中国の習近平政権が、度を超えた軍事的威嚇を日本に仕掛けてきた。
中国軍のY9情報収集機
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が26日午前、長崎県五島市の男女群島沖で日本領空を侵犯したのだ。
航空自衛隊の戦闘機が緊急発進(スクランブル)して対応した。
日中間には懸案事項が多々あり、超党派の日中友好議員連盟(会長・二階俊博元自民党幹事長)が27日から訪中する前日に暴挙は強行された。
加えて、事実上の次期首相を決める自民党総裁選(9月12日告示、同27日投開票)の前哨戦という時期でもある。
中国の揺さぶりに対し、総裁候補も、訪中団も、強い覚悟と姿勢が求められそうだ。
「極めて厳重に抗議するとともに、再発防止を強く求める」
外務省は26日、岡野正敬事務次官が、中国の施泳駐日臨時代理大使を同省に呼び、こう抗議したと発表した。
中国側は「本国に報告する」と応じたという。
防衛省によると、Y9は26日午前11時29分ごろから31分ごろにかけての約2分間、日本領空を侵犯した。午前10時40分ごろ、男女群島の南東側で旋回を始め、一時領空侵犯をした後も領空の外で複数回旋回し、午後1時15分ごろ、中国大陸方面に向かった。
空自戦闘機は、新田原基地(宮崎県)のF15と、築城基地(福岡県)のF2がスクランブルし、警告などの対応をとった。
自衛隊機による武器の使用や、その前段となる信号弾の射撃はなかった。
中国の航空機による日本領空周辺での活動は近年、常態化して脅威が高まっている。
領空侵犯の恐れがある外国機に対する航空自衛隊戦闘機による緊急発進(スクランブル)の回数は2023年度、669回に上るが、そのうち中国が479回で、全体の約72%を占めていた。
中国機の活動範囲は、沖縄県・尖閣諸島周辺のほか、最近は九州西方沖での無人機の飛行が目立っていた。
過去2回の中国による領空侵犯はいずれも尖閣諸島の魚釣島周辺で、12年に中国国家海洋局の固定翼機が、17年には中国海警局の船舶から飛び立った小型無人機ドローンがそれぞれ領空侵犯した。
ところが今回、中国軍機が長崎沖の領空にまで侵入した。突然のエスカレートにはどんな狙いがあるのか。
元陸上自衛隊中部方面総監の山下裕貴氏は
「日常的なパトロールや情報収集活動の過程で誤進入した可能性もあるが、意図的だとしたら領空侵犯時の自衛隊の対応能力や時間、基地との交信などの通信情報を収集しているのだろう。
Y9は九州地方に直線的に飛んできており、延長線上には台湾有事の際に空自機が発進する新田原基地も位置している。台湾有事を念頭にリアルな地点で活動しているといえる。
米国の大統領選では両候補とも台湾へのコミットメントの姿勢をみせており、同盟国である日本に対する圧力とも読み取れる」と話す。
Y9が接近した九州の熊本県には、半導体の受託生産で世界最大手、台湾の「TSMC(台湾積体電路製造)」が建設した工場がある。中国は日台の接近を警戒している。
このほか、日中間には懸案が山積している=別表。
だが、解決はおろか、最近も中国側の暴挙が続いている。
■「日中友好議連の訪中団には相当強いメッセージ求められる」小林鷹之氏
今月21日には、昨年3月に中国で拘束されたアステラス製薬の50代の日本人男性社員が「スパイ罪」で起訴されたことが明らかになった。
24日には、東京電力福島第1原発の処理水放出開始から1年を迎えたが、中国による日本産水産物の輸入停止は続いている。
処理水を「核汚染水」と呼ぶ姿勢も変わらない。
尖閣諸島周辺の日本のEEZ(排他的経済水域)に無断で設置したブイの撤去要求にも応じていない。
尖閣周辺海域には、中国海警局船が連日のように侵入し、日本を脅かし続けている。
こうしたなか、日中友好議連の訪中は27~29日の日程で行われる。
会長の二階氏のほか、事務局長の小渕優子自民党選対委員長らが参加する見通しで、議連側は、習国家主席を含む中国最高指導部との会談を模索しているとされる。
自民党総裁選に向けて有力候補が次々と名乗りを上げているが、今回の領空侵犯をどう受け止めるのか。
総裁選に出馬表明した小林鷹之前経済安保相は27日朝、ニッポン放送の報道番組「OK!Cozy up!」に生出演し、
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「事態は相当深刻だ。
外務次官が中国の臨時代理大使を呼び出して厳重抗議したが、政治としても後押ししていく。
(日中友好議連の)訪中団は相当強いメッセージを発しないと、日本の国益にかなわない。中国がどういう意図をもって、今回の行動に及んだのかという分析も急ぐべきだ。
警戒監視を強めるとともに、日米同盟の連携・抑止力強化も必要だ。
自民党総裁選という微妙な時期でもある。
毅然(きぜん)と、かつ冷静に対応しなければならない」と語った。
日本を取り巻く安全保障環境が悪化するなか、新総裁に求められるのは何か。
前出の山下氏は「誰が新総裁になっても南西諸島防衛の強化や、先島諸島や台湾の在留邦人の安全確保などの課題を継続させ、なるべく早く取り組まなければならない」と強調する。
日中友好議連の訪中に注文を付ける声もある。
評論家の石平氏は「日中友好議連が抗議をしないで『友好ムードをつくり上げれば、日本は両国の友好が大事で国防に無頓着』と受け取られかねない。
それなら訪中を取りやめるべきだ。
中国国内の不満が高まるなか、習氏は権威と地位を守るために領空侵犯という行動に出たかもしれない。
今回の事態は『台湾有事』の危機が近いことを示しており、
次期総理総裁は『国防の危機に対応できる人物』が必要だ」と語った。
【日中間の主な懸案事項】
原発処理水海洋放出を受けた日本産水産物の輸入停止
スパイ容疑などでの相次ぐ日本人拘束
日本のEEZ(排他的経済水域)内での海上ブイ設置
日本周辺での中国の軍事活動活発化
沖縄県・尖閣諸島周辺海域への中国海警局船侵入
日本人短期渡航のビザ措置