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2020年1月15日
「食卓から消える中国の「国民食」
西村 友作
にしむら・ゆうさく
対外経済貿易大学 教授
1974年熊本県生まれ。2010年に中国の経済金融系重点大学である対外経済貿易大学で経済学博士号取得後、日本人としては初めて同大専任講師として正規採用される。同副教授を経て、2018年より現職。日本銀行北京事務所客員研究員。専門は中国経済・金融。 近著に『キャッシュレス国家 「中国新経済」の光と影 』(文春新書)
※このプロフィールは、著者が日経ビジネス電子版に記事を最後に執筆した時点のものです。
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2019年における中国の「今年の漢字」は「穏(安定)」だったが、市民生活に直結する物価は極めて不安定であった。急激な物価上昇が一般市民の家計を直撃した。
国家統計局が20年1月9日に発表した統計によると、19年通年の消費者物価指数(CPI)は前年比2.9%上昇した。単月で見ると、1月は前年同月比1.7%プラスにすぎなかったが、12月には4.5%プラスに達している。
その主要因が食品価格の高騰だ。食品及びエネルギーを除く物価指数を見てみると、12月は前年同月比1.4%プラスにとどまっており、1月の1.9%プラスより0.5ポイントほど低い。一方、12月の食品物価は17.4%プラスで、中でも豚肉が97%と異常に上昇している。
あまりにも異常な豚肉価格の高騰を受け、消費者物価指数を意味するCPIは、「中国豚肉指数(China Pork Index)」と揶揄(やゆ)される。
高騰の理由としては、アフリカ豚コレラ(ASF)の感染拡大による供給減少の影響が大きい。中国農業農村部によると、初めて発生が報告された18年8月3日から19年11月21日までに、160件のASF感染事例があり、累計119.3万頭を殺処分している。
実際に北京の豚肉価格を見てみると、19年6月以降の約半年間で2倍近く上昇している。例えば、私が住む団地内にあるローカルスーパーでは、19年6月時点では500g当たり17.8元(約267円)だった豚バラ肉は、12月には33.8元(約507円)に、豚ひき肉赤身も同16.8元(約252円)から30.8元(約462円)になっていた。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00109/00015/
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