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自衛隊への理解がなさすぎた元首相、自衛官が頭を抱えた驚天動地の発言2023.3.26香田 洋二

2023-04-01 13:43:20 | 連絡
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香田 洋二のプロフィール
(こうだ・ようじ)
 1949年徳島県生まれ。
元・海上自衛隊自衛艦隊司令官(海将)。
72年防衛大学校卒業、海上自衛隊入隊。92年米海軍大学指揮課程修了。
統合幕僚会議事務局長、佐世保地方総監、自衛艦隊司令官などを歴任し、2008年退官。
2009~2011年ハーバード大学アジアセンター上席研究員。
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軍がどれだけ高性能な兵器、装備を備えていても戦いに勝てるとは限らない。元海上自衛隊自衛艦隊司令官(海将)の香田洋二氏は、著書『防衛省に告ぐ 元自衛隊現場トップが明かす防衛行政の失態』の中で、「軍が機能するかどうかは、国の政治のあり方、そして政治と軍の関係に大きく左右される」と指摘する。
真の防衛力強化のために日本人が直視すべき、日本の防衛の構造的欠陥とは?
(*)本稿は『防衛省に告ぐ 元自衛隊現場トップが明かす防衛行政の失態』(香田 洋二著、中公新書クラレ)から一部を抜粋・再編集したものです。
〇驚天動地の「改めて法律を調べてみたら」発言
安倍晋三氏が首相に就任するまで、橋本龍太郎氏のように自衛隊を重視する首相はなかなか現れなかった。
それどころか、自衛隊に対する根本的な理解が欠けた首相もいた。
「改めて法律を調べてみたら『総理大臣は、自衛隊の最高の指揮監督権を有する』と規定されており、そういう自覚を持って、皆さん方のご意見を拝聴し、役目を担っていきたい」
 2010年8月19日、当時の菅直人首相は、自衛隊の折木良一統合幕僚長ら制服組首脳との首相官邸で行われた意見交換会でこう言い放った。
意見交換会終了後、記者団に取り囲まれた折木良一統幕長は「本当に冗談だと思う。
指揮官としての立場は十分自覚されている上での話だと、私は認識している」と弁護したが、私にはとても冗談だとは思えなかった。
 意見交換が始まる前には、菅直人氏は北沢俊美防衛相に「ちょっと昨日予習をしたら、(防衛)大臣は自衛官じゃないんですよ」とも発言していると報じられた。
これも防衛省・自衛隊関係者からすれば驚天動地の発言だ。
 憲法第66条は「大臣は文民でなければならない」と規定している。
これはシビリアンコントロールの基本中の基本だ。
さらに、自衛隊法第7条は「内閣総理大臣は、内閣を代表して自衛隊の最高の指揮監督権を有する」と規定している。
自衛官にとって、首相が自衛隊最高指揮官であるというのは、「太陽は東から昇って西に沈みます」というぐらい当たり前の話だ。
それを「改めて法律を調べてみたら・・・」と話す首相の命令で自衛官は我が国有事の際には死地に赴かなければならないのだ。
 私は菅氏の発言を聞いて頭を抱える思いだった。
しかも、2011年3月11日に発生した東日本大震災では、自衛官に必死の覚悟を求めたのが、菅直人首相その人だった。まるで喜劇のような話だった。
〇誤解されたまま運用されてきた文民統制
こうした目を覆うばかりの状況を大きく変えたのが安倍氏だったと言える。
統合幕僚長との頻繁な面会やNSSへの制服組登用だけではない
。2022年8月29日付の『産経新聞』によると、安倍氏は2013年3月に防衛大学校卒業式のスケジュールが自民党大会と重なったことを知ると「この時期に防大卒業式があるのは当然なのに自民党も野党ボケしたな。
防大卒業式は国家行事なんだ」と自民党大会のスケジュールを変更させたという。
 こうした一連の変化は、日本の政治と自衛隊の関係において、革命的ともいえるほどの変化だった。
 
