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2020年01月30日 07時30分 公開 、[村尾麻悠子,EE Times Japan]
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エコシステムの規模としてはArmには遠く及ばないものの、ソリューションが確実に増えているのがRISC-Vである。(注1)。2019年9月に東京で開催された「RISC-V Day Tokyo 2019」は、日本や台湾の他、ロシアの企業が参加して自社のRISC-Vソリューションを紹介するという、活気のあるイベントになった。
だが、SiFiveの講演によれば、日本におけるRISC-Vの取り組みは、韓国や中国に比べて2~3年遅れているようだ。2019年の「ET:Embedded Technology&IoT:Internet of Things 2019」(Internet of Things) ET2019 では、RISC-V関連の技術を手掛ける国内外の企業が出展する「オープンCPUアーキテクチャパビリオン」が設けられたが、こぢんまりとしたスペースで人も少なく(説明員さえいなかったブースもあった)、「RISC-Vに対する関心は本当に高いのか」と少し心配になったほどであった。「『RISC-V』の現在地」で著者の大原雄介氏は「CPUのインプリメントが可能な能力を持った会社が存在しているにもかかわらず、現時点で公にされたRISC-Vの独自実装が一つもない、というのはちょっと寂しいところである」と指摘しているが、2020年には実装したものが出てくることを期待したい。
(注1)
●RISC-V発展の背景
皆さんは「RISC-V」という名前を聞いたことがあるでしょうか。コンピュータアーキテクチャ、プロセッサなどに興味を持っている方ならば、その名前を少しくらいは聞いたことがあると思います。
RISC-Vは「リスク-ファイブ」と呼び、最近急速に注目を浴びているコンピュータの命令セットアーキテクチャ(Instruction Set Architecture: ISA)です。
ISAといえば、デスクトップコンピュータやサーバ向けのIntel、AMD製プロセッサに搭載されているx86、スマートフォンやモバイルデバイス向けプロセッサとして非常に高いシェアを持っているArmといったものが有名です。
・ 歴史上、数多くのISAが提案されて、しのぎを削ってきた
しかしながら、歴史上非常に多くのISAが提案され、製品化され、また消えていきました。そんな中でRISC-Vが急速に注目を浴びている理由は何でしょうか?
突然ですが、Wikipediaで「命令セットアーキテクチャ(Instruction Set Architecture)」について調べてみましょう。堅苦しい説明はさておき、代表的なISA一覧について見てみると、多くのISAがリストアップされています。
これだけではありません、歴史的にたくさんのISAが提案され、半導体メーカ、電気機器メーカが新ISAの開発にしのぎを削ってきました。しかし、(少なくとも私たちの身近に感じる、主流となっている)ISAはわずかです。残りはどこに行ったのでしょうか?
これらのISAは、完全に消滅しているわけではありません。小さな電子機器デバイスや、インフラなどに細々と使われています。しかし、上記の主流なISAと比べるとシェアは非常に低いと言えます。
そんな群雄割拠な、なかなか普及させることが難しくなってきたISAの世界に、RISC-Vは一石を投じた、という訳です。
・RISC-V は大学発
RISC-Vの歴史を紐解いていくと、カリフォルニア大学バークレイ校(University of Califronia、Berkeley 以下 UCB)にたどり着きます。UCBといえば、上記のISA一覧にも載っている "MIPS"を開発したことで有名な大学ですが、研究用としてUCBのメンバが新しく開発した命令セットアーキテクチャが、RISC-Vです。
彼らは、2011年頃から、新しいISAについて検討を始めました。まずは研究用のチップを作る際の制御コントローラとして実装し、いくつかのチップを開発しいくつかの論文発表も行いました。その後商用化を目指し、"RISC-V Foundation"という団体を作成し、Web上でISAを全て公開しました。
そのような由緒正しい研究室からアーキテクチャですが、彼らがこれまでに開発したMIPSと、RISC-Vでは何が異なるのでしょうか?
そのような由緒正しい研究室からアーキテクチャですが、彼らがこれまでに開発したMIPSと、RISC-Vでは何が異なるのでしょうか?
・RISC-Vは完全にオープン
略
・RISC-Vを中心としたコンピュータアーキテクチャについて学びたいなら、パタヘネ、ヘネパタ
RISC-Vは大学発のISAです。RISC-Vを最初に考案したUCBは、コンピュータアーキテクチャ界では非常に有名なDavid A.Patterson先生が在籍している大学です。
David A.Patterson先生とStanford大学のJohn L.Hennessy先生が共同で執筆している、"Computer Organization and Design(通称パタヘネ)"、"Computer Architecture: A Quantitative Approach(通称ヘネパタ)"という教科書があります。こちらはほとんどの大学で教科書として採用されており、コンピュータアーキテクチャを学ぶものならば必ず読んでおきたい一冊です。
2017年に、この「パタヘネ」「ヘネパタ」が解説用のISAとしてRISC-Vを採用し刷新されました。"Computer Organization and Design RISC-V Edition"および"Computer Architecture: A Quantitative Approach Sixth Edition"です。
RISC-Vと一緒に、コンピュータアーキテクチャについて学びたい人にとって、最適な入門書になっています。
・日本語での解説が分かりやすい、雑誌
CQ出版から、FPGAマガジンNo.18として"RISC-Vづくり"という雑誌が発行されています。こちらはRISC-Vの発展の歴史からその仕様まで、幅広く解説されています。なにより日本語で解説されているという点がうれしいです。
また、UCBの開発したCPUコアではありませんが、実際にRISC-Vコアを開発してFPGAで実装する記事が掲載されています。こちらも、RISC-Vを中心としたシステムを構築する際には参考にしておきたい情報です。
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