイローゼを預かって要られる時間は、もう僅かしかない。廃棄処分が迫っている。」
「俺が埋め込んだ制御チップの有効時間が、あと72時間しかない。」
「少なくとも、24時間前には連邦防衛軍によって、宇宙に放り出され、処分される。」

「で、何故、わざわざ宇宙なんです?」

「このイローゼには、ハイペノン即ち、重核子微粒子が含まれた"潤滑油"が流れている。」
「ハイペノンとは、簡単には云えば、脳死状態に出来る物質だ。」
「微粒子が空気中に散布されれば、やがて地球人類は死滅する。」

古代も島も言葉を失い、目を丸くした。

「だから、俺は言葉は悪いが、イスカンダルが、この銀河系にワープした事は、不幸中の幸いと捉えている。」
「このイローゼを送り返す為にも、イスカンダルが何故、ワープしたかを含め、調査を理由に出来るからな。」
「スターシャに直接、逢う必要があると、俺は考える。」

「ですが真田さん。イローゼをヤマトに乗せるにしても、この宇宙航路図を観た感じでは、地球から一週間から十日は掛かる距離。」
「イローゼがヤマトで事を起こせば、我々、ヤマトのクルーは助からないではありませんか?」

「それなら大丈夫だ。島。」
「制御チップをもう一つ、作ったのでな。」
「それに、このまま処分してしまうには惜しい代物なんでな。」
「真の姿は正に殺戮マシーンなのだが、武装解除したこのアンドロイドを量産出来れば、医療用にも使う事も可能で、人員不足も今以上に補えると、考えている。」

「なるほど。」

「藤堂長官には俺から話を通す。」
「古代は集められるだけ、旧ヤマトのクルーを集めて欲しい。」
「島は第810宇宙港に停泊しているヤマトの発進準備をお願いしたい。」

「三時間後にヤマトで会おう。」

古代、島の両名は真田の研究室を後にした。

「さて、イローゼ、君をイスカンダルへ送り届ける。」
「君にはヤマトのクルーに成りすましして貰う。」
「スターシャを守り、我々を抹消するのが、任務なのだろう!?」

「真田とやら。急にどうした?」

「俺も同感だからだ。」
真田には考えが、あった_。

「同感!?」

「ああ。今は云えないがスターシャの前で話せる事だ。」
「俺を信じるなら、制御チップをはずしても構わん。」
「君が、裏切りと感じたならば、散布させればいい。」
「どうするかね?」

イローゼは一度、瞳を閉じ、再び開き、真田の提案を呑んだ。


「なぁ。古代、どう思う?」
帰り際、古代のエアカーの中で、島は古代に問いかけた。


「真田さんを信じるしかない。」

「…そうか。古代が、そう云うなら大丈夫かも知れないな。」

第810宇宙港で島と別れた古代は、旧市街地、英雄の丘へ向かった。
そこから緊急通信を使い、旧クルーたちを集める事にした。
英雄の丘から第810宇宙港まで一時間、残り一時間で集められるだけ集め、ヤマトへ向かった。



「・・・と、云う訳だ。」
「藤堂長官には話は通してある。」
「残るかイスカンダルへゆくか。決めて欲しい。」

「俺はゆくよ。…事情が事情だけに複雑だけどな。」
集まった中の一人、元砲雷長の南部が呟くように云った。

「私も行くわ。」

「俺も。俺もだ。」

集まった旧クルーたちは全員、ゆくと決めた。

「て云うか、雪さんは?」

「雪は司令部から直でヤマトに来る事に成っている。」

「そっか。俺はてっきり古代さんの事だから、置いてきぼりなのかと思ったよ。」
元通信長、相原が云った。

「あ、相原。」
顔を赤くした古代。

「アハハハハハ。」
そこに集まった元クルーたちの笑い声が、英雄の丘に拡がった。


ー第810宇宙港ー

停泊中の宇宙戦艦ヤマトに旧クルーたちが乗り込んでゆく_。
どうやら雪は、佐渡先生と先にヤマトに乗艦していたようだ。
藤堂長官の計らいで、旧クルーたち以外にも、新たにクルーが加わった。
元ヤマト機関長の次男、徳川太助もその一人であった。


「北野。航海科に転属し、ヤマトを操縦した経験者が、ボートを転覆させるとは、あり得んぞ。」

「徳川も、亡くなられたお父様がガッカリするぞ。」

「はっ、はい。」

「二人とも、着替えて部署に着け!」
古代は二人に軽く注意を促し、命じた。


第810宇宙港に停泊中の宇宙戦艦ヤマトの補助エンジンに火が入った。

「回転数3000。安定に入りました。」新機関長に就任した山崎が告げてくる。

「コクリ」と頷く操縦桿を握る北野に緊張が走る。

「補助エンジン回転数4700。波動エンジン点火まであと90秒。」

「固定ガントリーロック解除。」
「微速前進、0.5。」ゆっくりと操縦桿を手前に引く北野に合わせるかのように、ガントリーロックから解放された宇宙戦艦ヤマトは一度、僅かに艦が沈み、固定されていた深度、喫水線まで浮き上がる。
北野の額に汗が滲む。

ヤマトの操縦桿を握るのは、今回がはじめてではない。
五年前のイスカンダル航海時にも、航海長である島の代わりに握った経験がある。
とは言うものの、重力下での操艦は今回が初である。

「補助エンジン、回転数上昇、8000へ。」
「更に上昇、12.500へ。」

波しぶきが激しさを増す。
洋上で70.000トンクラスの艦を操艦するのは、シミュレーションとは全くと言っていいほど異なる。
シミュレーションはやり直しが可能だが、"本物"では、そうは行かない。
リセットは出来ないのだ。

「補助エンジン、回転数18.200!」
山崎の報告にも力が入る。

「フライホイール、接続点火!」

操縦桿を目一杯に引き寄せる北野。
その腕が小刻みに震える。
それに合わせるかのようにヤマトも揺れた。

「北野。主翼を展開させるだ。」そっと北野の肩に手を置き、アドバイスを伝える航海長:島。

「ハッ。はい。主翼展開します。」
ヤマトの艦、中央部から競り出るダルレッドカラーに塗られた主翼が展開した。

「緊張し過ぎたよ北野。」
「まぁ。初の離陸にしては上出来だ。」
「あとは俺がやろう。」




こうして、宇宙戦艦ヤマトは宇宙の大海原へと抜錨した_。

イメージ曲Space Battleship Yamato OST - Opening Title (2010 movie) - YouTube


第十二話へ
つづく。


この物語りは私設定が混ざった《宇宙戦艦ヤマト2205ー新たなる旅立ちー》の二次創作です。
使用している画像はイメージです。また一部、Ps版「宇宙戦艦ヤマト・ イスカンダルへの追憶」等の設定資料から引用。拾い画を使用しています。