日本が民主主義国家である以上、自衛隊はシビリアンコントロール、日本語でいえば「文民統制」の下に置かれる。文民統制とは何か。その定義は人によって異なるが、国際政治学者、サミュエル・ハンチントンの『軍人と国家』では、こう定義している。
「政治上の責任と軍事上の責任を明確に区別することであり、また後者の前者に対する制度的な従属である」
こうやって引用すると、何やら難しい話になって申し訳ないが、要するに「軍人は、国民の代表たる政治家の言うことを聞かなければならない」という話だ。 
ところが、日本では長らく、文民統制は誤解されたまま運用されてきた。
統合幕僚長がなかなか首相に会えなかった事実は、シビリアンコントロールに対する誤解を象徴していると言える。
 軍人が政治家の言うことを聞かなければならないからといっても、軍事の専門家の立場からのアドバイスがなければ、政治家は適正な判断を下せない
ましてや首相は自衛隊の最高指揮官だ。
首相が軍事問題に全く不案内であれば、国民の生命と財産が危機にさらされる。
 何を当たり前のことを言っているのかと思われるかもしれないが、日本では当たり前ではなかったのだ。
それもこれも、文民統制に対する基本的理解が欠けていたからであり、防衛省・自衛隊が抱える多くの問題は、この誤解に原因があると言っても過言ではない。
〇文民統制」ではなく、「文官統制」のDNA
文民統制とは、国民の代表たる政治家が自衛隊を統制することを意味する。ところが、日本では選挙で選ばれたわけでもない背広組の官僚が制服組の自衛官の上に立ち、あれこれと指示を出したり、言うことをきかせたりするという話になってしまっている。「文民(シビル)」ではなく「文官(シビリアン・スタッフ)」が自衛隊を統制するというわけだ。
皮肉を込めて「文官統制」と呼ばれる。 
この「文官統制」を成り立たせた仕組みが2つある。
防衛参事官制度と防衛省設置法第12条だ。
 防衛参事官は、設置法第7条第2項で「防衛省の所掌事務に関する基本的方針の策定について防衛大臣を補佐する」と定められていた。
まり、文民統制を行う主役は防衛庁長官だが、実質的に取り仕切るのは長官を補佐する防衛参事官というわけだ。
しかも、防衛庁の官房長と各局長は防衛参事官が充てられることになった。
防衛参事官とは背広組の官僚のことを意味していたのだ。
 今でこそ、少し事情が変わったが、防衛庁長官は長らく軽いポストとして扱われた。
蔵相(財務相)や外相のように「首相の登竜門」として扱われることもなく、頻繁に行われる内閣改造のあおりを受けて、長官の在任期間も短くなっていく。
一部の例外を除き、長らく国防問題に取り組んできた「国防族」議員が防衛庁長官に就任することもまれだった。
そうなると、長官は「素人」として防衛庁トップに君臨することになる。
このような事情で、防衛庁長官を直接補佐する背広組の官僚の発言力はどんどん増していく。
 さらに、防衛省設置法第12条は、内局の官房長や局長が防衛庁長官を「補佐」するとした上で、長官は陸海空自衛隊と統幕に指示・監督を行うと規定していた。
つまり、長官に代わって文民統制を担うのは、背広組の官僚だということになる。 
この制度では、制服組たる自衛官が長官に対して直接アドバイスすることはできない。
あくまで背広組が長官と自衛官の間に入ることになる。
これにより、長官は、軍事の専門家ではなく、法律や政策の専門家である官僚の言うことだけを聞いて文民統制を行うことになる。
 こうした「文官統制」を裏付けるように、『防衛白書』では長らく「事務次官が長官を助け、事務を監督することとされているほか、基本的方針の策定について長官を補佐する防衛参事官が置かれている」と記述されてきた。
しかし、これでは自衛隊はちゃんと機能しない恐れがある。
こうした制服組の問題意識は、自民党で防衛問題を専門にする“国防族”の石破茂氏や中谷元氏にも共有され、次第に制度は改められていく。
 『防衛白書』の「文官統制」を認めるかのような記述は、2003年度版で削除された。
防衛参事官制度は2009年8月に撤廃された。
2015年3月6日には防衛省設置法第12条の改正案が成立し、背広組が政策的な見地から、制服組は軍事的な見地から対等の立場で防衛大臣を補佐することを明確にした。
法律の上では制服組と背広組が対等であることが明確になったのだ。
 だが、いくら法律を変えても、「文官統制」のDNAは防衛省・自衛隊に深く刻み込まれている。
 


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